2020年3月茨城県議会 江尻加那議員の一般質問と答弁(大要)
江尻加那議員の一般質問と答弁(大要)
2019年3月9日(月) 茨城県議会 第1回定例会
【質問事項】
- 新年度予算と施策について
(1)生産拠点の再編・売却による雇用と地域への影響
(2)地域医療と感染症対策
(3)家族経営の農家の重要性と有機農業の振興
(4)災害に強い河川・ダムの治水対策
(5)環境保全を重視した公共事業への転換 - 認可外保育施設の重大事故防止と改善策について
- 特別支援学校の環境整備と支援教育の拡充について
- 東海第二原発の再稼働問題について
項目
1. 新年度予算と施策について
(1)生産拠点の再編・売却による雇用と地域への影響
【江尻】
日本共産党の江尻加那です。新年度予算案や施策について、知事ならびに教育長に質問いたします。
大井川知事就任後3度目の予算案ですが、所信のたびに出てくる知事のキャッチフレーズは、「日本一」、「スピード感」、「選択と集中」、そして「トップ」の連発です。そのすべてに貫かれているのは、「稼ぐ、儲かる」という思想です。
その結果、どのような県政が進められたでしょうか。
県民の暮らしに目を向ければ、消費税の増税に加えて、甚大な被害をもたらした東日本台風、その被害救済もままならないうちに、新型コロナウイルス感染症の拡大です。現時点で、患者が確認されていない本県であっても、その影響は深刻さを増しています。
このうえ、感染が始まってしまったら、一番に被害を受けるのは高齢者、障害者、子どもとその家族、そして中小零細業者です。
こうした県民の実情と不安を前にしても、知事の目はもっぱら営業に向けられています。
企業呼び込みの補助金やクルーズ船、パンダの誘致、そして今度は130億円もかけて「ジンベエザメ」だと言います。これが果たして「選択と集中」でいま優先することなのか。「スピード感」を焦るあまり、多様な意見に耳を貸すことは後手後手になり、いったい誰が稼ぐのか、なぜそれを選択するのかおぼつかない状態です。
知事が力を入れる工場立地や本社機能の移転が県西、県南地域に集中する一方、鹿嶋では日本製鉄が、県北では日立製作所が、生産拠点の再編、統合をさらに進めています。
こうした状況に日立市は、「地元製造業の9割が中小企業だが、大企業の動向が事業所数の減少に大きく影響し、日立市の人口は約3万人、製造業従事者は約2万人減少している」と述べています。
大企業の再編リストラに飲み込まれ、廃業となる中小事業所が顕在化していることに対し、県は何も手を打たないのか。グローバル企業と言えども、事業所の閉鎖、移転、縮小には自治体と協議する仕組み「リストラ・アセスメント制度」をつくって雇用の維持を働きかけるべきと考えますが、知事の所見を伺います。
【知事】
江尻加那議員のご質問にお答えいたします。
初めに、新年度予算と施策についてお尋ねをいただきました。
まず、生産拠点の再編・売却による雇用と地域への影響についてでございます。
県北地域、特に日立市は、日立製作所をはじめとする大手企業とその取引関係にある中小企業が立地する県内有数の工業集積地域となっております。
しかしながら、近年は、経済のグローバル化の進展に伴い、製造業の生産拠点の海外移転等による大手事業所の規模縮小や事業の統廃合に加え、東日本大震災の影響などもあり、産業の空洞化が進み、深刻な地域経済の停滞に直面しております。
特に、日立市では、震災直前の2010年に約1万5千人であった大手企業従業員数は、2019年に約1万3千人と、10年間で2千人以上も減少しており、同時期に市の人口も1万7千人減少しておりますので、大手企業の経営動向が、地域の活力維持に少なからず影響を及ぼしているものと認識しております。
事業所の規模縮小や統廃合は、企業自身の高度な経営判断によるものであり、行政が介入するのは困難な面がございます。
しかしながら、大企業に社会的責任を認識してもらう必要があると考え、毎年、経営者協会をはじめとする経済団体に対して、私自ら、労働者の雇用機会の確保や雇用環境の改善、賃金引上げなどを要請しているところであります。
また、大企業における人員削減により多数の離職者が生じる場合には、県内6か所の就職支援センターがハローワークと連携し、離職者のニーズに応じたきめ細かな再就職支援を行い、雇用の安定を図っております。
さらに、県内立地企業への個別訪問や企業幹部との懇談会の開催により、企業が抱えている課題や、要望等の聴取を通じて、企業ニーズを踏まえた立地環境の整備や雇用の確保に努めております。
県といたしましては、人口減少が著しい県北地域の活性化に向けて、引き続き、雇用機会の確保が図られるよう企業に働きかけるとともに、高い技術力を持つ企業や研究機関等が集積する強みを活かし、地域の「稼ぐ力」の向上に努めてまいります。
(2)地域医療と感染症対策について
【江尻】
次に、地域医療と感染症対策についてです。
新型コロナウイルスへの対応が喫緊の課題です。政府の対策が不安と混乱を招いていますが、感染症対策の原則は、早期発見・早期治療で重症化を防ぐこと。そのために検査態勢の確立が要です。
3月6日から、ようやくPCR検査が保険適用となりました。
そこで、第一に、医師が必要と判断したら、検査できる体制をつくること。第二に、検査機器や試薬を増やして、医療機関、民間機関でも検査できるようにすること。第三に、症状があっても検査をしてもらえないんじゃないかという県民の不安にこたえる丁寧な相談と正しい情報を周知することです。
本県で、新型コロナウイルス感染症の外来をもつ医療機関は21、入院を受け入れる感染症指定病院は11です。公立・公的病院もその多くを担っていますが、政府はその公立・公的病院を全国で424カ所を統廃合リストにあげ、民間病院を含めて13万病床を削減しようとしています。本県の地域医療構想でも、約5千床のベッドの削減計画となっています。
ただでさえ医療資源の乏しい本県で、病床を減らし、保健所まで減らし、地域医療が守れるでしょうか。国も県も削減という点では同じ方向です。入院ベッドを減らした分は在宅でカバーすると言いますが、家族や介護の負担が増えるだけでなく、今回のような緊急事態に入院病床が確保できなくなるのではと懸念いたします。
県民は高い国保税を払い、後期高齢者の保険料も医療費窓口負担もさらに値上げされようとしています。
そこで、統廃合の対象とされた本県4病院=笠間市立病院、水府病院、村立東海病院、小美玉市医療センター、それぞれが地域医療で果たしている役割について知事の所見を伺うとともに、リスト撤回を国に求めること。さらに県の病床削減計画を見直すべきと考えますが、所見を伺います。
そして今後、新型コロナウイルスの検査を本県でどう拡充するのかお答えください。
【知事】
まず、地域医療についてでございます。
今回、国が公表した再検証が必要な公立・公的医療機関等のリストは、作成にあたって使用した診療実績のデータが2年以上も前のものと古く、集計期間が1か月間と短いこと、また、分析対象が一部の診療区域に限定されているほか、全国一律の基準で機械的に算定したものであることなどから、地域の実情を反映したものとなっていないとの批判が多く出ているところであります。
今回、本県で指定された4つの医療機関については、既に回復期病床へ転換していたり、また、作成に使用したデータには反映されていない初期救急や婦人科領域で実績があるなど、それぞれの地域で現在求められる役割を担っていると認識しております。
一方、リストに対し、国からは「あくまで地域医療構想の実現に向けた議論をより一層活性化させるためのもの」、「医療機関の廃止や再編統合を決定したものではない」との解釈が示されております。
従いまして、リストの撤回を求めるよりは、それぞれの地域において、これらのデータも参考にしながら、地域の実情を踏まえた医療提供体制のあるべき具体的な姿について、関係者による議論を更に深めることが適当であると考えております。
なお、地域医療構想の目指す医療機能の分化や連携を推進することは、将来にわたって持続可能な効率的で質の高い医療提供体制の再構築につながるものであり、現時点でこれを見直す考えはございません。
さらに、地域住民の安心安全を守るためには、地域医療構想の実現に向けた議論の中で、県内の各医療圏において拠点的な役割を果たす医療機関を強化し、機能を充実させることが最も重要であると考えております。
このため、県としましては、最優先に医師を確保すべき医療機関と診療科を設定した上で、医師確保に努め、今年9月を期限と定め、着実に成果を上げているほか、医療資源が潤沢にない中でも質が高い医療が提供されるようICTを活用した広域的な医療連携体制の構築等に取り組んでいるところであります。
今後とも、将来を見据えた地域医療の充実強化に必要なあらゆる方策に取り組み、地域医療構想の実現に向けて推進してまいります。
次に、感染症対策についてでございます。
県では新型コロナウイルス感染症が国内で確認された当初より、県内における患者の集団発生に備えるため、感染症指定医療機関を中心とする関係機関と連携した医療提供体制の整備・強化を図ってまいりました。
また、各保健所に「帰国者・接触者相談センター」を設置するとともに、新型コロナウイルス感染症に罹患(りかん)している可能性のある方を、診療体制が整った医療機関である「帰国者・接触者外来」の受診へつなぐための体制を整備しております。
新型コロナウイルス感染症に関する検査については、「帰国者・接触者外来」において、医師が感染を疑い、さらなる検査が必要であると認めた場合に、保健所へ検査の相談を行なうように国で定めております。
県の検査体制につきましても、「帰国者・接触者外来」の医師は管轄保健所に検査の相談を行い、採取した検体を保健所が県衛生研究所へ搬送し、県衛生研究所においてPCR検査を実施する流れとなっています。
県衛生研究所での検査の実施状況につきましては、直近1週間の1日当たりの平均検査件数は約17件と、県衛生研究所における検査処理能力に照らしてひっ迫した状況にはなく、本県においては、医師が必要と認めたケースについては、全件PCR検査を実施してまいりました。
一方、国は検査体制の拡充を図るため「帰国者・接触者外来」で医師が必要と認めた検査については3月6日から保険適用とし、県衛生研究所以外の検査機関で実施できる新たな仕組みを構築いたしました。これにより本県では、1日最大100件を超える検査が可能となることになります。
県と致しましても、この仕組みに対応すべく必要な手続きを早急に進め、新型コロナウイルスの検査体制の強化に努めてまいります。
(3)家族経営の農家の役割と有機農業の振興
【江尻】
次に、農業の振興についてです。
知事は所信で、本県の農業産出額や所得額が減少した要因に、小規模で副業的な農家が多いことが構造的な問題だと述べました。しかし、国連やSDGsは、逆に「小さな家族経営を含め、多様な農林漁業が維持されてこそ、社会全体の持続性が高められる」と、「家族農業」を再評価しています。
全国3位の本県農業を支える家族農業こそ、茨城の強みではないでしょうか。
そこで、知事は家族経営の農家の重要性についてどう評価し、振興していくのか伺います。
いま、気候変動や環境汚染、自給率低下や飢餓の撲滅などへの取り組みとして、生態系に配慮した有機農業が注目されています。
「安全なものを食べたい」という消費者のニーズも高まっています。
昨年、共産党県議団と市民の皆さんで、県担当課と意見交換した際、あるお母さんが「輸入小麦の農薬グリホサートが心配。県産や国産の小麦パンを給食で提供してほしい」と要望がありました。
隣の韓国ではオーガニック給食が推進され、ソウル市内すべての小・中・高校で有機作物による給食の無償提供が始まるとされています。
日本でも、長野県で有機農業の拡大をめざす県議と市町村議が「信州オーガニック議員連盟」を発足させたり、北海道に次いで山口県が県産材料100%の給食パンを実施するなど取り組みが進んでいます。山口では県の呼びかけで、土地改良事業などで麦の奨励品種の作付を拡大したと伺いました。
本県でも、茨城の安全・安心な農作物を、子どもたちはもちろん、県民がもっと身近に食べられるよう有機農業の生産拡大に取り組んで頂きたいと思います。
そこで、本県の有機農業の振興策について、知事の所見を伺います。
【知事】
まず、家族経営の農家の重要性についてでございます。
本県農業の発展のためには、個々の経営体が収益性の高い経営を展開し、得られた利益や再投資することで、更なる収益性の向上や事業規模の拡大を図るという好循環を実現し、農業を若者が憧れるような産業にすることが重要と考えております。
このため、私は、経営規模の大小や、家族経営・組織経営といった経営形態にかかわらず、個々の経営体の所得向上にこだわり、生産性や付加価値の向上などに、意欲的にチャレンジする農業者を後押しする施策を展開しているところでございます。
まず、経営者マインドの醸成につきましては、若手農業者を対象にヤングファーマーズミーティングを開催するほか、農業大学校やいばらき農業アカデミーの講座において、経営の発展段階に応じた知識と技能の習得の機会を提供することにより、経営管理能力の向上を支援しております。
品目別の生産振興施策においても、このような考え方を反映させており、例えば、来年度予算にも計上したかんしょの生産拡大につきましては、県の職員が自ら農地調整に加わることによって、利用集積を進めており、県外から参入して大規模に事業展開しようとする法人のみならず、少しでも生産を拡大したいと考えている、家族経営の農家の希望にも対応しているところでございます。
また、常陸牛につきましても、スタート時点での規模の大小を問わず、事業規模の拡大と法人化による所得の向上を目指す経営者に対し、生産から経営、販売に至るまでの支援を一体化に行うこととしているところであります。
県といたしましては、今後とも、経営の規模や形態によらず、所得向上を目指す意欲ある経営体を後押しすることで、若者が憧れるような「儲かる農業」の実現を目指してまいります。
次に、有機農業の振興についてでございます。
有機農業は、健康や品質にこだわりを持つ消費者の需要に応え、農産物の付加価値を高めて差別化した販売ができる可能性があり、儲かる農業を実現できる手段のひとつであると考えております。
このため、今年度、県北地域において、有機農業で十分な所得が確保できる経営モデルづくりにチャレンジする「いばらきオーガニックステップアップ事業」を予算化いたしました。
現在、有機農業に取り組んでいる農業法人がこの事業を活用して、常陸大宮市において5ヘクタール規模の露地野菜の作付を準備する一方、県は、トラクターなど必要な農業機械の導入を支援するとともに、地域循環型農業のモデルともなるよう、地元の常陸牛生産農家が作った堆肥の活用を進めているところであります。
このほかにも、施設園芸で有機農業に取り組む2つの法人が、県北地域で生産拡大に意欲を見せておりますので、農地の紹介、地権者との合意形成の促進、機械等の導入補助を通じ、施設園芸のモデルづくりを支援してまいります。
また、有機農産物は通常の栽培のものと比べて生産コストが高いことを理解し、相応の価格で取引できる販売先の確保が重要となります。そのため、県内外の小売店や飲食店への有機農産物の需要調査や、その結果に基づく商談の支援などにより、生産者の販路の拡大や安定した取引先の確保をサポートしてまいります。
これらの取り組みに加え、今後は新たに有機農業に取り組む生産者が参考にできるよう、生産技術や収益性などの情報提供を行うことで、経営規模の大小によらず、儲かる農業を実現する有機農業を振興してまいります。
(4)災害に強い河川・ダムの治水対策
【江尻】
次に、河川やダムの治水対策についてです。
昨年の台風で、水戸市国田地域周辺でも堤防のない区間から那珂川が溢水し、大きな被害をもたらしました。地元住民が繰り返し堤防整備を求めてきた箇所です。そのたびに国交省は根拠もなしに「堤防は必要ない。大丈夫」と説明してきました。そして起こった洪水被害です。 国や県は災害が起こるたび「未曽有の」とか「想定外」と言いますが、水位計やカメラの設置、情報伝達などやるべき整備を怠ってきた政治の問題、人災です。
しかし、今般、国が示した今後5カ年緊急治水対策プロジェクトは、これまでの河川整備計画にわずかな手直し・上乗せをしただけです。
住民は説明会でも「こんな状態で家を建て替えても、また水が来るかもしれない」、「治水対策がしっかりしないと、ここには住めない」と訴え、生活再建の道さえ閉ざしているのです。
緊急治水対策プロジェクトに盛り込まれる新たな遊水地や霞堤を整備するにも、地権者や地元の合意がなければできないことです。
そこで、国田地区の堤防整備を含め、地域住民の意見をさらに計画に反映させることについて知事に伺います。
住民の不安は河川整備だけでなく、ダムの運用にもおよんでいます。
私は、昨年11月の臨時議会で、ダムの操作規則の見直しや事前放流などの体制整備を求めましたが、対策は取られたのでしょうか。
本県管理のダム7か所のうち2か所は、3・11東日本大震災後の水漏れで監視強化が必要という土木研究所の報告もあります。ダム本体の強度など防災対策も重要です。そこで、河川・ダムの治水能力の向上と管理の改善について、知事にお伺いいたします。
【知事】
近年の気候変動に起因して、平成27年関東・東北豪雨をはじめ、平成29年九州北部豪雨、平成30年西日本豪雨、そして昨年の令和元年東日本台風など、記録的な豪雨や台風が相次いで発生しております。
令和元年東日本台風では、県北地域を中心に、観測史上最大の24時間雨量を記録し、河川において堤防決壊や越水等の被害が生じ、道路においても冠水や法面崩落等が生じるなど、甚大な被害が発生しました。
一方で、様々なご指摘のありました八ッ場ダムがその機能を発揮するなどして、利根川の越水等を未然に防いだということもございました。
本県においては、これまでに、すべての被災箇所において応急復旧工事が完了しており、出水期である6月までに被災前の安全度を確保するため、本復旧工事を進めているところであります。
こうした中、特に被害が大きかった那珂川及び久慈川においては、国・県・市町村が連携して「緊急治水対策プロジェクト」を策定し、河道掘削や堤防整備などの河川の整備による「流す対策」、霞堤の整備などの遊水機能の向上による「ためる対策」に加えて、浸水が想定される区域において「土地利用・住まい方の工夫」にも取り組むなど、3つの取り組みが一体となった多重防御治水により、浸水被害の最小化を目指すこととしております。
このプロジェクトの実施にあたりましては、国、市町村と十分に連携するとともに、地域住民にも適切に説明を行いながら取り組んでまいります。
また、ダムによる治水対策につきましては、令和元年東日本台風においても、ダムによる洪水調節によって治水効果が発揮されたところであり、現在、洪水前にダムの貯水量をより一層減らす方法やダム操作状況の分かりやすい情報発信ができるよう、国・県・市町村で構成する減災対策協議会の場などにおいて、検討を行っているところであります。
さらに、その他の河川につきましても、国の「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」予算を活用し、樹木伐採や河道掘削、橋梁の架け替えなどを集中的に実施しているところでございます。
加えて、水位計、河川監視カメラの増設、ハザードマップの周知やマイ・タイムライン作成支援、より実践的な防災訓練の実施など、住民にとって分かりやすい河川の情報提供や関係機関と連携した住民の防災意識の向上などのソフト対策も進めてまいります。
県といたしましては、国・市町村との連携を一層強化し、那珂川及び久慈川の緊急治水対策プロジェクトをはじめとして、災害に強い河川・ダムの治水対策に全力で取り組んでまいります。
(5)環境保全を重視した公共事業への転換
【江尻】
次に、環境保全を重視した公共事業への転換についてです。
近年の異常気象、災害・被害の大きさから、環境保全に対する関心は大きな高まりを見せています。
ところが、本県が国と一体に進めている公共事業、たとえば常陸那珂港建設や霞ヶ浦導水事業は、今の時代に逆行するものとなっています。
先日、あらためて常陸那珂港を視察しました。大型石炭火力発電で燃やした灰で海を埋め立て、その上に港用地を作ろうとしています。
県の担当者は、「石炭灰を処分したい電力会社と、海を埋め立てて欲しい県はウインウインの関係だ」と、つまり、どちらにとっても得になると説明しました。海を処分場にして、今後何十年と大量にCO2を排出する石炭火発の灰で県の港を作りながら、一方で県民にCO2削減に取り組もうと言えるでしょうか。温暖化対策に逆行する事業は中止・見直しすべきです。知事の所見を伺います。
霞ヶ浦導水事業についても、生物多様性条約や基本法に反する中身となっています。水系ごとに異なる動植物を保全するため、他の水系へ水を移動させてはならないとされているのに、那珂川と利根川と霞ヶ浦で水をやりとりさせる事業です。
そもそも、国は30年以上も工期を延長し、事業費も本県負担金も増額されました。期間も予算も守らない事業が民間なら通用するでしょうか。本県の負担金は最終的に851億円に膨らみます。今後これで収まるかどうかも分かりません。
水質浄化など治水事業は、本来は国が負担と決まっているにも関わらず、この分まで県に負担させています。こんな契約は無効・不履行だと、これまで払った分の返還を求めることです。
川の水を入れて霞ヶ浦が流れるようにすると言っても、そもそも海と繋がる逆水門で流れが制限されています。
導水事業は中止し、霞ヶ浦に入ってくる生活排水や家畜排せつ物の処理と適正管理に直接充てるべきではないでしょうか。知事の所見を伺います。
【知事】
まず、常陸那珂港区整備の見直しについてでございます。
茨城港常陸那珂港区は、平成10年の開港以来、順調に取扱貨物を増やし、現在では、北米や韓国、中国との定期コンテナ航路をはじめ、東南アジア諸国やアフリカ、西ヨーロッパへの定期RORO航路など17の外国定期航路と、北海道や中部、九州地方とを結ぶ3つの国内定期航路、合計20の定期航路を有する一大輸送拠点として発展を遂げてきたところでございます。
また、平成23年に全線開通した北関東自動車道などの高速交通ネットワークの充実により、北関東地域とのアクセス性が一層向上し、平成30年の常陸那珂港区の取扱貨物量は、約1,380万トンと過去最高を記録するなど、今後も北関東地域はもとより、首都圏の生活と産業を支える重要な物流拠点として、期待されているところでございます。
そのような中、昨年5月には、既に立地している建設機械メーカー・コマツ、日立建機に続き、新たに加藤製作所の進出が決まったほか、北米向けに完成自動車を輸出しているスバルについても、輸出量の大幅な増加が計画されているなど、今後、益々増大する貨物需要に対応するためには、湾岸機能の更なる強化が必要となっております。
湾岸機能の強化につながる中央ふ頭地区における石炭灰の埋め立てについては、発電事業者の要請に基づき実施しており、護岸など埋め立てに係る費用は同事業者が負担しております。
議員ご意見の火力発電の是非は国で議論されるべきものと考えますが、現在、稼働中の火力発電所により石炭灰が排出されている状況下において、その石炭灰を利用して埋め立てを行うことは、湾岸整備費を抑制しつつ、新たな用地を生み出せることから、県にとっても十分にメリットの高い手法であると認識しております。
なお、石炭灰の処理については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で求められている十分な管理体制を敷いております。
県といたしましては、常陸那珂港区が持つポテンシャルを最大限活かし、「産業を支え、国内外と夢をつなぐ首都圏のニューゲートウェイ」となるよう、引き続き、常陸那珂港区の整備に取り組んでまいります。
次に、霞ヶ浦導水事業の中止についてでございます。
霞ヶ浦導水事業につきましては、霞ヶ浦や桜川・千波湖の水質浄化、利根川・那珂川の渇水対策、新規都市用水の確保を目的に事業を実施しているところでございます。
まず、水質浄化効果につきましては、国の試算によれば、西浦の湖水は、現在、年間約2回入れ替わっているものが、導水により約3回入れ替わることが見込まれ、また、桜川・千波湖につきましても、希釈や入れ替えが促進されるなど、導水による水質改善効果を期待しているところでございます。
次に、渇水対策効果でございますが、那珂川では、春の田植えの時期には、塩水遡上による農業用水の取水障害が起きるなど、毎年のように被害が生じており、また、利根川においても近年夏場に取水制限が行われていることから、これらの渇水被害の軽減も期待しているところでございます。
特に那珂川においては、平成30年10月以降の雨量が少なかった影響で、昨年4月27日から5月22日にかけて、農業用水が15%、都市用水が10%と、平成13年以来となる取水制限が実施されました。
このように那珂川では農業用水だけでなく、都市用水の取水にも支障を来すなど、決して安定して取水できている状況ではございません。
霞ヶ浦導水事業が完成することで、霞ヶ浦からの導水により那珂川の塩水を押し戻すなど、渇水の際の影響が緩和されるものと期待しております。
さらに、新規都市用水の確保につきましても、霞ヶ浦導水事業の完成を前提に暫定水利権を取得し、すでに水道用水として県内10市町村約70万人に、工業用水として県内24事業所に給水しているところでございます。
このようなことから、霞ヶ浦導水事業は、水質浄化や渇水対策、新規都市用水の確保の観点から、本県にとって必要不可欠な事業と認識しております。
2. 認可外保育施設の重大事故防止と改善策について
【江尻】
次に、認可外保育施設における重大事故防止と改善策についてです。
昨年、私あてに「水戸市内のベビーホテルで2人の乳児の死亡事故があった」と情報がありました。
立入調査権を持つ県に確認したころ、「水戸市内の施設であることも、同じ施設で起きたことも言うことはできない」、「2件目の死亡は県の重大事故検証委員会で報告書をまとめた」との説明でした。
その報告書には、驚くべきことが書かれていました。県は施設の届出から7年間、毎年立入調査を行っていましたが、一度も国の基準を満たさず、施設長も職員も全員が保育の資格を持たない無資格者でした。子どもの健康診断も行われず、職員の台帳や保護者の緊急連絡先も整備されていませんでした。
なぜ、県は停止や廃止の命令を出さなかったのでしょうか。
共産党県議団は昨年11月に知事宛てに事故の再発防止策を要請し、そのことを受けた新聞報道があった後、ご遺族から連絡があり、悲痛な思いを訴えられました。
母親が迎えに行った時、一人で子どもをみていた施設長は寝ており、うつぶせ寝になった赤ちゃんの顔はすでに紫色に変色。救急隊が到着した時には心肺停止状態で、運ばれた病院で必死の心肺蘇生のかいもなく亡くなりました。
ご遺族は、「こんな施設だと知っていたら預けなかった。どうしてこの施設が許されていたのか。施設側からまともな謝罪もなく、県からは報告書が郵送されてきただけです」と、胸の内を話されました。
ご遺族は昨年末、知事宛に「質問兼要請書」を提出しています。ところが、2か月が過ぎた今も県からの回答はありません。知事は承知しているのでしょうか。
「日本一、子どもを産み育てやすい県をめざす」と知事は表明していますが、子どもを預ける親にとって、命綱ともいうべき行政の施設への指導監督がこのような状況では、産み育てやすいどころか、子どもの命さえ守ることはできません。
県内の認可外保育施設には、4千人を超える子どもが入所しています。しかし、国の基準を満たしていない施設が全体の4割も残っています。
そこで、県として死亡事故の事実や、基準に違反していた状況をなぜ公表しなかったのか。今後の再発防止や、基準を満たすために県の予算措置を含めた改善策を行う考えはあるのか、知事の所見を伺います。
【知事】
まずは、保育施設で亡くなられたお子様、そしてご家族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。保育施設での保育中の死亡事故については、絶対にあってはならないことであり、重大事故の防止は最優先で取り組む課題であります。
県では、今後このような痛ましい事故が二度と起きないよう、平成30年に発生した死亡事故を検証し、必要な再発防止策を検討するため、外部有識者で構成する「重大事故の再発防止のための事後的検証委員会」を設置し、昨年10月に検証の結果及び事故の再発防止に向けた提言をまとめた検証報告書が提出されたところであります。
この報告書では、利用者がより安全な施設を選択できるよう、認可外保育施設を利用する保護者に対する情報提供の重要性が提言されております。
これを踏まえ、県としましては、これまではプライバシーの保護の観点から重大事故が発生した事実は公表しておりませんでしたが、今後は、県民の安全・安心の観点から、市町村との連携のもと、保護者が公表を望まない場合を除き、事故が発生した施設や事故の概要等について、公表してまいります。
併せて、国の指導監督基準を満たさない施設についても、新年度から、立入調査結果を公表してまいります。
また、保育ニーズが多様化する中、認可外保育施設もその受け皿として一定の役割を果たしており、認可外保育施設における保育サービスの質の確保・向上も大変重要な課題であると認識しております。
このため、検証委員会の提言を踏まえ、昨年11月から新たな取り組みとして、指導監督基準の遵守の徹底や、保育中の重大事故防止等に関する指導・助言を行う「巡回指導」を実施しているところであります。
来年度は対象施設数を大幅に拡大し、行政指導を行っても指導監督基準を満たさない施設については、児童福祉法に基づく改善勧告や施設名の公表等の行政処分を迅速に行うなど、指導監督を徹底するとともに、事故防止を目的とした研修を拡充するなど、重大事故の再発防止に取り組んでまいります。
併せて、認可外保育施設に対する支援に関しましては、例えば、守谷市において、東京都などと同様に、保育士等の配置数や保育室の面積など独自の基準を設け、この基準を満たした認可外保育施設を認証し、運営費の支援を行う「認証保育制度」を実施しておりますことから、特に待機児童が発生している市町村の参考となるよう、必要な情報提供を行ってまいります。
県といたしましては、これらの取り組みを通じ、保育施設での重大事故の再発防止を図るとともに、利用者が安心して子どもを預けられる環境づくりに取り組んでまいります。
3. 特別支援教育の環境整備と支援教育の拡充について
【江尻】
次に、特別支援学校の環境整備と支援教育の充実についてです。
本県にある25の特別支援学校のうち、15校・89教室が不足しています。そのため、一部屋を仕切って2クラスにしたり、廊下の突き当りに壁を設けて教室にしたりと、そのあまりの実態に、教育委員会は今年2月、「県立特別支援学校教育環境整備計画」いわゆる「いばとくプラン」を策定しました。
教室不足の解消策として、水戸飯富特別支援学校の通学区域を一部変更し、つくばの校舎を増築するほか、内原特別支援学校に新たに高等部を設置することは、私も以前から要望してまいりました。
しかし、これまでの5年ごとの計画と違って、「いばとくプラン」は整備期間も予算の裏付けも不透明な状況です。
さらに、大変な過密状態であるつくば市や遠距離通学で波崎の子どもに苦痛を与えている神栖市への新設が必要です。
そこで、いばとくプランにおける計画期間の明確化と予算の確保、つくば市や神栖市への特別支援学校新校設置を位置付けることについて、教育長の所見を伺います。
あわせて、地域の小中学校で障害のある児童生徒が増えており、すべての学校で学びの場を確保することが重要です。
中でも、学習障害については通級指導教室など極端に少ない現状です。学習障害は全般的な知的発達の遅れがないけれども、読む、書く、計算するなど特定分野に困難があり、教師は実践の積み重ねによる専門性が求められます。
そこで、学習障害の通級指導教室を全県的に設置するとともに、指導者の育成に力を入れて頂きたいと考えます。教育長の所見を伺います。
【教育長】
少子化が進む中においても、県立特別支援学校は児童生徒数の増加に伴い、いくつかの学校では普通教室の不足、いわゆる不足教室が生じており、この解消が大きな課題となっております。
このため、県では、子どもたちの教育環境の改善を図るため、特に児童生徒数が増加している知的障害特別支援学校について、これまでも新校の設置や校舎の増築などを進め、不足教室の解消に努めてまいりました。
これまでの計画的な取り組みにより、この10年間で県立特別支援学校全体での不足教室は大きく減少しておりますが、依然として普通教室が不足している学校があり、また、知的障害特別支援学校においては、今後も当面、児童生徒数が増加することが予想されますことから、この度「県立特別支援学校教育環境整備計画」を策定したところでございます。
その内容でございますが、対象校の児童生徒数の推移や敷地の状況など、個々の事業により異なりますが、主に校舎の増築を行うほか、必要に応じで通学区域を見直すなど、各学校の不足教室解消のために施設整備を推進するものでございます。
ご質問のありました計画期間についてでございますが、令和2年度からの取り組みとしており、順次整備を進めてまいります。
なお、児童生徒数の推移や特別支援教育を取り巻く状況の変化に柔軟に対応していく必要がありますことから、あえて期間は設けておりませんが、今後、新たな課題が生じた際には、適宜、必要な取り組みを検討するなど、適切に対応してまいります。
また、予算につきましては、鹿島特別支援学校及び内原特別支援学校の校舎増築に係る経費等の責務負担行為を、本定例会に上程させていただいているところであります。
なお、つくば特別支援学校につきましては、校舎を増築する計画でございますが、そのために必要な土地の調査を行うなど、今後、増築に向けた具体的な検討を進めてまいります。
次に、神栖市内とつくば市内への新校の設置についてでございます。
県立特別支援学校の児童生徒数は令和6年度にピークを迎え、その後は減少に転じるものと見込まれておりますことから、新校の設置については、慎重に検討していく必要があるものと考えております。
このため、この度策定した整備計画においては、鹿行地区で鹿島特別支援学校の増築を、また、県南地区においては、つくば特別支援学校の増築を位置づけており、当面は、増築や通学区域の変更などにより、不足教室の解消を優先し、子どもたちの教育環境の改善を進めてまいりたいと考えております。
なお、神栖市など鹿行地区の児童生徒の通学の負担軽減につきましては、今後も引き続き、スクールバスの増車や子どもたちの個別状況等を踏まえた最適な運行コースの見直しを検討するなど、その負担の軽減に努めてまいります。
次に、通学指導教室の設置等についてお答えいたします。
小中学校におきましては、障がいのある児童生徒が増加傾向にあり、こうした子供たちに適切な学びの場を提供することは、大変重要なことでございます。
このため、県では、通常の学級に在籍しながら、障がいに基づく様々な困難を主体的に改善・克服するための自立活動の指導を行う「通級指導教室」について、市町村や学校を訪問した際、その設置を積極的に働きかけてまいりました。
その結果、本県の小中学校に設置されている、言語障害、情緒障害、LD・ADHDの「通級指導教室」は、5年前の64教室から、本年度は133教室と約2倍に増加しており、来年度についてもさらに増設される見込みでございます。
特に、LD・ADHDなど学習障害に対応した通学指導教室につきましては、5年前の6教室から本年度は52教室と大幅に増加するなど、その必要性が着実に認められているところでございます。
しかしながら、いまだに設置されていない市町村もありますことから、今後は、各障害に応じた適切な指導が行えるよう、その設置について、これまで以上に働きかけてまいります。
併せて、通級指導教室の指導者に対しては、これまでも基礎的な研修を実施したり、特別支援学校の巡回相談員による助言を行ったりすることで、指導力の向上を図ってきたところでございます。
さらに、来年度からは、大学と連携しながら、学習障害等に関する最新の知見と高い専門性を有する指導者を育成するためのプログラム開発を行うため、新たに「通級による指導担当者育成プロジェクト」を開始し、各地域における通級指導の中核となる指導員の育成に努めてまいります。
県といたしましては、今後も、県立特別支援学校の教育環境の整備を着実に進めていくとともに、指導者の育成を図り、通級指導教室の設置を促進するなど、県全体の特別支援学校教育の一層の充実を推進し、子どもたち一人ひとりが輝ける教育支援ができるよう、取り組んでまいります。
4. 東海第二原発の再稼働問題について
【江尻】
最後に、東海第二原発の再稼働問題について質問します。
安全と言っていた原発が震災に見舞われ、制御不能、大惨事に至った福島第一原発事故からもうすぐ9年になります。今なお本県にも影響が残っています。特に農林水産業について、その現状と対応を知事に伺います。
福島第一原発の廃炉作業で出される処理水を、海に放出する案に対し、知事は「科学的な説明だけでは納得できない。白紙で検討を」と、漁業者の声を代弁されました。処理水にはトリチウム以外の放射性物質が残っているとの報告があり、トリチウムについてはどんなに処理しても除去しきれません。基準値以下まで薄めたとしても、安全性への不安は払しょくされません。北海道地方がんセンターの放射線科医師の西尾正道氏らは、健康被害にもつながると海洋放出に警鐘を鳴らしています。
原発は、事故を起こさなくても稼働させるだけで放射性物質を環境に排出し、核廃棄物を増大させます。そうであるなら、処理水海洋放出に反対するのと同様、東海第二原発も再稼働させないことが被害の未然防止策です。
知事は、県独自の安全性検証や避難計画の策定をどう進めようというのでしょうか。笠間市、常陸太田市、常陸大宮市がつくったとしている避難計画に実効性があるのか、課題は解決できるのか、知事に伺います。
国の「原子力災害対策指針」では、原発を廃炉にして、燃料プールにある使用済核燃料をすべて乾式キャスクに移せば避難計画そのものが必要ないとしています。実現不可能な100万人規模の避難を考えるより、原発を廃炉にすることがよほど現実的選択ではないでしょうか。
原発立地県の知事として、いま一番重要なことは「県民の声を聞くこと」です。知事が声を聞かずに先延ばしにしている間にも、再稼働工事が本格化されようとしています。県民の声を聞けという世論に正面からどうこたえていくのか、知事に伺います。
以上、答弁により再質問させていただきます。
【知事】
まず、福島第一原子力発電所事故に伴う農林水産業の被害の現状と対応についてでございます。
事故が発生した平成23年以降、最大42品目の本県産農林水産物が国の出荷制限指示等を受けておりましたが、現在は、特用林産物5品目、魚介類2品目、野生鳥獣の肉類1品目の計8品目にまで減少してきております。
また、中国や韓国、台湾など、一部の国や地域では本県産農林水産物や食品に対する輸入規制が行われている状況にございます。
県といたしましては、国の出荷制限指示等を受けている品目について、その安全性が確認され、出荷制限指示等が解除されるよう、引き続き、放射性物質検査を行ってまいります。
また、輸入規制措置を続けている諸外国・地域に対し、科学的根拠に基づく規制の撤廃を要請するよう、国に求めてまいります。
次に、再稼働問題に係る県の対応についてでございます。
まず、安全性の検証についてでございます。
県におきましては、事業者が国に新規制基準適合性審査を申請した平成26年から、これまでに、東海第二発電所安全性検討ワーキングチームを16回開催し、安全性の検証を行ってまいりました。
また、昨年は国の新規制基準適合性審査等の結果を踏まえ、審査結果の住民説明会を開催するとともに、広く県民から安全対策に関する意見を募集したところであります。
県民からは約1,200件の意見が寄せられましたが、約200の論点に整理し、今年の2月から検証を開始したところであり、引き続き、新たな安全対策により、どのような事故・災害に対応できるようになるのかなど、県民が疑問や懸念をお持ちの論点について検証をおこなってまいります。
次に、避難計画の課題につきましては、既に策定されている3つの市においては、例えば、避難に際し支援が必要な在宅の方への支援体制や、避難に必要なバスや福祉車両の確保などが挙げられております。
県においては、これらに加えて、避難退域時検査などの防災業務にあたる人員の確保や、屋内退避中におけるライフラインの確保などの課題があるものと考えております。
これらの課題につきましては、県において、例えば、バスの確保については県バス協会と、また、避難退域時検査にあたる人員の確保については、原子力事業者と協議を行うとともに、県主催の勉強会や内閣府主催の東海第二地域原子力防災協議会作業部会において、国や市町村、関係機関と課題の共有認識を図ったうえで、解決に取り組んでいるところであります。
また、議員からは、県民の意見を聴くという事について、来年度どのように進めていくのかとのお尋ねをいただきましたが、県といたしましては、スケジュールありきではなく、安全性の検証と実行性ある避難計画の策定を図ったうえで、県民の皆様に情報提供を行い、然るべき時期にご意見を聴いてまいります。
※時間切れにより再質問無し
以上
2020年3月茨城県議会 江尻加那議員の一般質問と答弁(大要、PDF)