2019年3月茨城県議会 予算特別委員会 江尻加那議員の質問と答弁(大要)
江尻加那議員の予算特別委員会質問と答弁(大要)
2019年3月20日(水) 茨城県議会 第1回定例会
【質問事項】
- 東海第二原発をめぐる県の対応について
(1)県独自の安全検証
(2)県民意見の聴取と反映 - 市街地再開発事業について
(1)許認可者としての県の役割
(2)人口減少社会に対応する市街地整備のあり方 - 私立高校経常費補助の取扱い変更について
- 児童相談・児童虐待対策について
(1)児童福祉司、児童心理司等の拡充
(2)児童相談所、一時保護所の拡充
項目
1. 東海第2原発をめぐる県の対応について
(1)県独自の安全検証
【江尻】
日本共産党の江尻加那です。よろしくお願いいたします。
まず初めに、東海第二原発をめぐる県の対応について、大井川知事に伺います。
先の県議選では、私共候補者全員に原発再稼働の是非を質問した結果が報道されました(東京新聞)。「賛成」と答えた方はゼロ。私は「反対」と答えましたが、議員のうち12人が「反対」、他の多くは「どちらとも言えない」という回答でした。原発発祥の茨城で「賛成ゼロ」というのは、この間の県民世論の反映だと感じました。
しかし、知事は未だにご自身の考えを示されておりません。
県の「独自検証を行う」「防災体制を構築する」と言っているうちに、日本原電はついに本格的に再稼働をめざすと表明を致しました。
そこで、まず、県の原子力安全対策委員会で、どのような安全検証がこの間行われているのか。とくに地震や津波対策の重要なポイントについてお答えいただきたいと思います。
【知事】
お答えいたします。東海第二発電所の再稼働問題につきましては、施設の安全性に関する検証や実効性のある原子力防災体制の構築を図った上で、これらの内容を広く情報発信し、県民の声を丁寧に酌み取っていくことが重要と考えております。
このため、県原子力安全対策委員会、東海第二発電所安全性検討ワーキングチームにおいて、地震対策や津波対策、重大事故対策など様々な観点から、東海第二発電所の安全対策について検証を行っているところでございます。
【江尻】
どのような点が具体的に議論なされているのか。専門家の委員の方々からはどのような質問がなされて、日本原電はどのようにいまの時点で説明されているのか、ということを事前にお聞きしたはずです。
地震や津波というのは、地下や海底に原因があるために常に新しい研究や知見が示されています。
資料1(パネル)をご覧ください。
これは、アメリカにあるスクリプス海洋研究所などのグループが、学術誌『ネイチャー』(※1)に発表したものをもとに私どもで作成しました。
日本列島を縦断する中央構造線が、本県を通り、さらに太平洋の海底にある日本海溝まで延びていることを示す証拠が見つかったとして、2011年・東北沖地震のメカニズムを考える上で非常に重要な研究成果だと言われています。
あわせて見過ごせないのは、この構造線の北側(赤い線)で大規模地震が多発しているという指摘です。知事は東海第二原発がどの辺りにあるかだいたい分かりますか。まさにこの構造線の北側です。
さらに、これとは別に、本県を通る棚倉構造線(※2)(青い線)。これは原発の西側、太田の地域を通って太平洋に伸びています。これは本県の自然博物館の調査報告書(※3)にも示されていますが、県が20年ぶりに見直した地震被害想定では、棚倉破砕帯は常陸太田までしか存在しないとして、私共もこういった説明を受けたのですがなぜか。
いずれにしても、本県の地震リスクが高い場所に東海第二原発が立地していることを、率直に知事はどう受け止めているのかお聞きします。
(※1)雑誌「nature」2016.3.3 Vol.531 No.7592
P.92~96「Upper-plate controls on co-seismic slip in the 2011 magnitude 9.0 Tohoku-oki earthquake(地震学:上盤プレートが2011年マグニチュード9.0東北沖地震の地震時すべりを支配した)」(※2)【棚倉破砕帯】棚倉断層とも。福島県棚倉町から茨城県常陸太田市にかけて北北西~南南東へ約60kmのびる大規模な横ずれ断層。北方延長は山形県酒田市から日本海へぬけ、南方延長は鹿島灘から銚子沖へ続くと推定されている。この構造線を境に西南日本の帯状構造がとぎれ、東西で中生代以前の地質分布や岩石の特徴が大きく異なることから、この構造線が地質学的には西南日本と東北日本の境界と考えられる。(「コトバンク」より)
※参考…「しんぶん赤旗」2016年3月4日掲載「中央構造線 東へ長かった…太平洋海底まで/国際研究グループ発表 地震メカニズム解明へ」
【知事】
原子力安全対策委員会におきましては、地震の問題、津波の問題、さまざまに検討しているところでございます。
地震対策につきましては、これまで、発電所敷地周辺の断層の最新活動時期や長さなどの形状等に関する評価、また想定する地震動の規模などについて、日本原電から、国の審査結果も踏まえた説明を聴取の上、審議してきたところでございます。
委員からは、1993年の釧路沖地震のような太平洋プレート内部で発生するタイプの地震が、東海第二発電所の真下で発生した場合の影響について、国の審査の評価対象となっていないものの考慮するべきとの趣旨だとは思いますが、現在そういった点も含めまして日本原電に追加の評価を求めているところでございます。
また、東海第二発電所周辺で発生する可能性のある活断層型の地震について、国の審査で用いている評価条件を、より厳しくした上で発電所への影響を評価するよう、日本原電に求めております。
さらに、津波対策につきましては、想定する津波の規模、防潮堤等の津波防護施設などについて、日本原電から説明を聴取の上、審議してきたところでございます。
委員からは、津波に伴う漂流物について、国の審査では5トンの漁船が想定されているところ、周辺の港に大型の船舶が出入りしていることなどから、漂流物の選定の考え方を示すべきとの指摘がなされており、今後、日本原電から説明を聴取することとしております。
この他にも委員から数々の意見が出されているところであり、先般開催した住民説明会で出された意見なども踏まえて、今後しっかりと審議してまいりたいと考えております。
【江尻】
知事からもご答弁がありましたように、津波対策についても、防潮堤にぶつかってくる船舶などの漂流物について議論がなされました。
資料2(パネル)をご覧ください。
当然、原発の北側には日立港、南側には常陸那珂港が隣接し、日常的に1万トン級の大型タンカーなどが行き来しています。しかし、その時の日本原電の説明は、「津波は南東寄りから襲ってくる」「日立港からは流れて来ない」「一番大きい漂流物は5トンの漁船だ」と答えました。
専門家の委員からは疑問がでるのは当然だと私も傍聴していて思いました。ところが規制委員会は、「世界で一番厳しい基準」などと言いながら、わずか5トンの漁船衝突しか考慮しない原電の解説を考慮して防潮堤を認めました。本当にこの防潮堤で大丈夫なのか、検証していただきたいと思いますが、問題は、知事がこの防潮堤の工事の実施を現段階ですでに認めてしまっていることです。
知事は「安全性向上のためだから反対する理由はない」と本会議で述べました。
しかし、再稼働する場合としない場合に、作るべき防潮堤の規模や構造、費用は同じなのか、違うものになるのか確認されたのでしょうか。おたずねします。
【知事】
確認は当然していませんけれども、当然、日本原電側としては再稼働を目指すと言っているんでしょうから、再稼動をする前提で防潮堤を安全対策上必要なものとして作っているという事だと思いますが、直ちにこれを、防潮堤を作ったからと言って、県として再稼働を前提としたものと認めるわけでありませんし、その旨当事者にもお伝えしているところであります。
【江尻】
再稼動をする場合としない場合とで防潮堤が違うのか同じなのか。なぜ確認しないまま工事を認めるのか。私はその点について規制委員会に確認しました。規制庁企画課・安全管理調査官の山口道夫氏、この方は県主催6回の住民説明会でいずれも中心的に説明していた方ですが、先の点を伺いますと、知事が述べたように、「規制委員会の審査は運転させる原発」であり、廃炉にする原発の場合は「別途、廃止措置の中で対策も審査する」という答えでした。
知事が工事を認めている、それによって再稼働を認めたわけではない、というこの2つの考え方、矛盾していると思うのですが。
同じように立地自治体である6市村は、「広域避難計画を策定されていない現状で、再稼働の為の工事がなし崩し的に始まるようなことはあってはならない」 と原電にきつく仰っています。この首長との立場も知事は違うのでしょうか。既成事実として工事が始まる、本格的な着工が進められてもいいということなのか、お伺いいたします。
【知事】
繰り返し申し上げますが、現時点で安全対策上資するものということで、東海第二原発が作っている防潮堤の工事を県側から止める理由はございません。ただしそれが必ずしも東海第二原発の再稼働に直結するものではないということの認識を繰り返し申し上げておりますし、その点については、6市村の首長さんと立場を一にしたいと考えております。
(2)県民意見の聴取と反映
【江尻】
立場を一にしてというのであれば、今の状況でなし崩し的な工事が始まるようなことがあってはならない、ということについてもきちんとコンセンサスをとっていただきたいと私は思います。
そして知事が今後の判断において、県民意見の聴取をどうされるのか、どう反映されるのかということについて次に伺いますが、茨城大学の渋谷敦司教授が昨年から今年にかけて調査した結果、7割以上が住民投票などで一人一人に意見を聞くことを望んでいることが分かりました。渋谷教授は「原子力の専門家や、政治家への不信感があるのではないか」と分析しておられます。
そこで、知事はどのような方法が望ましいと現時点で考えているのか伺います。
【知事】
東海第二原発の再稼動につきましては、県民の生活に密接に関わる問題でありますことから、県民の安心安全の観点から慎重に判断していくことが大変重要であると認識しております。
まずは東海第二発電所の安全性について、県独自の立場から検証を進めているところであります。
また、万一に備えた実効性ある原子力防災体制の構築につきましても、大変重要でありますことから、東海第二地域原子力防災協議会などにおきまして、様々な課題の解決に取り組んでいるところであります。
県といたしましては、これらの取り組みの結果について、県民の皆様に十分ご理解いただけるよう、広く情報提供したうえで、再稼働問題について県民の皆様からご意見を頂き、慎重に判断してまいりたいと考えておりますが、意見を聴取する方法につきましては、まずは安全性の検証や実効性ある原子力防災体制の構築を行った上で、しかるべき時期に打ち出せるよう、慎重に検討しているところでございます。
【江尻】
そういう知事のお答えを聞くたびに思い出されるのが、知事選出馬表明の際、「住民の皆様の直接の意見表明という機会も与えていいのではないだろうか。住民投票ということです」と述べたこと、覚えてらっしゃるでしょうか。今もそういうお考えがあるのか。
また、県民の声を聞く絶好の機会であった1月~2月の6回の県主催の住民説明会に、忙しい中とは思いますが知事は一度でも参加されたのか。2点、お聞きします。
【知事】
住民の、県民の皆様からのご意見の聞き方については、然るべき時期に打ち出すよう慎重に検討しているところでございます。住民の皆様方の説明会の結果については、逐一報告を受けているところであります。
【江尻】
もう一度、説明会に6回参加されたかどうかお願いします。
【知事】
参加しておりませんが、中身については全部把握しております。
【江尻】
住民の声を聞く、これが知事のスタンスだと思いますし、初めて県が主催した説明会に担当課と共に知事に参加していただきたかった。
私たちはもう知っているのではないか。広く県民の声を聞けば、再稼働しないでほしいという声が多数になること。県民の意見を反映して判断すれば、再稼働を認めるのは無理だということを知事も感じているのではないでしょうか。一日も早い反対表明を求めますが、お答えください。
【知事】
県民の意見をしっかり聞きながら慎重に判断してまいります。
【江尻】
「意見を聞いて」というだけではなく、聞く機会が初めてあった説明会に参加されなかった、ということについて多くの県民の皆様は、どうして知事が来られないのかと思ったと私は感じました。
6回の議事録は物凄い量です。 是非お読みいただいて判断に活かしていただきたいと思います。
この質問は終わりにいたします。
2. 市街地再開発事業について
(1)許認可者としての県の役割
【江尻】
続いて、市街地再開発事業について、まず土木部長にお尋ねします。
私の地元、水戸市では泉町1丁目北地区市街地再開発事業により、地震で壊れた市民会館を建設しようとしています。巨大な規模と事業費も問題ですが、8年たってもいまだ再建されていません。市が持っている土地を活用すれば、もっと早く安くできたのに、という声も広がっています。
そうではなく、株式会社伊勢甚の空きビルを含む一角をすべて取り壊して市民会館を建てようというのであれば、その地区地権者の協力と合意が大前提です。
ところが現状は、地権者の合意のないまま、事業計画も権利変換計画までも県はすんなりと認めてしまいました。
地権者の方にお話を伺いました。「この場所で100年も商売している。ずっとここに住んでいる。まともな話し合いもなく追い出されるのか」と怒りを込めて訴えていました。そして、権利変換計画に必要な土地調書や物件調書のための立ち入りも断った。当然、同意書へのサインも断ったとしています。
では、市はどうしたかというと、測量調査できないものは、登記簿の情報で調書を作った。そして同意書には本人に代わって市の職員が署名押印したとしています。そして、この権利変換計画が県に提出されて(2/25提出)、わずか2週間余りの先週3月13日に認可が下ろされました。
どのような審査をなされたのかお示しください。
【土木部長】
お答えいたします。泉町1丁目北地区の市街地再開発事業は、水戸市と地権者からなります組合が施行者として進められているものでございます。都市再開発法に基づく市街地再開発事業におきましては、施行者であります組合が権利者の土地や建物などの資産額に応じて建築物の敷地や床の権利などを定めた権利変換計画を作成することになっております。そしてこの作成された計画に対しまして県の認可が必要となっております。
県といたしましては、組合から提出されました権利変換計画につきまして、その内容や手続きについて、都市再開発法の規定により定めなければならないとされております、配置設計などが適正に定められているか、また縦覧や審査委員の過半数の同意、再開発組合の総会など所定の手続きが適正に行われているかなど審査し、3月13日に認可したところでございます。
【江尻】
もう一度確認しますが、調書は確認されたのか。また代筆は通常本人の同意が前提であって、同意のない代筆の書類は法的に有効なのか、2点おしえてください。
【土木部長】
権利変換の認可申請は、添付証書を逐一チェックしたうえで審査を進めた結果、適正であると認め審査しております。なお、代筆の件につきましては私共今の時点で確認しているわけではありませんので、そういった事実があるかどうかも含めまして、今現在ここではお答えしかねます。
【江尻】
そういう曖昧な審査で、再開発事業者の許認可者である県の責任は問われないのでしょうか。
個人の財産・資産を権利変換するという、本当に大事な手続き・慎重な審査が求められたはずです。県が認可したことで、今後、土地と建物は市や再開発組合等に登記が移されます。そして組合や市は解体工事に着手するとしていますが、明け渡しの代執行で住民を追い出すことが許されるのか。本県で過去にそんな事例があるのか、その1点お答えください。
【土木部長】
先程の件でございますけれども、市の職員が代筆した調書は違法ではないかということですが、これにつきましては県といたしましては組合が法令に従い、適正に調書を作成していることを確認しています。
もう1点でございますけれども、「今迄そういった事例があったのか」という事につきましては、この段階では私共承知はしてございません。
【江尻】
少なくとも本県において再開発事業で行政代執行の事例はありません。
そういうことも確認しないで、それがあり得る認可を下したということに責任をしっかりと感じていただきたいと思います。
(2)人口減少社会に対する市街地整備のあり方
【江尻】
市民会館をつくるために、市民を追い出す。こんなことが強行されていいはずがありません。
そこで、知事に伺います。部長は席にお戻りください。
今のやり取りをお聞きいただいて、法令にのっとって進める、審査もしたと仰っていますが、法令に反しさえしなければ住民合意は置き去りにされていいのか。今の人口減少社会も含めてこの社会状況、時代の中で、市街地整備のあり方として、住民合意が大事だとは思いますが問題ではないでしょうか。知事の所見をお伺いいたします。
【知事】
お答えいたします。本県の水戸の市街地再開発事業につきましては、水戸市が事業主体でございますので、当然水戸市の住民の合意をきちんと踏まえた上での事業展開であると思いますし、合意に反していると一部の人は反対の方もいらっしゃるでしょうが、全体としては反対の方が多いという事実を私も聞いておりませんので、水戸市の責任においてきちんと進められているというふうに認識しております。
【江尻】
そこに住んで商売をされている方、1人であっても置き去りにしない取り残さない、住民合意が短期間で多数決で決められていいのか、市街地再開発の本来の趣旨に反すると思います。みんなで協力してこの土地を良くしよう、街づくりを良くしよう、それが大前提の上での再開発でなければいい街はできないのではと思います。
知事は、今定例会本会議で自民党代表質問におけるコンパクトシティへの挑戦ついて、こう所見を示しました。私はハッキリ印象に残っているのですが「居住地の移動を、本人の意思に反して行うことは困難であるなど難しい課題もあり、住民の理解と地域の合意形成が不可欠である」と答弁をされておりました。
今回の水戸市の事業も合意形成、人口減少の時代の中で、あれだけの大きな箱物、会館を作るということ、本当にこのまま県の認可の下で進めていいいのか、もう一度合意形成の重要性について知事の所見を伺います。
【知事】
市街地再開発事業は水戸市の事業でございまして、合意形成を取ることも含めて水戸市の責任において行われていると判断しております。
法令に則って県はその事業について認可をした次第です。
【江尻】
法令に則るというのが大上段にあって、認可ありきの申請じゃないか。
住民の合意、もちろん法令に則るというのは当然です。私は住民の合意抜きの市街地再開発というのは進めれば必ずどこかで行き詰まりがあるのでは。県の認可の判断というのも責任が問われると思います。事業の中止、認可の撤回を求めてこの質問は終わりに致します。
3. 私立高校経常経費補助の取扱い変更について
【江尻】
3点目として、新年度予算におきまして私立高校経常費補助の取扱い変更について、引き続き知事に伺います。
昨年9月27日付で、県内全ての私立高校に対し、新年度から県補助金の配分方法を見直す旨の通知が出されました。
その通知が、お配りしているA4資料です。ご覧いただきたいと思います。
具体的な内容は資料3枚目になりますが、現行制度では、一般分として基準割や生徒数・職員数に応じて全体補助金の98%を配分し、特別分が残り2%で各校の取組に応じて配分されてきました。次のページで、それを来年度から変更し、一般分を80%に減らし、特別分を20%に増やし、県が定める50項目の評価指標で取組を点数化し配分すると変更しました。
点数振り分けを見ると、医学部進学や難関大学への実績が多いと5点+α、郷土愛を育む教育等は3点、スクールカウンセラーの活用や特別支援教育の推進などは1点です。これほどあからさまに点数化することに、関係者から異論・意見はなかったのでしょうか。私共には、「これではまるで進学校へのご褒美ではないか」「スコアを付けて競わせるような事柄なのか」という意見が寄せられました。
補助金の全体額が決められている以上、増える学校があれば当然減る学校もあります。こういうやり方が真に教育を向上させるのか。知事の所見を伺いたいと思います。
【知事】
全日制高校にたいする経費経常費補助につきましては、現在生徒数や教員数等に応じまして配分する一般分と、教育の質の向上や医療・科学技術を担う人材育成など、特色ある教育の取組みに応じて配分する特別分により行っておりますが、一般分の配分割合が9割以上を占め、特色ある教育に対する評価が著しく低い状況にあります。
県内では少子化の進行により中学校卒業者が20年前に比べ約3割減少し、2万9千人を割る状況でありますが、今後20年を見ても同様の状況が予想されることから、人材の育成は益々重要な課題となっております。
こうした中で、県内私学では各校がそれぞれ建学の精神に基づいた独自の教育を展開することにより、本県公教育の重要な役割の一躍を担っていると認識しており、今回特別分の配分割合を高めることとするのは、頑張っている学校を応援していくという、基本的な考えに基づくものです。
私としては今後の人材育成に資する特色ある教育に応じた配分割合を高めることで、私立学校の優れた教育をさらに高め、引き続き本県の未来を創る人材の育成を担うという重要な役割を果たしていただきたいと考えております。
【江尻】
「頑張っている学校」、私立高校のどこが頑張って、どこが頑張ってないという事を県が評価するという事が本当に教育の中で適切なのか。さらに問題なのは、今回の変更について県は、「私立学校審議会の審議を踏まえた」としていますが、昨年8月と9月に行われた2回の審議会はいずれも非公開でした。たった2回の会議で、県は変更の大枠の方針を伝えただけだと聞いています。
いま知事が述べましたように、私学はそれぞれの自主性や自律性にもとづき、建学の方針を踏まえた特色ある教育というのは私学の柱です。この私学に対し、県の意向に沿えば補助金を多く配分するというのは、私学教育への行政の介入ではないかと思います。
経常費補助金のあり方については、今回の変更を固定化せず、各校現場の意見をもとに検証し、非公開ではなく、開かれた教育行政を推進することだと考えますが、再度所見を伺います。
【知事】
今回の変更におきましては5年間の経過措置を設け、急激な補助金額の変更にならないよう配慮しています他、周知期間を確保することによって、各学校が設定した配分項目への取り組みを進められるよう配慮しております。
また、30年9月27日付総務部長の通知の内容については、全24校を個別に訪問して説明を尽くした他、各校へのアンケートにより設定した配分項目の詳細についてご意見をいただき、その実施についてご理解をいただいています。
なお、学校・審議会においても私立高校の経常費補助金の今後の在り方として、特色ある内容に応じて配分する特別分の配分割合を高めていくことについて説明し、ご理解をいただいております。
今回の設定した項目等についても、今後の学校の取り組み状況等を踏まえ、さらなる特色ある教育を推進できるよう随時見直しを図ってまいりたいと考えております。
【江尻】
県がどういう教育を目指すのか、知事がどんな人材育成を目指すのか、人格形成で何を私学に求めるのかという考え・方針を伝えることと、それを補助金によって優劣をつけるということは、まったく別物だと思います。
急激な激変緩和を設けざるを得ない、それだけ影響が大きいということです。私学の建学の方針というものを最優先にしていただきたいと思います。この質問は終わりにします。
4. 児童相談・児童虐待対策について
(1)児童福祉司、児童心理司等の拡充
【江尻】
最後に、児童相談・児童虐待対策について、まず福祉担当部長に伺います。
私は2年前の予算特別委員会で、水戸市で3歳の男の子が虐待で亡くなった件を取り上げ、乳児院から家庭に戻した県の措置解除は正しかったのか。家庭に戻してから亡くなるまでの5日間、家庭訪問が一度も行われなかった問題等をふまえ、児童福祉司や心理司の増員とともに、専門性の向上を要望しました。
その時点では、本県の児童福祉司は55人でしたが、3年かけて75名まで増やすと答弁があり、来年度は83名の福祉司が配置されることになりました。しかし今後国は、3万人に1人の福祉司をめざす方向であり、そうなると本県でも100人体制が必要です。
そして、福祉司2人に1人の心理司配置も必要です。来年度は38人になりますが、うち16人は嘱託職員と聞きました。
そこで、さらなる福祉司の拡充とともに、心理司についても原則5年間の期限付き雇用の嘱託ではなく、正職員として配置が必要と考えますが、今後の取り組みについて、福祉担当部長にお聞きします。
【福祉担当部長】
お答えいたします。児童虐待の相談対応件数につきましては年々増加をしており、直近の平成29年度におきましては、県内児童相談所で対応した件数は2,256件と過去最高となっておりまして、児童相談所における相談対策強化がまさに大きな課題だと認識しております。
このため、委員からご指摘ございましたように、児童の保護や相談業務を主に担います児童福祉司につきましては、来年度、現在69名から83名へ増員を図り、国の基準を超える配置に努めてまいります。
また児童心理司につきましては、嘱託職員が主に知的障害のある児童の心理判定業務(療育手帳などを含む)そういったものを担っており、正職員はそれらの業務に加えまして、虐待を受けた児童の方に対するカウンセリングなどを担うなど役割分担をしながら業務を進めております。
この児童心理司におきまして、来年度は、先程ご指摘ありましたように、現在の31名から38名へ増員することとしておりますが、今後も必要に応じて正職員でなければ対応が難しい業務につきましては、正職員の配置を進めてまいりたいと考えております。
また専門性の観点では、来年度、児童相談所に人材育成を専門に行う部署を設けますので、そこで研修の充実向上を図ってまいります。
さらに国においては、2020年度までに児童福祉司等の専門職増員を図るという新しいプランを策定しておりますので、この動きを踏まえ、今後計画的に児童相談所の体制強化に努めてまいりたいと考えております。
【江尻】
部長ありがとうございました。
(2)児童相談所、一時保護所の拡充
【江尻】
最後に、知事に対し、児童相談所と一時保護所の増設を求めてお尋ねします。
資料3(パネル)をご覧ください。
県からいただいた資料をもとに、現在本県に3ヵ所ある児童相談所ごとの管轄人口や虐待相談件数、一時保護件数を示したものです。
中央児童相談所の広いエリアは、日立分室と鹿行分室でカバーされています。しかし、鉾田にある鹿行分室で対応件数が突出して多いのは神栖市であり、地理的な面からも負担が大きいとの意見も出されています。分室から相談所に格上げするとともに、設置場所の見直しが必要です。
さらに、相談件数が全体的に増えている中でも、土浦児相が最多です。国の運営指針では、人口50万人に相談所を最低1ヵ所としていることから見ても、県南地域にもう1ヵ所の増設が必要です。
また、虐待などから子どもを守るための一時保護所は、現在中央児相1ヵ所にしかありません。この広い茨城県で緊急保護において、より近くに一時保護所があることが大変重要であり、土浦児相管内に保護所の設置が必要だと考えます。
これらの増設について、知事の所見を伺います。
【知事】
お答えいたします。児童相談所につきましては虐待相談対応件数が年々増加しており、特に土浦児童相談所における相談対応件数が増えておりますことから、それに応じた職員の配置を行い、相談体制の充実に努めているところであります。
また一時保護につきましては、原則として児童相談所の一時保護所で対応しておりますが、一時保護所で受け入れできない場合の他、乳児や夜間の緊急対応のため、地元で一時保護する必要である場合などには、民間の乳児院や県内各地にある児童養護施設に委託を行い、速やかな児童の安全確保を行っております。
県といたしましては、児童虐待相談対応件数の増加を踏まえ、児童相談所のありかたや一時保護にかかる緊急時の対応について現在の対応で十分かどうか、引き続き慎重に検討してまいります。
【江尻】
専門職を増やすだけではなく、いま国が求めているもの、全国の流れは相談所・一時保護所も増やすという方向に動いております。
全国の児童相談所数は併せて211ヵ所。人口50万人に1ヵ所、ですから本県でいうと5ヵ所あって当然の規模です。
さらに一時保護所を見ますと、全国に137ヵ所あります。人口で見ますと90万人に1ヵ所。全国的にはもう設置されております。90万人に1ヵ所といえば、本県でも3ヵ所一時保護所があってもおかしくない。これが今の全国の状況だということを知事は認識しているのか。
相談所・一時保護所を本県は増やさないどころか、以前は3ヶ所あった一時保護所を1ヵ所に減らしてしまったということが橋本県政の時代でした。しかし今のこの虐待の状況を見れば、人を増やすだけではその役割が発揮しきれない、現場の職員の方の状況を見ても、相談所・一時保護所を増やすという決断が必要です。
ご所見を伺います。
【知事】
引き続き慎重に検討いたします。
【江尻】
こういう時にこそスピード感を発揮していただきたいと思いますし、子育ての孤立、貧困問題、育児ストレス、親の暴力性といろいろな課題があります。ぜひ施設の拡充に踏み切っていただきたいと思います。
以上で質問を終わります。
以上