2022年3月茨城県議会 予算特別委員会 江尻加那議員の質問と答弁(大要)

江尻加那議員の予算特別委員会質問と答弁(大要)

2022年3月18日(金) 茨城県議会 第1回定例会

【質問事項】

  1. 教育費の保護者負担の軽減について
    (1)公立中学校部活動にかかる負担のあり方
    (2)県立高校における1人1台端末の整備費
  2. 新産業廃棄物最終処分場の整備について
  3. 医療政策について
    (1)県立こども病院の機能拡充
    (2)水戸医療圏における地域医療構想の課題
    (3)県立病院の整備のあり方

項目

1. 教育費の保護者負担の軽減について

(1)公立中学校部活動にかかる負担のあり方

日本共産党の江尻加那です。予算審議にあたり、知事および関係部長に質問いたします。

はじめに、子育て支援や少子化・子どもの貧困対策にも関わる問題として、保護者の教育費の負担軽減を求めて、教育長に伺います。

第一に、公立中学校の部活動にかかる負担です。今日は寒い雨が降る中ではありますけれども、多くの小学校で卒業式が行われました。「中学に行って何の部活に入ろうか」と思いめぐらす子も多いと思いますが、親にとっては部活にかかるお金は想像以上に大きな負担です。現状でどのくらいの負担となっているのか、県は把握されているでしょうか。

また、部活動費は就学援助制度の対象となり、年間3万150円が国の上限額ですが、県内市町村でしっかりと援助が行われているのか、合わせてお答えください。

【教育長】

お答えいたします。
現在中学校では保護者会が設置されている部活動が存在し、部活動に係る費用の集金等を保護者会が中心となって行っております。

例えば、ある学校のバスケットボール部では、月に千円程度集め、練習試合等の移動に伴うバス代や、怪我の応急処置等に使う医薬品など、所属している生徒が使う共用品等の購入に対応しており、集金額、使途については、様々であります。

また、個人が使用するシューズ、スパイク、グローブ、ラケット、ウインドブレーカーなどは個人で購入しておりますが、高額な用具や、個人で準備することが難しい用具は学校の用具を使用する場合もございます。

次に、国が支援の対象としている準要保護世帯に対する市町村の対応状況でありますが、クラブ活動費として、16市町村()が支援しており、市町村の財政状況により若干、差はありますが、1人あたり概ね年間上限額を3万150円としているところであります。

なお、準要保護世帯に対する就学援助費につきましては、国の地方交付税措置の算定基礎となっておりますことから、市町村に対しまして、支援の充実が図られますよう要請してまいります。

水戸・日立・結城・常総・常陸太田・ひたちなか・常陸大宮・那珂・筑西・坂東・かすみがうら・大子・美浦・五霞・境・東海

【江尻】

いま教育長が述べられましたように、部品以外にもさまざま購入に対して保護者の負担があり、それに対する就学援助制度も44市町村で未だ16自治体に留まっているとのことで拡大を求めていただきたいと思います。

さらに今、指導にあたる先生方の働き方改革や負担軽減も求められてます。

県はその一環として、県は、土曜・日曜の休日部活動を学校から切り離し、外部のコーチに任せる地域部活動事業をモデル校で進めています。が、それによって、新たな課題とともにコーチに対する人件費等の保護者負担が生じています。

例えば、つくば市の中学校では、月1,250円の会費負担。水戸市では「いきなり保護者から徴収できない」と、学校後援会費から年間100万円を支出しているとお聞きしました。国から出る拠点校1校あたりの委託費160万円で足りない分をこれらが穴埋めしている現状ですが、今後、モデル校でなくなった場合はどうするのか。

部活動の改革は必要だと思います。しかし、月千円、2千円の負担増が大変な家庭があります。地域部活動の導入で、更なる経済的負担を保護者に押し付けない県としての対応が必要と考えますが、所見を伺います。

【教育長】

お答えいたします。
令和2年9月、国より令和5年度以降休日の部活動を段階的に学校から地域に移行する方針が示されました。
こうした部活動を地域に移行する取組みにつきましては、運営団体や地域人材の確保、更には費用負担など様々な課題があります。

特に保護者の費用負担につきましては、保護者にとって大きな負担となるような額となりますと、生徒が部活動に参加することを躊躇してしまったり、諦めてしまったりすることが生じる恐れがあります。家庭の経済状況等に関わらず、誰でも部活動に参加する機会を確保することは、大変重要な課題であると認識しております。

現在、本県では、水戸市とつくば市の中学校におきまして、モデル的に地域の総合型地域スポーツクラブなどと連携し、週に1回程度、クラブの指導員が教員に代わって指導する地域部活動を実施しているところであります。

モデル校におきましては、国の補助を活用して実施しておりますが、モデル校の指定がなくなったとしても、現在の活動を維持していくためには、こうした費用負担などについてどうするかという検討が必要になると考えております。

こうした中にありまして、部活動の地域移行に伴う費用負担のあり方などにつきまして、現在、国の「運動部活動の地域移行に関する検討会議」におきまして検討されており、5月には提言が出されるものと承知しております。

県といたしましては、国の動向を注視するとともに、今後出される国の提言を踏まえまして、地域部活動における保護者負担のあり方について、具体的に検討してまいります。

【江尻】

具体的検討にあたっては、ぜひ保護者負担を前提としないで、財源や人材の確保も学校まかせにしないよう、県の責任ある対応を求めたいと思います。この質問は以上です。

(2)県立高校における1人1台端末の整備費

続けて教育長にたいしまして、県立高校におけるパソコンやタブレットなどの端末整備について伺います。
資料1をご覧下さい。文科省の調査では、今年度、18の府県が学校設置者である県の負担で端末を購入し、ほとんど100%整備して生徒に貸し出しています。

公立高校における端末の整備状況(見込み)について(都道府県別)

資料1 公立高校における端末の整備状況(見込み)について(都道府県別)

一方、本県の整備率をみると30%にも届かず、全国下から2番目です。なぜ低いのか。それは、保護者負担で購入させ、さらに1年生だけを対象にしたためです。2年生と3年生は、自分のスマートフォンを使うとされて、「小さな画面でやりにくい、集中できない、目が疲れる」といった生徒の声が届いていません。こんな教育条件で良しとしているのでしょうか。

小中学校や私立でも当たり前に整備される中、県立高校の2年、3年だけが抜け落ちているのです。そして、来年度予算にも入っていません。なぜ本県は公費で整備しないのか、購入が困難な家庭はどうするのか伺います。

【教育長】

お答えいたします。
まず、保護者負担により端末を整備することとしたことについてでありますが、そもそも本県におきましては、高校入学に際しまして、電子辞書の購入を推奨していた高校が多かったことに加えまして、本人所有の端末であれば必要なアプリを自由にダウンロードをすることができまして、高校卒業後も高校で得た情報資産を引き続き活用できるなど生徒が積極的に情報端末を使いこなしていくことができることから、端末の導入につきましては、原則、保護者負担したところであります。

そうした中にありましても端末を購入することが困難な世帯に対しましては、何らかの支援をする必要がありますので、奨学給付金の対象となっている住民税非課税世帯に対しましては、県が整備した端末を貸与することとしており、今年度は貸与件数818件で、1年生全体の4.8%となっております。

また、住民税非課税世帯に準ずる世帯に対しましては、端末購入品の一部を補助しておりまして、その件数は712件で、1年生全体の4.2%となっている状況でございます。

【江尻】

非課税世帯とそれに準ずるといいますと、年収270万とか350万で、その支援を受けられたのは1年生全体の一割にも満たないという状況ですし、やはり非課税世帯でなくとも、1台約5万円の負担は重すぎると思います。

福島県では支援対象を620万円以下の家庭まで購入費補助を行っていますし、来年度は公費で整備する県が今の18から24に増えるようです。それでも本県はやらないのか。せめて希望者に貸し出したり、補助の要件を広げるなどできないのでしょうか、再度伺います。

【教育長】

お答えいたします。

県では、国の令和2年度第3次補正予算で計上された国庫補助事業を活用しまして、原則として、住民税非課税世帯の生徒を対象に、貸与する端末を整備することとしております。

こうした支援に加えまして、本県においては独自の支援策として非課税世帯に準ずる世帯に対しましても端末購入費の一部補助制度を設けたところであります。

一方で、これまで所得限度額を超えて支援の対象外となっている世帯からの問い合わせは限定的でありまして、また、校長会など学校現場からの要望もありませんことから現在の支援対象の範囲は適切であると認識しており、現時点で対象範囲を拡大する必要は無いものと考えております。

【江尻】

県は県立高校でも1人1台端末の活用による教育を掲げています。

また、知事は、次期総合計画案のなかで「幸福度指標」に新たに大学進学率の向上を盛り込みました。私は経済的支援が拡充されるのかと期待しましたがそうではなく、内容は高校生の学力データ分析やAIドリルの活用とのことです。

ICT教育やオンライン授業には、様々な課題や注意点もあります。しかし、コロナ禍の中でその活用が余儀なくされるなか、その道具である端末が必要というなら、やはり県の責任だと思います。

また、GIGAスクール構想について、東京大学名誉教授の佐藤学さんは、「巨大化するICT市場に公教育が投げ出され、端末の利用自体が目的化している。今後の端末の更新に対する国の将来的財源保障もない」と批判し、「本当に必要な学びは、創造性や探求性、協同する力をつけること」だと警鐘を鳴らしています。

私はそもそもすべての子ども達の学びや成長を保障するには、やはり現場の教員を増やすことだと思いますし、市場の論理や経済格差によって、こどもが平等に教育を受ける権利がつぶされることのないよう、本県でも教育条件と予算の拡充を求めたいと思います。教育長への質問は以上です。

2. 新産業廃棄物最終処分場の整備について

続いて、日立セメント太平田鉱山跡地に県が計画する産廃処分場整備について、知事に伺います。

予定地である諏訪町周辺は、諏訪梅林、諏訪の水穴、大久保の風穴、鮎川渓流、そして多賀山地の地下水など豊かな自然に恵まれた地域です。

建設に反対する地元住民は裁判を起こし、2月3日の水戸地裁での公判を私は傍聴しました。諏訪地区の男性は、「学校も保育園も住宅団地もある地区につくること自体論外だ」とし、「集中豪雨時には周辺の土砂崩れや鮎川の洪水が発生するのではないか」と訴えました。

また、地元に事務所を構える原告代理人の弁護士は、「日立出身の大井川知事がやると決めたことに唖然とした」と述べ、「反対するのは地域のエゴではない」、「自分たちが声を上げずに、だれが環境を守ってくれるのか」と裁判官に訴えました。

私は昨年の議会質問で、候補地を選ぶ選考委員会に日立セメント関係者が入り、選ぶ側と選ばれる側が一緒だと。選考過程で、重要な道路問題を評価の対象外にしたこと。その結果、新たな搬入道路を作らなければならなくなったこと。それは、候補地選定の根拠が根底から覆されるもので、撤回すべきだと知事にただしました。

いま、処分場建設費は当初の208億から230億円に増え、さらに、当初なかった搬入道路建設は100億とも200億とも言われています。そこで、まず処分場230億円のうち、県と環境保全事業団の負担額の内訳はどうか。また、県の新年度予算は10億3456万円ですが、事業団の次年度予算見込みはどうなっているのか、お答えください。

【大井川知事】

お答えいたします。
新処分場の概算建設費につきましては、これまでの基本計画策定員会での検討による施設の規模・構造を踏まえ、約230億円と試算いたしました。

建設費の資金調達は、事業主体である茨城県環境保全事業団が、国の交付金や県補助金などを活用するほか、借入金等により調達することとしております。

具体的な資金調達の内訳につきましては、県が基本計画を策定した後、事業団における国や県との交付金等の額の調整や、借入先との調整により調達金額が確定していくことになりますことから、現段階で県の負担額をお答えすることはできません。

また、茨城県環境保全事業団は、県の出資法人であり、一般財団法人でありますことから、その予算につきましては、県との事前協議を経て、事業団の理事会において承認をいただく必要がございます。

建設費に係る予算につきましては、資金調達計画を作成したうえで、予算を計上し、理事会で承認をいただくことになります。

現在、事業団において、資金調達計画の作成に着手したばかりであり、予算として確定しておらず、さらに理事会の承認を得ていないことから、事業団予算についてのお答えはできません。

【江尻】

では、搬入道路の整備費はいくらの見込みなのでしょうか。平面交差を避けるための高架橋を作ったり、防音壁をつくり、標高差を上がる山を抜けるトンネルも必要となのではないのでしょうか。
併せて、住民が心配する洪水問題です。予定地は山々に囲まれた唐津沢の谷底です。雨が降れば沢や斜面を伝って処分場の敷地に流れ込みます。

資料2をご覧ください。基本計画案では、処分場の南側(グリーン部分)と東側(ブルー部分)の雨水は一旦敷地内に入り、防災調整池にためてから鮎川に流すとし、その流域面積は計画地を含めて36.83ヘクタールとされています。

新産業廃棄物最終処分場の雨水対策

資料2 新産業廃棄物最終処分場の雨水対策

一方、処分場西側(黄色部分)に広がるこの部分は、これから作る搬入道路の側溝で雨水を受けて鮎川に流すとしていますが、ここは何ヘクタールなのか、側溝に流入してくる雨水は最大何m³を見込み、どの程度の規模の側溝が必要となる見通しか伺います。

【大井川知事】

新設道路については、現在、測量や予備設計を進めているところですが、道路幅員は、車道は片側3メートルずつ、路肩は片側1メートルずつの合計8メートルとすることを基本とし、既存の市道や林道を活用しながら整備する方針としております。

中丸団地北側入口との交差部分については立体交差化を前提とし、地域の皆様の生活環境に十分配慮した設計としたいと考えております。

その他、ご質問のトンネル等の構造物や概算事業費については、現在取り組んでいる測量と予備設計を進めることにより明らかになりますことから、現時点でお答えはできません。

また、新処分場整備予定地の西側流域については、約81ヘクタールを見込んでおり、このエリアからの沢水については、降雨量に基づく水の流れを把握するための水文調査の結果、その多くが鮎川につながる水路に流れていると推測されます。

新設道路の整備にあたっては、現在のこうした状況を踏まえ、西側流域から流れてくる沢水が処分場の敷地内に流れ込まずに、道路の排水設備で適切に受け止められるよう、水文調査の結果も参考にしながら、道路整備の基準等に基づき、安全な整備を進めてまいります。

【江尻】

ここにきても、まだまだ具体化はこれからということですけれども、 その洪水問題、豪雨対策というのは安全の基本中の基本だと思います。地域の方は常総水害や熱海土砂災害の教訓からすると、そこに住む住民だからこそ分かる、知っている声を行政が軽視することがいかに大きな被害に繋がると言っています。地域住民の声に謙虚に耳を傾ける、そうした意見交換することが重要と考えますが、いかがでしょうか。

【大井川知事】

お答えいたします。
水文調査の結果・・・

【江尻】

地域住民の声を謙虚に聞いていただきたいということです。

【大井川知事】

地域住民の皆様にも何度も説明会を行い、皆様のご意見等も謙虚に受け止めてこの計画を実施しております。

【江尻】

それでもなお、様々な不安や心配の声が大きく広がっています。併せて、なぜ県外のゴミまでここで引き受ける計画なのか。法的に受け入れる義務はありません。そして、地域住民が心配している放射性廃棄物の問題ですが、セシウムの濃度が1kgあたり8千ベクレル以下は受け入れるとするのか。計画策定委員会の大迫委員長は、住民説明会で「ゲートモニターでは放射線量がかなり高いものしか検知できない」と説明されたようですが、県としてどのように検査する考えか伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。
新処分場の事業主体である一般財団法人茨城県環境保全事業団は、公共関与処分場として広域的な処理を行う「廃棄物処理センター」の指定を環境省から受けております。

「廃棄物処理センター」制度は、公共の信用力を活用して、廃棄物の適正かつ広域的な処理の確保に資することを目的として、公的主体の関与した一定の法人等を、環境大臣が指定し、これに支援等を行う制度のことでございます。

新処分場における廃棄物の受入は、県内産業廃棄物の受入が基本となりますが、本制度の趣旨に照らし、公共関与の処分場として、災害廃棄物を含め、一定程度の県外廃棄物を受け入れつつ、適切な処分場運営を図って参ります。

また、放射性物質により汚染された廃棄物を受け入れないことにつきましては、地元住民の声などを踏まえ、基本計画案に明記しております。

それを担保するために、契約前の現地調査などの事前調査において、廃棄物の発生起源や分析表を確認し、受入可否を判断するほか、搬入時に事業者から提出されるマニフェストも確認してまいります。
なお、放射性濃度の検査方法や受入判断基準につきましては、全量検査も含め、茨城県環境保全事業団や日立市と協議し、検討してまいります。

【江尻】

県外も一定は受入れると言いますけれども、今のエコフロでは全体の2割も県外から入っています。埼玉・千葉・栃木など、発生の地元で処分できないかとどうして言えないのでしょうか。不法投棄も持ち込まれ、更には産廃も持ち込まれる。これで本当に環境県と言えるのでしょうか。

今の基本計画の中身では、昨日も日立市議会から求められた「確認書」の締結。県として責任をもって締結できる内容・状況にないと私は考えます。

その重要な基本計画策定業務を請け負ったのは、国内大手の建設コンサルタント、パシフィックコンサルタンツです。道路の搬入道路の予備設計もこの会社です。そして、今年1月の処分場の次の基本設計の入札も行われましたが、この1社しか応募がありませんでした。

しかし、最低価格を下回って入札不調。2回目の入札もこの1社だけでしたが、その社員が富山市の公共事業で官製談合や競争入札妨害に関与して逮捕されました。それを受け、県はパシフィックコンサルタンツをこれから半年間の指名停止とし、2回目の入札も中止となっています。

そもそも基本計画、道路の予備設計、処分場の基本設計とこの会社が受注するのが明々白々と言わざるを得ない状況での刑事事件。県は誤算だとでも言うのでしょうか。

候補地選定過程も不透明、事業費の内訳、詳細もいまだ示さず、洪水や放射性廃棄物の対策も具体化はこれから。こんな事業をこのまま進めていいはずはないと思います。あらためて計画の撤回を求めます。いかがでしょうか。

【大井川知事】

本計画につきましては、日立市及び周辺住民の皆様とも何度も説明をかさねご理解いただいて実施するものであり、計画を撤回することはありえません。

【江尻】

予定地のあの場所、私は本会議の質問でも言いましたけれども、あの地層は石炭岩で3億6千万年前から3億年前にかけて作られた広大な石灰岩層。それを人間は僅か100年で掘りつくし、今度はその穴にゴミまで埋めようという事です。

人間の産業活動とはいかにあるべきか改めて考えさせられますし、県北のジオパーク推進協議会、茨城大学学長が会長も務められ活動されてきたこの協議会が今月末をもって解散という事も非常に残念なことです。

県北振興という点からみても、私は処分場の整備というのは適切ではないと改めて訴えたいと思います。この質問は以上です。

3. 医療政策について

(1)県立こども病院の機能拡充(病院事業管理者)

最後に、医療政策について、まず、水戸市にあります県立こども病院の機能拡充について五十嵐病院事業管理者にお伺いいたします。

私は先週の病院局常任委員会でも、築37年経って手術室の狭隘化や病床不足など課題がある病院の建替えを検討する次期ではないかと質疑しました。子ども病院長は、「建物改修しながら最善の医療を提供しているが、手術室はあと1つ、2つ欲しい。病床は隣の済生会病院と連携し小児患者を受け入れている」とのご答弁でした。

そこで、2点伺います。一つは、こども病院の特別の役割と機能は、他の病院で肩代わりできるものではないと考えますが、いかがでしょうか。また、こども病院と水戸済生会総合病院は、その成り立ちからも一体となって周産期母子医療センターの役割を果てしていることから、こども病院のみを別の場所で整備することはできないと考えますけれどもいかがでしょうか。

【病院事業管理者】

お答えいたします。県立こども病院につきましては、本県唯一の小児専門病院として、重篤・難治な小児疾患に対する高度・専門医療の提供を行うなど、水戸医療圏だけではなく、本県全域の小児医療を支える役割を担っているところでございます。

特に、県央・県北地域においては、小児救急中核病院として24時間365日の二次・三次救急患者の受入れを行っておりますほか、隣接する水戸済生会総合病院と一体となって総合周産期母子医療センターとしての役割を担っております。

こども病院といたしましては、今後もそうした役割を果たすため、機能充実を図っていくべきと考えており、施設の狭隘化・老朽化についても、適切な対応を検討していく必要があると認識しております。

一方で、一般病床または療養病床を有するすべての医療機関は、医療法等に基づき、地域医療構想調整会議における地域の実情や医療需要の動向等を踏まえた協議を経て、2025年に向けた対応方針を策定または見直すこととされております。

そのため、こども病院の今後のあり方を検討する場合においても、地域医療構想調整会議において、県全域や地域において必要となる医療機能や方向性などについて、地域の医療関係者と認識を共有しながら、検討を行う必要があると考えております。

次に、こども病院の移転の可能性についてでございます。
先ほども申し上げましたとおり、こども病院の今後のあり方につきましては、地域医療構想調整会議における議論を踏まえながら、具体的な機能や役割を整理する必要がございますことから、まずは、その検討を進めてまいります。

【江尻】

いま管理者が述べられたように、こども病院の役割・機能は水戸医療圏に限らず、全県に及ぶものという答弁、貴重なご意見、私もそのとおりだと思います。そうであるなら、地域医療構想の協議に縛られることなく、県立病院としての将来構想を太く打ち出して頂き、ますます小児医療、こうした役割を進めていただきたいと思います。ありがとうございます。

(2)水戸医療圏における地域医療構想の課題(保健福祉部長)

続いて、水戸医療圏における地域医療構想の課題について、保健福祉部長に伺います。県では、国からの要請を受け、2025年に向けた病床機能や対応方針を決定・見直しをしていくとしています。その大本にあるのは国の医療費抑制策や公立・公的病院の再編統合であり、全国では急性期等のベッドを20万床、本県で約5千床減らす計画となっており、私たち共産党はこの削減計画、撤回をすべきだと求めてまいりました。

そこで、資料3をご覧ください。

水戸医療圏の公立・公的病院(10施設)の現状

資料3 水戸医療圏の公立・公的病院(10施設)の現状

本県の9つある医療圏のうち、水戸医療圏には10カ所の公立・公的病院があり、その病床数など示したものですが、多くの病院が築年数40年、50年を迎えています。

さらに、下段の表に示したように、水戸医療圏で2025年に必要とされる病床は合計4,478床とされており、今より600床以上減らす計画とされていますが、ただでさえ医療資源が乏しい本県で病床を減らしていいのでしょうか。

そこで、水戸医療圏が全県的に果たす役割や機能を考えれば、全体病床を削減することは地域医療や医師確保を後退させることにつながると考えますが、所見を伺います。

【保健福祉部長】

お答えいたします。

水戸医療圏には、隣接する常陸太田・ひたちなか医療圏や鹿行医療圏をはじめ他の医療圏から多くの患者が流入しており、がんや循環器疾患などに係る高度・先進医療や、救急・小児・周産期などの政策医療において、水戸医療圏だけでなく、周辺地域を支える役割を担うことが求められております。

しかしながら、水戸医療圏では、複数の医療機関において、施設の老朽化や狭隘化により建替えの必要性が生じているほか、同規模の急性期病院が競合していることや、診療科によっては医師不足等により医療機関に求められている機能を十分に発揮することができていないといった課題があるものと認識しております。

また、何よりも、今般の新型コロナウイルス感染症対応を踏まえ、今後、感染症が急拡大した際に、より円滑な入院・治療ができる急性期病床のあり方などについて検討していく必要がございます。

限られた医療資源の中で、このような課題を克服し、求められる役割に適切に対応していくため、地域医療構想調整会議においては、医療機関の役割分担や有機的な連携体制の構築について、具体的な議論を進めていく必要があるものと考えております。

調整会議における議論は、新型コロナウイルスの影響により中断していたところですが、今年度は新たに、鹿行医療圏において、県の指導により集中的な議論を行い、そこで得られた成果や課題を他の地域にも共有するなど、県全域における議論の活性化に向けた取組みを進めてまいりました。

また、国からの要請を踏まえ、県では、一般病床または療養病床を有するすべての医療機関の2025年に向けた対応方針について、調整会議における議論を、2022年末までに完了することを目標に、病床機能の再検討など具体的な作業を進めているところです。

県といたしましては、今後も、患者の受療動向や各医療機関の診療実績などに関するデータの提供や協議への直接的な参加などを通じて、地域医療構想調整会議における議論が具体的に進み、必要な体制整備などに早期につながるよう積極的に支援をしてまいります。

【江尻】

具体的な議論を進めていくというその前提になっているものとして、調整会議に県は各医療圏ごとの病床機能報告の集計などを示しておられます。あらためて伺いますけれども、この4つの病床機能に何ベッドあるのかということを見る場合、県は、各病院から出される報告だけでなく、客観性も必要だとして、例えば埼玉県や静岡県が用いている病床の数え方「定量的基準」を示しています。

これを見ますと、水戸医療圏の高度急性期病床は埼玉や静岡の基準で見ますと、すでに800床を超え、2025年の必要数621をすでに上回っています。また、急性期や回復期、慢性期もほぼ25年の必要数に合致していると思いますが、そうであるなら、病院の再編統合や病床削減は必要ないのと言えるではないのか。あらためて伺います。

【保健福祉部長】

お答えいたします。
定量的基準による分類結果は、委員がご指摘したような医療圏ごとの合計ではなく、各医療機関の病棟一つ一つについて、現在の病床機能を再検討していただくための参考に活用しているものでございます。

いずれにしましても、定量的基準による分類結果も一つの参考として、地域医療構想調整会議において、医療機関の役割分担、連携方策など具体的な議論を進めていただきたいと考えております。

【江尻】

参考としてと言いながらこれをずっと言い続けている訳ですけれども、ある医師会長は、4つの機能に機械的に振り分けること自体が、病院との現場との大きなギャップを生んでいると指摘しています。コロナ対応での教訓などを踏まえ、今ある病院が、その役割や機能を発揮できるよう環境整備や建替えに対する財政支援など、県の取組が必要だと思います。

部長への質問は以上です。ありがとうございます。

(3)県立病院の整備のあり方

そこで、最後に知事に伺います。水戸医療圏にありつつ、全県的な役割を果たす県立病院、とりわけ中央病院・こども病院、この機能や役割を今後さらに拡充していくためには、それを受け止める必要な建物、ハード面の整備が喫緊の課題だと私は考えておりますけれけれども、知事としてどのように進めていくのか所見を伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。県立病院には一般的な医療の提供だけではなく、救急・小児・周産期・へき地などの不採算部門に係る医療の提供、がんや循環器疾患などに係る高度・先進医療の提供などの役割を担うことが期待されており、各県立病院の具体的な役割については、地域医療構想調整会議において、地域の実情を踏まえて、協議することとされております。

そうした協議を踏まえる必要がある一方で、県立病院が将来どういった病院を目指すべきかということについては、県自ら考えていくことも必要であります。

県立病院の役割や基本的方向性については、「茨城県病院事業中期計画」に定めておりますが、令和5年度に計画期間が終了するため、今後改めて病院の役割等について検討を行ってまいります。

さらに、人口減少や少子高齢化に伴う医療需要の変化、医師等の不足により、公立病院の経営が厳しい状況にあるなか、今般の新型コロナウイルス感染症対応において公立病院の果たす役割の重要性が改めて認識され、病院間の役割分担や医師等の確保などの取組みを平時から進めておく必要性が明らかになったことから、国におきましては、自治体に対し、令和5年度までに、新たに「公立病院経営強化プラン」を策定するよう要請する見込みとなっております。

この新たなプランにおきましては、地域において県立病院が担うべき役割や機能を明確化・最適化するとともに、新興感染症の感染拡大時に備えた平時からの取組みなどの新たな記載や、感染拡大地に転用しやすい施設・設備の整備についても検討が必要とされております。

県立病院としましては、がん医療などの政策医療を、引き続き、地域において中心的に担っていくとともに、これまで多くのコロナ患者の受け入れなど、県内のコロナ対策においても中核的な役割を果たしてきたことから、今後もそうした役割を果たせるよう検討していく必要があると考えております。

こうした国の動きや地域医療構想調整会議における議論を踏まえながら、県立病院の具体的な機能や役割を整理し、最適な整備のあり方を検討してまいります。

【江尻】

計画に盛り込むだけでは進まないと思います。あり方検討会さえ立ち上げていないという状況です。民間企業には基金も作って大型補助金をする一方で、病院の建て替えにはその投資には消極的なんじゃないかと言わざる得ません。今ある県立病院が持っている底力を発揮できるよう、知事には積極的に前に進めていただきたいと思います。以上で終わります。

以上

動画はこちらから

2022年3月茨城県議会 江尻加那議員の予算特別委員会質問と答弁(大要、PDF)

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