2009年6月議会で代表質問 ―雇用・保育・国保・後期高齢・就学援助・無料低額宿泊所―
2009年6月水戸市議会定例会 代表質問 江尻加那 2009.6.16
日本共産党水戸市議団の江尻加那です。通告に従い代表質問を行います。
項目
1.雇用・暮らし対策について
経済危機による雇用破壊と、社会保障の切り下げで生活不安がひろがり、市民の暮らしは一段と厳しさを増しています。とりわけ、社会的に弱い立場の方々を直撃しています。市民の福祉や暮らしを守るという、自治体本来の役割を発揮することを強く求めて、市長の姿勢を伺います。
(1)雇用創出事業について
国の補正予算の中に、地方公共団体への配慮として、不十分ながら雇用や暮らしの対策に自治体が活用できる内容も含まれており、これを活用して自治体が直接雇用を生み出し、就労の機会を増やすことが重要です。
今回、障害者授産施設の販路拡大や、救急救命・AEDの講習拡大等のために、計12人を雇用するとされていますが、さらに拡充するよう求めます。地域の事業所や施設等に知恵や提案をいただきながら、雇用人数や分野を拡大することです。
あわせて、当初予算にあげられていた失業者114人の雇用事業について、これまでの進捗状況と雇用人数をお答えください。
(2)地域活性化交付金の活用について
2点目に、政府が1兆円を交付する地域活性化・経済危機対策臨時交付金の、水戸市への限度額は7億7千万円とされています。今議会では、そのうち3億5,136万円を予算化し、市街地整備や公園建設、学校用パソコンの整備等を進めるとしています。
今後、残り約4億2千万円を活用して、遅れている学校や住宅の耐震化、市民要望の多い生活道路や歩道の整備・補修、保育所の新増設、さらには住宅リフォーム助成制度の創設など、地元中小業者への経済効果・雇用効果が高い事業を実施するよう求めますが、いかがでしょうか。
(3)解雇・離職状況の把握と再就職支援について
雇用の維持が一番の景気対策であり、市が労働局や県などと連携して雇用の維持確保に努力することが重要です。
昨年秋からの派遣切りは県内でも深刻です。水戸市周辺でも、岩間キャノン化成工場や、ひたちなか市のコマツや日製関連の工場で、多くの労働者が雇い止めされています。
こうした事態を受け、日本共産党茨城県委員会は今月3日、キャノン化成の派遣切りや労基法違反の疑いについて茨城労働局に調査・指導を求める申し入れを行い、私も参加しました。
労働局の調査によると、昨年10月から今年6月までの非正規労働者の雇い止めは、県内で63事業所、4,660人にのぼっています。実際はさらに多く人が職を失っているとのことですが、事業所名等の具体的内容は自治体に知らされているのでしょうか。
市が実施する緊急雇用は、原則ハローワークを通じて求人することとなっていますが、職を求める人で水戸ハローワークは連日大変な混雑です。そこで、以前、市役所1階ロビーで行っていた職業紹介や、南町の空き店舗を活用したジョブセンター等を再度開設できるよう労働局に申し入れ、相談窓口を増やすことが急務と考えますが、お答えください。
さらに、市内の事業所や企業に対し、事業規模の縮小が必要な場合でも、できるかぎり雇用の確保に努めるよう市として要請する機会をもつ必要があるのではないでしょうか。市長の考えを伺います。
【市長答弁要旨】
日本共産党水戸市議団を代表されましての江尻議員の雇用・暮らし対策のご質問にお答えいたします。
まず、緊急雇用創出事業の進捗状況と雇用人数につきましては、現在、消防本部におけるOAシステム整備事業において2人を雇用したところであり、順次、事業を開始し、9月末までに12事業111人、12月末までには、あわせて13事業114人の雇用を創出する予定でございます。
次に、ふるさと雇用再生特別基金事業につきましては、今回、補正予算として、農業、福祉分野など5事業、3,276万円を計上しているところでありますが、本事業は、3か年の事業継続が要件となっておりますので、今後、雇用人員等につきましては、委託先との十分な協議を行ってまいります。
さらに、国の平成21年度補正予算成立に伴い、緊急雇用創・出事業につきましては、今後、県において、本市への追加配分額が決定されると伺っておりますので本市といたしましても、多くの分野で活用できるよう、事業計画を取りまとめ、積極的に雇用の創出に努めてまいりたいと考えております。
次に、地域活性化・経済危機対策臨時交付金についてお答えいたします。
国の危機対策の補正予算には、地方が経済危機対策を推進するための財源として、ご質問の地域活性化・経済危機対策臨時交付金が創設されたところでございます。この交付金は、補助事業の地方負担のみならず、地方の実情に応じたきめ細かな単独事業にも活用できるものであり、本定例会に提案した補正予算においては、投資的事業のほか、教育用コンピューター整備事業に活用することとしました。
また、経済危機対策臨時交付金の交付見込額は、約7億7千万円でありますが、今回の補正予算で措置した約3億5千万円を差し引いた約4億2千万円につきましては、当交付金の目的が地球温暖化対策やその他将来に向けた地域の実情に応じた地域活性化等に資する事業となっていることを踏まえ、今後、十分調整し、議会にお諮りしてまいります。
次に、解雇・離職状況の把握と再就職支援のご質問につきましては、本市として「ハローワーク水戸」 及びハローワーク水戸管内の7市町村等で構成する「雇用対策推進協議会」 などから雇用情報の収集を毎月行うとともに、市独自の緊急雇用実態調査として、一定規模以上の市内製造業を対象とした調査を、本年1月と4月の2回実施したところであります。 4月の結果につきましては、対象企業の従業員総数5,500人のうち、3月末までに雇止め等を行った人数は42人、さらに、状況によって雇止め等をする可能性がある人数は43人という回答でありました。
このような状況から、本市といたしましては、引き続きハローワーク水戸や茨城県など関係機関との連携により、「大好きいばらき就職面接会」や「再就職準備セミナー」などを開催するとともに、「広報みと」や市ホームページの活用、「ハローワーク求人情報」の配布により、雇用情報の提供を積極的に行い、雇用対策に努めてまいります。
2.保育行政について
(1)保育所施設整備計画の拡充・前倒しを
次に、保育所の定員増を求めて質問いたします。
私は3月議会で、水戸市の保育所待機児童が3月1日で408人と過去最高になったにもかかわらず、今年度、保育所増設のための予算が1か所もないのは問題だと質問しました。その後、4月、5月と昨年の同時期を大きく上回る数で待機児童は増え続け、6月1日時点で、すでに208人にのぼっています。
私のところに相談に来られた方が、「待機児童が多い水戸市で子どもを産んだ自分が悪かったのか・・・」と涙ぐまれたのを見て、本当にショックで心が痛みました。
子どもを生んだお母さんにこんな思いをさせてはならないと、市長は思っているでしょうか。このまま1年、何もしないで事態を放置すれば、待機児童は増えるばかりです。
国の経済危機対策臨時交付金でも、安心こども基金でも、保育所整備ができるとされています。3か年実施計画にある市立河和田保育所の増改築を前倒しするとともに、民間保育園の新設計画を拡充し、早急に具体化を図るよう求めますが、お答えください。
(2)入所希望者を受け入れる緊急対策について
保育所の新増設を基本としながら、今、1人でも多くの子どもが保育を受けられるために何ができるのか考え、実行していただきたいと思います。
そこで提案です。一つは、公立保育所の保育士を増やして、施設基準を満たす範囲で定員を拡大すれば、どれだけ増やせるのか。昨年度、市は保育士を6名増やして1~2歳児の受け入れを拡大させましたが、今年度もさらに増やすべきです。さらに、民間保育園で受け入れ拡大のために保育士を増員した場合の人件費補助を求めます。
2つ目は、無認可保育施設の利用者への保育料補助です。県の資料によると、水戸市内に無認可施設は21ヶ所あり、約500人の子どもが利用しています。中には、保育所に入れないために無認可施設に預けている方も多く、高い保育料の不公平感をなくすための軽減策を実施すべきです。
3つ目は、保育ママ(家庭福祉員)制度の実施です。保育の資格を持つ人、経験のある方が、自分の家庭で3歳未満の子どもを3人まで預かる事業ですが、水戸市では現在1人いるだけです。待機児童のうち1~2歳児が多いことを考えると、水戸市でも保育ママ制度の必要性が高まってきていると感じますが、増やす考えがあるのか伺います。
【市長答弁要旨】
次に, 保育行政についてお答えいたします。
子どもたちを健やかに生み育てることができる環境をつくっていくうえで待機児童の解消は重要な課題と認識しております。
認可保育所の整備による待機児童の解消についてですが、保育環境の改善や待機児童の解消に向け、これまで年次的な保育所の創設や増改築などにより定員増に努めてまいりましたが、ご指摘のとおり潜在的な需要が喚起されるとともに、未曾有の不景気により就労を希望する女性が多くなり、多くの待機児童が発生している状況にあります。このことは私どもも重く受け止めているところであります。本市といたしましても、これらに対する早急な対応が求められていることから、先般、安心こども基金の活用について県との協議を開始したところで、積極的に取り入れてまいりたいと考え、何とか前倒しできないかと考えております。
厳しい財政状況により施設整備が困難な中、待機児童の解消を図るため、平成20年度から公立保育所6か所において保育士を加配し、受け入れ体制を整えており、 一時保育についても、公立保育所においては11か所、民間保育所においては本年度1か所増設し19か所で、一時預かり事業を実施し、育事業の充実に努めているところであります。
また、認可外保育施設の保育料の負担軽減につきましては、今後の研究課題とさせていただきます。
次に、待機児童の中で特に割合の多い低年齢児対策としての家庭的保育事業(いわゆる保育ママ)の活用についてでありますが、本市といたしましては、待機児童の解消や多樣なる保育ニーズに応えるため、この事業は有効であると考えております。事業を進めるうえで研修等が必要となることから、今後策定を進める次世代育成行動計画の後期実施計画において、検討を進めてまいりたいと考えております。
3.国保行政について
(1)短期保険証の交付を激増させたことについて
次に、国民健康保険行政について質問します。
国保は、失業者や年金生活者など所得のない人、少ない人の加入割合が増え、社会的・経済的弱者の医療を支える大事な役割を果たしています。
ところが、水戸市は昨年、今年と2年連続で国保税を値上げして7億2千万円の市民負担を増やし、払いきれない世帯は全体の3割を超えています。
一方、国保税滞納世帯への制裁措置である短期保険証を、昨年の5.6倍―7,210世帯に激増させました。増えた理由は、これまでは50万円以上滞納がある場合に交付していたものを、今年度は金額に関係なく5回以上滞納があった世帯に交付したからです。 低所得世帯にまで罰則が強められ、国保加入世帯の6世帯に1世帯が短期保険証となりました。なぜ、交付基準を変えて罰則を厳しくしたのか、お答えください。
(2)限度額認定証および高額療養費の貸付制度について
また、短期保険証は期間が短いだけでなく、入院時の医療費負担が軽くなる限度額認定証や、高額医療費の貸付制度を受けられません。条件を緩和して、必要に応じて短期保険証でも適用するよう求めますが、見解を伺います。
(3)保険証の「留め置き」について
2点目に、保険証の留め置きについて伺います。留め置きとは、国保税滞納者に対して、市役所の窓口に保険証を留め置いて、国保税の分納誓約書に応じたら渡すというもので、事実上、保険証を交付していません。こうした留め置きによる実質無保険者が、5月12日時点で529世帯もありました。保険証がなくて医者にかかれず、死亡する例が全国で生まれています。共産党市議団は5月22日に、加藤市長に対し、保険証をただちに交付するよう申し入れましたが、その後、交付したのかどうかお答えください。
(4)保険証がない90人の子どもについて
中でも問題なのは、保険証留め置き世帯のうち、63世帯に中学生以下の子どもが90人もいることです。
昨年末に、国会で国民健康保険法が全会一致で改正され、今年4月から、15歳未満の児童には、親に保険料の未納があっても、無条件で保険証が渡されることになりました。「無保険の子どもをなくそう」という訴えが広がり、「滞納している親の責任」として保険証を取り上げてきた政府の姿勢を正した大きな成果です。
にもかかわらず、4月以降、水戸市が90人の子どもに保険証を渡さなかったのは大問題であり、法の趣旨に反すると私は考えますが、市長の見解をお示しください。
あわせて教育長に伺います。市内の中学校では5月に修学旅行、6月には船中泊が相次いで行われており、その際、生徒に保険証の写しを持っていくよう指導していると聞きますが、保険証がない子どもをどう把握し、対応しているのかお答えください。
(5)新型インフルエンザへの緊急対応について
次に、資格証明書についてですが、水戸市は今年度51世帯に交付しました。資格証明書で医者にかかると、医療費を全額負担しなければならず、受診抑制による新型インフルエンザの感染拡大を危惧した厚生労働省は、発熱外来については3割負担とする緊急策をとりました。
先に感染が広がった大阪府の堺市や豊中市では、資格証明書を交付した世帯全部に、滞納状況を問わず無条件で保険証を交付する緊急策をとりました。警戒基準がフェーズ6に引き上げられ、現在も日本国内での感染は止まっていません。水戸市でも資格証明書世帯に保険証を交付するよう求めますが、見解を伺います。
また、有効期間が6ヶ月しかない短期保険証は9月末で期限が切れます。ちょうどインフルエンザの第2波の流行が危惧される時期と重なりますが、4月の切り替え時と同じように、大量の短期保険証を市役所に留め置けば、また無保険世帯が増えてしまいます。切れ目なく保険証を交付するよう求めますが、市長の見解を伺います。
【市長答弁要旨】 次に、国保行政について、お答えいたします。
まず、平成21年度の短期保険証の交付についてでありますが、短期保険証につきましては、資格証明書発行の前段として、滞納者との接触の機会を設け、その際に納付指導を行うことを目的として交付しているものであります。
平成20年度の国保税の収納率は、景気の低迷等の影響により、前年度に比較し、さらに低下することが見込まれておりますので、納付指導強化のため、平成21年度は短期保険証を例年にもまして増やさざるを得ない状況となったところでございます。
また、窓口交付扱いとしておりました世帯の方の保険証につきましては、6月4日に、既に郵送により交付したところですが、今後の短期保険証の更新時におきましては、納付相談を実施するために、原則として窓口交付の取扱いとなります。ただし、この度の新型インフルエンザが流行したような場合は、発熱外来を設置する医療機関等との連携を図るなど、状況に応じて適切な対応に努めてまいります。
また、限度額適用認定証及び高額療養費の貸付制度についてでありますが、国からの通知により、限度額適用認定証については、特別の事情がある場合を除き、国保税の滞納がないことが交付の要件とされております。このようなことから、限度額適用認定証の交付及び高額療養費の貸付につきましては、交付申請者等の個々の事情等を把握しながら判断してまいります。
【教育長答弁要旨】
江尻議員の代表質問のうち、国保行政についての保険証がない90人の子どもにつきましてお答えいたします。
学校においては、日常の学校生活で児童生徒が診察を受ける必要が生じた際には、保険証の有無に係わらず、保護者と連携し状況に応じて、児童生徒の健康安全を最優先に対応しております。
また、修学旅行や船中泊を伴う自然教室など宿泊を伴う行事では、個々の児童生徒に保険証のコピーを持参するよう指導しており、保険証のない児童生徒が怪我をしたり病気にかかったりした際にも、必要に応じて病院に連れて行き診察を受けるなど、速やかな対応を図っております。
保険証の有無の実態につきましては、現在では、短期保険証が交付されたことにより、全ての児童生徒が保険証を有していると理解しております。
4.後期高齢者医療制度について
次に、実施から1年を迎えた後期高齢者医療制度について質問します。高齢者であっても保険料を1年間滞納すると資格証明書の対象とされています。
そもそも後期高齢者医療制度は、高齢者の医療費抑制を目的に導入され、資格証明書は収納対策を理由とした罰則です。日本共産党は、制度の廃止を求めるとともに、水戸市議会や茨城県広域連合議会において、再三、資格証明書を発行しないよう求めてきました。
県広域連合は、各市町村の意見を聞いた上で、保険証切替え時となる8月に交付するとしていますが、水戸市はどのような考えなのか。資格証明書はもちろん、短期保険証ではなく、高齢者全員に正規保険証を交付するよう求めますが、市長の考えをお答えください。
【市長答弁要旨】
次に、後期高齢者医療制度についてお答えいたします。
後期高齢者の方の資格証明書及び短期保険証の交付につきましては、厚生労働省の考え方を受け、広域連合が市町村との協議により定める、交付事務の統一的な運用基準に基づき、取り扱うこととされております。
5.就学援助制度について
次に、小学校・中学校に通う子どもがいる世帯に対する、学用品や給食費、修学旅行費を補助する就学援助制度の内容改善を求めて質問します。
昨年度、水戸市の小・中学校で就学援助を受けた子どもは1,561人で、児童全体の7.2%であり、その割合は全国平均の半分にとどまっています。水戸市の子育て家庭にゆとりがあるというのではなく、就学援助が利用しづらいことが要因と思われます。そこで、援助率が高い自治体の取り組みを参考にして内容の改善を求めます。
まずは、対象となる世帯の所得基準を示して、だれにもわかりやすい目安を示すことです。現在、保護者に配られているチラシには、「生活保護世帯に準ずる程度に困窮していること」と書かれていますが、これではためらってしまいます。
また、援助費をわざわざ学校にとりに行かなくてすむよう口座振り込みにしたり、認定の際の民生委員の調査をなくして決定までの時間を短縮するなどの改善を求めます。
子どもの貧困が叫ばれる中、給食費を滞納したら給食提供を中止する旨の申込書を親に書かせるという対応ではなく、広く就学援助を活用できるようにすること。学校でも子どもの貧困に敏感に心を寄せ対応できる、ゆとりある教育環境をめざしていただきたいと切に願います。
【教育長答弁要旨】
次に、就学援助制度についてお答えいたします。
就学援助制度につきましては、財源となる国の補助金が平成18年度から三位一体改革により廃止され、地方交付税を算定する際の基準財政需要額に算入されることになりました。
これを受けて、独自に認定基準を設ける自治体が見られるようになり、水戸市においても、市独自の認定基準の策定に向けて検討を進めているところです。
認定基準の策定に当たりましては、生活保護世帯の所得基準をもとに、一定割合の所得基準の世帯を対象とするだけでなく、保護者の就労状況や家族構成、生活実態などを総合的に判断する認定基準とし、経済的理由から児童生徒の就学が困難にならないように配慮してまいりたいと考えております。
また、本制度の周知につきましては、「広報みと」やホームページに掲載するほか、各学校における入学説明会や保護者会などの機会を捉え、保護者に対して説明を行っております。
今後においても、就学援助制度の趣旨に基づき、適切な運用に努めてまいります。
6.無料低額宿泊所について
(1)「あけぼの園」に対する厳正な措置を
次に、無料低額宿泊所「あけぼの園」に対する厳正な措置を求めて質問します。
無料低額宿泊所は、生活困窮者やホームレスに無料または低額で居室を提供し、就労や自立を支援する民間施設で、入所者の大部分は生活保護を受けています。全国で保護費のピンはねや入所者の権利侵害が行われ、貧困ビジネスとして社会問題化しています。
水戸市泉町にある「あけぼの園」について、共産党市議団が、施設や運営や保護費の支給実態を調査した結果、多くの問題が明らかになってきました。
元雑居ビルの各部屋にボードで仕切ったスペースが51室。県の指針4.3㎡を下回る2畳程度の狭いスペースにマットレス1個。出入口にドアはなくカーテンのみです。共同の浴室とシャワーは1つずつ。家賃・水光熱費・食事代で月約8万円が保護費から引かれ、残り3万円も園長が管理しています。園長は必要な資格を持たず、研修も受けていません。避難訓練も行われておりません。
これは国や県の指針を満たしておらず、本来であれば、社会福祉法にもとづいて経営停止を命じられてしかるべき施設だと私は思いますが、市長はあけぼの園に対し、どのような認識をお持ちなのか伺います。
ア.新規に入所させないこと
このような施設に、市は 過去2年間で53人も入所させてきました。現在も40人が入所しており、全員水戸市の生活保護受給者です。
共産党市議団は今年の3月議会でも入所させないよう求め、水戸生活と健康を守る会も4月22日、市長に申し入れました。にもかかわらず、5月27日、また新たに1人の方を入所させたのは、問題の認識が甘いと言わざるを得ません。入所させないよう再度求めますが、市長の考えをお聞かせ下さい。
イ.入所者に自立支援を行うこと
そして、現在入所する40名の方への自立支援を行うことです。本来、自立支援は施設の役目ですが、半数以上の方が入所1年以上の長期入所となったままです。
無料低額宿泊所に関する国の指針では、市は一般賃貸住宅への転居等自立の支援に努めることとされています。あけぼの園に支払うのと同じ、ひと月3万5千円あれば、民間アパートを借りられます。アパートの入居手続きなど、市が責任を持って一人ひとりの支援計画をつくり、施設からの退所、自立支援を行うよう求めますが対応を伺います。
ウ.保護費の支給実態を調査し、是正すること
開設以来の過去2年間、保護費を受給者本人に渡さず、園長に一括して渡していた市の対応は、生活保護法第31条―本人支給の原則からみて不適正であり、厚生労働省からの指導を受けて今年5月から本人支給に是正されました。しかし、実態は変わっていません。
本人が受け取った約11万円の保護費から8万円を施設が徴収し、残り3万円も園の管理です。その全員分を、園長はこれまで自分の口座に入れていましたが、国や県の指導を受けて、4月19日にあけぼの園名義の口座をつくって移し替えました。その際250万円が入金され、その後、1日や2日おきに10万、15万が引き出されていますが、園の金銭管理が適切になされているのかどうか、市はどのように確認しているのか。帳簿や通帳を調査し、問題がある場合は是正を図ることです。
そもそも、施設がある泉町2丁目118番地の1と2の登記簿によると、市税の滞納で土地と建物が茨城租税債権管理機構に04年と05年の2度にわたって差し押さえられ、債権者は水戸市です。その上、施設は上下水道料金を長期に滞納していました。市税滞納差し押さえられている土地と建物に、市の生活保護受給者を大勢入所させて高い高熱水費を含む入所費を取りながら、上下水道料金を払わないというのは業務上横領の疑いもあると私は考えますが、市長はどう対処してきたのか伺います。
(2)県に対し、無料定額宿泊所に関する指針の改正を働きかけること
茨城県の無料定額宿泊所に関する指針は、国や他の都道府県の指針と比べても居室や浴室の基準、防災や罰則規定等の内容が甘く、具体性に欠けており、指針の早期改正が必要です。共産党市議団は5月26日、大内久美子県議とともに、橋本昌知事に対し、指針の改正を求め申し入れました。今月5日には加藤市長に対し、水戸市としても県に早期改正を働きかけることを申し入れましたが、市長の見解を伺います。
(3)公的な一時保護所や自立支援センターを設置すること
最後に、公的な一時保護所や自立支援のための施設を設置することです。仕事と同時に住む場所まで失う人が後を絶たず、アパート等を借りられるようになるまでの一時保護所を、県と市町村が一体となって設置する必要性が高まっています。住居の確保と同時に、健康を回復し、就労して自立できるように支援するためのセンターも必要となっており、市の対応を伺います。
以上で質問を終わりますが、答弁によりましては再度質問いたします。
【市長答弁要旨】
次に、無料低額宿泊所についてお答えいたします。
国は、ホームレス等居住がない者に対し、状況に応じ、無料低額宿泊所に一時保護し、その後、適切な支援を行うこととしております。「あけぼの園」も、無料低額宿泊所として県に届出をしている施設であります。
入所者への自立支援につきましては、個人個人の処遇状況を把握し、居住生活への移行や自立に向けた支援援助を今後も続けてまいります。
次に、茨城県における無料低額宿泊所に関する指針の改正につきましては、今後とも、県と十分協議して参りたいと考えております。
公立の施設の設置につきましては、現在、計画等はございませんので、ご理解をいただきたいと思います。
【保健福祉部長答弁要旨】
ホームレス等居住が無い者に対する一時保護所は、市内に養護老人ホーム、救護施設、婦人相談所、母子の家等があり、緊急時には十分対応しております。しかしながら、いずれにも入所できない場合には、状況に応じて、本人の意思を確認したうえで、無料低額宿泊所に一時保護しておりますので、ご理解をいただきたいと思います。
また、保護費の支給につきましては、生活費等、国の基準に従い、引き続き、適正に支給してまいります。
保護費の支給方法につきましては、厚生労働省の指示を受け、本年5月より本人に直接支給したところでございます。さらに金銭の管理につきましても、個人で管理するよう指導いたしました。今後とも、適正な支給に努めてまいりたいと考えております。