2021年3月茨城県議会 予算特別委員会 江尻加那議員の質問と答弁(大要)

江尻加那議員の予算特別委員会質問と答弁(大要)

2021年3月22日(月) 茨城県議会 第1回定例会

【質問事項】

  1. エネルギー・原子力問題について(答弁・知事)
    ▼温室効果ガス排出「実質ゼロ」を進める中、CO²を大量に排出する石炭火力発電所が本年県内で新たに供用開始されたことに対する知事の所見
    ▼原子力施設及び東海第2原発の避難計画、原発ゼロの茨城づくり
  2. 県民文化センターの今後のあり方について(答弁・知事)
    ▼文化振興、交流拠点としての役割と公共施設としての発展への認識
    ▼新水戸市民会館の開館(2023年7月)予定を想定した場合の課題
  3. 新産業廃棄物最終処分場建設計画について(答弁・知事)
    ▼新規道路整備を必要とするとの県判断を踏まえ、候補地選定の根拠や事業採算性
    ▼「産廃処理は民間が行う」原則にもとづいた処分場整備の再検討
  4. 児童保護・若年被害女性支援について(答弁・福祉担当部長)
    ▼性暴力や虐待などの被害にあった児童や若年女性の安全確保のための一時保護委託
    ▼県の一時保護所の増設を含めた体制強化

 

パネルを示し質問する江尻議員

パネルを示し質問する江尻議員=3月22日、茨城県議会

項目

1. エネルギー・原子力問題について

日本共産党の江尻加那です。
初めに、エネルギーと原子力問題について大井川知事に伺います。
3月18日、水戸地裁は東海第2原発の運転差し止めを命じる判決を下しました。94万人の避難計画と実行性が整っておらず、人格権侵害の危険があるという画期的な判決です。

これに対し、日本原電は翌日控訴し、国も脱炭素化のためには原発が必要だとして、各地で不十分な避難計画のまま再稼働を進めています。さらに、政府は脱炭素化と言いながら、これに相反する石炭火力発電所も増設の一途です。

本県でも、昨年の鹿島パワーに続き、今年1月に常陸那珂港で3基目となる石炭火発が稼働し始めました。最新型とされていますが、この1基だけで、県内の一般家庭95万世帯分(年間約368万トン)ものCO²を排出するとしています。
まず、こうした石炭火発の増設について、知事の所見を伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。

国においては、エネルギー安定供給に万全を期しながら脱炭素社会をいかに実現していくかという、大きな課題への取り組みとして、まずは、2030年のエネルギーミックスの達成に向けて、第5次エネルギー基本計画に明記されている非効率な石炭火力発電所のフェードアウトに取り組んでいく方針を示しているところであります。

この方針に基づき、休廃止などに係る非効率な発電所の定義などの詳細については、現在、国の委員会の中で、検討が進められているところであります。

県では、常陸那珂共同火力発電所1号機の火力発電事業による環境への影響を最小限に留めるため、これまでに、環境影響評価法に基づき、専門家の意見も踏まえ、事業者に対する意見を、同法を所管する国に提出しております。

このうち、二酸化炭素排出削減に関するものとして、具体的には、

  • 二酸化炭素については、利用可能な最良の技術の採用等により、可能な限り環境負荷低減に努めること
  • 発電設備の適切な維持管理はもとより、事業者自らが可能な限りの二酸化炭素を削減する措置を講じること
  • 二酸化炭素分離・回収・貯留等に関する国の技術動向を注視し、技術が確立された場合は、速やかに技術導入を検討すること

などであり、事業者もこれらの意見を踏まえ、対応していくとの見解を示しております。

県といたしましては、石炭火力発電所の稼働につきましては、国が判断すべきものと考えておりますが、引き続き、事業者に対し、二酸化炭素排出削減に向けた取り組みを求めてまいります。

【江尻】

国だけではなく、自治体としても茨城県など数県を除いて既に全国35の都道府県が二酸化炭素排出実質ゼロを表明しています。本県でも中身を伴った本格的な実質ゼロへの取り組みが求められていると思います。

知事は先程も、水戸地裁判決について、「当事者ではないからコメントは控える」としましたが、判決によって、避難計画を策定する県がまさに「当事者」とされたと考えます。

しかし、大井川知事には「当事者意識」がまったく感じられず、「実効性のある避難計画の策定に取り組む」と繰り返すばかりです。
ご存じのように本県には、原発以外にも多くの原子力施設があり、これも避難計画(「屋内退避・避難誘導計画」)が必要です。ところが、危険な高レベル放射性廃液を大量に有する東海再処理施設や先月運転再開された研究用原子炉JRR-3も、必要な5km圏内の避難計画がないままの稼働を県は認めています。

その事業者である日本原子力研究開発機構は、作業員の被ばく事故や放射性物質の漏えい、さらに厳重管理施設での盗難等が相次ぎ、知事は機構理事長を県庁に呼び出し、厳重注意した事業所です。避難計画がないままの稼働をなぜ認めるのかお示しください。

【大井川知事】

お答えいたします。
防災基本計画及び原子力災害対策指針により、東海再処理施設およびJRR-3から5キロ圏内の3市村は、「屋内退避及び避難誘導計画」を策定することとされていると認識しております。

3市村は、既に避難先などを定めた基本方針等を取りまとめているものの、それぞれの判断により、防災会議や住民説明会などを開催したのちに計画を策定する意向と伺っておりますが、制度上、計画策定は運転の条件とはされていないため、両施設とも運転が再開されているものと承知しております。

一方、県は、計画を策定する立場ではなく、また、両施設の運転再開は、原子力安全協定に基づく事前了解の対象ではありません。
しかしながら、万が一の事故があった場合に備えて、計画は策定されることが望ましいと考えておりますので、これまでも、避難先の調整などの支援をしてまいりましたが、今後も、3市村の計画策定をしっかりと支援してまいります。

また、県では、両施設の運転再開の前には、県原子力安全対策委員会における審議や原子力安全協定に基づく立入調査により、安全対策を確認してきたところであります。

運転中におきましても、適時立入調査を実施し、運転管理状況等を確認してまいりますとともに、原子力機構において事故等が続いたことも踏まえ、安全教育の徹底や現場作業の管理強化の状況の確認など、事故の再発防止に向けて継続的な指導を行ってまいります。

【江尻】

避難計画がなくても運転しても良い事になってるから県もそれを認める、ということが本当に住民を守ることになるのか。私はここでも避難を軽視する姿勢が表れていると思います。

東海第二原発の避難計画についてもそうですが、県が先日示した「第2の避難先」は、県外の千葉、埼玉、群馬、栃木、福島に加え、今度は宮城県にまで逃げていけというものです。

県民は、東海第2から逃れ、事故処理が終わらない福島を抜け、今度は女川原発のある宮城県では、どこまでいっても原発から逃れられません。

さらに県は、1人あたりの避難所面積をいまだに2平方のままとし、県民をタタミ1畳に押し込む計画をなぜ変えようとしないのかお答えください。

これだけでも、実効性がないことは明らかです。被ばくを防ぎ、命を守れてこその実効性です。原発をやめることが一番実効性ある対策だと考えます。

福島では過酷な避難の途中で命を落とし、避難先でも心身を病んで亡くなられた方が大勢います。もとの暮らしには戻れないと絶望から命を絶った方もいらっしゃいます。多くのものを奪い、犠牲を招く原発事故、避難先さえ決めればいいという問題ではありません。東海第二の廃炉を求めて改めて知事の所見を伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。
東海第二発電所の避難計画についてですけども、避難所の確保にあたっては一人当たりの面積は2平方メートルとしておりますが、可能な限り長距離の避難とならないよう、避難する方の負担を考慮したものでありますので、見直すことは考えておりません。

そのうえで、当初予定していた避難先が自然災害などにより避難者を受け入れることができない場合や、新型コロナウイルス感染症対策により当初予定の避難所のみでは受け入れ能力が不足する場合、また、積雪により避難経路が通行困難な場合などには、第二の避難先の候補地に受け入れのお願いをすることで、近隣の6県に了解をいただき、先々週公表を行ったところであります。

避難計画の策定に当たっては、何よりもまず、住民の方々の生命や身体を保護することが第一の目的であることは、十分に認識して取り組んでいるところであります。

当初の避難先及び第2の避難先の候補地をあらかじめ定めているのも、福島第一原子力発電所の事故においては、避難先が転々とすることで、避難する方々が心身の負担を強いられたことなどを踏まえたものです。

また、避難所における生活は、避難住民の心身の機能の低下などを考慮し、滞在期間を可能な限り短くすることが必要と考えております。

このため、国や市町村とも連携し、ホテルや旅館等への移動、応急仮設住宅の提供、公営住宅、賃貸住宅等の活用などの取り組みを行っていくこととしております。

あわせて、他の地域の避難計画などにおいて設置することとされている避難住民の方が心身の健康を相談できる窓口などについても、国、市町村、関係機関と検討してまいりたいと考えております。

【江尻】

2平米の狭いところで我慢するか、それとも長距離の過酷な避難で我慢するか、どちらを選んでも命が危険にさらされる。
今知事が困難な中身をおっしゃっておりましたけれども、そういう避難をしなくてもいいように、水戸地裁の判決は人口が極めて多いこの場所に、原発が立地されているそのものが、今の日本で不合理な状態になっているということにも言及しました。

避難できない原発を動かしてはならないと、県より、知事より先に裁判所が判断しましたが、なぜ知事は同じ立場に立たないのでしょうか。
判決を重く受け止めて私は再稼働を断念すべき、まさに今その決断する時期だと思いますが、再度伺います。

【大井川知事】

東海第二発電所の再稼働についての県の基本的な立場は、安全性について県独自の確認を行うこと、それから実効性ある避難計画を作ること、それから情報提供をしっかり県民に対して行い、関係者、県民、県議会、各市町村、様々な方々の意見を聞いて判断するという立場を述べてきたわけでございますけど、今回の水戸地裁の判決によりその立場が一切変わることはございません。

【江尻】

私は引き続き東海第二の廃炉を求めて取組んでいきたいと思っております。

2. 県民文化センターの今後のあり方について

次に、県民文化センターに移ります。

昭和41年の開館以来、50年以上にわたって文化振興や交流拠点の役割を担ってきました。各種イベント開催の他、若手新進演奏家の育成や自主事業で行った「大歌舞伎」は1,500人で満席になるなど、ホールの稼働率は8割と高く、年間約60万人の利用実績を積み重ねてきた施設です。

そのセンターについて、県は今後のあり方を検討するとしていますが、これまでの役割を踏まえつつ、文化団体や演奏家の皆さんから寄せられる音響設備やバリアフリーなど様々な要望にどう応えていくのか。

さらに、水戸市では2千人の大ホールを有する新しい市民会館を353億円かけてつくる計画です。市民が税金の支出差し止め裁判を起こしていますが、その整備を進める再開発事業を認めたのは大井川知事です。そこで県は、水戸市と施設についてこれまで具体的な協議をしていませんが、知事はどのように考えているのか、あわせて所見を伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。
初めに、県民文化センターの評価についてでございます。
昭和41年の開館以来、県民文化センターは、県民が多様な文化を創造・発表し、参加・体験・鑑賞する拠点として利用されてまいりました。

また、毎年、本県最大の文化の祭典「茨城県芸術祭」のメイン会場としても歴史を重ね、長く県民に親しまれたところでございます。
開館から半世紀以上経過したとはいえ、約1,500席の大ホールは、現在でも県内の文化ホールの中で最大席数を誇り、また、新型コロナウイルスが流行する前は、年間約60万人と、大変多くの方にご利用いただいているなど、県民文化センターは、本県における文化振興の拠点として重要な役割を担っている施設であると考えております。

次に、文化団体などから寄せられた要望等への対応についてでございます。
県民文化センターの利用者などから寄せられた要望や意見を踏まえ、近年は、大ホールの手すりの設置やFree Wi-Fiの整備、練習室の新設などを行ってきたところでございます。

なお、音楽関係の方々から「建物が古く、音響が良くない」との声が寄せられておりますが、それに対応するにはホールの大規模改修が必要となり、非常に多額の費用を要することから検討課題の一つとしております。

次に、新しい水戸市民会館がオープンした場合の課題についてお答えいたします。
令和5年7月に新しい市民会館が開館する予定になっておりますが、県にとって特に大きな問題は無いものと考えております。
逆に、新しい会館が水戸市に出来る事によって、様々な催しが増えたり、人々の交流が増えることが期待されますので、とても楽しみにしているところであります。

一方、県民文化センターを運営する上での課題と致しましては、指定管理料と施設・設備の修繕費と合わせて、ここ最近は、年約3億円の管理費用がかかっており、計画的なメンテナンスを行っていく必要がございます。

【江尻】

県民文化センターの今後の役割というのも非常に大きいと思います。なによりあの立地条件が素晴らしいと思っております。そこで今後20年、30年を見据えた大規模なリニューアル、もしくは思い切った建て替え方針を打ち出すべきと考えますが、知事の所見を伺います。

【大井川知事】

県民文化センターですが、開館50年を経過した施設の老朽化は確実に進んできているため、今後修繕費用が増大する見込みでございます。
このため公共施設の長寿命化という流れの中で、施設整備の修繕を計画的に行うとともに、いかに魅力向上を図っていくかという点が課題であると認識しております。

【江尻】

知事は新しい市民会館が今後楽しみだと先ほど述べましたけれども、県民文化センターも年間60万人。水戸市の利用見込みも60万人、あわせて120万人となればいいんですが、今のこのコロナの状況さらには今後の文化センター、そして大ホール、こうした利用で本当にこれが成り立つのかという懸念も示されております。
県民文化センター、私は役割が発揮できる施設の運営と県における予算の措置を引き続き要望したいと思います。この質問は以上です。

3. 新産業処分場建設計画の問題点について

次に、日立市諏訪町の日立セメント太平田鉱山跡地を候補地とする新産廃処分場建設計画について伺います。

処分場のために、県は新たな道路をつくるとしました。これは、候補地の選定をめぐって、意図的に交通問題を軽視してきた結果、今になって大幅なルート変更と事業費の増大を招いているのです。当初から、しっかり評価していれば、太平田鉱山跡地は候補地から外れる場所でした。
選定要件が崩れた以上、日立市ありきの整備計画は撤回すべきです。知事の所見を伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。
新処分場の候補地の選定については、外部有識者による「新産業廃棄物最終処分場整備のあり方検討委員会」により、県内全域を対象として、法令上の制約や、自然条件、生活環境条件等を客観的なデータ等に基づき段階的に絞り込みを行い、3カ所の整備候補地を選定いたしました。

さらに、副知事以下の県幹部で構成する「新産業廃棄物最終処分場整備候補地選定会議」により、自然環境及び生活環境への影響や事業効率性の観点から評価し、総合的に評価が高い日立市諏訪町を最適地として整備候補地に選定したところです。

候補地選定の中で、生活環境への影響として、処分場整備に伴う交通影響についても評価しており、日立市諏訪町につきましては、常磐道のインターチェンジや国道6号に近く、これらを利用することにより交通アクセスは良好とする一方、県道37号などの候補地までの最終アクセスについては、一部市街地を通ること、またその道路沿いに小学校があることから、交通安全面での配慮が必要であるという評価をしておりました。

このような中、昨年6月から8月に実施しました住民説明会において、当初の想定搬入ルートである「国道6号油縄子交差点から梅林通り、県道37号通るルート」について、住民の皆様からは、「油縄子交差点からは搬入車両を通してほしくない、新たな搬入ルートを整備すべき」とのご意見を数多くいただきました。

このようなことから、住民の不安を解消し、また、交通安全面に一層配慮するための対策として、今回、山側道路からの処分場候補地までの新たな搬入ルートを整備するものであり、選定時の評価に影響があるなどとは考えておりません。

最終処分場の整備候補地の選定につきましては、設置に伴う環境リスクを最大限少なくするため、地盤が強固で、地形を生かした安全な施設整備が可能であることや、生態系への影響が少ないこと、また、最終処分場の運営は埋め立てから埋立終了後の維持管理まで長期間にわたる事業であり、長期間の安定的な運営が求められことなどを評価したものであり、生活環境への影響も含めて総合的に評価した結果、日立市諏訪町を最適地として整備候補地に決定したものでありますので、整備計画を撤回することはありません 。

【江尻】

パネル2をご覧ください。

新産業廃棄物最終処分場の整備可能地の選定

パネル2 新産業廃棄物最終処分場の整備可能地の選定

知事はきちんと評価したとおっしゃいましたけれども、最後の候補地を決定した県の幹部で構成する会議で、日立市諏訪町を優位とした主な点を3つ挙げました。

第一に、「植生はほとんど見られない」としていますが、新しい道路をつくるには大規模な「山林伐採」が必要となります。
第二に、「交通アクセス」については、「幹線道路利用により良好」としていますが、あの梅林通り、県道37号線は学校や保育園、住宅地に近接し、十分な幅員のない道路をアクセス良好と判断したのは、最悪の評価です。
第三に、整備費です。約208億円と県は試算しておりますが、いまの新ルートはこれに含まれておりません。すでにある山側道路県施行区間をつくるのに1kmあたり46億円かかったことからみれば、新規道路は5kmで200億円プラスされることになります。

その他、鉱山跡地が広大な唐津沢の谷間にあって、流れ込む雨水の管理にお金がかかる。地盤の石灰岩層に大きな空洞が見つかれば、さらに施工費がかかる。いったい事業費はいくらになるのか。

どうして、ここが選ばれたのか。パネル1をご覧ください。

新産業廃棄物最終処分場の整備検討経過

パネル1 新産業廃棄物最終処分場の整備検討経過

県の幹部による選定会議の前に開かれた、有識者によるあり方検討委員会では46カ所の候補地がありました。絞り込み作業の時に3名専門家を加えていますが、交通問題の対策家は入れず、肝心の道路幅員や交通量状況は「評価対象外」としてしまいました。

知事はジンベエザメの時も、水族館周辺の交通対策が先だとして予算が否決されましたが、ここでも交通問題を軽視しています。
知事は、第5回あり方検討委員会の評価で、道路状況をわざわざ「評価対象外」としていたことをご存じなのか、その点確認します。

【大井川知事】

お答えいたします。
江尻議員がお示しになっているパネルについては、候補地選定会議での候補地比較内容のごく一部を取り上げており、全体を示しているものでありません。
候補地選定会議では、各分野の専門家などによる有機者会議で選定された3カ所の整備候補地について、自然環境、生活環境、事業効率性の観点から14の項目を設定し、比較評価を行い、総合的に判断するものでございますので、ご指摘はあたらないと考えております。

【江尻】

ですから、道路状況をなぜ「評価対象外」にしたのかもう一度伺います。

【大井川知事】

担当部長に答弁させます。

【江尻】

なぜ知事が答えないのですか。

【県民生活環境部長】

お答えいたします。
交通の議論をしてないとのことですが、その件につきましては一次スクリー二ングにおいてしっかりと議論しております。以上です。

【江尻】

私は道路の状況を最大限重視すれば、日立セメントの跡地は除外されるべき場所だと思います。
ではもう一つ別の観点で伺います。知事は産廃処理については民間で行うのが原則だとも述べておられます。法的にもそれが大原則です。県の本来の役目は地域に迷惑がかからないよう、適切に事業者に処分を進めさせ、厳しく指導監視することです。
それをせずに今回旧来どおりの公共関与で巨大な処分場を作ると決めたその理由を改めて伺います 。

【大井川知事】

お答えいたします。
産業廃棄物の処理については、排出事業者責任のもと、廃棄物の循環的利用及び適正処理の推進や県内産業の健全な経済活動を支えるため、将来にわたり安定的な処理体制の整備が必要となっております。

県内の産業廃棄物最終処分場の残余容量が減少している中、新たな最終処分場の整備が求められておりますが、最終処分場は、建設、埋め立て、そして埋め立て終了後の維持管理など、長期間にわたる事業であり、多額の設備投資を必要とすることや、地域住民のご理解を得ることが必要であることから、民間による設置が困難な状況となっております。
このため、公共の責任において新たな最終処分場整備が必要であると考えております。

県関与の産業廃棄物最終処分場として整備した「エコフロンティアかさま」は、これまで、公共の処分場としての役割を担い、環境保全や地域との共生を図りながら、県内の産業廃棄物の適正処理に努めてまいりました。

特に、近年多発している大規模自然災害により発生する災害廃棄物の処理にあたっては、国や被災市町村と連携した処理を行い、被災地の復旧・復興や県土の保全に大きく貢献し、公共処分場としての役割を果たしてきたところであります。

こうしたことから、「エコフロンティアかさま」の後継施設として、環境保全はもとより、地域住民や企業等との共生を図りながら、公共関与により新たな産業廃棄物最終処分場の整備を進めていく必要があると考えております。

【江尻】

本来、民間事業者の廃棄物を処理するのは原則は民間だということですけれども、「なぜ県が作るのか」と私が担当者に尋ねましたら、県内では唯一、茨城県産業資源循環協会から要望があったとの説明でした。

パネルにも示しましたが、2019年2月に協会から県に対して要望書が出されています。その翌月3月には県はあり方検討委員会を設置しました。

そこで、問題なのは、要望を出した産業資源循環協会の会長が日立セメントの元専務取締役であること。その日立セメントは大手株木建設のグループ会社であることは誰もが周知の事実ですけれども、株木建設は各地で茨城や、お隣の千葉県でも最終処分場の建設工事を請け負っている会社です。県は、まさにその循環協会の会長さんを県のあり方検討委員会のメンバーに選び、その会社の土地を候補地に決めたのではないのでしょうか。

これは、明らかな「利益誘導」にならないのか、選ぶ側と選ばれる側が同じということは行政が歪められたと捉えられても仕方がないと思いますが、この点は知事はどういうふうに考えますか。

【大井川知事】

循環協会の会長が日立セメント出身の方だというのは単なる偶然でございますし、検討委員会は多数の専門家の方々の議論において議論をしておりますので、ご指摘のような利益誘導ということは一切ございません。

【江尻】

いま国会でも利害関係者とか色々問題になっておりますけれども、通常ですと選考委員会というのは、応募者とか候補者との間に社会通念上疑義を生じさせるような関係がある場合、その選考委員さんというのは審査から外れなければならない。そうじゃないと真に公平公正に選んだのか、いくら知事がそれは単なる偶然の結果だと言っても、県はそれを証明できるのか、地元の皆さんにそれで理解されると考えているのか。もう一度聞きます 。

【大井川知事】

お答えいたします。
産業資源循環協会、要するに産業廃棄物を処分している業界ですよね、そこの業界の会長さんが、当然その業界の会長として検討委員会のメンバーに加わるのは非常に合理的ですし、自然じゃないでしょうか。

その産業廃棄物を扱う業界の立場、あるいは意向、あるいは意見なども当然取り入れながらですね、最終処分場というものをどういうふうにすべきかと検討するというのはなんの不自然もないと思うのですが、それをどうしてその不自然だとおっしゃるのか、私には理解できません。

【江尻】

選考委員に関係者の方を入れる、それはいろいろあります。でも、そのどこの土地に作るかと選ぶこの委員会に、その土地の所有の関係者の方を入れるということが本当に社会通念上疑義を生じさせないのか。そういうことがあれば私はこのあり方委員会できちんとそれを図る必要があるというふうに思いますが、そういう論議はちゃんとされているのか。

知事がそれは大丈夫だと言っても、いま日立市の皆さんは日立セメントの太平の鉱山跡地ありきじゃないかと、全部出来上がったシナリオなんじゃないかと言われても私は当然だと思います。

【大井川知事】

お答えいたします。
あくまでも茨城県産業資源循環協会会長として当初の審議に1回目から2回まで深澤さんという株木建設、あるいは日立セメントの関係者が会長として就任していただきましたが、3回目から6回目以降は協会の会長が変わりましたので別の方になっております。

従いまして、選定をするためにその会社の人がわざわざつけたというのは全くの言いがかりであって、根拠はないというふうに思います。

【江尻】

住民には計画がそもそも全く直前まで知らされていない。そしてこういう選定委員会の中ですべて決定してしまってから説明して、決まったことだから変えられない、問題ないということで市民の方に結論を押し付けるような姿勢は認められないと思います。

日立市の皆さんの反対署名、あの日立市で13,000筆という大変な署名が集まっているのもその表れだと思います。住環境を心配される方、自然環境の悪化が計り知れないと声をあげられている方、この反対意見について私は非常に貴重な意見様々あると思います。知事はこの反対意見どのように捉えているのかお示しください。

【大井川知事】

様々反対のご意見もあるかと思いますけれども、そもそも、産業廃棄物をどう責任ある形でですね、処分をしてくかということは、県として率先して関与すべきテーマだというふうに考えております。

共産党の言うように全て民間に任せろと。いつもいつも県がやれ、国がやれと言っている共産党にしては珍しい話だと思うんですけども、国がやれ、民間にやれということですと処分が非常にいい加減になったり、あるいは不法投棄が広がったり、そういう課題を拡大してしまう可能性もあるわけで、非常にその、正(プラス)の資源循環じゃなくて、その廃棄物の方のマイナスの方の資源循環をしっかりと環境を整えてくってことは非常に私は重要な行政の使命だというふうに考えております 。

【江尻】

このままでは全て行政丸投げになってしまうのではないか。欧州では拡大生産者責任の制度これが当たり前になっているのはご存知でしょうか。

企業自身が元で出さない、どうやって処理できない廃棄物を減らしていくか、これが産廃問題の解決の根本だと思います。浪費そしてゴミの処分、こうしたものに命や資源、環境を守るというこの根本がなければ処分場を作って埋めて蓋をすればいいということではもう今後成り立たないと思います。

私は公共関与で民間の産廃を処分する、県民の税金をそこに投資する考えを改めていくべきだと思います。
以上で次の質問に移りますので知事は自席にお戻りいただきたいと思います。

4. 児童保護・若年被害女性支援について

最後に、児童の保護及び若年被害女性の支援について伺います。

国や東京都などで始まった若年被害女性への支援が、NPO等の団体によって行われています。
「帰る場所がない」、「性暴力・性被害にあった」、「親から暴力を振るわれる」、など、様々な困難を抱え込む10代女性の保護や児童相談所への同行、相談等の駆け込み場所となっています。

本県の子どもが保護されるケースもありました。ところが、支援団体との連絡や一時保護の委託、その後県への引き取りがスムーズにいかなかったと訴えがありました。

そこで、東京都を含め県外での一時保護委託が必要となった場合、適切な実施にむけてどのような取組を行うのか、福祉担当部長に伺います。

【福祉担当部長】

お答えいたします。
一時保護は、児童相談所長が必要と認める場合に、児童の安全を迅速に確保し、適切な保護を図るため、または、児童の心身の状況などを把握するために行うものでございます。

本県におきましては、中央児童相談所に併設する一時保護所での実施を原則としつつ、乳児の場合や夜間の緊急対応により地元で一時保護する必要がある場合、あるいは児童が入院中の場合などは、児童相談所長が民間の乳児院や児童養護施設、医療機関などに委託して実施しているところでございます。

法律上、一時保護委託の委託先は、県内に限られものではございませんが、令和元年において、県内の児童相談所が行った一時保護委託の件数は333件であり、このうち県外への委託は5件のみで、委託先はすべて医療機関という状況でございます。

委員ご指摘の若年被害女性の支援につきましては、国のモデル事業による補助を受けて、今年度は、東京都、神奈川県、福岡県の3都県が若年被害女性への一時的な居場所の提供などを民間団体に委託して行っております。

今月の全国児童福祉主管課長会議おいては、国から委託先の民間団体の名称が公表されるとともに、「委託団体から被害女性居住自治体の児童相談所等に対して、支援に関する連絡調整等を行うこともあるので、適切な連携をお願いしたい」との依頼があったところでざいます。

こうしたことを踏まえ、県内の児童が都内の団体に身を寄せるといった事案が発生し、児童相談所長が一時保護の必要があると判断した場合につきましては、身を寄せた団体が、例えば、国の事業の委託団体など、委託先として適当と認められるものである場合は、児童相談所長の判断により一時保護委託も検討してまいります。

【江尻】

今部長がおっしゃったように県内の施設での保護委託も増えています。
県が廃止した土浦児童相談所の一時保護所を再建して、少なくとも2箇所体制が必要ではないかと提案したこともありますが、改めて県南地域において一時保護所を再建することを含めて体制強化を求めますが、福祉担当部長に伺います。

【福祉担当部長】

お答えいたします。
一時保護につきましては、先ほども申し上げたとおり、本県では、中央児童相談所に併設する一時保護所での実施を原則としつつ、必要な場合には、児童相談所からの一時保護委託を受けた民間の乳児院や児童養護施設、医療機関において児童の安全を確保していただいております。

近年、こうした一時保護委託の件数が増加しておりますことから、地域における安定した一時保護の受け入れ体制を整備するため、昨年3月に策定した茨城県次世代育成プランにおいて、児童養護施設の協力を得て、一時保護専用施設を設置していくこととし、令和6年度までに5か所との目標を設定しております。

昨年4月には、土浦市内の児童養護施設において、県内初となる一時保護専用施設を設置したところであり、引き続き、地域のバランスにも考慮しながら、児童養護施設への一時保護専用施設の設置を促進してまいります。
また、中央児童相談所に併設した一時保護所につきましても、職員の負担軽減を図りつつ、子どもにとって、安全・安心な環境で適切なケアが提供できるよう、職員数を平成30年度の29名から令和3年度は36名へと増員しているところでございます。

県といたしましては、引き続き、子どもの最善の利益を最優先に、適切かつ迅速な一時保護の判断間を行うとともに、一時保護の体制の強化にも取り組んでまいります 。

【江尻】

一時保護というのは24時間体制で、単に保護だけではなくて、子供にとって生活の場ですのでぜひこれからも拡充を求めたと思います。
昨年全国で小中高校生の自殺が最多となりました。本県でも県立高校に通う生徒の自殺が同じく最多だと伺った時に、そのご遺族も含めてどれほどの苦しみかと胸が締め付けられました。

生きていくのが辛い、生きていく意味がわからないと悩んでいる10代の方がたくさんいます。本人だけでは乗り越えられない、家族だけでも支えきれない、そういう時に県としての大きな役割を発揮していただきたいと要望いたしまして質問を終わります。ありがとうございました。

以上

動画はこちらから

2021年3月茨城県議会 江尻加那議員の一般質問と答弁(大要、PDF)

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