2008年6月議会 教育行政について5項目質問しました
2008年6月水戸市議会定例会 一般質問 江尻加那 2008.6.17
項目
1.学校給食について
(1)食料品、原材料費値上げの影響について
はじめに、学校給食について伺います。天井知らずに続くガソリン代の高騰や食品、日用品の値上がりが、市民生活を大きく圧迫しています。
行政への影響も例外ではなく、水戸市が所有する約500台の車の燃料代、1ℓ当たりの契約単価は、昨年平均136.5円だったのが現在は168円で、このままいくと年間4千万円以上増える値上がりです。
学校給食においても食材料の値上げや品薄が大きな影響をもたらしています。
私は先日、小学校の栄養士の先生にお話を伺ってきました。緊急の対応として、みかんをSサイズからSSサイズに切り替えたり、りんごを4分の1個から8分の1個に減らしたりと、果物やデザートでやりくりしているものの、主食やおかずをこれまで通り維持していくのは限界だとおっしゃっていました。
学校給食は保護者が払う毎月の給食費で材料費がまかなわれ、小学校では1食あたり240円の設定です。
しかし、この小学校では、4月は1食平均265円かかったとのことでした。4月は前半に春休みがあって、給食回数が15回と少なかったため何とかなりましたが、今後、栄養素やカロリーを基準値以上確保することはもちろん、食の大切さや楽しさを感じられる学校給食を維持していくには、食材費を増やさないとやっていけないと強い危機感を持っていました。
教育委員会では、今年5月に一部の小中学校に調査を実施し、食材費値上がりの影響を調べましたが、どのような調査内容だったのか、また、市は結果をどのように受け止めて、今後の対応を図る考えなのか伺います。
(2)地産地消の取り組み
2点目に、地元産の食材活用についてです。先ほどの栄養士の先生も、コストを抑えながら安全でおいしく栄養のある給食づくりには、地産地消の継続的な取り組みが欠かせないとおっしゃっていました。
水戸市では、例えば市内2つの小学校で、先日市長も試食されたという水戸ブランドの柔甘(やわらか)ねぎをJA水戸と直接契約して安い価格で学校給食に利用するなど、各学校での取り組みが進められています。
しかし、ねぎをはじめ、水戸市が作付け面積で県内3位以上のかぶやブロッコリーであっても、学校給食での市内産の活用が半分に達していません。地産地消を推進するにあたっての課題は何なのか。また、外国産の野菜が使われている実態はあるのかなど、現状と取り組み方針を伺います。
(3)食材料費補助実施について
3点目に、地産地消に取り組むと同時に、今の食材費高騰に対し、給食費を値上げするのではなく、市の補助を緊急に実施するよう求めますが、いかがでしょうか。
水戸市の給食費保護者負担は県内で一番高く、小学校の月4,300円は県平均額を400円上回っています。給食費を安く抑えている自治体のほとんどが市町村独自に補助を実施しており、その数は県内19市町村になります。
お隣の城里町では児童1人当たり月々約700円にあたる食材費を町が負担し、茨城町や笠間市、小美玉市でも補助が実施されていますが、水戸市ではこうした独自の補助が1円もありません。
水戸市は3年前に給食費を値上げしたばかりであり、これ以上値上げすることがないよう、また、給食の質や回数が低下することがないよう、子どもの成長期を支えるためにも補助を実施する考えがあるのか見解を伺います。
(4)給食申込制度と就学援助制度について
次に、水戸市が今年度から実施した学校給食申込制度と、就学援助制度の活用について伺います。市は、給食費未納への対応として、全児童・生徒の保護者に学校給食申込書の提出を求めました。
滞納の状況によっては給食の提供を中止するとの内容に対し、私ども日本共産党水戸市議団は、申込制度をやめるよう申し入れると同時に、経済的理由で払えない家庭に対しては、給食費が全額補助される就学援助制度を広く適用するなどの教育的配慮を求めてきました。
そこで、学校給食申込制度を実施した後の状況と、給食費未納家庭に対し、どれだけ就学援助を活用して対応を図ったのかお答えください。
[教育次長 答弁]
江尻議員の一般質問のうち、学校給食についてお答えいたします。
世界的な原油・小麦価格等の高騰による、学校給食における食材費への影響について、今年4月の状況を一部の学校を対象に調査したところですが、使用食材のうち値上がり率の高いものは、小麦製品であるスパゲティやチーズ等の乳製品、サラダ油などが挙げられております。具体的な値上がりの状況につきましては、献立によるばらつきなどがあり、まだ十分に把握できておりませんが、これまでのところ、献立の工夫等により、安全・安心な食材を使用し、栄養を確保した給食の提供を行っているところです。今後におきましては、情勢を見極め、適切に対応してまいります。
なお、食材費の公費負担につきましては、学校給食法に基づき、食材費は保護者負担としておりますのでご理解願います。
次に、地産地消の取り組みにつきましては、生産者の顔が見える地場産の食材使用割合の増加に努めているところですが、今後におきましても、国内産では調達が困難な一部の食材を除き、生産者や農協関係団体等との連携を強めながら、地産地消を推進してまいります。
次に、学校給食費の未納解消に向け、今年度から新たに保護者から提出いただくこととした「学校給食申込書」につきましては、おかげさまで保護者の皆様の御理解をいただき、99.9%の提出率となっております。未提出の理由の主なものは、長期欠席や食物アレルギー等により給食の提供を受けないことによるものです。ごく一部ではありますが、経済的な理由がないにもかかわらず給食費を納めない保護者がなくなるよう、「学校給食申込書」を活用してまいります。また、経済的に困窮している家庭に対しましては、今後も就学援助制度を活用してまいります。
2.教育費における公費と私費の負担区分について
次に、教育にかかる費用の中で、公費負担と保護者が負担する私費の区分について伺います。保護者は給食費以外にも、毎月の学級費や修学旅行の積立金、体操着や上履き、ピアニカや絵の具・習字のセットなど、いろいろ出費がかさみます。
さらに、PTAや教育後援会、手をつなぐ親の会など、様々な形で教育の充実や環境整備に取り組み、その費用を負担しています。こうした費用は私費として区分され、市の調査によると、PTAや教育後援会の会計のうち学校運営のために支出された額は、18年度、全小中学校合わせて年間6,773万円にのぼっています。
その使い道についていくつか調べたところ、中には本来は市の教育予算できちんと整備すべきと思われるものが多く見受けられました。
ある小学校では、教育後援会の会計で、1年生から3年生までの教室のカーテンを新しく取り換えたり、教育相談室のテーブルやいすを整備したり、体育で使う玉入れのかごやマットを買ったり、トイレのスリッパを買ったりと挙げればきりがありません。
こうした背景に、市の学校運営に対する予算削減があるのではないでしょうか。今年度の学校運営関係の需要費は、3年前と比べると、小中学校合わせて3,558万円の減額です。小学校3校分の需要費が減らされたことになります。
本来公費で賄うべきものを私費が肩代わりするような現状は改善すべきと考えますが、市の見解をお答え下さい。
[教育次長 答弁]
教育費における公費と私費の負担区分についてお答えします。
学校を単位として組織されているPTAや学校後援会等の関係団体については、学校、家庭、地域が一体となって、学校に通う子どもたちが健全に成長していくことを願い、地域における社会教育活動を展開するとともに、子どもたちの生活の多くを占める学校生活が魅力あふれるものとなるよう、相互連携のもと、協力・支援していただく位置づけと考えております。
学校運営に要する経費の公費による負担と私費による負担の区分については、学校生活を送るうえで必要となり学級・学年・学校単位で共用するものにかかる経費は、公費による負担とし、児童生徒の所有となるものや教育活動の結果として直接的な利益が児童生徒に還元されるものは、私費による負担とする区分により、公費の効率的な執行及び運用の適正化に努めております。
その中にあって、本来公費負担とすべきものを関係団体から提供されているケースがあるとのご指摘でありますが、年々厳しさを増す財政状況の中、そのことが私費での対応につながることのないよう、学校現場の状況を精査し、公費負担にかかる経費の予算確保に努めております。また、毎年実施される地方教育費調査のなかで、各学校の私費の状況を適切に把握し、公費負担とすべきものについては、提供を受けた経緯を踏まえながら、公費負担の適正化を指導徹底してまいります。
今後とも、公費・私費の負担区分の原則のもと、子どもたちが楽しく充実した学校生活が送れるよう、関係団体等との協働・連携により、創意を凝らした学校運営の適正化を図ってまいります。
3.新学習指導要領について
次に、今年3月に国が示した新学習指導要領について質問します。
新学期が始まったばかりの4月、学校を通じて各家庭に文部科学省のパンフレットがくばられました。表紙に「生きる力」と書かれた小さなパンフレットですが、そこには「平成21年4月から(すなわち来年度から)、幼稚園、小学校、中学校で、新しい教育内容がスタートします」と書かれています。
改定の主な中身は、30年ぶりに授業時間を増加し、学習内容も増やされます。週当たりの授業時間は小学1・2年生で週2時間、3年生~6年生と中学で週1時間増やすとしています。政府は、この間のゆとり教育が学力低下を招いたという判断ですが、どうやって授業時間を確保するのか大きな課題であり、市の認識を伺います。
すでに、水戸市の小・中学校では、夏休みを短縮するなどして授業日数を年間5日間多くし、特区による英会話教育のために授業時間は週1時間、年間35時間増やしています。 そのため、小学生になったばかりの1年生でも週5日のうち5時間目まである日が4日間もあります。「夕飯前には疲れて寝てしまう」「金曜日が終わるとぐったりしている」といった声が保護者から出されています。
水戸市はすでに週1時間多くしていますが、さらに来年度から1時間増やすのでしょうか。ますます子どもの負担になる、ゆとりがなくなるのではないかと心配されますが、見解を伺います。また、教育内容の変更についても検討状況をお答えください。
[教育次長 答弁]
新学習指導要領についてお答えします。
新学習指導要領では、総授業時数や指導内容の増加が示されましたが、本市においては、既に平成16年度から、英会話特区事業の実施に伴う、国語科や算数科の指導の充実も含めたカリキュラム編成のための週当たりの授業時数の増加や、長期休業日の短縮等により、総授業時数を増やしております。今回の改訂は、本市の目指す方向と趣旨を同じくするものであり、これまでの取り組みの成果が一層生かされるものと考えます。特に、外国語教育においては、他市町村に先立って、英語指導助手を小学校へ計画的に配置し、実践を積み重ねてまいりました。今後は、指導や評価等内容面で、さらに充実を図ってまいります。
なお、移行期間において、小学校低学年の授業時数を現在より増やして先行実施するのか、現状の時数で実施するのかについては、水戸市学校教育改革推進協議会の意見を取り入れながら検討していく予定です。
新しい教育課程につきましては、決定次第、学校を通して保護者の方々に周知してまいります。
4.県の小中学校統合指針に対する市の考えについて
次に、小中学校の統合に向けた県教育委員会の指針について、市の考えを伺います。
公立学校の適正規模について、小学校で12クラス以上、中学校で9クラス以上とする県独自の指針が4月に公表され、保護者や地域住民に不安が広がっています。県は教育費を削減するねらいと言わざるを得ません。
この指針に照らせば、水戸市の小学校34校のうち13校が、中学校では16校のうち3校が統合の検討対象となってしまいます。
水戸市でも2年前に、園児数が20人を下回る5つの幼稚園を廃園にしてしまいましたが、数で線引きすべき問題ではありません。小中学校の設置は、学校を取り巻く地域の様々な事情を考慮して判断すべき事柄であり、先に統廃合ありき県の方針は受け入れられるものではありません。
小規模校ならではのよさや、特色ある学校づくりについて、どのように評価しているのでしょうか。市の見解を伺います。
[教育次長 答弁]
県の小中学校統合指針に対する市の考え方についてお答えいたします。
本年4月に、茨城県は、公立小・中学校の適正規模についての指針を策定しました。学校は、児童生徒の社会性の育成及び互いに切磋琢磨する場として一定の規模が必要でありますが、急激な少子化の進行に伴い、茨城県内の小・中学校において学校の小規模化や複式学級が増加しており、今後の人口推計からもその傾向は加速していくものと思われます。この指針は、このような状況を踏まえ、市町村が小・中学校の適正規模や適正配置に向けた取り組みを検討する中で、県として望ましい適正規模の基準を提示したものであります。
本市の小・中学校を、県の指針に照らしますと、平成20年5月1日現在、市立小学校13校、市立中学校3校が適正規模の基準を満たしていないことになります。しかしながら、小・中学校の適正配置に伴う統合を考える際には、保護者や地域住民の皆様の感情に配慮することはもちろん、通学区域の広域化に伴う児童生徒へ与える影響、各学校で行われている地域との密接な関係による教育活動への影響、学区を単位とした地域コミュニティ活動へ影響等についても、十分配慮する必要があります。
今後の協議の進め方につきましては、県の指針には具体的な期限等は設けられていないものの、児童生徒のより良い教育環境の確保を図ることは重要であることから、保護者や地域住民の皆様の意見等を十分配慮しながら、学区の見直しや小中一貫教育の研究等、幅広い観点から、検討してまいりたいと考えております。
5.30人以下学級の実施について
次に、幼稚園を含め、水戸市の小学校、中学校での30以下学級の実施を求めて質問します。先ほど述べた県の統合指針の対象校となっている学校の中でも、1クラスが30人を超える学級がたくさんあります。
水戸市全体では、小学校で30人を超える学級は全体の60%、287クラス。中学校では93%、177クラスあります。
また、水戸市立幼稚園においても、30人を超えるクラスが見川幼稚園や笠原幼稚園、吉田が丘幼稚園など各幼稚園で9クラスあります。
同じ4・5歳児であっても、保育園の基準は子ども30人に1人の先生が最低限必要とされていますが、幼稚園の国基準はいまだに35人です。水戸市の幼稚園教育の特色と位置づけ、市独自に30人の学級編成を実施してはいかがかと考えますが、見解を伺います。
子どもたちの発達や学力を伸ばすには、教師が子どもと向き合う時間を確保し、どの子にもきめ細かな指導ができるようにすることです。
学力世界一で注目をあつめるフィンランドが24人以下学級に取り組むなど、少人数学級の流れはさらに広がっています。文部科学省が全国一斉学力テストにかけた費用は、昨年77億円、今年が62億円ですが、テストをするより教師を増やすなど教育環境の向上に力を注ぐべきと考えます。
学校統廃合ではなく、30人以下の少人数学級の実現こそ必要ではないでしょうか。市の考えをうかがいます。
[教育次長 答弁]
30人以下少人数学級の一層の拡大についてお答えいたします。
幼稚園につきましては、国の基準により、1学級の幼児数は35人以下を原則とする旨定められています。小・中学校における学級編制の基準は、都道府県教育委員会が定めることとなっておりまして、茨城県においては、小学校1,2年生を対象に、35人を超える学級を3学級以上有する場合、学級数を増加させるなどの学級編制の弾力化を導入しているところであります。
現時点におきまして、30人学級を導入とする場合、幼稚園、小・中学校ともに、保育室及び教室の増設や教職員の増員等の様々な問題が生じる恐れがあります。また、小・中学校につきましては、県費負担教職員以外にも、平成18年度から市町村独自の判断で常勤の教員の採用が可能となりましたが、給与費の負担や人事管理上の問題もあることから、現段階では、社会人ティームティーチング講師や非常勤講師の継続配置に努めるとともに、引き続き、県市町村教育長協議会等をとおして、30人学級の実現等について県教育委員会へ強く要望してまいります。
★質問後記★
残り時間の関係で再質問は行いませんでしたが、時間があれば食材費値上げへの対応について、再度質問したいところでした。
ちょうど、質問日の当日(2008.6.17)の茨城新聞に石岡市のことが載っていました。
石岡市が、食材の高騰で、すべての小中学校で給食の提供を2日分カットするとの記事です。回数を減らして食材費を削減するようですが、県の資料によると、石岡市の給食回数はこれまで年間200回、給食費は小学校で3,800円です。
水戸市は現在年間197回で4,300円ですから、私は、水戸市では回数を減らしたり、これ以上給食費を値上げするというのではなく、まったく水戸市は独自補助をしていないわけですから、ぜひ年度途中からでも、2学期に向けて緊急の補助実施を前向きに検討してほしいと考えます。
予算を伴うことですので、最後は市長の判断になりますが、教育委員会として、しっかり現場の状況を調査することです。
5月に教育委員会が行った調査は、市内8つの学校の4月分の状況を調べただけで、教育次長の答弁でも「まだ十分把握できていない」とのことですので、今後、4・5・6・7月と1学期分の状況を、全ての学校と共同調理場で調査するとともに、数字だけでなく、栄養士や給食主任の先生に工夫や苦労を直接聞くことです。
また、学校給食に食材を納入している業者や、子どもが食べる給食ですので保護者の意向も聞くべきで、市はこうした調査をしっかりと行って対応する必要があると思います。
1学期は献立の工夫で乗り切れたとしても、2学期以降は大変です。
学校給食法では食材費は保護者の給食費で賄うことが原則とされていますが、その法のもとでも県内19市町村が独自補助を行っており、水戸市が学校給食の食材費に補助を実施することは法的に問題ありません。
今後、何の対策もないまま現場任せでは困ります。