2023年12月 茨城県議会第4回定例会 【第122号議案】茨城県核燃料等取扱税条例について

日本共産党の江尻かなです。
第122号議案「茨城県核燃料等取扱税条例」の賛否を判断するため、通告に基づき質疑いたします。

県は、本県にある原子力発電所や再処理施設、研究施設などでの事故や、トラブルによる放射能被ばくなどから県民を防護する対策のために必要な財源の一部を、原子力事業者に県独自に課税をし、1999年度から5年ごとに税率や課税対象を見直しながら更新してきました。今回、来年度の2024年度からの5年間について、課税する核燃料の対象を拡大するとともに、税率引き上げを行うという内容です。

その理由として、「原発立地地域で最も人口の多い91.7万人もの住民を対象とした避難計画の策定など、安全対策にかかる負担が大きい」ことを県は理由に上げています。先般の放射能拡散予測では「最大17万人」という数字が独り歩きしている感がありますが、課税においてはこれまで同様に91.7万人の安全対策に費用がかかるとしております。

そこで、本条例案の更新内容について、以下4点、総務部長に伺います。

第一に、なぜ、これまでの税収額・5年間で62億円から今回2倍近い118億円に増やす必要があるのか。また、原子炉施設にある使用済燃料に新たに課税するとしていますが、使用済燃料を再利用する核燃料サイクル事業が破綻しているもとで、課税によって県外への搬出が進むのか、県としての課税の目的をどのように捉えているのか伺います。

第二に、同様に使用済燃料に課税している他県の状況はどのようになっているのか伺います。

第三に、課税対象となる使用済燃料は、原子炉施設で5年以上保管しているものとされています。東海第二原発の場合は、燃料プールに入っている1,250体と、乾式キャスクに入れられている915体の使用済燃料が対象になると考えます。政府においては、原子炉建屋の燃料プールに入れて水で冷やし続けなければ核燃料が壊れ放射性物質が外に漏れだすといったリスクが大きいプールでの保管方法より、ステンレスキャスクに入れて空冷保管することでリスクが低減されるとの考えが示されておりますけれども、本条例において保管形態の違いによって税額を変えることは検討したのか伺います。

第四に、来年度以降の5年間の税収見込みのなかで、東海第二発電所が再稼働された場合としなかった場合では当然税収が違ってきますが、県はどのような想定で見込んでいるのか伺います。

以上、総務部長に答弁を求め質疑といたします。

(部長答弁)

江尻加那議員のご質問にお答えいたします。
第122号議案 茨城県核燃料等取扱税条例について、4点ご質問をいただきました。

まず1点目、見直し理由と新たに原子炉施設における使用済燃料に課税する理由についてでございます。
この条例の課税期間における県の財政需要は、避難計画の策定や避難経路に係る道路の整備など、安全対策に要する経費として5年間で214億円を見込んでおります。

一方、現行の条例におきましては、原子力施設の立地に伴う5年間の県の財政需要206億円に対し、税収見込額は62億円であり、財政需要に対する税の充足割合は約3割程度という状況にございます。

このため、今後5年間の財政需要に適切に対応するための安定的な財源確保が必要であるとの観点から、今回、税率等の見直しを行い、新条例期間・5年間の税収を118億円と見込んだところでございます。

また、原子炉施設に保管する使用済燃料への新規課税につきましては、県内における保管はあくまでも一時的なものと認識しておりますが、現在のところ搬出に向けた取組に進捗がなく、保管の長期化・常態化が懸念されるところでございます。
このため、財政需要への対応とともに、使用済燃料の県外への搬出促進策として新たに課税を考えたところでございます。

次に2点目、他県での使用済燃料への課税状況についてでございます。

本県のほか、原子力発電所が立地する11の道県において同様の税制が導入されておりますが、このうち、既に原子炉施設に保管する使用済燃料への課税を導入しているのは、福井県、愛媛県、佐賀県の3県ございます。

福井県では、本県と同様に搬出促進策として導入しており、税率は核燃料物質重量1キログラム当たり1,500円で、本県が今回新たに課税する税率と同額でございます。

愛媛県及び佐賀県は、原子力発電所の廃炉による税収減を補填するために導入しており、税率はそれぞれ愛媛県600円、佐賀県750円となっております。

次に、使用済燃料の保管形態の違いにより税額を変える検討の有無についてでございます。
使用済燃料の保管には2種類の形態があることは承知しておりますが、今回の税制は、それぞれ保管形態の特性に応じた安全対策が十分に講じられていることを踏まえたうえで、県外搬出を促すために課税するものであり、保管形態の違いにより税率に差を設けることはしてございません。

最後に4点目、今後5年間の税収見込みにおける原子炉稼働の想定についてでございます。
新条例期間の税収見込額118億円は、原子力施設の現況を基に算定したものであり、東海第二発電所に係る税収については、稼働の有無に関わらず外形基準として熱出力に応じて課税する「出力割」については、これまで同様に見込んでおりますが、稼働した際に核燃料挿入の実績に応じて課税する「価額割」については、現在、停止中のため見込んでいない状況にございます。

県といたしましては、今回の見直しにより税収の確保を図り、原子力施設の立地に伴う安全対策などに適切に対応してまいります。

以上

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