2024年3月茨城県議会 予算特別委員会 江尻かな議員の質問と答弁(大要)

江尻かな議員の予算特別委員会質問と答弁(大要)

2024年3月22日(金) 茨城県議会 第1回定例会

【質問事項】

  1. エネルギー・原子力行政について
    (1)カーボンニュートラルにおける原発の位置づけ
    (2)東海第二原発の拡散シミュレーションと避難計画
  2. ヤングケアラーの進路支援について
    (1)学校での「気づく、つなぐ、支える」取り組みと課題
    (2)相談専門員の配置と就学支度金を含む経済的困難への支援
  3. 地域包括ケアシステムの拡充について
  4. ヤングケアラーの進路支援について
    (1)不登校理由の把握といじめ重大事態における実態との乖離
    (2)部活動地域移行での指導者確保と保護者・生徒の負担対策
    (3)教員不足、精神疾患による長期休職、欠員補充講師の改善
パネルを前に質問する江尻かな議員

パネルを前に質問する江尻かな議員=3月22日、茨城県議会

項目

1. エネルギー・原子力行政

(1)カーボンニュートラルにおける原発の位置づけ

日本共産党の江尻加那です。はじめにエネルギーと原子力行政について、14日の防災環境産業委員会での審議も踏まえまして知事に質問いたします。

知事は常々、「産業部門のCO²排出割合が全国より多い6割を占める本県においては、カーボンニュートラルを実現するための道筋を示すことは困難であり、無責任にゼロカーボンシティ宣言をすることはしない」と示しておられます。

年始のある会合挨拶では、「なぜ茨城県だけがゼロ宣言をしないのかと言われるが、産業部門の排出は原発が今後どうなるかにもよるでしょう」という趣旨の発言がありました。

これは、原子力発電がなければ石炭などの化石燃料が減らせずCO²減は困難という考えなのか、その真意を伺うとともに、本県が掲げております「地球温暖化対策実行計画」、これに基づくカーボンニュートラルへの挑戦で、今後どのような本県におけるエネルギー社会を目指していくのか。

私は、福島原発事故のあの甚大な被害を隣の県で経験してきた本県では、原発ゼロの電源構成をめざしていくべきだと考えておりますが、知事の所見を伺います。

【知事】

お答えいたします。近年の急激な気候変動を背景に、カーボンニュートラルをめざす動きが世界的に加速化しており、我が国においてその実現に向けた対応が必要となっております。そのような中、県では昨年3月に「茨城県地球温暖化対策実行計画」を改定し、野心的とされる国の2030年度の削減目標と同等の目標を掲げ、県民・事業者・市町村などと連携しながら地球温暖化対策を積極的に推進しているところでございます。

特に、二酸化炭素排出量の約6割を産業部門が占める本県においては、そのエネルギー構造を抜本的に転換していくことが不可欠でございます。

そこで私は、「いばらきカーボンニュートラル産業拠点創出プロジェクト」を立ち上げ、水素やアンモニアなど新エネルギーを活用した企業のエネルギー構造転換などに向けた取り組みを強力に支援することで、二酸化炭素の大幅な排出削減と、脱炭素社会においても高い競争力を持つ産業拠点の創出を図っていくこととしております。

一方、本県においてゼロカーボンシティ宣言を行うためには、2050年のカーボンニュートラルを実現するための具体的なロードマップを示すことが必要と考えております。ロードマップを示すためには、本県の主要な二酸化炭素の排出源となっている鉄鋼業や石油化学工業などの産業部門において、化石燃料から脱却できる抜本的な技術革新の確立が不可欠であります。

また再生可能エネルギーの発電コストの低廉化や、脱炭素型の火力発電への置き換えが一層進む中、原子力発電がどうなるかなど様々な要素も考慮する必要がございます。

このため、私はこれらの見通しが明確になっていない現時点において、ゼロカーボンシティ宣言を行うことは困難であると考えております。

いずれにしましても県といたしましては、あらゆる主体と連携しながら、エネルギーの転換や県民のライフスタイルの変化を促していくことにより、カーボンニュートラルの実現に向けしっかりと取り組んでまいります。

(2)東海第二原発の拡散シミュレーションと避難計画

【江尻】

知事は今、ご答弁で化石燃料からの脱却として本県では特に産業創出プロジェクトとしてアンモニア、水素の活用と挙げておりますけれども、このプロジェクトには200億円の補助を予算化する一方で、今ある技術を積極的に活用するための家庭・事業所向けの施策には3億円程度しかないという、非常にアンバランスな予算措置になっております。

知事は「グリーンウォッシュ」という言葉をご存知のことでしょう。環境に配慮していないにもかかわらず、しているように見せかけるビジネス戦略と言われていますが、産業界・大企業の要請を受けて、石炭火力でのアンモニア混焼を打ち出した日本政府が、これは脱炭素に繋がらないばかりか、石炭火力を延命させるものだとCOP28で大きな批判を浴びたのと同じ立場とも言われます。

そして、あの原発の温存というのが、ダイナミックな再エネや省エネの阻害要因ともなっていまして、原発が稼働している電力管内では昨年、太陽光をはじめ再エネの出力を抑制するという規模が過去最大にもなったところです。

改めて、原発ゼロの電源構成をめざすべきだと強調したいところでありますけれども、とりわけ地震・津波国である日本で原発の安全性は大きく失われておりますが、知事はこれまで東海第二原発の再稼働の是非判断については3要件を繰り返しているばかりです。

そういう中で、では県民の意見をどうやって聞くのかということには具体的方策を示さず、県民投票条例案は廃案にされ、県の安全性検証についてのワーキングチームはあと2回で、今年秋にも中間取りまとめでいつでも最終報告できる準備に入り、そして広域避難計画は複合災害の対応の不備を認めずに実効性の担保を17万人に矮小化させようとしております。

これはもう再稼働容認の姿勢にしか見えません。そこで知事は、日本原電に行わせた放射性物質拡散シミュレーションの結果をもとにして、会見で最大17万人の避難に対応できる準備をすれば実効性が担保できたと言えると認識を示しました。

そこで[資料1]をご覧いただきたいと思います。

パネル1 東海第2原発の放射性物質拡散シミュレーション

資料1 東海第2原発の放射性物質拡散シミュレーション

県が公開している資料が非常に細かく小さくて分かりづらい資料なのですけれども、これを見た水戸市民からこの気象条件1の場合、水戸市民の避難対象は約5万9000人になるにも関わらず、この青い色塗りがされている空間線量20マイクロを超える、この青い部分が上の1より広い範囲を示す気象条件2の時に、避難対象の水戸市民を県は0としてしまっているという市民からの問い合わせでした。

私も調べまして、1の時はちょうど資料右側になる水戸市内にあるモニタリングポストの赤い四角、三の丸のところにかかるので、気象条件1の時は約5万9000人の避難対象。しかし、気象条件2の時は広く見えてもこのモニタリングポストのどこにもかからない。まるですべて避けているような形で広がるために、0ということだと説明したのですけれども、誰一人納得してくださる市民の方はありませんでした。

さらに、県が委託した検証委員会でもこのシミュレーションには様々厳しい意見が出され、最後のまとめでは今回のシミュレーション結果を[資料2]に示しましたが、「避難・一時移転の想定評価に活用することは適切でない」とそこまで書かれております。それでも知事が17万人で実効性が検証できるんだということは、やはり問題であり理解は得られないと思いますが、所見を伺います。

パネル2 拡散シミュレーション「検証結果報告書」

資料2 拡散シミュレーション「検証結果報告書」

【知事】

シミュレーションに基づく避難対象人数につきましては、第三者検証委員会がおよそ考えにくいと評価している事故条件などに加え、7日間で放出される放射性物質の量を4時間に凝縮して放出させるなど、避難や一時移転の範囲を最大化するために厳しい仮想の条件を設定して、発電所から30km圏周辺まで一時移転の判断区域を表示させたシミュレーション結果から試算したものである、そういうことをまず念頭においていただきたい。

第三者検証委員会においては、こうした事故や放射性物質の放出、気象条件の設定について「概ね妥当」と評価する一方で、説明性の向上の観点から放射性物質の拡散に寄与する要素として考えられる大気安定度とも考慮した上での再評価や、別の事故シナリオについて追加評価などを行うことが望ましいとも提言しており、現在評価に含まれる変動幅などについて検証を行っております。

また検証委員会からシミュレーションの結果は条件設定次第で変化しうることから、結果の活用にあたってはその目的や前提条件をはっきり示しておくことが重要、との提言を受けておりますので、県では避難計画の実効性の検証に活用していく場合の考え方や、留意点などについて専門家に意見を伺っていくことにしております。

拡散条件の変動幅などを算出することに伴い、試算した最大と見込まれる避難等の人数も変動する可能性はゼロではないものと考えておりますことから、こうした点も合わせて検証した上で公表できるように取り組んでまいります。

なお、避難や一時移転の対象となる区域については、国の緊急時モニタリングの考え方に基づき基本的にモニタリングポストで測定した空間放射線量率を判断材料に、国において決定することとされております。またモニタリングポストは、福島第一原子力発電所事故時における放射性物質の拡散沈着状況も踏まえ、高線量の地域を迅速に把握できるよう5kmの間隔で設置することとされております。

県ではこうした国の方針を踏まえ、専門家などによる検討会で決定した方針に基づいてモニタリングポストを設置しており、今回の試算は基準値を超えたモニタリングポストに紐づく地域の全住民に一時移転指示が出るものと仮定したものでありますが、こうした考え方についても意見を伺った上で県民に示してまいります。

なお、第三者検証委員会からの意見は、安全対策設備が一斉に壊れるといったおよそ考えにくい想定をしたことから、放出開始までの時間など時間的な要因の検証に今回のシミュレーションの結果を活用するのは適切ではないという意見であり、シミュレーションの結果の活用自体を否定してるものではないと考えております。

【江尻】

「17万人という避難対象が変わることもゼロではない」という知事の答弁がありまして、まさにあの説明を水戸市民・県民にしても何ら信頼・信用性は得られないと思っております。そうは言いましても、国の原子力災害対策指針では30キロ圏内92万人の対応が必要なことには変わりありません。

県が行った避難所面積の2平米から3平米への見直しによって、現在12万5000人分の避難所が確保できていないというこの実態に対して、先日の常任委員会では委員から「車中泊避難も検討すべきじゃないか」とか「埼玉アリーナやビッグサイト、東京ドームも避難先になりうるんじゃないか」というような意見まで出ましたけれども、そんな避難リスクを県民に負わせて再稼働させる必要もありませんし、そんな選択は愚かなものだと思います。

そこで、知事が常々病院や社会福祉施設の避難計画は全ての施設で策定されなければ実効性がないというこの考えには変わりないのか、また現在の策定状況をお示しください。そして、この検証に使うという17万人だとしても、避難車両は到底間に合わないと思いますけれども、その点の所見を伺います。

【知事】

お答えいたします。避難に対するこれまでの考え方には一切変更を加えるつもりはございません。このシミュレーションによって、必要となる避難のための様々な車両その他の準備についてしっかりと準備をした上で実効性のある避難計画を作っていくということが我々の使命であると考えております。

【江尻】

ご答弁ありませんでした。病院・福祉施設の策定状況はいかがでしょうか。

【知事】

お答えいたします。病院・社会福祉施設の避難計画の策定についてですが、すべての施設の策定をめざす方針に変更はなく、シミュレーションの結果に関わらず各施設の策定の働きかけを引き続き行っており、策定状況は本年2月1日現在で医療機関114機関のうち50機関、社会福祉施設484施設のうち345施設が作成済みで測定率は全体で66.1%になっております。

【江尻】

この策定状況の中に私が先に指摘しました障害者のグループホームはいまだ入っておりません。30km圏内の121か所を踏まえればまだ5割台という全体としての策定率だということは指摘しておきたいと思っております。避難計画づくりは難航しているというよりも「崩壊・破綻」しているのであって、原発の再稼働は本県においては92万人という対象人口からしても不可能だということを政府と原電に示して廃炉を求めるべきだと思っております。この点は改めて知事に要請させていただきます。この質問は以上です。

2. ヤングケアラーの進路支援

(1)学校での「気づく、つなぐ、支える」取り組みと課題

次にヤングケアラーの進路支援について伺います。ヤングケアラーを含めた支援条例がスタートして3年。県の事業予算は初年度の令和4年は900万円あったのが今年は300万円、新年度は約150万円と減る一方で、県独自の実態調査は行ったが支援につながっていないのではないかと思います。私は中学生の時からヤングケアラーとなったIさんから昨年相談を受けました。

現在26歳の彼女は高校卒業後に看護師になりたいという思いを諦め、介護施設で働き母親と祖母を支えてきました。病気の悪化や祖母の怪我、経済的困窮などが重なる中で相談があり、そして支援につながる中でIさん自身が夢を諦めたくない、との思いになり、働きながら勉強して看護専門学校に合格。4月から入学することになりました。

中学や高校の時に気づいて支援に繋ぎ、支えることができていたらもっと早く挑戦できていたかもしれない。そして今もそうした生徒さんがいるのではないでしょうか。そこで学校においてヤングケアラーをはじめとする困難を抱えた生徒への進路の支援について、対応を教育長に伺います。

【教育長】

お答えいたします。進路選択においては、生徒が自らの生き方を考え、将来に対する目的意識を持ち、自らの意思と責任で決定していくということが重要であり、ヤングケアラーであることをはじめとした家庭の状況などを理由に、生徒が希望する進路を変更・断念するようなことがあってはならないと考えております。

そのため学校では、進路を選択する前の段階からヤングケアラーであることに気づき、必要な支援に早期に繋げていくことが必要であります。

そこで、各学校においては入学当初から個人面談や学校生活アンケートを行い、生徒を取り巻く環境を速やかに把握いたしますとともに、ヤングケアラーをはじめとする生徒が抱える困難を早期に発見できるよう努めております。

また、このような取り組みによりヤングケアラーの可能性があることを把握した場合には生徒が必要な支援を受けられるよう、スクールソーシャルワーカーなどを通して市町村の福祉担当部署と連携を図っているところです。

一方、進路支援にあたっては、担任と進路指導担当者がこれまで把握してきた生徒の家庭状況やニーズに基づき、一人ひとりにあったきめ細かな助言・指導を行っております。例えば、経済的支援に関しましては、高等学校等において授業料に充てるための高等学校等就学支援金をはじめ、授業料以外の教育費負担の軽減を図るための奨学のための給付金や、進学のための奨学資金を案内するなど、様々な支援を行っているところです。

また、介護などを理由に遠方への進学が困難な場合には、担任と進路指導担当者が通学可能な範囲にある教育機関の情報を提供することで、生徒が選択肢を広められるように努めております。

県といたしましては、生徒がヤングケアラーなど家庭の状況を理由に希望する進路を断念することがないように福祉部局などとの更なる連携を図り、1人1人の状況に応じたきめ細かな進路支援に努めてまいります。

(2)相談専門員の配置と就学支度金を含む経済的困難への支援

【江尻】

断念することがないように、というところでの学校現場での更なる取り組みに期待します。今の教育長の答弁も受けまして、やはりヤングケアラーに関する市町村の相談窓口での取り組みが非常に重要だと思います。政府・子ども家庭庁は来月4月以降、進学や就職を含めた進路相談専門員を配置するという施策を打ち出しておりますけれども、本県ではどのように対応していくのか福祉部長に所見を伺います。

【福祉部長】

お答えいたします。ヤングケアラーの専門相談員の配置についてです。学校において進路の悩みや不安を抱えるヤングケアラーを把握した場合には、スクールソーシャルワーカーが市町村の子ども福祉担当課などのヤングケアラー相談窓口に繋ぎ、相談を受けた担当課において関係機関と連携して必要な支援を行っているところでございます。

こうした中、委員ご案内の通り、子ども家庭庁において、来年度からの新たな取り組みとして市町村などがヤングケアラーの進路やキャリア相談に対応する相談員を配置する場合に、財政支援を拡充するなど相談支援体制の強化を図っているところです。

昨年度、本県で実施した実態調査においては、高校生のヤングケアラーが求める支援として進路など将来の相談にのってほしいという回答が一定割合あったことなどから、同じような経験を持ち、孤立しがちなヤングケアラーに寄り添いながら親身になって進路相談や支援を行うことのできる相談員の配置は有効であると考えております。

県では、現在でも子どもの様々な支援に取り組む認定NPO法人カタリバと連携し、ヤングケアラーにオンラインで伴走型の支援を行っており、相談支援によって進学をめざすようになった事例もあるなど進路選択につなげているところです。

また今年度、古河市が国のヤングケアラー支援体制強化事業を活用して、コーディネーターを配置しヤングケアラーの相談支援を開始したところでございます。今後、国の新たな取り組みについても、市町村に対して事業への積極的な活用を促進し、ヤングケアラーの進路相談体制が強化されるよう働きかけてまいります。

また、修学資金を含めた経済的困難への支援についてでございますが、経済的な課題を抱えるヤングケアラーが大学などへ進学する場合、入学金や授業料の免除または減額を受けることができる国の奨学金制度や、入学に際し必要な費用についても生活福祉資金の修学支度費などの支援制度が用意されております。

こうして手続きにつきましても、申請相談窓口となる社会福祉協議会などが、学校の進路指導教員などと連携してヤングケアラーが適切な手続きを行えるよう社協職員などの研修を通じて働きかけを行っております。県といたしましては、ヤングケアラーの進路の選択にあたって経済的な理由などにより選択肢を狭めるとなく、自分らしい人生を歩んでいけるよう積極的な支援を実施してまいります。

【江尻】

専門相談員の配置は有効と、そして古河市では県内で初めて始まっているということですので、全県に広げていただくために積極的な取り組みもしていきたいというご答弁もいただきました。あわせてこういった子どもたちが奨学金や貸付に頼らなくても済むように、やはり高等教育の無償化、学費の負担軽減というのが重要だと改めて感じたところです。ありがとうございました。

3. 地域包括ケアシステムの拡充

次に、地域包括ケアシステムの拡充を求めて伺います。先ほどのIさんの場合、母親の精神疾患や祖母の低年金、そして市営住宅の住まいの問題、彼女自身の進学などに対応するには市町村での包括的な相談体制支援がどうしても必要です。全国に先駆けて、茨城型地域包括ケアシステムが行われていますが、水戸市ではそれが実施されていないために対応が困難となりました。

現在、水戸市を含め8つの市町(※水戸市、結城市、常総市、常陸太田市、ひたちなか市、坂東市、阿見町、境町)で実施されておりませんが、今後の関係機関をつなぐコーディネーターの役割を担える職員の育成も含めて、全県での取り組み拡充を求めて保健医療部長に所見をお伺いします。

【保健医療部長】

お答えいたします。本県では全国に先駆けて1994年から高齢者のみならず誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、茨城型地域包括ケアシステムの構築に取り組み、他職種と連携して、課題解決に向けた調整などを担う地域ケアコーディネーターの配置の働きかけや行政研修などを通した人材育成を行ってまいりました。

現在、茨城型地域包括ケアシステムを実施している市町村には地域ケアコーディネーターを配置している市町村と、地域包括支援センターに地域ケアコーディネーターの機能を有する人材を配置している市町村があり、高齢者や障害者、複合的な課題を持つ事例に関係部署と連携し対応しているところです。

一方、これらのコーディネーターの配置がなく、茨城型地域包括ケアシステムを実施していない市町村もあることから、今後は全市町村を対象として実施している地域包括支援センター職員研修において、茨城型地域包括ケアシステム実施市町村の連携・調整の好事例の紹介や、複合的な課題を有する事例の検討などを実施することで、他部署及び他機関との連携調整の大切さを啓発し、茨城型地域包括ケアシステムの取り組みを進められるよう働きかけてまいります。

さらに、そうした市町村に対しては、複合的な事例に対する部署をまたいだ円滑な連携が図れるよう、相談体制の現状や他部署及び他機関との連携体制の課題に関するヒアリングを実施し、課題解決に向けた助言などを行ってまいります。

また、茨城型地域包括ケアシステムは、地域共生社会の基盤になるものであり、その中核を担うコーディネーターの役割はますます重要になってくるため、現在の地域ケアコーディネーター養成研修の対象を配置、市町村以外にも広げ、コーディネーター的な役割を担える人材の育成を図ってまいります。

また、地域ケアコーディネーターの現任研修により、資質の維持、専門性の向上を図ってまいります。県といたしましては、高齢者・障害者などすべての県民の皆様が地域で暮らし、生きがいを共に作り、高め合うことのできる地域共生社会の実現に向け取り組んでまいります。

【江尻】

コーディネーター研修を実施していない市町も今度は対象にしてやっていただくという、答弁もいただきました。これからもよろしくお願いいたします。

4. ヤングケアラーの進路支援

(1)不登校理由の把握といじめ重大事態における実態との乖離

最後に教育行政について伺います。はじめに、[資料3]をご覧いただきたいと思います。不登校の理由の把握といじめ重大事態の認知において、実態と乖離があるのではないかという問題提起です。

パネル3 不登校になった要因 -文科省調査

パネル3 不登校になった要因 -文科省調査

文部科学省や県が学校を対象に毎年実施している不登校の理由を学校に尋ねる調査で最も多いのが「無気力・不安」でダントツです。これは全国で46.9%ですが、本県単独で言うと57%。6割になっていますが、教育長も教育現場に携われて子どもが何の理由もなく無気力になるものでしょうか。

一方、文科省が2021年に初めて実施した児童・生徒への調査では全く結果が違います。先生のこと、いじめのこと、勉強がわからない、そして身体の不調など、こういった様々な要因にきちんと対応するためにも子どもの実態をきちんと掘り下げた調査に改めるべきではないか。

加えて、いじめが理由というのが学校調査ではわずか0.2%と、これこそまさに実態とかけ離れているのではないかと思いますが、本県で重大事態としていじめに対応しているケースがごくごく僅かに限られているのではないでしょうか。

そこで、こうした実態把握について教育長に所見を伺います。

【教育長】

お答えいたします。まず不登校理由の調査方法、実態把握の仕方についてでございます。不登校やいじめなど、生徒指導上の諸課題に関する調査は国がすべての国公・私立、小中高等学校を対象に実施しており、各学校は調査の実施要項に基づいて回答しております。

その実施要項によって不登校の要因の把握方法を学級担任など当該児童・生徒の状況を最も把握することができる教職員が、本人や保護者の意見を踏まえ、スクールカウンセラー等の専門家を交えたアセスメントを行った上で記入することとされているところであり、そのため教職員が記入しております。

委員から、教員が回答する調査方法については改善が必要、とのご指摘がありましたが、先ほど委員が引用された国の令和2年度不登校児童・生徒の実態調査における児童・生徒の回答率は小学校で11.7%、中学校で8.2%であり、児童・生徒から直接回答を得る調査方法では学校全体の状況を把握し、一人ひとりの支援につなげるためには適当ではないと考えております。

また、不登校の最初のきっかけとして紹介された設問は正確には最初に学校に行きづらいと感じたきっかけを訪ねたものであり、不登校の理由そのものではないことに加え、複数回答方式で多くの回答項目で25.0%以上の回答があるなど、その要因は必ずしも先生のことや身体の不調といった特定のことに偏らず、多岐にわたる結果となっております。

加えて、文部科学省が2016年にまとめた不登校児童・生徒への支援に関する最終報告においては、不登校の原因について本人、家庭、学校に関わる様々な要因が複雑に絡み合ってることが指摘されており、児童・生徒自身が必ずしも正確に把握できていない場合が多いと考えられております。

これらのことから、不登校の要因を把握する調査においては児童・生徒自身が直接回答するのではなく、教職員が本人などの意見を踏まえ、不登校の要因を把握した上でどのような学校であれば行けるのかという支援ニーズや、本人としてはどうありたいのかという主体的意思、興味関心を含め、不登校児童・生徒の気持ちを理解し、思いに寄り添いつつ、スクールカウンセラー等と連携し、具体的な支援を行うことが重要と考えております。

県といたしましては、調査方法、実態把握の仕方については今後とも国が示している調査実施要項等に基づき、適切な調査の実施と不登校の要因把握等が行えるよう市町村教育委員会とも連携し、しっかりと取り組んでまいります。

次に、重大事態の認定と対応についてでございます。いじめによる不登校、重大事態につきましては、いじめ防止対策推進法において、「いじめにより相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認める時」と規定されております。

この場合、不登校重大事態の認定は年間30日の欠席が判断の目安となりますが、欠席日数が30日に到達する前から学校では設置者に報告・相談し、情報共有を図りながら慎重かつ丁寧に判断しているところであり、学校や設置者においてはいじめ重大事態を適切に把握し対応しているものと考えております。

具体的な対応といたしましては、学校が設置者に報告したのち、設置された調査委員会により調査が行われ、その結果を首長に報告し、再調査の要否を判断することとなっております。

また、法令に関する教職員の理解が重要であることから、県では市町村の指導主事や学校の生徒指導主事を対象とし、法令に関する研修会を適宜実施し、不登校・重大事態を含むいじめ対応に関する理解促進を図っているところです。

一方、不登校重大事態の見落としは、児童・生徒への適切な支援の遅れに繋がることから、具体的な事例等をもとに適切な判断と対応が図れるよう、今後とも指導の徹底に努めてまいります。

県といたしましては、引き続き早期発見・早期対応によりいじめ重大事態が発生しないよう取り組んでまいりますとともに、仮に発生した場合には適切に対応し、児童・生徒が安心して学校生活を送れる環境に努めてまいります。

(2)部活動地域移行での指導者確保と保護者・生徒の負担対策

【江尻】

長いご答弁もありましたけれども、今の教育委員会や学校側の声を正当化させるものだけだったのではないかと。本当に子供たちの声が汲み取られているのか。回答率が11%、そして8%と低かったのは、専門家はアンケートが来ても答えようという学校への信頼さえ失われているのではないかと。

文科省もこの把握の仕方については「今後検討していく」と言っているほどです。やはりここがなければ、不登校もいじめも子どもたちに寄り添った対応ができないのではないかと改めて答弁を聞いて思いました。

いじめの重大事態も本県は年間いじめ認知件数約2万5000件に対して重大事態というのは21件、1,000件に1件しか重大事態としての対応がなされていないということも本当にこれでいいのかと思っております。

次に部活動の地域移行について教育長に伺います。教員の荷重負担を減らすことが目的の一つですが、受け皿となる指導者の確保がどこも課題です。「時給1,600円でやってくれる人がどれだけいるのか」という声もあります。

県は地域クラブ活動人材バンクを設置するとともに、教員自身が土日も兼職・兼業の許可を得て指導することも認めておりますが、地域による人材の偏りが大きいのではないか。また、兼職・兼業が広がっていくことは、逆に本来の趣旨を損なうということもあります。

そして、地域クラブに参加する活動費の保護者負担や活動場所が遠くて送迎が必要と言った様々な課題もありますが、県の取り組み、そして支援について教育長に伺います。

【教育長】

お答えいたします。まず、部活動地域移行における指導者の適切な確保についてでございます。地域移行を進めるには指導者の確保が重要であることから、県では茨城県地域クラブ活動人材バンクを設置するとともに、県内すべての地域で活用していただけるよう、指導者研修会の開催などを通して人材バンクへの登録促進に取り組んでいるところです。

そのような中、教員が地域クラブで指導にあたることを認める兼職・兼業の制度につきましては、申請はあくまで本人の希望によるところはもちろんのこと、県または市町村において当該教員の時間外在校等時間を確認し、適切であると判断した場合にのみ許可をしております。

また許可後につきましても、地域クラブで指導に当たる時間も含めた勤務時間管理を徹底することで、指導にあたる教員の過度な負担とならないよう対応しており、引き続き適切な運用に努めてまいります。

なお、現在県内では45人の教員が兼職・兼業の許可を得てクラブ等で活動しており、そのうち29人がつくば市内の学校に勤務するという状況でございます。つくば市においては他の地域に先駆けて地域移行を推進するとともに、市独自の地域移行に伴う兼職・兼業のガイドラインを策定し、学校へ周知したことにより兼職・兼業を活用する教員が他の地域に比べ多くなっていると認識しております。

またガイドラインの運用にあたっては、地域クラブでの勤務時間を市町村教育委員が適切に管理するなど教員の働き方に配慮していることから負担になってはいないと考えております。

次に地域移行に伴う保護者等の負担軽減に向けた取り組みについてでございますが、現在市町村においては、国の実証事業を通じて活動場所や活動費などのあり方について検証を行っております。

特に活動費につきましては、国からの補助を活用して活動費に充当したり、使用料がかからない学校施設を練習場所として紹介したりするなど各家庭の負担額の低減を図っております。

また近隣の学校など身近な公共施設においての活動や、活動場所を複数設定するなど、移動にかかる負担の軽減を図る工夫もしている事例もございます。

県といたしましては、国の実証事業を通して好事例を収集するとともに、それらを県内で共有することで保護者および生徒の負担軽減に努めてまいります。

(3)教員不足、精神疾患による長期休職と欠員補充講師の改善

【江尻】

最後にさまざまな不登校やいじめ、部活動の対応、そして日々の授業など向き合う中で、一番の根本は先生が足りない、働きすぎるということに尽きるのではないでしょうか。そこで本県公立学校において、教員不足の状況や精神疾患を理由とした休職者の実態を伺うとともに、欠員補充の講師がまだまだ多いという実態の改善に向けた取り組みについて教育長に伺います。

【教育長】

お答えいたします。教員不足は各校に配置された教員が産休・育休等の利用で休職に入った際にそれを補充する教員が見つからない状態を指すものであり、年度途中に新たに休職する教員が生じた場合、その補充教員が見つかりにくいことから、年度の後半になるにつれ増加する傾向にございます。

このため県ではさまざまな媒体を活用して志願者の募集を行っていますほか、教員再チャレンジ研修会を活用するなどして教員不足の開始を図ってまいりました。県といたしましては、引き続き教員不足の解消の取り組みとすべての教員が心身の不調を来たさないような職場環境の構築に取り組んでまいります。

【江尻】

以上で質問を終わりますけれども、教員不足は昨年9月の時点で144人、精神疾患につきましても全体の8割を占める、そういう理由になっております。国ではわずか65人しか教員定数を増やさないという状況ではありますけれども、是非とも本県において定数の拡充に取り組んでいただくようお願いしまして私の質問とさせていただきます。以上です。

 

以上

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2024年3月茨城県議会 江尻かな議員の予算特別委員会質問と答弁(大要、PDF)

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