2020年3月茨城県議会 予算特別委員会 山中たい子議員の質問と答弁(大要)

山中たい子議員の予算特別委員会質問と答弁(大要)

2020年3月19日(木) 茨城県議会 第1回定例会

【質問事項】

  1. 新型コロナ対策の強化について
  2. 難聴児への支援について
    (1)助成制度の創設と拡充
    (2)教育環境の整備
  3. TX通学定期代の引き下げについて
  4. 東海第二原発の再稼働問題について
パネルを前に質問を行う山中たい子県議

パネルを前に質問を行う山中たい子県議=3月19日、茨城県議会

項目

1. 新型コロナ対策の強化について

日本共産党の山中たい子です。

新型コロナの感染症で打撃が広がるなか、県内3人目の感染者が確認されました。冷え込んだ県内経済と、県民の命と健康を守るための立場から対策の強化について質問します。

知事は17日、国の新型コロナウイルス感染症の緊急対応策・第2弾を受け、81億円の補正予算を追加提案しました。しかし、多くは融資です。

たとえば学校給食について。安倍首相が2月27日、科学的根拠に基づかず、一斉休校要請したことで、公立小中学校は2日から順次休校しています。これによって、給食はつくば市を除いてすべて中止されました。そのつくば市でさえ、希望者への給食提供は、通常20,800食のうち6,200食と3割に過ぎません。

先日、米飯・パン納入業者の方から、「給料が払えない」「途方に暮れている」「融資では借金になるので直接補助をお願いしたい」と大変切羽詰まった訴えを聞きました。

政府が示した緊急対応策は、「衛生管理の徹底・改善のための職員研修や設備等の購入」費用を一部国が負担するという程度で、業者要求にはほど遠いものです。

本県の学校給食パン業者は28、米飯は20、麺は9業者にまで大幅に減少しています。このうえ、1社でも廃業という事態になれば、学校現場にも地域経済にも大きな影響を与えます。融資ではなく、損失分は補償する。真剣に考えていただきたい。現状把握と対応、今後の支援策について知事に伺います。

【知事】

お答えいたします。

今般、政府による全国一斉臨時休業の要請を踏まえ、本県においても、各市町村の実情に応じて、3月2日から順次実施されており、6日までに44市町村すべてで臨時休業を実施しております。このため、学校給食の提供も休止となり、食品納入業者等にも納品停止などの影響があると認識しております。

具体的には、野菜や牛乳などについては、学校給食での取引が中止になったものの、市場へ食品を供給することができた生産者や団体もあると聞いております。

一方で、米飯、パン、麺などの主食業者においては、在庫及び廃棄した食材はないということを聞いておりますが、学校給食のみを対象に生産している業者もあり、製造中止等により収益がなく、従業員への賃金の支払いや雇用に関する課題がある業者もあると認識しております。

このような状況を踏まえ、休業せざるを得ない食品納入業者等への支援の早期実現のため、先般、西村経済財政政策担当大臣と本県の経済団体との意見交換会において、資金繰りを支援するなど事業者に対する手厚い措置を実施するよう、直接、大臣に要望したところです。

そういったなか、国の新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策第2弾において、学校給食の安定的な供給を図る観点から、学校給食関係業者等の衛生管理の改善にかかる事業などについて補助制度が創設されました。

県におきましては、各市町村に対し、これらの制度の対応等について速やかに依頼するとともに、県立学校分について、関連する経費を令和元年度補正予算案において追加提案したところでございます。

さらに、中小企業者の業況悪化に対しては、資金繰り支援措置として、融資額を保証することや、業者向けに雇用調整助成金などの国の制度が示されておりますが、県独自の融資制度におきましても、融資枠や信用保証料補助を拡充するとともに、利子補給の制度をあわせて補正予算で計上させていただいたところです。

県といたしましては、市町村とともに、このような国の制度の周知、活用を図りながら、学校給食が安定して供給できるよう、しっかり食品納入業者を支援してまいります。

【山中】

答弁では県独自の支援策が示されなかったと思っています。

打撃を受けているのは、学校給食の業者だけではありません。
交通機関の従事者、たとえばバス会社が経営悪化で、雇用調整助成金の申請に二の足を踏めば、従業員に支援は届かなくなります。

賃金歩合制のタクシー運転手などは、賃金の6割しか支給しない雇用調整助成金の休業手当で守ることはできません。
さらに、政府要請に応えたために、イベント自粛・キャンセルによって仕事と収入がゼロになった業者もいます。こうした人達や事業者には、損失補償を大原則にすえるべきです。

融資で借金を背負わせるのではなく、助成金などによる売上減少分への損失補償ができないのか。前例にとらわれない大胆な施策を求めて、知事の所見を伺います。

【知事】

今月初めに、県が商工団体などを通じて実施しました中小企業に対する緊急アンケートでは、正確かつ迅速な情報提供や、資金繰り対策の充実、休業補償に加え、補助制度の充実などの支援策が求められております。

例えば、飲食業を営む事業者からは、金融機関との間で現在の借入金の条件変更を協議しているが、新たな融資がうけられるかといった声や、観光事業者等からは、先行きが見通せない中では、融資よりも補助制度の充実を望む声も寄せられているところです。

こうした中で、国におきまして、実質的な無利子、無担保による貸付制度を創設し、資金繰り対策を強化するとともに、従業員を休業させる場合に、国が給与の一部を助成する雇用調整助成金の対象範囲の拡大や、影響の大きい観光業では、感染症の事態終息後における需要の回復に向けた支援対策を講じるとしております。

こうした国の対応策に加え、県といたしましては、県内企業から寄せられた声を踏まえ、事業活動の継続に万全を期すため、県が運用する融資制度の利用枠を、リーマンショック発生時の状況も踏まえて、600億円規模へと拡大するとともに、融資に係る利子の全額助成や保証料の半額助成に必要となる予算措置を本定例会に提案しているところであります。

新型コロナウイルス感染症の影響は、大変大きいものと認識しておりますので、引き続き、事業者の皆様の声をつぶさにお聞きし、今般の対策の効果の把握に努めるともに、本県の実情を国とも共有し、さらなる対策が遅滞なく実施されるように、国との連携を強化してまいります。

【山中】

いつ出るのかわからない国の対策・第3弾を待っていたら、零細企業が倒産・自己破産に追い込まれるのは時間の問題です。県が国待ちの姿勢で、こうした業者を救うことができるか。改めて県独自の直接補助を求めます。

新型コロナの影響から緊急に県民生活を守る、その為にはあらゆる手立てをとるべきではないでしょうか。

また、厚労省は感染症拡大防止の観点から、2月28日、「資格証明書を被保険者証とみなす」とする通知を出しました。発熱など発症の疑いがある場合、手持ちの資格証明書を使って医療機関を受診できるようにしたものです。

この通知を市町村や医療機関などに徹底することはもちろんです。しかし、昨年6月現在、2,833世帯が国保税を滞納し、資格証明書を交付されていますので、この世帯に通知の主旨を丁寧に伝えること、併せて短期保険証を発行し、届けることが重要です。知事の所見を伺います。

【知事】

お尋ねの令和2年2月28日付け、厚生労働省通知につきましては、被保険者資格証明書を交付されている被保険者が、帰国者・接触者外来を受診した際には、当該資格証明書を被保険者証とみなして取り扱うという趣旨です。

当該通知については、速やかに、市町村はもちろんのこと、医師会等関係機関へ周知するとともに、市町村に対して、被保険者への連絡の徹底をお願いしたところです。

【山中】

徹底をよろしくお願いします。

2. 難聴児への支援について

(1) 助成制度の創設と拡充

次に難聴児への支援についてです。

難聴児の多くは、情報入手コミュニケーション手段として補聴器か人工内耳を装用しています。その前提として、早期発見と療育など保健・医療・福祉、教育との連携と支援は欠かせません。

本県は、身体障害者手帳の交付対象とならない難聴児のため、「軽度・中等度難聴児補聴器購入支援事業」を推進し、喜ばれています。この補聴器と一体で使われているのが、会話をより聞き取りやすくする送信機(マイク)と受信機を備えた「補聴援助システム」です。しかし、修理代などを含め、その経済的負担の軽減を求める要望が各方面から寄せられています。補聴器等への支援拡充を求めます。

また、手帳を持つ難聴児は、保険適用で人工内耳の装用が可能となっています。言語能力を獲得する乳幼児期の早い段階で手術を行うことが有用とされています。しかし、成長に合わせた体外装置の買い換えや電池、充電器等経済的負担がともなうため、各地の自治体では助成が広がっています。本県における助成の実施を求めます。

難聴児へのさらなる支援の拡充、創設について、福祉担当部長に伺います。

【保健福祉部長】

難聴児への助成制度の拡充についてですが、現在、県では児童・生徒の言語の習得を通じた健全な発達を支援する観点から、身体障害者手帳の交付を受けておらず、国の補聴器購入助成制度の対象外である18歳未満の軽・中等度難聴児で、医師が必要と認めた場合に、補聴器の購入費用を平成27年度から、県単独事業として助成しているところであります。

委員ご指摘のとおり、補聴器の修理・電池交換や無線式の補聴システム購入費用については、現在、助成の対象とはしておりません。

しかしながら、このうち、無線式補聴システムの購入費用につきましては、高額であり、児童を養育する過程において経済的負担も大きいことから、教育の現場での取り組み状況を踏まえ、市町村や関係団体の意見もお聞きするなどして、助成対象の拡充について検討を進めてまいります。

次に、人工内耳に係る助成制度の創設についてでございます。
人工内耳については、補聴器の効果が不十分である方に対する有用な聴力獲得法の一つとして、医療保険の適用により装用手術が行われております。

また、破損等により交換が必要な場合につきましても、医療保険適用となっております。

一方、修理については医療保険の対象となっておりませんが、現在、国において補装具費支給制度の改正により助成の対象とすることを検討していると伺っておりますことから、今後も国の動向を注視してまいります。

県といたしましては、聴覚に障害のある児童の健全な発達には、個々の状況に応じた適切な補聴器等の装用が重要でありますことから、市町村と連携し、今後も支援の充実に努めてまいります。

【山中】

要望は切実ですので、是非積極的に支援をしていただきたい。どうぞよろしくお願いします。

(2)教育環境の整備

次に難聴児の教育環境の整備についてです。

つくば市竹園東小学校を例にあげれば、難聴特別支援学級に在籍し、音や言葉の聞き取りなどを学ぶほか、学校内の通常学級に通級しています。通級する時間帯は、市が配置する支援員が教師の話す内容やその場の様子を、手書き又はパソコンで文字通訳するなど援助しています。

加えて、保護者所有の補聴援助システムも活用しています。このシステムは、教師が送信機 (マイク)を首に掛け話すことで、補聴器や人工内耳を装用する難聴児がより正確に会話内容を聞き取ることができます。マイクがもう1つあれば、教師や他の児童、支援員など3者の会話を聞き取り、話し合いへの参加機会が増えます。難聴児在籍校への補聴援助システムの整備を求めます。

また、難聴児の教育を担う教員の配置について、より専門性が求められる分野です。現状では聾学校が聴覚障害教育のセンター的機能を担い、教員への研修協力や必要な助言、相談などで対応していますが、是非積極的により専門性を持つ教員の配置をお願い致します。併せて、教育長の答弁を求めます。

【教育長】

ただいまご質問のございましたデジタルワイヤレス補聴援助システム、通称ロジャーシステムと申しますが、このシステムは、周囲の雑音レベルを測定しまして、その背景雑音よりも話し手の声をより明確に聞き取れるようにするもので、多数の子どもたちが学ぶ場面において、より効果を発揮するものと考えております。

そのため、デジタルワイヤレス補聴援助システムは、小・中学校における難聴者を対象とした特別支援学級、いわゆる難聴学級だけではなくて、通常の学級に在籍する聞こえにくい子どもたちにとっても有効であると考えられるために、市町村立学校の教育環境について、市町村が適切に合理的な配慮を行えるよう、このシステムの有用性について、市町村に周知し、必要に応じて整備するよう働きかけてまいります。

また、教員の配置についてでございますが、難聴学級の担当経験をもつ教員が少ないことから、これまで言語障害特別支援学級等の担当経験がある教員を配置するなどしてまいりましたが、小・中学校の免許状の他に、特別支援教育の免許状をもつ者を積極的に採用するなど、子どもたちにとって学びやすい環境となるよう工夫をしてまいります。

なお、難聴学級を担当する教員が定期人事等により変わる際には、子どもたち一人ひとりについて作成されました「個別の教育支援計画」、あるいは「個別の指導計画」によりまして、子どもたちの障害の程度、そして、これまでの学習の経過等について担当者間で引き継ぎを行うことで、適切な教育が行われるよう努めてまいりましたが、今後も、より丁寧に行うことで、一人ひとりの子どもたちにとって、より教育の質が高まるよう取り組んでまいります。

また、県内に2校ございます県立の聾学校が、地域のセンター的役割として、小・中学校の教員を対象に、難聴児の指導や配慮に関する助言を行うほか、具体的な事例をもとにワークショップを行うなど、研修を深める場を設けることで、難聴学級を担当する教員の専門性の向上を図ってまいりましたが、このワークショップ等に、より多くの教員が参加できるよう工夫をしてまいります。

県といたしましては、このような取り組みを通して、県全体の特別支援教育の一層の充実を推進して、子どもたち一人ひとりが輝ける教育支援ができるよう、今後も取り組んでまいります。

【山中】

補聴援助システムについては既に竹園東小学校をはじめ、様々な場所で使われているということで、その有用性というのは認識されていると今の答弁を聞きながら思いましたので、是非積極的に市町村に働きかけると同時に、県としても補聴援助システムを整備していくという立場で頑張っていただければと思います。よろしくお願いします。

3. TX通学定期代の引き下げについて

次にTX(つくばエクスプレス)の通学定期代の引き下げについてです。

パネル1をご覧ください。TXとJRの通学定期代を比較したものです。TXはつくば駅~秋葉原駅間、JRは土浦駅~秋葉原駅間です。
TXの通学定期代がいかに高いか、中学生でJRの2.5倍です。なぜかと言えば、TXは通学定期代を大学生も高校生・中学生も一律料金にしているためです。

通学定期乗車券の運賃比較
通学定期代を引き下げてほしいという声は、利用者だけではありません。今月4日にはつくば市やつくばみらい市、守谷市の沿線3市が揃って、本社に要望書を提出しました。2月24日には知事宛要望書にも盛り込まれています。TX最大の株主として、通学定期代引き下げのため、鉄道会社に強く申し入れていただきたい。知事の所見を伺います。

【知事】

TXは、平成17年の開業以来、順調に利用者数が増加しており、昨年度の1日当たり平均乗車人員は38万6千人と、開業当初の2.5倍となっており、今年度も40万人に迫る勢いであります。

これに伴い、経営状況につきましても、平成29年度決算で累積赤字を解消し、平成30年度決算では、営業収益が463億円、経常利益が61億円を計上するなど、概ね順調に推移しております。

一方で、利用者の増加に伴う混雑の緩和が大きな課題となっていることから、TXでは、この3月のダイヤ改正において、新たな新型車両30両を増備し、朝のラッシュ時の1時間あたり運行本数を22本から25本に増発するとともに、今年度から、抜本的な対策として8両編成化事業に着手したところであります。

委員ご質問の通学定期代の値下げにつきましては、県内の沿線自治体からも、同様の要望が行われており、TXとしても、重要な課題と認識しております。

しかしながら、TXの経営状況につきましては、順調に推移しているものの、鉄道整備費用の債務返済残高が、平成30年度末時点で5,555億円残っており、今後は、混雑緩和のための8両編成化事業や、老朽化する設備の修繕などの設備投資の資金が必要となってまいります。

また、TXは事業収入のほとんどが旅客運輸収入であり、JRや大手私鉄のような、駅中ビジネスや不動産等の関連事業収入が期待できないため、運賃の値下げは減収に直結することとなっております。

県といたしましては、TXが県をはじめ、関係自治体で出資してできた会社であり、沿線住民にとって大切な鉄道でもありますので、これを長期的かつ安定的に維持していくことが重要であると考えております。

従いまして、通学定期代の値下げにつきましては、収支計画や資金計画の観点から安定経営が持続可能かどうかなど、高度な経営判断を要するものであると考えておりますので、まずは会社の経営状況や8両編成化事業などの動向を注視してまいります。

【山中】

混雑緩和の解消というのは事業者として当然のことだと思います。

先程、知事の話にも出たように、TXの出資状況は本県が334億円、要望書を提出した3市もそれぞれ出資し、沿線自治体がつくった鉄道で開業しました。

運転開始15年目の今年度も、一日平均40万人を超える勢いで黒字経営です。しかも利用者の7割近くは通学定期です。運賃が高すぎという利用者の声に真摯に耳を傾けるべきです。沿線自治体が出資し、8,081億円の鉄道建設費用も8割が無利子貸し付けで開業にこぎつけ、現在に至っています。通学定期代引き下げは県民の強い願いであり、改めて知事として、工事の状況や動向をみるという事ではなく、現時点で県民の声を伝えるべきではないでしょうか。所見を伺います。

【知事】

TXは県をはじめ関係自治体で出資してできた会社ですが、株式会社であり、安定した経営が求められます。TXは沿線開発が順調に進み、利用者も増加していることもあり、経営は順調に推移しておりますが、開業から14年が経過し、今後老朽化した設備の更新や、8両編成化といった輸送力増強対策が求められるなか、毎年200億円の建設費用を返済しながら、鉄道の安全輸送を維持していくことを求められます。

通学定期について、委員からJRと比べてTXが高いとのご指摘をいただきました。TXと同様にニュータウンの通勤・通学輸送を担う近隣の第三セクターと比べるとTXは安いほうでありますし、そもそもTXに対してJR東日本の企業体力が全く違うため、単純に比較することは難しいと考えます。

このようなことから、減収に直結する通学定期の値下げについては高度な経営判断を要するものであり、県としてはまず、今後の経営状況や8両編成事業等の動向を注視してまいりたいと考えております。

【山中】

JRと体力が違うから比べるのはおかしいということですが、沿線自治体が工事費用まで無利子貸し付けした。当初の建設費用は全て自治体が持つという形で進めてきたわけです。ですから知事は、県民の願いをTXに言うべきではないでしょうか。いかがですか。

【知事】

繰り返しになりますが、高度な経営判断にも関わることですので、よく慎重に見極めながら、必要であれば関係自治体と一緒に要望していきたいと思います。

【山中】

TXの本社には茨城県からも役員を送っています。ですから高度な経営判断ということで曖昧にするのではなく、県民の「高すぎる」という願いを聞き入れ、TX本社に申し入れしていただきたい。改めて要望したいと思います。

4. 東海第二原発の再稼働問題について

最後に、東海第二原発の再稼働問題についてです。

知事は就任以来3年、「県民の声を聞いて」と言いながら、一度もその機会をつくりませんでした。しかし、県民投票の条例制定請求が出されれば、知事は自らの意見を付けて議会に上程しなければなりません。

しかし、福島第一原発の処理水の海洋放出について、漁業者の声を受け、「容認できない」「科学的な説明だけでは納得できない」と厳しい姿勢を表明しました。「白紙撤回」を求める反対の決意は今も変わりませんか。確認いたします。

【知事】

小委員会での報告書では、「水蒸気放出及び海洋放出が現実的な選択肢であり、海洋放出の方が確実に実施できる」としていますが、これまでの関係者の努力を慮ることなく、結論ありきの取りまとめを行うことは容認できるものではありません。
このため、より影響の出ない方法がないか、さらなる検討を強く期待するものであります。

今後の対応ですが、今回の小委員会の報告書は、あくまでも小委員会の提案であり、政府としては関係者、関係団体の意見をよく伺った上で、風評への影響を抑えることも含めた対策について結論を出していくとの経済産業大臣のご発言もあったと承知しておりますので、今後、その状況を踏まえた上で、対応してまいります。

【山中】

海洋放出反対の知事の姿勢は、県民・漁民の声に応えるものです。

ところが、静岡選出のある国会議員は、あからさまに海洋放出を認めろと知事を名指しで批判しています。
「大井川知事は元経産官僚。東海村にある原子力施設からトリチウムが放出されてきたことをご存じのはずだ。茨城から出したトリチウムはよくて、福島からは認めないというのは筋違い」。

立場は逆ですが、確かに原発は事故があるなしにかかわらず、稼働するだけで放射性物質を排出します。知事が再稼働に同意すれば、福島と同じトリチウム水を放出することになり、知事が一番心配している風評被害を招くことになるのではありませんか。

県民の安全と農漁業者のための最良の選択は、東海第二原発は再稼働させない。これ以外の結論はありません。
知事の所見を伺います。

【知事】

福島第一原子力発電所の汚染水処理の小委員会での報告に対して、現段階で安易に海洋放出しかないという結論に反対したという立場で、それ以上のものでもそれ以下のものでもございません。

【山中】

先程、最良の選択は東海第二原発を再稼働させないと(わたしは)申し上げましたので、そのことを肝に銘じて取り組んでいただきたい。漁業者の皆さんが苦しむ、そんなことをさせてはならないと思います。

原発をとりまく環境は悪化の一途です。テロ対策施設ができていないことで、川内原発は停止しました。伊方原発は、再度の差し止め判決が下されました。その理由の一つに、半径2km以内の断層の調査が十分でないことを挙げています。

パネル2をご覧ください。

東海第2原発 2km圏内 地震25回 2015.11~2020.2
気象庁の地震情報を基に、東海第二原発半径2km圏内の地震の発生状況を示したものです。期間は、日本原電が新規制基準の審査を申請した2015年11月から先月まで。全部で25回、そのうち敷地内に限っても4回起きています。

東海第二原発の下に断層があるのは明らかです。これが活断層であれば、知事がどう結論を伸ばそうとも、稼働は認められません。検証すべき重大な事実です。知事はこれらの事実を確認されたのか、伺います。

【知事】

東海第二発電所の地震対策につきましては、国の原子力規制委員会において、これまでに発電所周辺で発生した地震を踏まえた基準地震動に関する審査が行われたところであり、県では、原子力安全対策委員会東海第二発電所安全性検討ワーキングチームにおいて、国の審査状況を聴取のうえ、審議を行っております。

そのうえで、県では昨年、国の審査等の結果に関する住民説明会を開催するとともに、広く県民から安全対策に関する意見を募集したところであります。

寄せられたご意見につきましては、委員の意見と併せて、昨年6月にワーキングチームにおける論点として整理したところであり、「東海第二発電所の真下など、太平洋プレート内で起きる地震」や、「県の地震被害想定の見直しにおいて、県独自に想定した地震」、「活断層が確認されていない場所で発生する地震」等について、日本原電から評価結果等を聴取し、さらなる審議を行っていくこととしたところであります。

このうち、「東海第二発電所の真下など、太平洋プレート内で起きる地震」等につきましては、本年2月に開催したワーキングチームにおいて審議を行っております。

その際、日本原電からは、評価した地震動は国の許可を受けた基準地震動を下回るとの説明を受けたところですが、委員からは、より精緻な地震動評価を行ったうえで、本当に上回ることがないかの評価を行うよう指摘がなされたところであります。

県といたしましては、ワーキングチーム委員の指摘も踏まえ、引き続き、地震対策についての他の論点も含め審議し、検証を進めてまいります。

【山中】

引き続きワーキングチームで検討するということで、原電はその必要がないとの答弁だったようですが、その日本原電が断層のデータの書き換え、ねつ造をしたことが発覚し、規制委員会で大問題になりました。福井県の敦賀2号機で、活断層の判断に必要なボーリング調査を、無断で削除し上書きしていたことが明らかになりました。

さすがに規制委員会も深刻な問題と捉え、更田委員長は、「科学や技術について、最も初歩的な部分が欠落している」「本当にひどい」と厳しく原電を批判しました。

このような原電が、東海第二の「敷地には将来活動する可能性のある断層等は認められない」と報告したからと言って信用できるでしょうか。

再稼働の根幹に関わる活断層の有無について、県は独自に調査し検証するのか伺います。

【知事】

東海第二発電所安全性検討ワーキングチームにおいて、その必要性の有無も含めて、今後検討していきたいと思います。

【山中】

今後検討していくということなので、速やかにその点は明らかにしていただきたいと思います。
目先の利益で県民を大事故に巻き込むことは、決して許されることではありません。再稼働のために多額の費用を費やすのではなく、廃炉のために活かすことが必要です。

以上で質問を終わります。

以上

2020年3月茨城県議会 予算特別委員会 山中たい子議員の質問と答弁(大要、PDF)

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