2024年3月茨城県議会 江尻かな議員の一般質問と答弁(大要)

江尻かな議員の一般質問と答弁(大要)

2024年3月8日(金) 茨城県議会 第1回定例会

【質問事項】

  1. 知事の政治資金に関する姿勢について
  2. 新年度予算における県民生活支援及び物価高騰対策について
    (1)大企業と中小企業での賃金引上げ
    (2)農業者支援と自給率向上
    (3)学校給食費無償化と地場産物活用
    (4)国保・介護・後期高齢者医療保険料の負担軽減
  3. 県立医療大学、看護専門学校などの授業料値上げを撤回し、 学費負担を軽減することについて
  4. 自衛隊百里基地の運用について
  5. 東海第二原発の再稼働を認めず廃炉を求めることについて
  6. 霞ヶ浦導水事業や「1県1水道」を見直し、水道施設耐震化や料金引下げを実行することについて
質問する江尻議員

質問する江尻議員=3月8日、茨城県議会

質問する江尻議員と県議会議場

質問する江尻議員(中央上)と県議会議場=3月8日、茨城県議会

項目

1.知事の政治資金に関する姿勢について

日本共産党の江尻加那です。第1回定例会にあたり、知事の政治姿勢並びに新年度予算について質問いたします。

はじめに政治資金についてです。知事は自民党派閥の政治資金パーティーを巡る問題について、「ルールは守るべき。しっかりと説明責任を果たさなければならない」と昨年末の定例会見で述べました。知事自身も自らが代表となっている資金管理団体「緑和会」でパーティー券収入の内訳や氏名が収支報告書に未記載だったなどの問題で、2018年と19年分について「訂正したい」としたことがありました。

そこで伺います。その後、記載漏れなどはないのか。また現時点で確認できる過去3年間の収支報告書を見ますと、「緑和会」が主催した2021年のパーティーでパーティー券の販売収入が5,101万円に対して支出は534万円、差し引きの儲けは4,567万円の利益率90%でした。では、昨年9月に開いたパーティーの収支はどうだったのか。この時も利益率は90%に上ったのか伺います。

そもそもパーティー券は、参加者に振る舞う食事や飲み物への「対価」であるから、企業団体献金ではないというのが法律の建前です。しかし、90%の利益率から見れば、どう考えても形を変えた企業献金に他なりません。

今国会では、自民党以外の各党が「企業団体献金はこの際一切全面禁止せよ」となってまいりました。知事は企業団体へのパーティー券の販売収入を今も献金とは考えないのか。またこれからも政治資金パーティーを開くのでしょうか、お答えください。

あわせて「緑和会」は、2022年に自民党茨城県連に対して2,500万円にのぼる寄付を行っていますが、どのような趣旨で多額の寄付なのか。これまでも同様のやり取りがあったのでしょうか。

以上、 県行政のトップを担う知事の政治姿勢として明快なご答弁を求めます。

【知事】

江尻加那議員のご質問にお答えいたします。はじめに私の政治資金に関する姿勢についてお尋ねをいただきました。

まず、昨年9月に行った政治資金パーティーの収支等についてであります。政治資金収支報告書については、政治団体の会計責任者は毎年3月末までに選挙管理委員会に提出し、県選管は11月末までに公表することになっております。

お尋ねの昨年9月の政治資金パーティーの収支については、今月末までに収支報告書を提出することとなりますが、収入額5236万5000円、支出額567万7000円となっております。また、政治資金パーティーは政治資金規制法第8条の2の規定に基づき実施しており、ご指摘いただいた2020年以降は記載漏れや誤りはございません。

次に、パーティー券収入を企業団体献金とは考えないのかとのお尋ねですが、政治資金パーティーは現行法上献金にあたるものとはされておりません。今後の政治資金パーティーにつきましては必要に応じてこれまで通り法に定められたルールにのっとり開催してまいります。

次に、2022年の私の資金管理団体である「緑和会」から自由民主党茨城県支部連合会への寄付についてですが、政治資金規正法第21条第1項及び第2項により政治団体は政党や政治資金団体に寄付を行うことを制限されているものではなく、適切に行ったものであります。

また、その寄付の趣旨については「緑和会」が政治活動として総合的に判断し、寄付が相当であると考え行ったものであります。知事就任以降2022年以外に「緑和会」と自民党茨城県支部連合会との間の寄付はございません。

私は、先の定例記者会見でも申し上げました通り、政治資金規制法に基づくルールをしっかり守り、しっかりと説明責任を果たすべきと思っており、引き続き法に基づき適切に対応してまいります。

2. 新年度予算における県民生活支援及び物価高騰対策について

(1)大企業及び中小企業での賃上げ

次に、新年度予算について質問します。知事は所信表明で「失われた30年の経済停滞の末、日本の GDPはドイツにも抜かれた」と述べました。自公政治はコスト削減、人件費削減に走る財界の要求に応えて労働法制を緩和して、非正規の雇用と低賃金を拡大させ長時間労働を蔓延させました。

その結果、企業の利益は増えても賃金は下がり、子供を産み育てることが困難な社会、人権やジェンダー平等が尊重されない生きづらい世の中を作っております。昨年知事は本県の最低賃金の引き上げをめざして最賃に近い時給950円未満の求人状況を調査。その結果、大規模な企業ほど低賃金の求人割合が多いことが分かりました。

それは非正規の雇用が多いからであり、男女の賃金格差も大企業ほど大きくなっております。逆に中小企業は最低賃金すれすれでは人が来てくれない、と頑張って時給を上げていますが、常陽産業研究所による企業調査では、行政に求める支援策として断トツトップが「税金や社会保険料」の負担軽減です。賃金を改善せずに人手不足を外国人材で賄うというのは本末転倒ではないでしょうか。

そこで伺います。低賃金の求人が多い大企業とは、どのような業種なのか。またその分野での賃上げを県はどう進めていくのか伺います。

そして、中小企業に対して県は昨年の補正予算で時給を30円以上アップして990円以上とする事業者に初めて補助を行いました。しかし対象が狭く予算はわずか800万円。一方岩手県は、1人5万円の補助を4万人分として21億円の思い切った予算措置です。賃上げというなら、社会保険料の負担軽減などすべての中小企業を対象とした直接支援が必要と考えるところですが、知事の所見を伺います。

【知事】

新年度予算における県民生活支援および物価高騰対策についてお答えいたします。まず、大企業及び中小企業での賃金引き上げについてでございます。

私は、本県の持続的な経済成長のためには、賃金上昇、消費拡大という好循環を生み出し、企業の収益の拡大をさらなる賃上げにつなげていくことが重要であると考え、知事就任以来あらゆる機会を捉え、経済団体や労働団体、企業の経営者などに対して理解と協力を求めてまいりました。

また、物価高騰が続く中、労働者の生活水準を維持するためにも積極的に賃金水準の底上げを図る必要があると考えております。そのため、昨年6月には私自ら厚生労働省及び経済産業省を訪問し、最低賃金の引き上げと中小企業に対する支援強化などについて要望を行ったほか、初めて県労働団体・経済団体の3者による意見交換を実施し、直接関係者の皆様に対し積極的な賃上げを訴えかけてきたところでございます。

ハローワークの求人状況につきましては、本県が昨年1月及び4月の求人情報を分析したところ、従業員100人以下の企業に比べて、従業員101人以上の大規模な企業の方が当時の最低賃金に近い950円未満の割合が高い状況にあります。

また、業務・業種別に見ますと、医療・福祉、宿泊、飲食業、卸売・小売業など、比較的女性の就業者が多い分野においてその割合が高い傾向にあります。

そのため、県ではこれまで大企業は積極的に賃上げを行い、中小企業をリードすることや、シングルマザーや非正規雇用など弱い立場の就労者の生活安定のためにも積極的な賃上げが必要であることを訴えてきたところではありますが、未だ賃金水準が経済実態に見合っていないことから、今後も粘り強く働きかけをおこなってまいります。

一方県では、賃上げに取り組む中小企業を支援するため、本年1月から事業所内の最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資を行う中小企業に最大100万円を助成する「いばらき業務改善奨励金事業」を開始したところであります。

加えて、中小企業の稼ぐ力を強化するため、農産物や加工食品の輸出拡大に挑戦する県内事業者への支援やものづくり企業の海外展開への挑戦を後押ししてまいります。

なお、「いばらき業務改善奨励金事業」につきましては、現在申請を受け付けているところでありますので、まずは茨城労働局と連携しながらその制度を広く周知し、実効性のあるものにしてまいりますほか、春闘における賃上げの状況などを総合的に勘案しつつ、今後の対応を検討してまいります。

県といたしましては、大企業・中小企業ともに賃上げを行い、県全体の賃金水準の底上げが図れるよう経済団体や労働団体などに対する働きかけを一層強化し、物価高騰が続く中にあっても経済が好循環する環境づくりに全力で取り組んでまいります。

(2)農業者支援と自給率向上

次に、農業者への支援と食料自給率の向上に向けた取り組みについて農林水産部長に伺います。農業大県である本県でも自給率は70%と10年前より5%低下していますが、政府の新たな農業基本法では、今でも38%と低い日本の自給率を指標の1つに格下げして、さらなる輸入と市場任せを進めようとしています。

また、昨年策定された本県の「農業将来ビジョン」にも自給率の目標値はなく、米の作付けは今の7万5200ヘクタールから6万6000ヘクタールへと実に山手線の内側面積の1.5倍の面積を減らす計画とされております。代わって野菜や畜産を拡大して、水田では麦や大豆の作付けを増やすとしております。

しかし、麦や大豆も作付面積は5年前より逆に減っています。国産大豆や国産小麦の必要量に生産が追いついていません。気候や環境の影響で収穫量が安定しないと言われております。そこで転作に必要となる機械の導入に補助するだけでなく、麦や大豆において、価格の保証も必要ではないかと考えます。

また、米など農産物の価格下落や災害などで農家の収入が減った場合に備え、2018年から収入保険制度が始まりましたが、本県の加入率は未だ1桁台です。課題として▽生産費補償が度外視されている▽保険料が高い▽加入が青色申告者に限られている─など、問題の改善が必要です。そこで、保険料に対する県の補助を実施するほか、制度の改善を強く国に求めていくことです。

そして、酪農畜産業への支援です。餌などの飼料を海外に頼らなくても済むような仕組みづくりは重要ですが、それが十分でないまま、国や県が飼料高騰への直接支援を縮小すれば廃業の危機が拡大します。国からの物価高騰対策臨時交付金は本県は23億円残っています。これらを活用して、引き続き配合飼料の価格安定化に支援を求めて農林水産部長の所見を伺います。

【農林水産部長】

農業者支援と自給率向上についてお答えいたします。食料安全保障への関心が高まる中、食料自給率の向上や食料安全保障の強化のためには農業の担い手の確保・育成を図ることが極めて重要であると考えております。

そのため、県では農業が魅力ある産業として選ばれることで担い手が育ち、持続的な経営が行われるよう儲かる農業の実現に向けた取り組みを推進しており、昨年5月には「茨城農業の将来ビジョン」を策定し、農業者を支援する様々な施策を展開しているところです。

こうした考えのもと、まず議員ご指摘の自給率の向上に向けた小麦・大豆の価格保証の取り組みにつきましては、生産コストと販売価格との差を補填し、農業者の所得を確保する国の経営所得安定対策の仕組みを基本に、水田活用の直接支払い交付金の効果的な活用を促し、より収益を上げることで小麦・大豆の増産に取り組んでいるところです。

あわせて、安定した収量の確保を図るため、機械導入に対する支援のほかに圃場の排水性を高める暗渠設備の設置などの取り組みや、通常より3割程度の収量増加が見込める大豆の多収品種について、生産現場での実証栽培を進めているところです。

また、販売価格の向上に向けては高品質なパン用小麦・ゆめかおりの生産者が自ら加工業者と価格交渉を行い、一般的な品質と比較し15%以上の高単価を実現し十分な利益を確保している優良事例があることから、このような取り組みを県内に拡大し、生産と販売の両面から小麦や大豆の生産者が儲かる仕組みづくりを進め、小麦・大豆の生産拡大に取り組んでまいります。

次に収入保険についてでございます。収入保険は、農業者を対象に災害による収量減少のみならず、価格下落なども含め幅広いリスクに対応する保険制度です。本県では多くの農業者に加入していただけるよう様々な機会を捉え制度の周知を図っており、徐々に加入者も増加していますが、まだまだ十分に拡大の余地があるものと認識しております。

議員ご提案の県による補助につきましては、収入保険が他の保険制度と同様に経営リスクへの備えとして個人や法人が自らの経営判断で加入するものであることや、掛け金に手厚い国庫補助が行われていることなどを考慮し、慎重な判断が必要であると考えております。

その一方で、費用負担が大きいとの理由で加入を躊躇する農業者も見受けられることから、県ではこうした課題に対し、これまで国に対して保険料等に対する国の負担割合の引き上げなどを要望し、その結果、新規加入時の加入者負担額を抑えた保険契約のメニューの導入などにつなげてまいりました。農業者の方々にとって、より加入しやすい制度となるよう、引き続き国に対して強く要望を行ってまいります。

次に、3点目の酪農畜産業への飼料高騰への直接支援についてでございます。飼料につきましては、2020年以降の価格が高騰し、畜産経営に大きな影響を与えております。

県では、こうした急激な価格高騰による畜産経営の影響を緩和するため、配合飼料の価格安定制度における生産者積立金の全額支援や乾牧草の価格高騰によるコスト上昇分の一部を支援する事業を実施してまいりました。

さらに、国産飼料への転換を進めるため、食品残渣の活用や飼料の作付拡大への支援として、飼料国内自給化緊急対策事業を実施し、国産化を強く推進してまいりました。

次年度予算におきましても、本事業を提案しているところであり、飼料国産化の取り組みを一層推進することで市場価格に左右されない経営体の育成を図るとともに、引き続き臨時交付金などの国による支援や、市場価格の動向などを注視しながら必要な対策を検討していく考えです。

県といたしましては、これら各種施策の推進が、食料自給率の向上や食料安全保障の強化にもつながるよう、引き続き儲かる農業の実現に向けしっかり取り組んでまいります。

(3)学校給食費無償化と地場産物活用

次に、学校給食費の無償化と地場産物の活用を求めて教育長に伺います。県内でも新年度少なくとも20の市と町が無償化を実施し、今後も広がるものと考えます。昨年の第3回定例会で教育長は都道府県レベルで無償化の実例がないことや、食材費は保護者負担とする学校給食法を理由にして「慎重な判断が必要」と後ろ向きの答弁でした。

しかし今、青森県や和歌山県が新年度、全国で初めて全県的な無償化を決定。また食材費についても、昨年4月の衆議院文部科学委員会で当時の永岡桂子文科大臣が「自治体判断での補助を妨げるものではない」と見解を示しました。国の責任も大きいことですが、「義務教育は無償」とする憲法の定めからも、子育て支援の点からも、県立学校も含めた無償化を決める時ではないでしょうか。教育長の所見を改めて伺います。

あわせて、学校での食育も重要です。おいしくて安全な茨城の食材を将来の消費者ともなる子どもたちに一番身近な給食で取り入れることは、地場産物への理解を深めるばかりではなく、地元農家の生産意欲や販路拡大にもつながります。

例えば、岐阜県ではJA中央会を通じて県産米や野菜、果物・畜産物など地元食材の購入費に県が補助を行っています。生産者にとっても安定価格で出荷できることや、給食に納品すると「安全・安心」のイメージ化が期待できるとしております。

そこで、本県で給食に地場産物の活用を一層進めるために食材費補助を行うことを求めて教育長の所見を伺います。

【教育長】

学校給食費無償化と地場産物活用についてお答えいたします。まず、学校給食費無償化についてでございます。

学校給食にかかる経費については、学校給食法により、施設設備や運営に要する経費は学校設置者が負担し、食材費は保護者が負担することとされております。一方近年は、市町村が子育て支援策の一つとして、本来保護者が負担すべき食材費を負担し、無償化する動きも出てきております。

今年度県内では10の市町が公立小中学校の給食費を完全無償化しているところです。県におきましては、今般の食材価格の高騰を受け、県立学校を対象に学校給食等物価高騰対策事業を創設し、昨年度から保護者が負担する食材費値上げ分を支援しておりますが、給食費を無償化する場合にあっては多額の財政負担をともなうことなどから慎重に検討すべき課題であると考えております。

このような中、文部科学省では昨年6月に策定した「こども未来戦略方針」を踏まえ、今年度、全国の教育委員会等を対象に学校給食の実施内容や無償化の取り組み状況を把握するための調査を実施しているところであり、今後この調査による実態を踏まえた上で課題の整理をていねいに行い、具体的方策を検討することとしております。

この調査は「こども未来戦略方針」において、1年以内に結果を公表することが示されておりますことから、県といたしましては当該調査の動向を注視しながら引き続き学校給食に対する支援のあり方について研究してまいります。

次に、学校給食への地場産物活用についてでございます。地場産物を学校給食に活用することは、児童・生徒が本県の農林水産物への理解を深め、地域の自然や文化産業等に関心を持つとともに生産者の努力や食に対する感謝の念を育む上で大変重要であると認識しております。

このため県におきましては、これまで献立を作成する栄養教諭等を対象とした研修会で地場産物の活用を呼びかけるとともに、活用率が低い市町村を訪問し積極的な活用を働きかけてまいりました。

その結果、今年度は「第3次健康いばらきプラン」に掲げた「茨城をたべよう」ウィーク期間中における学校給食の地場産物活用率50%をすべての市町村で超えるという目標を達成しており、さらに全市町村の平均でも約70%の活用率となっている状況でございます。

議員ご質問の県産食材購入費の補助につきましては、年間を通して安定的に供給される米や牛乳はすべての市町村で、豚肉は多くの市町村で公費負担なしに日常的に地場産品を使用しておりますことに加え、地域の生産者やJA等から旬の時期にある野菜や果物等の無償提供を受けている例もございますので、その必要性を含め慎重に検討する必要があると考えております。

県といたしましては、子どもたちへの食育の観点から引き続き学校給食における地場産物の活用を推進してまいります。

(4)国保・介護・後期高齢者医療保険料の負担軽減

次に、国民健康保険と介護保険、後期高齢者医療保険について質問します。社会保障の根幹をなす3つの保険料が、新年度同時に引き上げられようとしています。今でも高い保険料について知事は「何とかしなければ県民が大変だ」と考えているでしょうか。 国の負担を引き上げることが重要ですが、県の役割も今問われます。

国保税の算定基礎となる市町村の県への納付金は新年度800億円で、加入する県民1人当たり今年度より6,856円、5.1%増えます。県の国保財政安定化基金は24億円もあり、国の指示で8億円取り崩したにもかかわらず、1億円しか活用していません。残る7億円も踏まえて、子どもの均等割税をゼロにするなど軽減策を行うべきではないでしょうか。

また介護保険について、政府はすべての人のサービス利用料を2割に引き上げたり、介護サービスを要介護3以上の高齢者に限定するなどの改悪を狙っています。

一方で、介護労働者の処遇改善は全く不十分です。県として18億円を超える介護保険財政安定化基金を活用し、市町村が行っている保険料・利用料の軽減に財政支援することを求めます。

そして後期高齢者医療保険料も新年度7万円から7万8000円に平均11%の引き上げです。2月の広域連合議会で共産党3名の議員以外の賛成で決めてしまいました。広域連合の医療給付費準備基金が過去最高の65億円あるのに、負担軽減に使ったのは半分以下の30億円のみです。

そして、県の後期高齢者医療財政安定化基金は一切取り崩さないとしています。過去にこの基金を活用したのは、民主党政権時代の1回きり。現在50億円にまで増えて、これ以上の積立は必要ないとして今定例会に基金条例の改定が出されるほどです。

要は活用もせず必要以上に積み上げたからです。基金のあり方が問われます。基金の活用基準を見直して、保険料の軽減に充てるよう求め、以上知事の所見を伺います。

【知事】

国保・介護・後期高齢者医療保険料の負担軽減についてでございます。

まず、県民の保険料負担の現状に関する認識についてでございます。国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療の各制度における保険料は保険者である市町村や後期高齢者医療広域連合において被保険者の所得水準や世帯構成などを勘案しながら、各制度を所管する法令に基づき、適切に算定されております。

また、保険料の軽減を図るため、国保についてはこれまでも県の国保特別会計において決算剰余金が生じた場合にはそれを活用して翌年度以降の負担増を緩和してきたところであり、介護保険については、来年度から保険料の区分を見直し、低所得者について保険料基準額に対する割合を引き下げることとしております。

さらに、後期高齢者医療については、主に国の制度改正にともない、来年度茨城県後期高齢者医療広域連合において、保険料を引き上げることとしておりますが、広域連合が設置する後期高齢者医療給付費準備金を活用することで負担の軽減を図ることとしており、1人当たり保険料の引き上げ幅、引き上げ後の額とも全国平均を下回る見込みです。

これらの取り組みに加え、各保険制度においては低所得者向けの保険料軽減制度があることから、制度を運営する市町村及び広域連合において、所得が低い方々の負担軽減のため適切に対応されるものと考えております。これらのことから、県といたしましては被保険者の方々の状況に応じた適切な保険料をご負担いただいているものと認識しております。

次に、国負担額の引き上げについてですが、県では中央要望や全国知事会を通じ、国保制度については将来にわたり持続可能な制度となるよう国が責任を持って医療費の動向に耐えられる財政基盤の確立を図ること、介護保険制度については被保険者や地方の負担増につながらないよう十分な財政措置を講ずること、後期高齢者医療制度については、しっかりとした将来推計による財政資産の安定的な運営ができる制度とすることをそれぞれ要望しており、今後も引き続き要望を行ってまいります。

最後に財政安定化基金の活用による保険料の軽減についてですが、各基金につきましては国民健康保険法などの規定に基づいて県に設置されたものであり、その用途も法の規定により見込みを大幅に上回る保険給付の増加や保険料収納不足により財源不足が生じた場合に備え、市町村などにより資金の交付や貸付を行うものとされており、原則保険料の軽減に活用することはできません。

県といたしましては、被保険者の負担に配慮しながら、各保険者に対し助言を行うなど各制度が適切に運営されるよう引き続き取り組んでまいります。

3. 県立医療大学、看護専門学校などの授業料値上げを撤回し、学費負担を軽減することについて

次に、県立医療大学や看護専門学校の授業料を値上げする今回の条例案の撤回を求めて質問します。物価高騰の影響は学生にとってとりわけ深刻です。昨年、全国大学生協連が発表した学生の「生活実態調査」では、日常生活の悩みとして「生活費やお金のこと」と答えた学生が直近5回の調査で最も高くなり、「経済不安が今後も増加傾向にある」と指摘しています。

日本の学費は「受益者負担」の名のもとに上がり続け、先進諸国で最も高い学費となっています。ヨーロッパでは学生が受けた教育は社会に還元されるという考えのもと、ほとんど学費はかかりません。お金の心配なく学べる環境を作るために、今公立大学が果たす役割は大きいと考えます。

東京都は新年度から都立大の授業料無償化を決定。兵庫県や大阪府も新年度以降、段階的に無償化する方針を決めました。このように学費軽減に踏み出す自治体が出ているのに、知事は全く真逆の授業料値上げを本定例会に提案したのです。その影響額は医療大など6つの県立学校で合わせて年間2,900万円とのこと。これだけの金額をなぜ一般財源で措置できないのでしょうか。

知事は電気代高騰を値上げ理由にしていますが、兵庫県は物価高騰対策の臨時交付金を充てて値上げを回避しただけでなく、無償化方針まで掲げました。その結果、今年度の志願者数は過去5年間で最多となりました。学費の引き下げは切実な願いであり、県は正面から答えるべきです。

そこで伺います。値上げを回避する十分な検討がされたのか。値上げ方針は撤回して無償化に向けた引き下げこそ必要です。知事の所見を伺います。

【知事】

県立医療大学看護専門学校などの授業料値上げを撤回し、学費負担を軽減することについてお答えいたします。まず今回の値上げの方針ですが、令和6年度はこれまでも3年から4年ごとに全庁的に実施している使用料・手数料および授業料の見直し年度にあたることから、「受益者負担の適正化」の観点から改定を検討したところでございます。

この検討にあたりましては、物価や人件費の動向などコスト変動の状況を勘案することとしてきたところでありますが、近年はデフレ化にあって人件費や物価に大きな変動がなかったことから、例えば医療大学は2005年以降、看護専門学校は2000年以降授業料の改定を見送ってまいりました。

一方、この間におきましても医療大学や看護専門学校では電気代の節減を図るため、照明のLED化をはじめ省エネ設備の導入や更新など運営費を縮減するための取り組みを継続して進めてきたところです。しかしながら、今回は光熱水費の高騰など運営コストの増加が顕著であり、かつ持続的で構造的な賃上げやデフレ脱却の動きとも連動した昨今の物価高騰は一過性のものではないと考え、授業料についても改定せざるを得ないものと判断いたしました。

次に、授業料の実質無償化に向けた授業料の引き下げについてでございます。医療大学や看護専門学校の学費につきましては、県内医療従事者の確保などの政策的な観点から民間の教育機関と比べ低廉な料金を設定しております。

加えて、経済的に支援が必要な方については、大学等における就学の支援に関する法律などに基づき授業料の減免を実施しており、例えば医療大学では約800名の学生のうち70名、看護専門学校では約290名の学生のうち約40名がそれぞれ適用を受けております。また学生は日本学生支援機構などからの奨学金も利用することができます。

さらに看護学生に対しては看護師等就学資金制度による貸付金を設置、貸付を実施し、卒業後の勤務条件により返還を免除しております。これらのことから、真に支援が必要な低所得者世帯の学生については経済的負担の軽減が図られているものと考えております。

県といたしましては、引き続き低所得者世帯に対する経済的負担の軽減措置をしっかり周知し学びの機会が確保されるよう努めてまいります。

4. 自衛隊百里基地について

次に、自衛隊百里基地について質問します。政府は、百里基地で戦闘機の隠蔽施設や分散パッドの調査・設計及びスクランブル待機用の格納庫整備など、専守防衛をはるかに超える軍備へと増強し、百里基地の施設整備予算だけでも2022年度は16億円、23年度は45億、24年度は60億に増額。古河駐屯地も庁舎整備に33億円を計上しています。

そして、百里基地での軍事訓練は米軍との共同訓練に加え、オーストラリアやドイツ、インド、カナダ軍に拡大。自衛隊の飛行訓練回数も20年前の年間約3万回、早朝夜間訓練2,000回から現在どこまで増えているのでしょうか。近隣住民の爆音被害も深刻です。

こうした状況で知事は軍民共用の茨城空港に今、民間機の増便をめざし、また台湾へのトップセールスも行っていますが、「平和でこそ商売繁盛」という言葉があるように、北東アジアの平和的な発展と共存があってこその経済交流ではないでしょうか。

その対局にあるのが「台湾有事」です。戦争が起これば終わりの見えない破壊と殺戮が続くことは、世界を見れば明らかです。重要なのは絶対に戦争を起こさせないための外交ですが、政府は南西諸島での防衛力強化や次期戦闘機の輸出にまで乗り出しています。

岸田政権が閣議決定した「安保3文書」は米軍と自衛隊を統合し、アメリカと中国の対立の最前線に日本を立たせることにあります。そんな事態は絶対に避けなければなりません。5年間で43兆円もの防衛費は平和も暮らしも壊すものであり、本県の百里基地での訓練強化や施設の増強に反対すべきです。知事の所見を伺います。

【知事】

自衛隊百里基地についてお答えいたします。近年国際社会は、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢など国際秩序を揺るがす事態が続いており、我が国を取り巻く安全保障環境はより一層厳しさを増していると認識しております。

お尋ねのありました自衛隊施設の整備や百里基地での訓練強化のうち、施設の整備については防衛省に確認したところ2022年12月に閣議決定された「防衛力整備計画」に基づき全国の自衛隊基地において2023年度から5年間で集中して行うとのことでございました。百里基地においては、航空機格納施設の整備や庁舎などの設計工事のほか、水道管などのインフラの強靭化を進める計画とのことでございます。

県といたしましては、施設整備の実施にあたっては周辺住民への十分な説明や安全対策に万全を期すよう引き続き国に働きかけてまいります。

次に、百里基地の訓練強化につきましては、戦術技量の向上、相互理解の促進及び防衛協力のさらなる深化などを目的にアメリカをはじめとする他国との共同訓練などが実施されているものと承知しております。また、自衛隊の夜間及び早朝訓練が昨年度初めて実施されたのに続き、今年度も行われたところであります。

一方で、こうした訓練に対し、地元の小美玉市や百里基地周辺の5市町連絡会から防衛省北関東防衛局長に対して騒音対策や事故防止に万全を期すとともに、周辺住民の安全に最大限努めるよう要請が行われるなど、住民の皆様の不安の声があることも承知しております。

県におきましては、訓練に際して防衛省職員が事前説明に来られた時など機会あるごとに騒音対策や安全対策、周辺住民の不安払拭のための十分な情報提供などを行うようしっかりと申し入れを行っております。

また訓練内容につきましては、国からできる限り詳細な情報提供を受け、速やかに県ホームページにて一元的に掲載し、県民の皆様への周知に努めております。国際社会の平和と安定は県が進めるインバウンドの促進や県産品の海外展開への影響にかかわらず強く願うところでありますが、防衛や安全保障は国の専管事項であり、国が責任を持って適切に実施する必要があると考えております。

このため県といたしましては、今後とも訓練などの状況把握や地元市町との情報共有、県民への情報提供に努めるとともに、必要に応じて国への要望を行うなど引き続き県民の皆様の安全対策にしっかりと取り組んでまいります。

5. 東海第二原発の再稼働を認めず廃炉を求めることについて

次に東海第2原発についてです。能登地震では多くの家屋倒壊と道路寸断が発生し、地震や津波と原発事故が同時に起きる複合災害となれば、屋内退避や車での広域避難が不可能なことが改めて明らかになりました。地震列島の日本で原発の安全は成り立たないのです。

ところが知事は、東海第2原発で「避難が必要なのは最大17万人だ」などと述べ、再稼働を後押しする姿勢を鮮明にしたのと同時に、能登地震後の会見では本県の避難計画について「複合災害を想定して進める」と述べただけでした。

具体性がないのは国も同じです。2月21日、内閣府主催の東海第2地域原子力防災協議会の作業部会で、参加した日立市の担当職員から「能登半島地震を踏まえると家屋倒壊の状況ではどうするのか」との質問に原子力規制庁は「屋内退避できる施設で屋内退避をしていただく」、そんな分かりきったことではなくて「屋内退避できる施設をどう確保するのか」と聞いているのに、まるで具体性のない回答でした。

また東海村の担当者から「道路が寸断されて避難できなくなる場合はどうするのか」との質問に、規制庁は「国の指針に道路の具体的対応は盛り込まず、各自治体の計画に盛り込まれるべきもの」と、こちらも無責任な丸投げです。計画を作り始めて約10年。それでこの有様です。

東海第2の運転差し止めを命じた水戸地裁では、すでに3年前の2021年3月にこの複合災害を指摘しています。「住宅が損壊し道路の寸断を想定すべきところ、屋内回避についても複数の避難経路も設定されていない。今後これを達成することも相当困難だ」としています。この点からも私は画期的な判決だと思いますが、知事はどう今受け止めているのでしょうか。

再稼働にかかわらず、原発があれば避難計画は必要ということではありません。再稼働せず核燃料プールから取り出し乾式キャスクで保管すれば、放射性物質拡散リスクは低くなるから避難計画は必要ないと国の指針に規定されています。よって、日本原電はすべての核燃料を保管できる分の乾式キャスクを作るべきなのにそれをせずに再稼働工事を強行しています。その挙句に防潮堤に施工不良を起こし、その事実を自ら公表しませんでした。

それを「報告義務がないから問題ない」とした知事こそ問題です。原電はコンクリート未充填と鉄筋変形については調査結果を出していますが、北基礎の鉄筋が計画の深さまで到達せずに高止まりしている不備については「問題ない」として公表しておりません。

県はどのような説明を受けているのか。この鉄筋の高止まりについて原子力規制庁は問題ないとは判断していないと考えますが、原電に対して詳細に情報開示するよう県として求めるべきです。こうした問題を抱えた東海第二原発の再稼働は認めず、廃炉を実現するよう知事の決断を求めます。

【知事】

東海第二原発の再稼働を認めず廃炉を求めることについてお答えいたします。まず複合災害への対応についてでございます。これまで県は複合災害の対応としてあらかじめ決めている当初の避難先が被災して避難できない場合などの備えとして30km圏内の市町村と協議しながら第二の避難先の候補地を確保し、公表しております。

また、当初の避難経路が使えない場合に備え、複数の代替経路を設定することとし、そのための協議を市町村と行ってきているところであります。さらに屋内待機時における電気・ガス、上下水道といったライフラインの維持・方策を検討する際には、地震被害からライフラインを復旧させるための方策についても関係機関と調整を進めております。

このほか、空間線量率を測定するモニタリングポストについて地震などで通信や電源が途絶えないよう、国と協議しながら通信回線や電源の二重化を図ってきているところであります。このように、避難計画の策定においては複合災害も想定しながら取り組んでおります。

なお、東海第二原子力発電所運転差し止め請求事件における水戸地方裁判所の判断についてでございますが、当該訴訟については県は当事者ではなく、また裁判が現在も続いておりますことから判決に対する受け止めについては答弁は差し控えさせていただきます。

次に、防潮堤の施工不良についてでございます。防潮堤の鋼製防護壁の北側基礎部における鉄筋の高止まりにつきましては、原子力安全協定上の報告義務がある事故・故障等に該当するものでありませんが、県では日本原電から昨年の9月と10月に任意に報告を受けております。

報告では、今回の工事において当該鉄筋は設計上必要な強度を保つための十分な余裕を見て、岩盤面から深さ3.3mまでの到達を計画したものでありますが、工事の結果では当該鉄筋は約70cm高止まりし、岩盤面から深さ約2.6mとなっていることから強度評価を実施し、必要な強度を有していることを確認したことの説明を受けております。

原子力規制委員会の現地の検査官は随時、こうした報告を受けており、原子炉等規制法に基づく使用前検査においては当該報告も念頭においた上で最終的な適否の判断をしていくものと認識しております。

いずれにいたしましても、東海第二発電所の再稼働の是非につきましては、実効性ある避難計画の策定と安全性の検証にしっかりと取り組んだ上で、その結果を県民の皆様に情報提供し、県民の皆様や避難計画を策定する市町村並びに県議会のご意見を伺いながら判断してまいります。

6. 霞ヶ浦導水事業や「1県1水道」を見直し、水道施設耐震化や料金引き下げを実行することについて

最後に、水源開発と水道行政について質問いたします。大規模な自然災害の直後、最も必要となるのが水であります。

しかし、本県の市町村水道施設の耐震化は遅れています。政府が定める防災・減災、国土強靭化5か年加速化対策の目標と比べても、水道の基幹管路で目標60%に対して市町村は31.9%、配水場は70%に対して47.5%、浄水場にいたっては41%目標に対し15.4%しかありません。

ところが新年度、この市町村への耐震化交付金は5億円、補正前倒しを含めても18億円しかなく、県の上乗せはありません。一方、霞ヶ浦導水事業費はその2.5倍以上、45億5000万円も計上をしております。費用対効果のない水道の予算、導水の予算は中止して水道整備に回すべきではありませんか。知事の所見を伺います。

また、県は市町村水道の経営を一体化して「1県1水道」をめざすとし、不参加を表明した水戸市を除く市町村と検討・調査を進めています。その背景には国が基盤強化交付金の活用期限を令和16年度までと限って統合を迫るとともに、水道施設の運営権を民間事業者に長期間独占的に与える「ウォーターPPP」による官民連携を全国で225件達成するとしています。

これは水道民営化の説明方法を変えたものに過ぎませんが、県は「ウォーターPPP」まで念頭に置いているのでしょうか。県民からは「広域化するほど災害時の復旧に時間がかかる」「地域の浄水場や井戸水は閉鎖すべきではない」という意見のほか、県北地域では「統合のメリットがないのでは」と声も聞かれております。

今、県がやるべきことは県人口420万人というありえない人口想定、過大な水資源開発を見直して、市町村からの要望である料金引き下げ、契約水量の引き下げを実行することです。高い県の水を買わせるために、市町村が持つ自己水源を閉じさせるような方針は見直すよう強く求めて知事の所見を伺います。

以上で1回目の質問を終わりますが、答弁によって再質問いたします。ありがとうございます。

【知事】

霞ヶ浦導水事業を見直し、水道施設耐震化や料金引き下げを実行することについてお答えいたします。まず、霞ヶ浦導水事業と水道施設の耐震化についてでございます。霞ヶ浦導水事業は県の水道用水供給事業の重要な水源となっており、すでに県内10町村、約70万人の県民に給水しているなど本県にとって必要不可欠な事業となっていることから撤退は考えておりません。

一方で、安全・安心な水道水を安定的に供給していくためには、この度の能登半島地震のような災害への備えとして水道施設の耐震化を図る必要があると認識しております。そこで耐震化が効果的に進むよう、市町村などの水道事業者に対しては国の補助制度の適切な活用を促すとともに、国に対しては他県と連携しながら補助要件の緩和や補助率の引き上げなど制度の拡充を継続的に要望しているところであります。

次に、水道料金や契約水量の引き下げの必要性についてでございます。水道事業においては、料金収入に基づく独立採算による経営が原則とされており、施設の更新や耐震化に必要となる財源や人員の確保は喫緊の課題となっております。これらの課題を解決するためには、施設の効率的運用、経営面でのスケールメリットの創出、人材の確保などを可能とする広域連携の推進が重要であると考えております。

そこで、県や市町村の浄水場を統廃合し全体最適化を図ることで施設更新にかかる費用を低減するとともに、耐震化の費用を必要な施設に集中投資できるよう検討を進めているところでございます。

さらに広域化が進めば、国の交付金を新たに活用することが可能となり財政的に有利なほか、技術系人材の確保や組織的な対応の強化などの効果も期待されるところであります。このような広域連携に向けた検討を進める中で、水道料金や契約水量の適正化についても検討してまいります。

次に、「ウォーターPPP」の導入方針についてでございます。県といたしましては、水道は県民生活を支える重要なライフラインであり、水道サービスの維持向上は地方自治体の責務であると認識しており、水道事業経営のすべてを民間事業者に譲渡する完全民営化は考えておりません。

一方で、官民連携については単に経費削減の手段としてだけでなく、民間事業者の優れた技術や経営ノウハウを活用できるという面でも有効と考えられることから、行政が水道施設の所有権を有したまま運営権を民間事業者に設定するコンセッション方式を含む「ウォーターPPP」については他県の事例なども踏まえ導入の可否を慎重に検討していく必要があると考えております。

県といたしましては、引き続き、水道施設の耐震化や広域連携に向けた取り組みを進めることにより、水道料金の適正化や水道事業の経営基盤の強化を図ってまいります。

再質問

知事の答弁に対して再度質問をいたします。

まず政治資金についてです。知事は「これからも政治資金パーティーを開いていく」と述べました。儲かるパーティーと言わんばかりに「緑和会」の収入のほとんどがパーティー券収入に頼っております。2021年は「緑和会」の年間収入に占めるパーティー券収入は75.3%、翌年22年に至っては99.9%がパーティー券収入によるものです。

「法に基づくもの」と知事は言われましたけれども、その法を定めるのも政治家であり、今国会でこの政治資金管理団体をめぐる企業団体献金に厳しい目が注がれております。知事は「緑和会」におけるこのパーティー券収入に依存し、利益率90%と高いこの実態について適切だと認識しているのか、再度ご答弁をお願いいたします。

続いて授業料の値上げです。医療大学、看護学校、農業大学校、陶芸大学校、産業技術専門学院IT短大、6つの授業料を電気代が上がったからといって、受益者負担として値上げしていいのでしょうか。値上げの実施は来年4月の入学者ですから、まだ検討の余地はあります。人材も担い手も育成が求められている時に本来なら無償化が必要です。6つの学校で無償化にかかる予算は年間5億円です。10億円もの富裕層向け高級ホテル誘致への基金をやめるなど、予算の使い方を変えればできることです。

とりわけ本県議会が「誰もが輝く持続可能な茨城を担う人づくり調査特別委員会」が通学費や奨学金を含めて教育費の負担軽減を昨年提言したばかりです。その県議会に授業料の値上げ、同意を求めるようなことはやめていただきたい。値上げ条例を撤回することを求めて知事に再度伺います。

3点目、最後は東海第二原発についてです。先ほどの知事のご答弁で、複合災害への対応が全く具体化されていないということが分かりました。今般の能登半島地震を受けて一層困難だと考えるところですが、複合災害への具体策が入らなければ知事のいう「実効性ある避難計画」とはならないという認識か、再度ご答弁をお願いいたします 。

【知事】

江尻加那議員の再質問にお答えいたします。

政治資金規制法第8条の2で、政治資金パーティーとは対価を徴収して行われる催し物で、当該催し物の対価にかかる収入の金額から当該催し物に要する経費の金額を差し引いた残額を政治活動に支出することとされており、法第22条の8で対価の支払い等に関する制限としては、何人も1の政治資金パーティーの対価の支払いをする場合において、150万円を超えて支払いをしてはいけないとされています。

現在の政治資金規制法上、収益率についての規定はありません。従いまして、引き続き法に沿って適切に実施してまいりたいと考えております。

次に、県立医療大学、看護専門学校の授業料の値上げについての再質問にお答えいたします。県立医療大学、看護学校などの公立大学においてもですね、非課税世帯などを対象とした就学支援金制度はありますが、医療大学などの授業料については国立大学等の授業料その他の費用に関する省令に基づく標準額、コスト計算や民間の専門学校、他県の状況などを踏まえつつ、「受益者負担」の観点から物価や人件費の動向などのコスト変動の状況にかんがみ改定をすることとしたものでございます。

いずれにいたしましても、授業料減免措置などの周知を徹底し、真に支援が必要な低所得者世帯の学生に対する経済的負担の軽減を図りつつ、適正な授業料の負担を求めてまいりたいと考えております。

最後に東海第二原発の再稼働についてでございます。複合災害への対応ということでございます。 国が原子力災害時における地域ごとの緊急時対応を取りまとめる際に避難先が被災した場合の対応や道路等が通行不能になった場合の対応など、複合災害を想定した避難時の対応策についても確認することとなっております。

本県におきましても、複合災害を想定し、その上で避難計画の実効性の確保に取り組んでいるところでございます。

以上

2024年3月茨城県議会 江尻かな議員の一般質問と答弁(大要、PDF)

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