2023年3月茨城県議会 江尻かな議員の一般質問と答弁(大要)

江尻かな議員の一般質問と答弁(大要)

2023年3月9日(木) 茨城県議会 第1回定例会

【質問事項】

  1. 新年度予算と知事の政治姿勢について
    (1)自衛隊の基地強靭化・訓練強化による影響
    (2)実行力ある賃上げと男女賃金格差是正
    (3)子育て・教育にかかる経済的負担の軽減
    (4)酪農・畜産の飼料高騰対策
    (5)高齢者の難聴対策と外出支援・地域交通の拡充
    (6)新型コロナウイルス感染症対策
  2. 東海第二原発の再稼働・運転延長問題について
  3. 教育行政について
    (1)特別支援教育と不登校対策
    (2)教職員と専門・支援スタッフ配置の拡充

項目

1. 新年度予算と知事の政治姿勢について

(1)自衛隊の基地強靭化・訓練強化による影響

【江尻】
日本共産党の江尻加那です。日々寄せられる要望や現場の実態、その切実さを受け、知事および教育長に質問いたします。県民の実感に応える答弁をお願いいたします。

はじめに、新年度予算と知事の政治姿勢について伺います。
知事は所信表明で、「第二次世界大戦の反省から、悲惨な戦争を二度と起こすまいと誓った国際社会において・・・私たちは重大な岐路に立たされている」と述べました。

まさに、政府の動きを見れば、日本も戦争か平和かの岐路に立たされているように感じます。
戦後77年を経て、岸田政権は「新しい戦前」に向かうかのように、防衛費を年間11兆円へ倍増、世界第3位の軍事費に膨張させようとしています。軍備の拡大で対立や緊張を高めるのでなく、戦争の心配のないアジアにしていく外交において日本政府の役割が重要です。

ところが、今月2日の国会で、約300の自衛隊基地を生物・化学兵器・核兵器に耐えるようにする強靭化計画の大規模な発注案を、防衛省からゼネコンに提示していたことが分かりました。

300の中には、本県の勝田・土浦・霞ヶ浦・古河4ヵ所の駐屯地と百里基地がリスト化され、司令部の地下化等が計画されています。防衛大臣は、敵基地攻撃すれば日本も報復攻撃で「大規模な被害が生ずる可能性」があるとし、標的となると認めました。

では、基地周辺住民はどうなるのでしょうか。原子力施設も多数ある本県では、県土全体に影響が及ぶのではないでしょうか。

そして、百里基地での共同訓練も強化され、これまでのアメリカ軍に加え、新たにオーストラリアやインド、ドイツ、先日はカナダ、次はフランスとも聞き及んでいます。

昨年、小美玉市長が昼夜連続飛行訓練にあたり、夜10時以降は止めるよう要請しましたが、守られませんでした。基地内に宿泊できない兵士が石岡や水戸のホテルに宿泊し、市長も住民もこれが常態化するのではないかと不安や危機感を募らせています。
政府に対し、戦争を二度と起こさせないための外交を重視すべきと表明すべきではないでしょうか。

そこで、本県自衛隊基地の強靱化に対する所見と訓練強化に対する知事の所見を伺います。

【大井川知事】

江尻加那議員のご質問にお答えいたします。
初めに、新年度予算と知事の政治姿勢についてお尋ねをいただきました。

まず、自衛隊の基地強靭化・訓練強化による影響についてでございます。
いま、国際社会は、ロシアによるウクライナ侵略、米中対立の激化、北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射など、国際秩序の根幹を揺るがす未曾有の危機に直面しており、我が国を取り巻く安全保障環境は、より一層厳しさを増していると認識しております。

お尋ねのあった、県内含めた自衛隊基地の強靭化計画について、防衛省に確認したところ、昨年12月に閣議決定された防衛力整備計画において、全国の自衛隊基地を対象に、主要司令部の地下化や老朽化対策などの施設整備を、今後5年間で集中して行うとのことでございました。

県といたしましては、計画の推進にあたっては、周辺住民への十分な説明や安全対策に万全を期すよう、国に働きかけてまいります。

次に、他国との共同訓練の回数増や規模拡大についてでございます。

昨今の情勢を踏まえ、百里基地においては、戦術技量の向上、相互理解の促進及び防衛協力のさらなる深化などを目的に、他国との共同訓練が実施されているものと承知しております。

昨年11月には、2年連続11回目となる日米共同訓練が、米軍130名程度が参加し、過去最大規模で実施されております。
また、昨年3月にオーストラリア空軍、9月に国内初となるドイツ空軍、さらに本年1月には日本初となるインド空軍との訓練が行われるなど、近年、新たな国との共同訓練が増加しております。

一方で、こうした訓練に伴い、航空機騒音、外国部隊員による事件・事故や新型コロナウイルス感染症の感染拡大など、住民の皆様の不安の声があることも承知しております。

直近では、本年1月に行われたインド空軍との共同訓練において、地元小美玉市や百里基地周辺の5市長連絡会から、騒音対策や安全対策などを行うよう、防衛省北関東防衛局長に対して要請が行われるなど、近年、地元市などから国に対する要請が急増しております。

これまで県は、地元に先んじて、これらの訓練に際し、防衛省職員が事前説明に来られた時など、機会あるごとに騒音対策や安全対策、周辺住民の不安払拭のための十分な情報提供などを行うよう、県民生活環境部長などからしっかりと申し入れを行っております。

また、訓練内容について、国からできる限り詳細な情報提供を受け、速やかに県ホームページにて一元的に掲載しております。
いずれにしましても、防衛や安全保障は国の専管事項であり、国が責任をもって適切に実施する必要があると考えております。

このため県といたしましては、今後とも、訓練の状況把握や地元市町との情報共有に努めるとともに、必要に応じて国へ要望を行うなど、引き続き県民の皆様の安全対策にしっかりと取り組んでまいります。

(2)実効性ある賃上げと男女賃金格差是正

【江尻】
次に、実効性ある賃上げと男女の賃金格差是正にむけた取り組みについて伺います。
本県の予算案で明らかになったのは、県内企業の法人税が12.4%の大幅増の一方、県民が納める県民税は1.7%しか伸びていない実態です。2年連続同じ傾向ですが、知事はその原因をどのようにお考えでしょうか。

本県、輸出関連製造業の収益が増えても、取引する中小企業の下請け単価が上がらず、賃金に還元されていないのではないでしょうか。そして企業が稼いだがお金をどれくらい社員に分配しているか、本県の労働分配率は全国28位です。

知事は経営者側に賃上げを要請してはいますが、とくに中小企業や非正規雇用、ケア労働にまで実効性ある賃上げ対策が必要ではないでしょうか。お答えください。

また、公務労働も同様です。
現在、県庁知事部局の職員定数は約5,600人に対し実際の採用は約5,000人にとどまり、600人も少ない状態です。代わりに、2,000人を超える会計年度任用職員を期限付き・低賃金で雇用し、その中には正職員と同等の仕事を担う方もいます。業務を精査し、正職員の採用を増やすべきではないでしょうか。お答えください。

また、昨年10月に最低賃金が引き上げられた際、県内4市(常総、下妻、かすみがうら、龍ケ崎)で会計年度任用職員の時間給が最賃を下回り、県の助言により改善されました。新年度においても、県および市町村で給与引き上げ等、処遇改善が必要と考えますが、所見を伺います。

さらに、男女間の給与格差について、女性活躍推進法に基づき、県や市町村も公表が義務化されました。知事は、いつまでに、どのような形で公表するのか。そして、格差をどう是正していくのか、伺います。
賃金が上がらず、先進国で男女の格差が最悪の日本で、少子化が改善されるとは思えません。

【大井川知事】

私は、賃金上昇、消費拡大という好循環を生み出し、価格転嫁しやすい環境を整備し、企業の収益拡大を更なる賃上げにつなげていくことが重要であると考え、あらゆる機会を捉え、企業の経営者などに対し賃金引き上げの理解と協力を求めてまいりました。

特に今年度は、私自らが経済団体に対し、適正な価格転嫁を行うとともに、利益率の高いビジネスを生み出し、その収益をしっかりと労働者に分配するよう、強く要請したところです。

また、最低賃金については、茨城労働局長や地方最低賃金審議会の委員に対して、本県の経済実態が最低賃金に正しく反映されるよう、粘り強く理解を求めた結果、国の最低賃金引き上げの目安額に1円上乗せされ、過去最大の32円の引き上げが実現いたしました。

さらに、賃上げを持続的なものにするためには、企業の成長につながる前向きな取り組みを後押しすることが重要です。

そのため県では、新分野への進出などを目指す中小企業を対象とした融資制度により、事業者の主体的な挑戦を支援するとともに、より利益率の高いビジネスができるよう、新たに海外展開に挑戦する中小企業などを積極的に支援してまいります。

今後も引き続き、私が先頭に立ち、労使双方の関係者に対する働きかけを一層強化し、更なる賃金の引き上げを目指してまいります。

次に、公務労働、特に県庁の対応についてでございます。
まず、会計年度任用職員の正規職員化についてであります。
正職員数については、職員定数条例で上限を定めておりますが、実際の人員配置にあたっては、社会情勢や行政需要に応じ、効果的・効率的な行政サービスを提供するため、適切な人員を配置しております。

また、正職員は雇用期間に定めがなく、政策の立案など高度な判断を必要とする業務を担当する一方、会計年度任用職員は主として一般的かつ定型的な事務補助を担当し、有期雇用として年度ごとに変動する業務量に対応するために配置しており、両者は明確に役割が異なることから、現在の運用は適切なものと考えております。

なお、会計年度任用職員の給与については、週29時間勤務の一般事務で代表的な例をあげますと、時給換算で1,134円となっており、本県の最低賃金911円を上回る額となっております。

また、昨年11月には、公民格差を是正するため一般職員の給与を引き上げる条例改正を行いましたことから、会計年度任用職員についても、本年4月から給与を引き上げることとしております。

次に、「職員給与の男女の差異」の公表については、女性活躍推進法に基づき、2022年度中の支給実績にかかる、会計年度任用職員を含む全職員における給与の男女の差異や、正職員の役職段階別、勤続年数別の給与の男女の差異を、今年6月末までに公表することを予定しております。

今年度末までの支給実績に基づくものであるため、現時点では数値は算出できない状況にありますが、課長などの役職への登用の状況を踏まえますと、管理職等における男女比率の差が、給与の男女の差異を生じさせる可能性があります。

私は、このような状況を改善するためにも積極的な女性登用が必要であると考え、自ら先頭に立って、女性職員の積極的な登用を推進しているところであり、その結果、課長級以上に占める女性の割合は2017年4月の6.9%から、昨年4月には11.6%まで大幅に上昇するなど、着実に成果が現れております。

今後、公表する各指標が示す結果についてはしっかりと分析し、給与の男女の差異が小さくなるよう、適切に対処してまいります。

(3)子育て・教育にかかる経済的負担の軽減

【江尻】
そうした中で、次に、子育て・教育にかかる経済的負担の軽減を求めて伺います。
結婚支援や妊娠・出産時の支援だけでなく、その後の子育てにかかる費用の軽減、とくに世界一高い日本の学費を本気で軽減・無償化することです。しかし、県独自の新規事業や拡充策が予算案にありません。

例えば、子ども医療費助成制度も知事就任直後の5年前に拡大したきりで、外来への補助は小学6年生のままです。市町村の上乗せで、県内すべてで入院・外来とも高校3年生まで補助が広がった今、県として、所得制限も自己負担もない完全無料化に踏み切る時です。

さらに、小中学校の給食費無償化が、水戸市や日立市など県内で広がっています。そこで、県立特別支援学校や県立学校の小中学生も含め、県として給食費の無償化、市町村への半額補助などの予算措置を求めます。

そして、学費です。知事が大学に入学した40年前、国立大の授業料は年間216,000円。それが今や2.5倍の535,800円。私大はさらに高額です。しかし、親の給料が追いついていません。仕送りがない学生は、アルバイトでアパートを借り、食事や生活しながら授業料を払って勉強できる限度を超えています。

こうした現状からか、18歳で成人となった高校生に、学生ローンを勧誘する姿も見られるようになったと聞きます。その行き着く先は、多額の借金を抱えた若者です。

県立医療大学の授業料も535,800円。県の減免制度は、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯しか対象にならず、学生の1割に及びません。そこで、東京都が年収910万円未満まで都立大の減免を拡大するように、本県でも対象を広げて頂きたいと思います。

併せて、いま奨学金を返済している若者への支援です。他県では地元中小企業の人材確保と結び付けた県補助など様々な取り組みが広がっています。本県でも、奨学金返還支援の実施に向けて早期に具体化していただきたいと思います。

そこで、これらの取り組みについて、知事の所見を伺います。

【大井川知事】

私は、子育て世帯への経済的支援は、日本の未来を支える人材への投資であるとの認識のもと、全国トップ水準の妊産婦・子どもに対する医療費補助制度や、本県を含め9県のみ実施している、第3子以降の3歳児未満の保育料の完全無償化など、施策の充実・強化を図っております。

小児医療費助成制度、いわゆる小児マル福制度につきましては、本県は外来受診の対象年齢を小学校6年生までとしておりますが、昨年4月からは市町村独自の取り組みにより、全ての市町村において高校3年生まで拡充されております。

所得制限の撤廃につきましては、来年度中には市町村独自の取り組みにより、全ての市町村において所得制限が撤廃される見込みと承知しておりますが、自己負担金の撤廃につきましては、軽症にもかかわらず、安易な受診につながる可能性があることから、慎重に考えざるを得ないと考えております。

なお、本来、子どもに関する医療費助成制度は、国が責任を持って全国を統一した基準で実施するべきと考えており、県では、中央要望などの機会において継続的に要望してまいります。

次に、学校給食につきましては、大子町など4市町が給食を無償化してるほか、第3子以降の給食費の免除や半額補助などの措置を含めると、県内42市町村において独自の公費負担が実施されております。

給食にかかる費用は、法の規定に基づき、学校の設置者や保護者が負担することとされておりますので、給食費の公費負担については、今後も市町村が担うべきものであると考えております。

なお、県立学校含め、低所得世帯の児童生徒や特別支援学校に在籍する児童生徒に対しては、国の制度などにより、公費負担による支援制度が設けられております。

また、県立医療大学の授業料減免につきましては、現在、「大学等における修学の支援に関する法律」に基づき実施しており、約700名の学生のうち約60名に適用されております。

さらに、要件に該当した学生は、日本学生支援機構からの給付型奨学金を利用することができますことから、真に支援が必要な低所得者世帯の学生に対する経済的負担の軽減が図られているものと考えております

なお、東京都で検討されているような大学授業料の実質無償化については、現時点では大阪府で類似の取り組みが実施されているのみであり、そもそも大学などにおける修学支援の拡充については、国が全国一律で実施すべきものでありますことから、慎重に対応せざる得ないと考えております。

最後に、奨学金の返還支援につきましては、結婚や子育てを控えた若者の経済的な負担軽減に加え、人材確保が課題となっている県内企業への就職につながる可能性もあると考えられますので、返還支援を行う企業への県の助成など、他県の制度や実施状況を踏まえ、検討してまいります。

県といたしましては、引き続き、子育てや教育にかかる経済的負担の軽減を図ることにより、県民が安心して子どもを産み育てることができる社会づくりに向けて、全力で取り組んでまいります。

(4)酪農・畜産の飼料高騰対策

【江尻】
次に、酪農・畜産の飼料高騰対策についてです。

「安心・安全な国産牛乳を生産する会」がおこなった酪農家へのアンケートではすべての酪農家が赤字で、27%が廃業すると回答しています。ところが政府は30兆円の補正予算を付けても、赤字を直接補てんする予算はゼロ。それどころか「牛乳は搾るな」「牛4万頭を処分せよ。1頭殺せば15万円補助する」と農家を追い詰めています。

一方では、農林水産省によると、令和3年度の牛乳・乳製品の輸出額は過去最高で、輸出先上位は台湾、香港、ベトナムとのことです。ところが、国内では酪農の危機。このままでは牛乳まで100%自給できない日本になってしまいます。

そこで、生乳生産量全国8位の本県酪農をどのように位置づけているのか。また、酪農家の数や乳牛飼養頭数の現状をどう見ているのか伺います。

県は、昨年9月の補正予算で、子実トウモロコシや牧草などエサの自給拡大策を実施しましたが、新年度予算にありません。継続を求めるとともに、今は緊急事態であり、直接の支援金が必要です。そこで、県内畜産農家が安定し、展望を持って経営を継続するための支援について、知事の所見を伺います。

【大井川知事】

原料の多くを輸入に頼っている配合飼料につきましては、原料価格や海上運賃の上昇、為替相場が円安傾向にあることなどの影響により全国的に価格が急騰し、畜産経営に打撃を与えている状況でございます。

本県の酪農家戸数は292戸であり、飼養頭数は約2万4千頭となっており、5年前と比較して戸数は3割減少しているものの、飼育戸数は概ね横ばいで推移しており、規模拡大が図られているところですが、配合飼料のみならず、同じく輸入に頼る牧草も飼料として使用しているため、経営の影響が大きいものと認識しております。

こうした中、県では、激変緩和対策として、配合飼料価格の上昇分の一部が補填される、国の「配合飼料価格安定制度」における生産者積立金の全額分を指揮支援するための事業を9月補正及び1月補正で予算化したところです。

しかしながら、飼料価格については依然として先が見通せない状況であることから、国においては「配合飼料価格安定制度」の補てん金に加えて、特別補てん金が支払われているところであり、今後も継続した措置が行われるよう国に要望してまいります。

私はかねてから、本県の畜産業が持続的に発展するためには、飼料価格高騰などの影響を受けにくい、より強い畜産業への構造転換を進めることが重要だと考えております。

本県においても、配合飼料原料の大半を輸入に依存しており、配合飼料全体に占める食品残渣の活用は、全体の5%にとどまっている状況です。

このため、まずは、輸入飼料から国産飼料への転換を図ることを目指し、県内の食品残渣などの未利用資源の利用拡大や牧草などの自給飼料の生産拡大を支援するための事業を9月補正により予算化したところです。

その結果、大豆食品の残渣を乳用牛に給与する事例や、耕種農家と連携して、飼料用トウモロコシなどを栽培する取り組みが始まっているところです。

さらに、2021年7月に立ち上げた、いばらきフードロス削減プロジェクトにおいて、県内の酪農家や養豚農家の代表などが参画する研究会を設置し、県内で発生する食品残渣の飼料化の拡大に向けた具体的な検討を進めているところです。

これらを通じ、飼料国産化の取り組みを県内全域に拡大し、また、引き続き、国の経済対策や社会情勢を注視しながら、必要な対策を検討していくことで、飼料価格高騰に負けない強い畜産経営を実現してまいります。

このほか、飼料価格が高騰したコストを販売価格に転嫁していくためには差別化による付加価値向上も必要です。このため、常陸牛については、脂肪の質に着目した新たな基準による新ブランド常陸牛の生産に取り組むほか、常陸の輝きについては「証明書」の発行による流通管理の徹底など、さらなる畜産物のブランド強化を進めてまいります。

酪農につきましても、経営の安定化や所得の向上を図るため、高品質な生乳を安定して生産できる優良な乳用牛の導入を支援してまいります。

県といたしましては、これらの取り組みを通じて、飼料価格高騰の状況下においても、持続的に畜産業が発展していけるよう、飼料自給率の向上や、より強い経営体への構造転換を進め、本県の畜産業の振興を図ってまいります。

(5)高齢者の難聴対策と外出支援・地域交通の拡充

【江尻】
次に、高齢者の難聴対策と外出支援・地域交通の拡充について伺います。

知事は「健康長寿日本一」を掲げていますが、元気に暮らしていくために、地域とのつながりや人とのコミュニケーションは欠かせません。そのためにも「耳が聞こえにくい」「外出しづらい」という日々の不便を解消していくことが、切実な要望です。

介護サービス認定時に行う聴力調査によると、耳の聞こえが悪い方は、水戸市で約6割、つくば市でも約5割にのぼっています。
難聴でコミュニケ―ションが困難になると、認知症のリスクが高まると海外の研究等で指摘されています。

そこで、県として高齢者の難聴実態調査を行い、必要な方が補聴器を適切に利用できるよう購入費用に県補助制度を創設して頂きたい。県内では古河市に続き、城里町や筑西市が補助を決め、この取り組みが全県に広がるよう県の支援策を求め、知事の所見を伺います。

また、住民の移動手段である地域交通については、バス停まで歩いて行くのも大変という高齢者等のために、32の市町村で乗合タクシーが運行されています。コミュニティバスも含めると、潮来市以外が何らかの地域交通を運行していますが、運行日や時間帯、ルートが合わないなど課題が山積です。例えば、水戸市の1,000円タクシーは地域限定のため、人口の16%しかカバーできていません。

こうした乗合タクシーに県補助がありませんが、課題解決に向けて財政支援を含めた対策を拡充していただきたいと考えます。お答えください。

【大井川知事】

まず、高齢者の難聴対策についてであります。
加齢性難聴は50歳代から徐々に聴力が低下し、70歳を超えると半数近くに症状が現れるとされており、進行すると、抑うつや認知機能の低下など、要介護状態に至るリスクが高まると言われております。

国の研究チームが実施した、高齢者の聴力と認知機能との関連性の調査では、難聴がある場合には聴力に問題がない場合と比較して、1.6倍多く認知機能が低下しているとの実態が報告されております。

さらに今年度、国では、聴覚や認知機能の衰えを自覚している高齢者を対象に、補聴器の使用による認知機能や日常生活の変化に関する研究を実施しており、まもなく、その結果が公表されると伺っております。

このように、国において、加齢性難聴の実態調査や医学的知見を踏まえた補聴器の効果検証が行われているなか、県として、独自に実態調査を行うことは考えておりません。

次に、補聴器の購入に対する支援につきましては、耳元で大きな声で話さないと聞き取れないような「重度・高度難聴」で、身体障害者手帳が交付された方を対象に、国の補助制度は設けられております。

県といたしましては、国における補聴器の使用と認知症予防との関連性に関する研究結果の報告がされていない段階であり、また、難聴の方に対する補助制度もありますので、県独自に補聴器購入の支援を行うことは考えておりません。

なお、超高齢社会の進展を踏まえれば、高齢者の難聴や認知症対策については、国で統一した施策を講じるべきと考えております。

次に外出支援・地域交通の拡充についてでございます。

本格的な人口減少・少子高齢社会において、高齢者などの地域住民の身近な移動を支える地域公共交通の維持確保にあたっては、地域の交通事情や住民ニーズを熟知している市町村が主体的に取り組むことが必要であると考えております。

現在、県内全ての市町村において、地域公共交通のあり方を検討するための協議会が設置されており、地域住民や交通事業者とともに、県も委員として参画し、先進事例の紹介などの情報提供や助言を行っているところであります。

また、住民の移動手段の確保のため、市町村における公共交通空白地域へのコミュニティ交通の導入に対し、立ち上げ支援を行ってきたところであり、9割を超える市町村において、コミュニティバスやデマンド型乗合タクシーなどが運行されております。

コミュニティ交通のサービス面の課題につきましては、昨年度、デマンド型乗合タクシーのAI化といった、デジタル技術の活用による利便性向上など、地域の実情にあった新たな移動サービスの導入に取り組む市町村を支援するための事業を創設し、調査検討費用や初期費用など、立ち上げに必要な費用の一部を支援するところでございます。

県といたしましては、引き続き市町村の取り組みを支援してまいりますとともに、交通事業者の取り組みとも連携を図り、地域交通の拡充に努めてまいります。

(6)新型コロナウイルス感染症対策

【江尻】
次に、新型コロナウイルス感染症対策について伺います。

まず、第8波の検証です。昨年11月~2月末までの死亡者が、これまでで最も多い548人に上り、ほぼ全て高齢者です。
多くの介護施設でクラスターが起きました。感染対策の基本は患者の隔離で、本来なら入院ですが、医療現場のひっ迫回避のために、国も県も施設内での療養を求め、そのために施設に補助金を出してきました。

これにより、多くの高齢患者が施設内に留め置かれ、場合によっては「隔離」や「個室管理」がなされず、カーテンで仕切っただけの「カーテン隔離」という状況まで生まれました。結果として感染し、病院に搬送された時には手遅れで、夫を亡くしたご遺族から訴えも寄せられました。
施設側が保健所に相談した際、保健所もカーテン隔離でいいと指導したとのことです。

さらに、施設内療養が県の見込みを大きく超えたために、県は2月10日以降、施設からの補助金申請を未だ受け付けていません。今定例会に追加補正がありますが、これまでは受け付けていた基準単価を超える上乗せ部分については財源がなく、今後は認めないとしています。協力はお願いするのに、補助の一部を出せないでいいのでしょうか。支給を求めます。

そこで、死亡者の多くを占める高齢者、特に介護施設等におけるクラスターや施設内療養について検証し、教訓を生かした対策をどうすすめるのか、知事の所見を伺います。

そして、医療提供体制も抜本的な強化も必要です。
コロナ患者の入院を受け入れてきた規模の大きいある病院では、今年度の退職者は100人。コロナ禍で人員補充が不十分で、人手不足はこれまで以上に深刻。職員への負担が大きくなり、療養休職者や退職者が増えている実態です。
さらに5類になることで、金銭的な補償が減額となれば経費削減は人件費削減につながり、さらなる退職者増になりかねないとの訴えです。

そして本日、国立病院が加盟する全医労が一斉ストライキを構え、県内でも水戸医療センター、霞ヶ浦医療センター、茨城東病院などで、「十分な人員確保ができなければ、患者の命を守り職員がやりがいをもって働き続けることはできない」と大幅人員増と賃上げを要求しています。

そこで、県として医療機関への人的・財政的支援を含め、提供体制の整備にどう取り組んでいくのか知事に伺います。

【大井川知事】

まず、高齢者を守るための対策についてであります。

かつてない規模で広がったオミクロン株による感染拡大ですが、感染性は高いとされているものの、致死率・重症化率につきましては、従来株のものと比較すると低い水準で推移しております。

一方で、国のアドバイザリーボードによりますと、致死率は低下しても感染者数の圧倒的な増加に伴い、死亡者数の実数は増加しているとの指摘があります。また、本県におきましては、死亡者数の大半を基礎疾患を有する高齢者が占めている事から、特に重症化リスクの高い高齢者が多く入所する高齢者施設における感染対策は引き続き必要であると認識しております。

そのため、これまでも、保健所によるクラスター事例に対する個別支援のほか、その検証結果や、国立感染症研究所による現地支援の際の助言など関係機関と共有し、感染対策の強化を図ってきたところであり、今後も継続してまいりたいと考えております。

加えて、現在、国において、5類への位置付け変更に伴い、入院調整のあり方や高齢者施設への検査・医療支援などの各種対策・措置の段階的見直しについて、具体的な内容の検討・調整が進められておりますことから、その結果を踏まえ、県として必要な対策を講じてまいります。

なお、施設内医療用に対応した高齢者施設に対する補助につきましては、施設種別ごとに上限額が定められております。
その上限額を超えた場合には、事業者が県を通じて国に対する個別協議を行い、国が認めた場合に限り、例外的に上限額が引き上げられる仕組みとなっているため、県では、これまで施設からの全ての申出について、国の協議につないでまいりました。

しかしながら、この補助金は、地域医療介護総合確保基金を原資としており、国からは療養者の数にかかわらず、現状の制度下では、県からの基金増額の協議には応じない旨、通知があり、補助財源が確保できないため、やむを得ず、個別協議の申請受付を取りやめたものであります。

次に、医療提供体制の整備についてであります。
5類への位置付け変更をふまえ、県といたしましては、これまで新型コロナウイルス感染症の診療にあたってきた医療機関に引き続き対応していただくほか、今後はインフルエンザ同様、すべての医療機関で受診・診療して頂ける環境を整備したいと考えております。

具体的には、入院受入医療機関や診療・検査医療機関以外の医療機関にも対応していただくため、県医師会などの協力のもと、新型コロナウイルス感染症の診療経験を有する医師を講師とした研修会を実施してまいります。

さらに、これから診療に対応するにあたって、感染症対策や準備を新たに講じることが必要になる医療機関への支援などを適時適切に行ってまいります。

県といたしましては、5類移行後も、重症化リスクの高い高齢者を含め、県民の安心を確保するため、医療提供体制の整備などの各種対策に全力で取り組んでまいります。

2. 東海第二原発の再稼動・運転延長問題について

【江尻】
次に、東海第二原発の再稼動と運転延長問題について質問します。
福島第1原発事故からまもなく12年。知事は所信表明で、原子力行政に一言も触れませんでしたが、岸田政権は老朽原発をふくめて、原発を最大限活用する方向に舵を切り、60年を超える運転まで認める考えです。

一方、東海第二原発の避難計画策定や県独自の安全性検証は進んでいません。そもそも、県の検証作業は最長60年を念頭にしたもので、その前提が崩されてしまいました。

原子力規制委員会は10年ごとに審査すると言っていますが、評価に必要な試験片が東海第二にはもうありません。中性子の照射により原子力圧力容器がどのくらい脆くなっているかを調べるために必要な原子炉内に設置した4つの試験片は、これまで4回の試験ですべて使い切りました。

日本原電は1回使ったものを再生してまた使うとしていますが、県内の科学者・技術者グループは信頼性に疑念があり問題があるとして、県ワーキングチームを通じて日本原電に質問書を提出していますが回答がありません。

知事は、60年の運転期間が撤廃されたうえ、使い回しの試験片で大丈夫だと、県民が納得すると思いますか。お答えください。

また、避難計画についても問題が噴出しています。
県は、避難所1人あたりの面積をようやく2m²から「3m²以上」に見直しましたが、これは通路も含めた面積で、結局使えるスペースは1人2m²です。パブリックコメントでも「スフィア基準の3.5m²にすべき」との声や、県の避難所検証委員会で市町村から改善を求める意見まで出されながら、反映しなかった理由をお答えください。

まともな避難計画が作れない、そんな不備があるなら、再稼動させるべきではありません。

医療機関や社会福祉施設に求めている避難計画も同様です。知事は一昨年10月の予算特別委員会で私の質問に、「30km圏内全ての施設で、計画策定が必要」としました。ひとつでもできなければ実効性ある計画になりません。現在の進捗状況を伺います。

ある社会福祉法人が策定に向け、不明点をまとめて県に出したそうです。ところが県からは、「グループホーム入居者は、自宅へ返す努力して欲しい」との回答。避難時にスマートインターチェンジはフリーアクセスできるのかの問いに、「(道路)公団判断なので、県の見解は出せない」とし、避難先施設でも介護報酬は請求できるのかとの質問には「認められると推察される」とこれも厚労省に見解を求めてもいません。これではとても作れないと、この施設の避難計画は未策定です。

60年を超える政府の運転方針に、71%の国民が反対との世論調査結果です。改めて、老朽化した東海第二原発の再稼働は認められないとの判断を知事に求め、所見を伺います。

【大井川知事】

まず、原子力発電所の運転期間に関する新たな安全規制制度に対する受け止めてございます。

今回の制度改正について、原子炉規制委員会では、「高経年化した原子力発電に関する必要な安全規制を引き続き厳格に実施するための法的枠組み」としておりますが、現在、制度の詳細化に向けた議論が行われており、そうした中で新たな制度が原子力発電所の安全確保にどのようにつながるのか、国民に対し丁寧に説明していくことが重要であると考えております。

なお、今回の制度改正を受けた東海第二発電所の運転期間につきましては、日本原電から具体的な方針が示されておりませんので、現時点での所感を申し上げることは差し控えたいと存じます。

次に、再生試験片を用いた原子炉圧力容器の健全性評価手法の信頼性についてでございます。
この評価手法については、原子力規制委員会により技術的な妥当性の評価がなされているところと承知しておりますが、県といたしましては、再生試験片の信頼性について、既に県民意見も踏まえた論点の一つとして、東海第二発電所安全性検討ワーキングチームにおいて検証を行っているところでございます。

今後、日本原電から試験片の再生方法などについて、さらに具体的な説明を受けた上で、その結果を県民に分かりやすく公表してまいります。

次に、避難所における1人当たりの面積についてでございます。
県内の全ての市町村において、自然災害などに備え、縦横がそれぞれ約2メートルのパーティションテントなどを備蓄しており、いずれの市町村も2名以上の収容を想定していることを踏まえ、通路を除く個人の専有スペースを2平方メートル、通路などの共用部分を含めれば1人当たり3平方メートルとしているところでございます。

なお、この面積の考え方については、先般開催された避難所検証委員会においても、避難所のスペースを感染症対策及びプライバシー確保にも考慮しながら活用する観点から、有効であるとのご意見を頂いたところでございます。

次に、医療機関・社会福祉施設における避難計画の策定状況でございますが、先月1日現在で、医療機関114機関のうち43機関、また、社会福祉施設481施設のうち324施設が策定済となっております。

県といたしましては、医療機関や社会福祉施設の管理者の責務として、避難計画の策定は必要と考えており、これまで、避難計画のひな型を示し、説明会の実施や個別協議により計画策定を支援してまいりました。

さらに、今年度からは、医療機関の策定を促進するため、「計画策定」を保健所による医療機関立入検査の重点項目として新たに位置付け、策定状況を確認し、未策定の場合には策定に向けた指導や助言を行ってきているところであります。

引き続き、避難計画が未策定の医療機関などに対する説明会や個別協議の実施などにより、計画策定を促進してまいります。

また、東海第二発電所の再稼働につきましては、実行性ある避難計画の策定並びに県原子力安全対策委員会における安全性の検証結果など県民の皆様にお示しした上で、県民の皆様、避難計画を策定する市町村、県議会のご意見を伺いながら判断してまいります。

3. 教育行政について

(1)特別支援教育と不登校対策

【江尻】
最後に、教育行政について質問します。

1点目は、特別支援教育のうち、必要なすべての子どもに個別の教育支援計画を活用し、不登校になる前の取り組みを進めようということです。
県が作成した保護者向けリーフレットには、「お子さんが何に困っているかを見極め,どのような支援が必要かを,」「病院や療育機関,学校等,関係する機関と一緒に考えるので,一貫した支援の見通しをもつことができ」「安心して進級や進学ができます」「まずは,先生,教育委員会にご相談ください」と書いてあります。

しかし、これが作成されるのは、主に特別支援学級に在籍しているか、または通級指導教室に通っている児童生徒に対象が狭められているようです。よって、通常学級に在籍しながら、学習障害や発達障害のある子どもに活用が広がっていません。

ある中学生は、文字の読み書きだけが非常に困難な障害、いわゆるディスレクシアで、学校に配慮を求めているにも関わらず、個別の学習指導で一番苦手な作文を書かされたり、ひたすらノートに書き写す宿題を出されるなどして劣等感を強め、不登校になりました。また、ある中学生は、学校で支援計画が作成されず、このままでは高校入試の際に合理的な配慮が認められないのではと悩んでいます。

文科省の調査では、通常学級に在籍する小中学生の8.8%に学習や行動に困難のある発達障害の可能性があるとされ、35人学級であれば3人です。

そこで、通常学級を含め、小中学校における教育支援計画の適切な活用を求め、教育長の所見を伺います。

【教育長】

まず、特別支援教育と不登校対策についてでございます。

小・中学校における不登校の要因は、「無気力・不安」が約5割で最も多い状況にありますが、「友人関係」や「学力不振」などを要因とするものの中で、コミュニケーション障害やディスレクシアなどの発達障害が原因となっている場合には、「個別の教育支援計画」の作成・活用を通して、一人ひとりの障害の状況に応じた支援の充実を図る必要がございます。

本県における「個別の教育支援計画」の作成状況でございますが、公立小・中学校の特別支援学級や通級指導対象の児童生徒については、100%作成されております。

また、「個別の教育支援計画」の進学先への引継率は、小学校から中学校等へ進学する段階では、通常学級に在籍している児童生徒などを含めて約95%となっており、多くの児童生徒の必要な情報が引き継がれている状況にあります。

一方、文部科学省が昨年12月に公表した調査結果によれば、小・中学校の通常学級で特別な教育的支援が必要な児童生徒の割合は約8.8%となっており、通常学級では、これまで以上に「個別の教育支援計画」を活用した支援が必要となっております。

このため、より多くの教員が「個別の教育支援計画」の活用などについて学べるよう、現在実施している、新任の特別支援学級及び通級指導担当者を対象としていた対面での研修に加え、来年度から新たに、オンデマンド型の動画研修を導入してまいります。

併せて、市町村教育委員会及び学校管理職を対象とした学校訪問を実施することで、「個別の教育支援計画」の活用をこれまで以上に働きかけてまいります。

また、県では、「個別の教育支援計画」に関する「保護者向けリーフレット」を作成しておりますので、全ての保護者に周知するよう、市町村教育委員会に対して働きかけてまいります。

このほか、通常学級に在籍する、発達障害など何らかの困難を抱える児童生徒を支援していくためには、障害の状態に応じて「特別な教育課程」による指導を行う通級指導の強化が重要でございます。

通級指導は現在、児童生徒が在籍する学校で行う自校通級と、児童生徒が近隣の学校に出向いて指導を受ける他校通級が一般的な形態となっております。

来年度からは新たに、より多くのニーズに対応できるよう、担当教員が複数の学校を巡回して指導する「巡回型」の通級指導について、県内5市で実践研究を実施するとともに、その成果を他の地域にも波及させてまいります。

県といたしましては、「個別の教育支援計画」の活用をはじめ、発達障害のある児童生徒に対する個別の教育的支援の充実を図ることで、小・中学校における特別支援教育を推進してまいります。

(2)教職員と専門・支援スタッフ配置の拡充

【江尻】
しかし、より多くの子どもたちに支援をと言うと、「そこまで手が回らない」「これ以上業務を増やさないで」という声が聞こえてきそうです。子どもに関わることが最優先されなければならない教育現場で、先生が足りません。働きすぎで、ゆとりが奪われています。大変だから教員が減る。減るからまた大変になる。先生を増やすことしかありません。

ところが国は、来年度、全国で約2,500人も教職員定数を減らします。本県も、毎年減っていますが、その定数さえ正規教員で確保できず、今年度は1,360人の欠員です。それを講師の先生で補充し続けています。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門職の配置を増やすことも重要です。

教育長が常々表明する、「一人ひとりの能力と個性に応じて」、「だれ一人取り残さない」、そのためにも、教員不足への対応と専門職の拡充について、教育長のご所見を伺います。

以上で、質問を終わりますが、答弁によっては再質問いたしますので、明快な答弁をお願いいたします。

【教育長】

教職員の定数につきましては、いわゆる義務標準法及び高校標準法によって定められており、学級数や生徒定員等により算定されることから、児童生徒数が減少すれば、教職員の定数も減ることになります。

そのため、小中学校では近年、児童生徒の減少に伴い、通常の学級数の減少が続いておりますが、特別支援学級に在籍する児童生徒が増えていることから、全体の学級数は緩やかに減少し、必要な教職員定数も徐々に減っております。

また、高校においては、生徒定員の減少にともない、教職員定数は減少しており、特別支援学校では、児童生徒数の増加に伴って、教職員定数が増えている状況でございます。

このような中、県では、学校統合などによる教職員定数の減や定年年齢の引き上げなども考慮しながら、教職員定数全体を見据えて、計画的に採用しているところです。

教員の採用にあたりましては、教員選考試験の日程を前倒しして他県との併願を可能にしたり、東京や大阪、福岡などに試験会場を設けたりするなど、志願者にとって受験しやすい環境の整備に努めております。

この結果、2020年度は2,793人で会った志願者数が、今年度は3,780人と大幅に増加し、志願倍率は2.88倍から4.12倍へ向上しております。

一方、教員不足が生じる主な要因は、産前産後休暇や育児休業等を取得する教員が増加しており、その補充のための講師候補者が少ないことにございます。

この補充のための講師を確保するために、県ではこれまで、ハローワークや県の広報誌による募集の案内、退職教員の積極的な活用を行ってまいりました。

さらに、今年1月と2月には、「教員再チャレンジ研修会」として、教員免許を所持しているものの、教職から長期間離れている方などを対象に、現在の学校現場の現状や講師登録の方法等について説明する機会を設け、2会場合わせて100名の方々に参加頂いたところです。

加えて、新たな取り組みとして、今年の4月から7月までの間に産休や育休を取得する予定の教員がいる場合には、補充のための講師を年度当初から配置することで、年度途中の教員不足の解消を図ってまいります。

次に専門・支援スタッフの配置の拡充についてでございます。
県ではすべての公立小中高等学校等にスクールカウンセラーを配置し、子ども達が不安や悩みなどを相談できる体制を整えております。

さらに、新型コロナウイルス感染症による生活環境の変化に伴い、児童生徒からの相談ニーズが高まったことを受け、2019年度から2022年度までにスクールカウンセラーを33人増員し、相談回数や時間が十分でないと考えられる学校に、より長く配置できるよう調整を行ってきました。

一方、各学校では児童生徒へのカウンセリングや、保護者への助言はもとより、カウンセラーを講師とした研修などにより、教員の対応力を向上させるなど、相談体制の充実を図っております。

また、学校生活上の諸問題の背景にある生活環境の改善を図るため、スクールソーシャルワーカーを各学校からの要請に応じて派遣しております。

スクールソーシャルワーカーにつきましても、児童生徒やその家庭を取り巻く環境の変化に伴い、年々、需要が高まっておりますことから、2019年度から2022年度までに、派遣回数を約900回拡充し、多岐にわたる問題の解決に向け、支援の充実を図っております。

来年度においても、スクールカウンセラーの配置人数とスクールソーシャルワーカーの派遣回数については、拡充する予定でおります。

県といたしましては、今後も、欠員補充のための講師確保と専門スタッフの充実により、子ども達一人ひとりの状況に応じた支援を図ってまいります。

【再質問:江尻】

知事に2点再質問させて頂きます。

1つは学校給食の無償化について、県立特別支援学校などの給食が低所得者向けに就学奨励費で減免されていることはわかっています。しかし、それでいいのかと質問しています。

今、県内市町村で無償化が広がった時に、例えば水戸市の子どもが水戸市の学校に行った時には無料になるけれども、同じ市内の支援学校に行った時には給食費が有料。この差が子どもたちに残されたまま、置き去りにされたままでいいのかと、県としての知事の所見を伺います。

2つ目には東海第二原発のさらなる運転延長問題についてです。

そもそも、なぜ東海第二を含め試験片が4つしかないのか。それは原子炉設置時に事業者が国に提出した書類に運転期間40年と記載されているからです。だから4つで足りるとしてきたのではないでしょうか。

しかし今、40年をさらに超え、60年、そして今度は60年まで超えようとしています。技術者のグループ専門家はこうした再生試験片による評価はトラブルが計り知れず、いわゆる「だろう運転」に他ならないと指摘しています。こうした危険な賭けはありません。県として、今まさに、60年まで運転期限を撤廃しようとしている政府に対し、これは認められないと言うべきではないか、再度知事に伺います。

【大井川知事】

再質問にお答えいたします。

県立学校の低所得者世帯の生徒に対しては、生活保護法に規定する要保護者以外の就学支援が、特別支援学校に在籍する児童生徒に対しては、特別支援教育就学奨励費による公費負担が行われております。
県といたしましては、現在の公費負担は適切であると認識しており、県立学校に対する学校給食の更なる支援は現状では考えておりません。

東海第二原発の件については、国の安全性の検証なども踏まえて、県の安全対策委員会でさらなる検証をするものと認識しております。

以上

動画はこちらから

2023年3月茨城県議会 江尻かな議員の一般質問と答弁(大要、PDF)

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