2020年6月茨城県議会 予算特別委員会 山中たい子議員の質問と答弁(大要)
山中たい子議員の予算特別委員会質問と答弁(大要)
2020年6月20日(土) 茨城県議会 第2回定例会
【質問事項】
- 県民投票条例案に付した知事意見書について
- 新型コロナ感染症対策について
(1)保健所の体制強化
(2)医療体制の強化
(3)学校現場の感染症対策の強化
(4)原子力災害を想定した対策
項目
1. 県民投票条例案に付した知事意見書について
日本共産党の山中たい子です。
まず、県民投票条例案に付した知事意見について伺います。
「東海第2原発の再稼働の賛否を問う県民投票条例案」の行方に、開会前から大きな関心が集まりました。
一昨日の連合審査会で参考人の意見聴取と質疑が行われ、その後の防災環境産業委員会において、採決の結果、残念ながら否決されました。
議会初日の8日、条例案提出で知事の意見書が注目され、条例案への賛否を示すのか、知事の発言も問われました。
ところが、知事は意見書を議員席に配布しただけで、口頭での主旨説明もしない、条例案への賛否も示しませんでした。
そこで、私はどうしてもお聞きしたいことがあります。
知事は直接請求で届けられた8万7千人の署名をどのようにうけとめたのかという点です。8日の本会議で発言されることを期待していたのは、私だけではなかったと思います。多くの県民のみなさんも同じだと思います。お聞きします。
【知事】
お答えいたします。
今般約8万7千筆の署名により「東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例」制定の直接請求がなされたところであり、改めて、東海第二発電所の再稼働問題については、県民の関心が高いものであると受け止めたところであります。
意見書でも述べたとおり、東海第二発電所の再稼働の是非につきましては、まずは、安全性の検証と実効性ある避難計画の策定に取り組み、県民に情報提供したうえで、県民の皆様や避難計画を策定する市町村、並びに県議会の皆様のご意見を伺いながら判断していくこととしております。
県民の皆様のご意見を聴く方法につきましては、どのような情報を提供し、ご理解いただく必要があるものかも十分に考慮し、最適な方法を選択していく必要があるものと考えております。
いずれにいたしましても、今回の直接請求に係る条例案についての議決は、県議会が行うものとされておりますので、その議論の内容や判断の行方等について、しっかりと注視してまいりたいと考えております。
【山中】
知事は多くの県民の皆様が関心をもっている、ということは確かに言いましたけれども、それ以上の事は何も言わないというように受け止めております。
知事は条例案の提出にあたって、県民と議会に対して堂々と自らの賛否を示すべきでした。地方自治法の逐条解説で「賛否を明らかにすべき」とされています。
知事は2017年3月の出馬会見の際、再稼働の是非について、「住民の直接の意思表明という機会を与えてもいいんじゃないか。住民投票だと思う」と述べました。
少なくとも「県民の意見を聴く」のが、知事の公約ではありませんか。
ところが、この3年間、その機会をつくらないまま、来年9月が任期となります。
今回の条例案は、県民の声を聴くと公約した知事にとって、それが実行できる絶好の機会ではなかったでしょうか。今からでも県民投票条例に賛意を是非示すべきだと思います。お答えください。
【知事】
お答えいたします。
再稼働について県民の皆様のご意見を聴く方法につきましては、県民の皆様にどのような情報を提供し、ご理解いただく必要があるのかも充分に考慮し、最適な方法を選択していく必要があるものと考えております。
現在は、安全性について200を超える論点の検証を開始したところであり、また、避難計画についても、数多くの課題の解決に取り組んでいるところでありますので、県民の皆様に、どのような情報を提供してご意見を聴くのか、具体的な見通しを立てることは困難であり、ご意見を聴く方法を判断できる段階には至っていないものと考えております。
このため、県民の皆様にはご意見を聴く方法につきましては、「県民投票を含め様々な方法があることから、慎重に検討していく必要がある」との意見を付けたところであります。
条例案に付ける意見につきましては、議会にご審議いただくにあたり、県の考え方を示すことが目的であると考えており、今回の意見につきましては、将来的に県民投票も含めた様々な方法から、最適な方法を選択していく必要があるものの、現段階ではその選択も判断が困難であるとの考えを示したものであります。
いずれにいたしましても、本条例案の取り扱いは、法律に定めるところにより、県議会が議決することとなっており、その議論の動向を注視してまいりたいと考えております。
いかに県民に寄り添った政策判断が出来るのか、民主主義の根幹に関わるものなので、ぜひ県議会には主体的に判断していただきたいと考えております。
【山中】
賛否を示さない知事に対し、「丸投げ」「無責任」と批判があがり、連合審査会において、与党議員から「仮に議会が可決しても、知事が変わった場合、どうするのか」「別の知事になったら、できる確証はあるのか」との質問が、請求代表者にぶつけられました。
知事は一昨日のやりとりを当然のことながらお聞きになっているはずです。
提案者である知事が、これほどのことを言われて黙っているのではなく、はっきり示すべきではないでしょうか。
連合審査会での議論に対し、県民の皆様から「もっと審議を深めてほしい」、「署名の思いを受けとめ、熟議を尽くしてほしい」という切実な声があります。この声に応えることが、議員にも知事にも求められています。
知事は意見書で、「県民投票を含め様々な方法があることから、慎重に検討していく必要がある」としております。
そうであるなら、本条例案のさらなる検討と論議を継続することについて、知事の所見を伺います。
【知事】
昨日の議論を当然聞いておりましたが、その委員の意見はともかく、地方自治法第74条第3項では意見を付けてとされているだけであり、今回は賛否を示しておりません。先例におきましても賛否を明示していない場合もあるものと承知しております。
例えば宮城県に直接請求があった東北電力女川原子力発電所2号機の稼働の是非にかかる県民投票条例案や、新潟県に直接請求があった、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の稼働に関する新潟県民投票条例案につきましても、どちらの県の知事意見においても賛否は明示されていないところであります。
【山中】
先程申し上げましたように、本条例案の更なる検討と議論を継続することについて、知事の所見を伺いたいと思います。
【知事】
それは県議会の方で決めることだというふうに認識しております。
【山中】
すべて議会任せで酷いなと思います。議会に丸投げでやり過ごそうというのでしょうか。様々な方法があるというなら、それを示すのが当然の態度ではないでしょうか。
届けられた署名は、1月から3月の寒さが一番厳しい時期です。それどころか、ウイルス感染がもっとも恐れられた時期に、一軒一軒お宅を訪問し、主旨を説明し理解を得て積み上げられたのが8万7千人の署名です。県民投票の会と受任者のみなさんが、どんな思いで取り組んだのかを是非とも深く考えていただきたい。
中高生のみなさんから、知事にも手紙が届いたと思います。「原子力発電について、18歳未満の選挙権のない子どもたちの思いも伝えたい」、県民投票を実施してほしいというものだったのです。「未来に生きる私たちにとっても重要な問題」ととらえ、声を上げた勇気と行動に真剣に向き合うことが、議会のせいだとか、議会で決めたことというのではなく、知事自身が問われている、知事の責任だと自覚していただきたい。
2. 新型コロナ感染症対策について
次の質問に移ります。
新型コロナ感染症対策について、知事に伺います。
首都圏を中心に、新たな陽性者の確認が続いていますが、第2波に備えた検査体制と医療体制のさらなる強化が求められています。とくに、感染症の拡大防止で最前線に立つ保健所の機能強化、体制の強化について、政府・専門家会議は課題として提言しました。
(1)保健所の体制強化
保健所は、他にも多くの業務を抱えながら、とくに、▽1月末から設置された相談窓口には、4月のピーク時で1日1,500件を超える相談が殺到しました。
さらに、▽帰国者・接触者外来への受診調整▽地方衛生研究所への検体搬送▽市町村との情報共有や助言▽積極的疫学調査▽陽性患者が出た時は医療機関との連絡調整▽入院患者の病状把握―など、すべてが法に基づく業務です。今回は、他の部署から25人もの応援体制をとって乗り切ったと聞いております。
真壁医師会の落合会長は、「保健所は統廃合で再編され、人減らしも進み、職員は疲弊しながらコロナに対応している」と話しています。
なぜ保健所の疲弊が起こったのか。 パネル1をご覧ください。
行政改革の名で、県は保健所も職員も削減してきました。
1990年代に18カ所あった保健所は、昨年11月までの間に9カ所に統廃合されました。職員数は2001年以前の記録がないとのことでした。
日本医師会の横倉会長は、「行政改革で、保健所は半分近くに減少した。削減しすぎたのはよくなかった」と述べています。
知事は、この指摘を重く受けとめるべきです。保健所の統廃合について、これで良かったとお思いですか。お答えください。
【知事】
お答えいたします。
わたくしは知事に就任して以来、多くの県行政の現場に足を運び、できるだけ現場の声に耳を傾けてまいりました。その中で、各保健所長から公衆衛生医師の確保が極めて困難で、複数保健所の兼務を余儀なくされる状況にあり、県民の健康危機管理に重大な支障を生じかねないため、是非とも改善してほしいという切なる要望を受けておりました。
言い換えますと、是非保健所を再編して、兼務を余儀なくされる状況を解消してほしい、そういう要望をいただいたわけであります。
実際、本県は多くの保健所が小規模で所長が兼務の状態となっており、新たな感染症や大規模災害等への対応が十分にできないという深刻な状況にあったことから、住民サービスの水準を維持したうえで、抜本的な再編を行うことといたしました。
まず、多くの保健医療施設が第2次保健医療圏単位で実施されていることから、保健所管轄外と2次保健医療圏を一致させ、業務の円滑化を図るとともに、全ての保健所長を専任化することにより指揮命令を迅速かつ的確に行い、危機管理機能を十分に発揮することができる環境を整えました。
また、全ての保健所に、感染症対策を専門的に担う保健指導課と、感染症患者を受け入れに係る医療機関との調整を行う地域保健推進室を設置しました。
これにより、中核市に移行した水戸市を管轄していた水戸保健所を除いて、再編前の平均職員数22人に対し、再編後は31人と、平均9人の増員を行い、人的体制の強化を図りました。
仮にこの再編がなければ、今般の新型コロナウイルス感染症の対応は、極めて困難であったものと認識しております。
私は4月以降殆ど毎日、全保健所長と新型コロナウイルス感染症対策についてのWEB会議を行い、現場の情報をつぶさに吸い上げ、スピード感を持って現場に即した対応を進めてまいりましたが、地域の最前線で働く所長からは、昨年の保健所再編について極めて高い評価をいただいております。
今後とも、各保健所が地域保健対策の拠点となり、健康危機管理の司令塔としての機能を十分に発揮できるよう、保健所の体制強化に努めてまいります。
【山中】
ここで一つお話ししたいのですが、この職員数が大幅に減ってきたことについて、知事はどのように認識しているでしょうか。
【知事】
職員数につきましては、法改正による市町村への事務の移譲や県の行財政改革などにより業務量が変化したことに応じて、その時々で適正な見直しを行ってきた結果であると認識しております。
昨年の保健所再編においては、職員数全体について減少させることなく、現状を維持させながら9つの保健所に職員を集約したところでありますので、専門性の高い業務や、突発的な業務にも迅速的かつ適切に対応することが可能になったことから、保健所の一層の強化につながったものと考えております。
【山中】
先程も言いましたが、行政改革の名の下で、保健所も職員も削減してきたのが、今の茨城県の実態ではないでしょうか。
郡市医師会と連携協力し、2次医療圏ごとに「地域・外来検査センター」を設置する準備がすすんでいると聞いております。これによって、保健所ルートと別に、かかりつけ医からの相談・検査体制がつくられ、保健所の負担軽減に一定貢献できるものと思います。
保健所体制の強化を急ぐことについて、お答えください。
【知事】
お答えいたします。
今後、台風など自然災害への対応も念頭におきながら、新型コロナウイルス感染症の第2波・第3波への対応も進めていかなければならないため、これらに対応していく保健所の体制強化は重要であると認識しております。
今回の新型コロナウイルス感染症対策においては、全庁的な事務執行体制として「新型コロナウイルス感染症対策チーム」を設置して、その中に「保健所支援班」を設けて、保健福祉部以外の職員を毎日10人程度保健所に派遣し、主にPCR検体の搬送業務や電話相談等に従事させました。
加えて、保健福祉部からは、保健師、薬剤師など10人の職員を陽性患者の多かった5保健所に、1か月単位の長期の派遣を行い、新型コロナウイルス感染症対策業務のほか、地域保健業務等の支援にあたらせたところです。
また、積極的疫学調査等を担う保健師の負担軽減及び人員強化を図るため、退職した保健師を会計年度任用職員として15人採用し、すべての保健所に配置いたしました。
さらに、市町村にも、市町村保健師の応援を要請したところ、4月中旬から5月末にかけて、17市町村から述べ109人を派遣いただき、電話相談や陽性患者の健康状況確認等に従事していただいたところです。
なお、市町村の保健師については、今後、保健所に応援いただいた際、即戦力として活躍していただけるよう、新型コロナウイルス感染症の基礎知識や対応方法等の研修の準備を進めているところでございます。
県といたしましては、引き続き市町村や関係団体等と連携しながら、第2波・第3波に備え、迅速かつ的確に保健所に必要な人員を派遣できる体制を構築し、保健所の体制強化を図ってまいります。
(2)医療体制の強化
【山中】
次に医療体制の強化です。
本県は医療崩壊をギリギリのところで免れたものの、県が感染拡大のピーク時に想定している感染患者受け入れの病床確保と医療体制を確立することが急務です。しかし、医療機関はいま、経営危機に直面しています。
県立中央病院は昨年4月比で2億1千万円の減収です。また、茨城県保険医協会の調査では、県内554の医療機関のうち、9割で外来患者や収入が減っており、職員給与やボーナス、業者への支払いもままならず、雇用維持さえ厳しい状況です。
日本病院会など3団体の調査では、新型コロナ感染患者を受け入れた病院は、4月に平均1億円の赤字。受け入れていない病院でも6割以上が赤字、経営は危機的状況です。
知事は今月3日、県医師会の諸岡会長や病院協会・市長会・町村会の代表から、大幅減収となっている医療機関への財政支援を求める要望書を直接受け取りました。
医療機関を支えなければなりません。減収補填について、県独自の支援策が必要です。お答えください。
【知事】
お答えいたします。
県はこれまでにも国に先駆けて独自に創設した「茨城県新型コロナウイルス感染症対策医療従事者応援金」により、最前線で奮闘している医療従事者への支援を行うとともに、不足する医療機器・感染防護資機材の配給などにより医療機関の支援を行ってきたところです。
しかしながら、県内の感染症指定医療機関における本年4月の医療利益率が、前年同月比でマイナス16%と大幅に悪化しているなど、医療機関の経営は大変厳しい状況にあります。
今回の新型コロナウイルス感染症の影響による医療機関の経営悪化は、主に患者数の減少によるところが大きく、感染症指定医療機関からクリニックに至るまで、全国の医療機関に共通する課題となっていることから、支援策については、国が主体となって積極的に打ち出すべきものと認識しております。
国では、経営支援策として、医療機関に対する優遇融資や入院治療に係る診療報酬の引き下げ、病床の確保に対する補助などをおこなっており、先日成立した第2次補正予算においては、病床確保の対象病院の拡大や補助額の引き上げなど支援の拡充が行われたところです。
県といたしましては、まずはこのような国のスキームを最大限活用できるよう医療機関を支援していくとともに、今後も県内医療機関の経営状況などを注視しながら、全国知事会とも連携し、国に対して支援策の拡充を強く要請してまいります。
【山中】
いち早く応援金に取り組んだということですが、県民の皆様から寄せられた募金だったと思います。
減収補填、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れたか否かに関わらず、大幅な減収になっている状況を見ると、県独自の支援策というのが県として取り組むことが必要ではないかと思いますが、改めてお答えください。
【知事】
お答えいたします。
医療機関の経営悪化は、感染症指定医療機関からクリニックにいたるまで、全国の大多数の医療機関に共通する課題となっております。従いまして、全国知事会とも連携しながら、国にしっかりと支援策の拡充等を求めてまいりたいと考えております。
【山中】
先程と同じことを繰り返している。
全国知事会は全国知事会としてやって当然のことだと思います。全国的に危機的状況である医療機関を救済していくことが必要で、医師会の諸岡会長をはじめ、皆様が直接知事に要望したにもかかわらず、この場で減収補填を検討すると言えないでしょうか。
【知事】
国の支援スキームをしっかりと利用していくことがまず肝要なことだと認識しております。
【山中】
第2波・第3波と新型コロナウイルス感染症が拡大した時に、一番先に頑張っていただかなければいけないのが医療機関ではないのでしょうか。
そのためにも減収補填について是非とも検討していただきたい、そのことを強く要望して次の質問に移ります。
(3)学校現場の感染症対策の強化
次に、学校現場の感染症対策の強化について、教育長に伺います。
8日から通常登校が始まりました。突然の休校措置から3か月余。先の見えない自粛生活から解放されたとはいえ、大きな不安とストレスを抱えての学校再開となりました。
国立成育医療研究センターが行った子どもアンケートには、緊急事態宣言下の困りごとや心配なこととして、「友だちと会えない」「学校に行けない」「コロナの事を考えるといやだ」「最近集中できない」など回答しています。
一人ひとり子どもの心のケアと今の姿を丸ごと受けとめる教育活動が求められています。また、詰め込みではない柔軟な教育で、学校を安心して過ごせる場所にすることが最優先課題です。所見を伺います。
【教育長】
お答えいたします。
新型コロナウイルス感染症への不安や長期の臨時休業、外出自粛などにより、児童生徒は、これまでにない不安やストレスを抱えていることが懸念され、心のケアを図ることは、極めて重要であります。
このため、県としましては、児童生徒の不安やストレスをしっかりと把握し、きめ細かな対応の徹底を各学校に求めたところでございます。具体的には、児童生徒の不安やストレスを的確に把握するためのアンケートを実施するとともに、相談を希望する児童生徒自らが話しやすい教員やスクールカウンセラーを選んで相談できるようにし、児童生徒一人ひとりに寄り添った、より効果的なケアが可能となる環境を整えております。
こうした取り組みと併せ、電話やSNSで相談できる窓口について周知を図り、より相談しやすい体制を整備することで、全ての児童生徒が安心して学校生活を送ることができるよう、支援してまいります。
【山中】
感染防止の具体的な対策の強化も重要です。パネル2をご覧ください。
文科省が学校の「衛生管理マニュアル」で示したものです。
「新しい生活様式」では、身体的距離は人との間隔をできるだけ2メートル、最低1メートルあけることを基本としています。
1クラス40人学級では1メートルもあけることができません。本県の場合、35人学級でも2メートルをあけることは困難です。2メートルの間隔をとるには1クラス20人程度が限度です。子どもが学校で一番長く過ごす教室こそ、最優先で安心な場所にすることが教育長の役割ではないでしょうか、お答えください。
【教育長】
お答えいたします。
学校における新型コロナウイルス感染症対策については、臨時休業中の分散登校をはじめ、様々な3密対策を実施してまいりました。
現在は、感染症対策がステージ1に移行し、各学校では、県が示した学校再開ガイドラインを踏まえて通常授業が開始されたところでございますが、当面は、感染症対策に十分に配慮しながら授業を進める必要がございます。
今回のような非常時においては、身体的距離を確保することによって教室での密集を避けるため、1学級を複数教室に分けて少人数体制で授業を行うことも考えられますが、これは、あくまでも、感染症防止に向けた対策のひとつでございます。
一方、平常時における学級編成につきましては、県では、基本的に1学級35人編成が適当と考えており、学級編成の弾力化とティーム・ティーチングを組み合わせた少人数教育を実施してきたところであります。
1学級あたりの児童生徒数が少なくなりすぎますと、人間関係につまづいた時に、新しい人間関係を築き難いことや、学級の小規模化により切磋琢磨の機会が減るなど、児童生徒の健全な成長にとってデメリットとなる懸念も出てまいりますことから、県といたしましては、引き続き現在の少人数教育を推進することにより、児童生徒へのきめ細やかな指導に努めてまいります。
【山中】
学校現場では、先生が子どもの消毒作業や手洗い指導など新たな業務に息つく暇なく、落ち着いて子どもと関わることができない状態です。しかし、分散登校の時はクラスをグループ分けしたため、子どもとじっくり向き合うことができました。どの学校も、どの先生も20人以下の学級を体験したのです。
教員免許を持った若い世代や退職者などを採用し、20人程度の学級を推進すべきです。そのための教室確保も必要です。
政府の2次補正の教員加配措置は全国で3,100人。10校に1校しか加配されず、増員を求めます。県として20人学級に真剣に取り組むべきです。お答えください。
【教育長】
県といたしましては、現在の35人体制を維持することが必要だと考えております。
そのためには国に対しまして、学級編成の標準を、現行の40人から35人以下に引き下げるための新たな定数改善計画の策定や、そのために必要な財源の確保について、引き続き要望を行ってまいります。
【山中】
先程もパネルでお示ししたように、文科省の示す新しい生活様式を実際に学校で進めようとしたら、20人程度の学級です。これを是非県としても真剣に取り組んでいただきたいと発言して次に移ります。
(4)原子力災害を想定した対策
最後に原子力災害を想定した対策について、知事に伺います。
内閣府が6月2日、感染症の流行下で原子力災害が発生した場合の防護装置について基本的な考え方を示しました。一部報道されましたので、ご承知のことと思います。
問題は非公表の資料です。これは、「政府セキュリティ対策の機密」のうち、レベル2に区分され、位置づけとして「行政情報のうち、漏洩により、国民の権利が侵害され又は行政事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある情報」と扱われ、現段階で公表されていません。
江尻議員が資料要求しましたが、県担当課に内閣府から資料提供されているものの、国が公表していないので出せないとのことでした。
そこで、独自に同資料を入手しました。一部を紹介します。恐ろしいことが書いてあります。
「感染拡大・予防策を十分に考慮」と書いてはありますが、名ばかりです。
感染症が蔓延したときに原発災害が発生した場合、どうするのか。
感染者(重傷者)入院者は、避難する必要もなく避難先も決めなくていい、その病院にとどまって治療を続ける、となっています。
このような国の考え方を県の避難計画に盛り込むことができるでしょうか。医療機関にその責任を負わせることができますか。
患者を置き去りにするか、医者や看護師も巻き添えにするか。そんな避難計画をつくるのか、知事にお聞きします。
【知事】
お答えいたします。
内閣府は今回、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた感染症の流行下での原子力災害対策として、原子力災害対策指針に基づく防護措置と、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく感染防止対策を可能な限り両立させ、感染症流行下での原子力災害対策に万全を期す必要があるとの考え方を示したところであります。
避難所における対策については、基本的に自然災害の対応と同様とされております。原子力災害特有の対策としては、避難車両において感染者とそれ以外の方を分離する。または屋内退避を行う場合、放射性物質による被ばくを避けることを優先し、屋内退避の指示が出されている間は、原則換気を行わないなどの基本的な考え方を示しています。原子力災害時の防護措置と感染症対策との両立は困難なテーマだと認識しておりますが、国の考え方を踏まえ、国・市町村・関係機関としっかりと対応を検討してまいります。
【山中】
という事は、国の対応も見ながら県としても避難計画を作っていくという立場でよろしいのですね。
【知事】
そのとおりです。
【山中】
しかし現実的には不可能です。
なぜなら、県は避難にあたって、避難退域時検査スクリーニング場所34か所を決定しました。
ここでは、車1台あたり16秒で被ばく測定することになっています。
ところが、新型コロナ感染症のPCR検査は1日600件まで増やすとしていますが、5キロ圏内の住民を検査するには100日以上かかることになります。
原発災害の避難は一刻を争うので、PCR検査はそちらでやってくださいと避難先の自治体に頼めるでしょうか。お答えください。
【知事】
原子力災害時の防護措置と感染症対策との両立は、委員ご指摘のとおり様々な困難なテーマがあるというふうに認識しておりますが、引き続き国・市町村・関係機関と連携しながら、県主催の勉強会や内閣府主催の東海第二地域原子力防災協議会作業部会等での検討を進め、万が一に備えて実効性ある防災体制の構築に取り組んでまいります。
【山中】
わたくしの今お話ししたことについての答弁ではないのですけど。
「原発災害での避難は一刻を争うので、PCR検査は避難先の自治体でやってくださいというようなことを頼めるのですか」と質問をしたのですが、お答えください。
【知事】
現在、内閣府の示された新しい方針などを踏まえて検討を進めている段階でございますので、仮定での形でのお答えは控えさせていただきたいと思います。
【山中】
仮定と知事はお話ししていますけど、避難退域時スクリーニング場所34か所を決めたのも県です。それから先程も言いましたけれども、車1台あたり16秒で被ばく検査をするという一方、新型コロナ感染症のPCR検査は1回あたり約6時間かかると。1日600件まで増やしたとしても、5キロ圏内の住民の方に検査をするのは100日以上もかかるという実態になるわけです。わたしは実際には難しいと思ってるわけです。
これまでの避難場所の1人あたり面積は2m²(畳1畳分)でしたが、今後は2倍~3倍の面積を準備する必要があります。そんな交渉が果たして避難先の自治体と交渉ができるのでしょうか。
こうしたことに無駄な財源と労力は使わない、何よりも県民の生命と財産を守るために原発の再稼働をやめることが一番重要だ事だと思っています。
度重なる自然災害と異常気象、そして感染症の猛威です。このうえ、さらに原子力災害まで被ることになれば、県民生活が持ちません。経済も産業も崩壊してしまいます。
コロナ禍のもとで、日本原電は再稼働工事を強行しています。
完全な収束は不可能であり、知事がいう「ウイルスとの共生」が避けられない以上、老朽原発との共生はあり得ません。廃炉を求めて質問を終わります。
以上