2016年12月茨城県議会 予算特別委員会 山中たい子県議の質問と答弁
項目
山中たい子県議の予算特別委員会質問
2016年12月20日(火)
- 原子力行政について(答弁・知事)
(1)福島県からの自主避難者への支援
(2)東海第2原発の再稼働中止 - 産科医療体制について(答弁・知事)
(1)医師確保策
(2)分娩施設の整備支援 - 生活再建を基本とした徴税行政について(答弁・知事)
1. 原子力行政について
(1)福島県からの自主避難者への支援
日本共産党の山中たい子です。
はじめに原子力行政について質問します。
まず、福島からの自主避難者への支援についてです。
福島の原発事故から5年9ヶ月が経ちましたが、いまも8万3千人の方が避難生活を余儀なくされています。
ところが、自主避難者に対しては来年3月で、応急仮設住宅と民間借り上げ住宅の提供を打ち切ることになりました。
その対象は、福島県内・県外の12,239世帯、本県では221世帯です。
しかし、福島県の調査では、半数以上がこのまま、「避難先で避難継続」と回答しています。
つくば市に住む女性から相談を受けました。「事故にあってから何度も引っ越して、子どもにもつらい思いをさせました。やっと落ち着いた生活を取り戻したのに、帰れと言われても・・・」というものです。
親は子どもの将来と健康を最優先に考えるものです。
こうした切実な声に、本県も何とか応えることができないか。
そのために、国に引き続き応急仮設住宅と民間借り上げ、つくば市内の国家公務員宿舎についても継続して提供するよう要請していただきたい。さらに、県独自の支援策を検討できないか、知事にお尋ねします。
【知事答弁】
福島県からの自主避難者への支援についてお答えいたします。
現行の制度の継続を福島県及び国に対し働きかけることについてお尋ねをいただきました。
本県は、福島県からの要請に基づき、福島県から本県に避難している方々に対して災害救助法に基づく応急仮設住宅を供与しておりますが、平成28年11月30日現在で、いわゆる自主避難者は、221世帯、537人にのぼっております。
福島県では、自主避難者につきまして、災害救助法に基づく応急仮設住宅の無償供与に代わり、平成29年1月から民間賃貸住宅家賃への補助を実施するなど、新たな支援策に移行することとしております。
災害救助法に基づく救助につきましては、災害が発生した区域を所管する都道府県知事が判断することとされており、今回の自主避難者への対応につきましては、福島県が避難指示の解除や、解除後の住居の確保など諸般の状況を踏まえながら慎重に国と検討された結果でございまして、本県としても尊重すべきであると考えておりますので、本県が福島県及び国に働きかけていくことは、現在のところ、考えておりません。
次に、県独自の支援についてでございますが、まず、国家公務員宿舎につきましては、災害救助法の制度の中で、福島県の要請に基づき、本県が国から借り受けて避難者の方々に応急仮設住宅として供与しているものでありますが、供与の継続につきましては、これもまた福島県の判断を尊重すべきであると考えております。
また、県といたしましては、自主避難者の恒久的な住宅への移行が円滑に進むよう、福島県と協力しながら、戸別訪問による意向確認や住宅に関する情報提供を引き続き行い、被災者の実情や意向を十分くみ取りながら、住宅の確保などの支援について検討してまいりたいと考えております。
なお、県営住宅への入居を希望する方がいらっしゃる場合には、入居要件を引き続き緩和するなど、支援の継続を検討してまいります。
〔山中〕
先ほどの女性は原発事故後にシングルマザーとなり、ダブルワークで生計を立てています。
「子ども・被災者支援法」では、被災者が避難と帰還のどちらを選択しても適切に支援しなければならないと定めています。
避難計画をつくろうとしている本県にとって、被災者支援は避けることのできない重要な課題です。ぜひ本県独自の支援策をご検討ください。
(2)東海第2原発の再稼働中止
次に東海第2原発の避難計画と再稼働についてです。
知事は11月の記者会見で、避難計画が14市町村が出そろわないと再稼働の可否は判断できないと答えています。
県の広域避難計画では、30キロ圏96万人中56万人を県外に、40万人を県内に避難させるとしました。茨城県民、約100万人です。
ひとくちに100万人といっても、これは秋田県、和歌山県、山梨県の各県人口に匹敵します。一県、まるごと避難というとんでもない計画です。
事実、原発が立地する東海村は、今年度に策定するのは難しいとの見解を示しました。
避難人口のもっとも多い水戸市も、未だ策定中です。
このような実効性も裏付けもない状況で、知事は再稼働に同意できるのか。ご答弁ください。
【知事】
避難計画と再稼働の関係についてお答えいたします。
原子力災害に備えた広域避難計画につきましては、国の防災基本計画等により、UPZ内の市町村が策定することとされており、発電所の再稼働の有無に関わらず、策定するものであります。
また、再稼働に当たっての避難計画の位置づけにつきましては、明確な規定はありませんが、既に再稼働した地域の例を見ておりますと、各地域の原子力防災協議会において、避難計画を含むその地域の緊急時における対応が具体的かつ合理的であると確認された後、国の原子力防災会議においてもこの緊急時における対応が了承されていること、さらに、政府の再稼働要請文書においても、政府の方針の一つとして「避難計画を含む地域防災計画について、政府として、計画の更なる充実のための支援やその内容の確認を行うとともに、計画の改善強化に継続して取り組んでいく」旨が記載されておりますことから、密接に関係しているものと考えております。
各自治体における広域避難計画の取り組み状況につきましては、多くの市町村が今年度末の策定を目標にこれまで検討を進めてきており、既に4つの自治体では、広域避難計画の前段として計画案や骨子案の作成を終え、議会への説明や住民説明会、パブリックコメントなどを実施している状況にあります。
また、5つの自治体においても、現在、計画案や骨子案の作成に取り組んでおり、年度内には、議会等への報告や住民説明会等を行う方向で作業を進めるなど、各市町村においては策定に向けて鋭意作業を進めているところであります。
しかしながら、避難先が県外を含む広域かつ複数の市町村に及びますことから、個別市町村との避難所の割振り等の調整に時間がかかっており、また、住民説明会やパブリックコメントを実施した際に住民から出された様々な意見に対する対応などの検討に時間を要しております。
県といたしましては、このような課題解決に向けて引き続き支援し、市町村の広域避難計画が早期に策定されるよう対応してまいりたいと考えております。
東海第2発電所の再稼働につきましては、先程も申し上げましたとおり、国の原子力防災会議での緊急時における対応について具体的かつ合理的であるとの了承、あるいは、国から再稼働に関する具体的な方針が示された段階で、県の対応方針を決定してまいりたいと考えております。
〔山中〕
知事、100万人の避難計画です。
群馬との協議もやっと先月、始まったばかりです。複合災害の対応もこれからなど、課題が山積していますが、この避難計画を実行した場合、財政負担の積算、見積もりはしているのでしょうか。
災害救助法による避難者の救済費用は、国と県がおおよそ半分ずつ負担することになります。
そんな負担を想定してまで、再稼働させる理由がどこにあるでしょうか。
100万人の避難者を財政面でどう支援するのか。その試算をしているのか、いないのか。しているならお答えください。
【知事】
現在のところ、まだ広域避難計画がしっかりしたものになってきておりませんので、それに基づいた形での試算というものは行っておりません。
〔山中〕
策定中の避難計画は、ただの書面ですか?どれだけの費用がかかり、どのように支援されるのかが示されなければ、まさに机上の空論です。
次に、パネル(1)をご覧ください。
これは平成26年度、日本原電が周辺14市町でおこなった住民説明会で出された質問をまとめたものです。
もっとも多かったのが「高経年化等」。つまり老朽化でした。
一昨日18日に、新聞折り込みされた原電「お知らせ」をみても、火災・ケーブル対策や再稼働関連など、老朽化にかかわる質問が多く寄せられました。
もう一つは、茨城大学が本年、実施した「地域社会と原子力に関するアンケート」結果です。「老朽化した原子炉を使い続けるのは非常に危険である」という回答が83%にものぼっています。
これが住民の声です。
それでは、パネル(2)をご覧ください。
運転開始から2016年までの、報告義務のないものも含めたトラブル等の件数を示したものです。
運転当初は部品の不具合などでしたが、20数年から30年をすぎると明らかに増加傾向であることがわかります。
注目すべきは、震災以降、運転停止の段階でもまだトラブルが続いていることです。
今年6月には放射性廃液漏れ、10月には冷却器から海水が混入して交換を余儀なくされています。
このように、老朽化について住民の声も実態も示されている以上、再稼働に同意できる状況にはありません。ましてや、20年延長など論外中の論外です。
「げんでん東海」最新号では、延長問題について、「現時点でお答えできる段階にはありません」と記されています。
知事はこれまで「何も聞いていない」「先のことについてとやかくいう段階ではない」と言明していますが、大事なことですので確認します。
20年延長について、知事は原電に直接確認したことはないのですか。お答え下さい。
【知事】
私から直接確認はしておりませんが、事務方でいろいろお尋ねをしても、現在のところはそういったことについて、何ら考えは定まっていないという返事をいただいているはずでございます。
〔山中〕
20年延長問題は、知事が言うように、決して先のことではありません。
申請期限まであと1年を切っています。
来年の知事選を控え、自らの態度をまったく明らかにしないまま、やり過ごそうというのでしょうか。原発を再稼働させるのか廃炉にするのか、カギは知事の決断にかかっているのです。そろそろ「国の判断を待って」という態度は改めて下さい。お答えください。
【知事】
東海第2発電所につきましては、現在、国において新規制基準への適合性審査が進められているところでございまして、まずは、新基準に基づき安全性がしっかりと確認されることが重要であると考えておりますので、県といたしましては、引き続き審査の状況を注視してまいりたいと考えております。
また、老朽化問題に対する認識でございますけれども、県といたしましても、運転開始から38年を経過した東海第2発電所において高経年化対策は極めて重要な問題と認識しております。
そのため、現在、県原子力安全対策委員会の下に「東海第2発電所安全性検討ワーキングチーム」を設置し、高経年化対策に係る専門家2名を新たに加えた体制の下で、独自に安全性に関する技術的な検討をいただいているところでございます。
その結果、安全性に疑義が生じれば、日本原子力発電に必要な対応をしっかりと求めてまいります。
なお、先程トラブルの発生件数の棒グラフがございましたけれども、これらにつきましては、一見しますとこの表では大変発生件数が増加しているように見えますけれども、その殆どは国へ報告する必要のない軽微な事象であるが、保安活動の向上の観点から電力各社で共有化するだけでなく、産学官でも情報を共有化することが有益な情報として計上されているものでございまして、法令に基づき国への報告が必要となる情報、いわゆるトラブル情報につきましては、発電開始当時はともかくといたしまして、近年におきましては、例えば2013年以降ですと2016年に1件あるだけでございますので、その点については、ご説明をさせていただきたいと思います。
〔山中〕
国に報告義務があるかどうかというよりも、これだけトラブル件数が多いという事が問題なのです。県民の皆さんも周辺住民の皆さんも一番老朽化を心配しているという事が先程の数字で示した通りです。
知事は福島原発の事故の3カ月後、6月21日にこう述べています。
「これまで、原子力安全・保安院はずっと、どの原発も安全だと言ってきて、事故が起きたわけですから、そういう点では、そのまま鵜呑みにするというわけにはいかない」とおっしゃいました。
ところが、事故から5年以上過ぎると、また、国が安全だと言えば、同意するという立場に逆もどりしてしまうのでしょうか。
知事、今の科学で地震や津波の発生をとめることはできません。しかし、原発は人間の知恵と力でとめることが可能です。
知事を先頭に、防災・危機管理課、原子力安全対策課などが総力をあげて、再稼働にストップをかけていただきたいと申しあげ、次の質問に移ります。
2. 産科医療体制について
(1)医師確保策
産科医療体制についてです。
本県の医師数は、人口10万人あたり全国46位です。確かに、県独自に筑波大など7大学53人の地域枠を設置・拡大し、2つの奨学金制度を設けてはいます。しかしながら、医師不足も地域偏在も解消されていないのが現状です。
抜本的な医師増員のために、筑波大学の医学部定員140人を1.5倍化するとともに、地域枠をさらに拡大して産科の診療科枠をつくっていただきたい。すでに栃木県は実施しています。
パネル(3)をご覧ください。
関東近県の修学資金貸与状況です。比較すると、本県は修学資金月額が少なく、入学金もありません。制度の拡充が必要になっています。知事、合わせてお答えください。
【知事】
まず、筑波大学の医学部の定員増についてでございますけれども、県では、医師不足を解消するため、平成21年に初めて筑波大学に5名の地域枠を設置していただきました。
以来、着実に地域枠の定員を増やし、現在では、筑波大学の地域枠は36名となっており、それに伴い筑波大学医学部全体の定員は100名から140名まで増え、文部科学省が大学設置基準で緊急臨時的に認めた入学定員の上限に達しているところであります。
また、国は、現在、医師需給の検討を行っており、平成36年には医師の需給が均衡し、その後、医師の供給が過剰になるとの推計が出されたことも踏まえると、医学部の定員増を働きかけていくことは、あまり現実的ではないと考えております。
次に、筑波大学におきましては、県として全国対象の地域枠を設けておりますが、ここでは、将来、産婦人科等、医師が不足している診療科で勤務することを条件に、全国から学生を募集する地域枠を設けているところであります。
この全国対象の地域枠については、現在、10名の定員枠を設けておりますが、昨年度は15名の応募があり、うち合格者は5名と、定員に満たない状況でありました。
筑波大学からは、勤務する診療科を限定すると応募者が増えないため、診療科限定を緩和する方向で検討して欲しいとの要望も出ているところであります。
県といたしましては、医師が不足する診療科に限定した募集は、一定程度必要と認識しておりますが、今後の対応としては、新たな診療科限定の枠を設けるのではなく、既存の全国対象の地域枠の応募者が増えるよう、特に県外の高校や予備校等に働きかけをしてまいります。
また、修学資金の貸与額の拡充についてでございますが、本県の修学資金の貸与額は、国立大学の学費及び図書購入費等の必要経費として設定しているところであり、貸与額としては、ほぼ全国並みとなっておりますが、今の表では、高い方が書いてありましたので実際に見ましたけれども、全国平均並みでございますが、いずれにいたしましても、今後の検討課題であると考えております。
〔山中〕
筑波大学の医学部定員を増やすことについては国としてもそういう方向ではないという事でしたけれども、現実には茨城の医師不足というのは依然として続いておりますし、地域偏在も解消されていないという事はハッキリしていると思います。ですので産科の診療枠を作ってそこで医師を育てていくという事は非常に重要な課題だと思います。
そしてこのパネルを見ますと、全国平均だと言っても比べると他県が医師確保に力を入れているのが分かります。全国下から2番目に少ない医師数確保のために修学資金貸与制度の拡充を求めます。
(2)分娩施設の整備支援
次に分娩施設の整備支援です。
本県の分娩施設は、10年前と比べると診療所等が3割も減少して危機的状況です。
つくば市は、人口10万人あたりの医師数が県内一多く、TX沿線の住宅開発で若い世代が移り住み、人口が増えています。そのつくば市でさえ、分娩施設は病院が2カ所、診療所等が1カ所しかありません。
「下の子を妊娠した時、以前かかった診療所は産科を廃止していた。これでは安心して子どもを産むこともできない」と市民の声があがっています。
本県の年間分娩数は2万3千件で、分娩施設別で見ると病院が56%、診療所が44%です。県内の産科・産婦人科医が206人と圧倒的に少ない現状では、病院の分娩が多いのは当然ですが、「もっと身近で分娩できる場所があれば」という切実な願いに応える産科の医療体制を整備するのは県の役割です。
分娩施設の新設や再開にあたって、施設や設備の整備支援を行うべきと考えますが、知事に伺います。
【知事】
本県では、近年、分娩取扱施設が減少しており、特にローリスクの正常分娩におきましては、産科診療所や助産所などの小規模な施設にも大きな役割を担っていただいているところでございます。
そのため、分娩取扱施設をはじめとする、周産期医療にかかる施設や設備を新たに整備する医療機関に対しましては、国庫補助制度などの活用により支援してきているところでございます。
また、産婦人科医1人あたりの負担軽減を図るため、医療介護総合確保基金を活用し、院内助産所や助産師外来の開設に対し支援を行っているところであります。
一方で、高度な産科医療を要するハイリスク分娩の増加、深刻な医療スタッフ不足による産婦人科医の負担増、分娩取扱施設の減少など、周産期医療体制を取り巻く環境は大変厳しくなってきております。
このような状況を踏まえ、平成26年には、日本産婦人科学会及び日本産婦人科医会から、産婦人科新規専攻医の増加や、地域の基幹分娩取扱病院への重点化・集約化の推進を求める緊急提言が出されているところでございます。
県ではこれまで、県内を3つのブロックに分け、高度専門的医療を担う総合周産期母子医療センターなどを指定し、NICU病床の整備や、安定的な運営の支援に努めるとともに、妊産婦コーディネーターを配置するなど、地元の産科医療機関との連携を強化した総合的な診療体制を確保してきたところであります。
一方、出産年齢の高齢化によるハイリスク分娩に対応するためには、複数の産婦人科医によるチームで分娩を取り扱う体制を整備していくことが必要になってくるものと思われます。そして、そのためには、必要な医師数を確保できるよう広域的な対応をせざるを得ないことも予想されますので、安全・安心な出産のできる体制の整備に向け、今後検討を進めてまいりたいと考えております。
県といたしましては、限られた医療資源を活用し、産科医療機関の機能分担と広域的な連携の強化に取り組むことによって、県内どこでも安心して出産できる周産期医療体制の充実に努めてまいります。
〔山中〕
今の知事の答弁に加えて、身近な所で分娩できる体制を作ってほしいという願いがあるわけですから産科医療体制の整備は、これは少子化対策上も大問題だと思います。お産難民をつくってはなりません。その為にも分娩施設の新設、再開にあたっては施設や設備の整備支援を行うべきだと思いますので改めて要望しておきます。
3. 生活再建を基本とした徴税行政について
次に徴税行政についてです。
今回、通告にあえて「生活再建を基本とした徴税」と書いたのは、いま、自治体で生活再建抜きの厳しい徴税が行われているからです。滞納した税の徴収はもちろん重要ですが、市民を生活破壊に追い込む事例が各地で起きています。
個々の事情を考慮しない差押え等によって困窮した方から、私どもに相談や告発が寄せられます。
先月は、神奈川県のある事業主から相談を受けました。その内容はこうです。
今年7月、茨城租税債権管理機構の職員3人が会社に突然、「所長を出せ」と乗り込んで来て、社員が茨城で市県民税を滞納しているとのこと。「いまここで全額払え」、「無理なら、所長のお前が立て替えろ」と迫り、関係ない本社にまで電話をかけ、「おまえのとこの所長教育はどうなってるんだ」と凄んだうえ、その社員に対し「知事に逆らうのか」と。これはもちろん橋本知事の事ですが、強い口調でまくしたてたとのこと。あまりの剣幕に、書類に署名捺印を強要された事業主は、「これは回収という範囲を超えたヤクザの取立てだ」と言っています。現在、本社への脅しにより、私の会社は廃業を促される事態となっており、その社員は迷惑をかけられないと仕事を辞めたというのです。
事業主は意を決して、茨城県庁にも連絡したとのこと。私はすぐに、租税債権管理機構に出向いて事実を確認しました。事務局長はトラブルの事情を把握していました。
このようなケースは神奈川県に限ったことではなく、京都府の方からも告発が寄せられています。
管理機構といっても、徴税職員はすべて本県市町村と県派遣の職員です。その管理機構で滞納整理の実務を積んだ市町村職員が地元に戻り、そこでまた差押えを行っています。
知事、このような徴税のあり方で良いのでしょうか。お伺いします。
【知事】
税の徴収につきましては、税の公平性の観点から、厳正に対処することが基本であると考えておりますが、滞納者に対する財産の差し押さえや差押さえ財産の公売などに当たっては、滞納者に納税相談や、財産調査を行いながら、滞納者の生活状況等を十分把握した上で法令に基づき適切に対応しているところであります。
例えば、滞納者に対して、納税相談を実施する過程で、財産がなく収入が少額で、生活に困窮していることが判明した場合、滞納処分の執行停止を行います。
また、財産があっても、病気や失業など生活を維持するための収入が少ない方に対しましては、生活実態などをお伺いしながら、地方税法で定める徴収猶予などの徴収緩和制度を説明するとともに、差押えなどの滞納処分を実施することにより生活困窮者になる恐れがある場合には、滞納処分の執行停止を実施しております。
更に、給与等債権を差押えする場合であっても、生活に必要な額を一定額残した上で、差押え処分を実施するとともに、分割での納付も認めております。
このように、滞納者の実情に応じて、きめ細やかな対応を取っております。
今後とも引き続き納税能力があると認められる滞納者に対しましては、財産の差し押さえや差押財産の公売などの滞納処分を行う一方、財産がなく生活困窮者になると思われる滞納者に対しては、納税の相談を丁寧に行い、滞納処分の執行停止などを行い、個々の実状に応じた取り扱いを行ってまいります。
なお、いま色々なお話がございましたけれども、言葉づかいその他につきましてはしっかりと丁寧に行っていく様に注意をしておきたいと思います。
〔山中〕
今も適切な対応がされていると答弁しました。
私どもはこの間、とくに租税債権管理機構のあり方を問題にしてきました。知事は「別組織であり、県が関与する立場にない」と繰り返していますが、そんなことがなぜ言えるか。
『機構10年の取組と実績』には、「平成13年4月、全国に先駆け、県が支援し設立した」と24ページにきちんと書かれています。
9名の県職員やOBが機構に派遣され、事務局長、事務局次長、総務課長、徴収課長、住民税対策課長と事務局トップの役職を占めています。実際の業務を動かしているのは、まさに県です。
さらに、財政支援として年間1,700万円の補助を続け、県合同庁舎にある機構事務所は家賃タダで無償提供です。
これでも「関与なし」と言うのでしょうか。
本県と同様に、全市町村が入った一部事務組合は他に4県(三重・和歌山・愛媛・徳島)にありますが、派遣職員数も補助金額も本県が一番多いことが聞き取り調査の結果です。
県の関与を認め、機構を廃止させ、徴収事案を本来の市町村に戻すことです。知事の所見を改めて伺います。
【知事】
確かに租税債権管理機構を創設する段階では県が音頭を取っていたのは事実でございます。但し事務の性格上、県としては一部事務組合の構成員になれないという事もありまして県はその構成員には入っておりません。したがいまして県として法律的立場として機構に物を申すというのは一般的な指導等はともかくとしまして出来ないことになってまいります。その為わたくしの方では機構に対して法的な指示は出来ないと申し上げてきているところでございます。ただ機構の方では県の意向というものも十分に踏まえながらその後の活動を展開して下さって滞納整備の為には大変大きな役割をはたしてもらっているのではないかと思っております。
〔山中〕
先程言葉づかいを注意するというような事をおっしゃっていましたけれどもそういう問題ではないのです。もちろんそれも大事です。しかしです、今の答弁で県の意向をくんでいるとハッキリおっしゃったじゃないですか。ね、県の意向をくんで、まさに橋本知事に逆らうのかと。というような事まで言っているのですよ。
知事のそうした姿勢が、人権を無視した徴税を助長させているのではありませんか。「お金が回収できれば、生活がどうなろうと関係ない」という態度を許しているのです。機構のやり方を正そうとしない知事の責任は重大です。
国は今、生活困窮者の自立にむけた相談支援事業を県と市に義務付けました。本県において、税行政の中で、どのような生活再建策が必要か、知事の考えを伺います。
一方、租税債権管理機構は、生活再建につなぐ福祉資金や就労支援、ひきこもり支援等を担える組織なのか、合わせてお答えください。
【知事】
滞納処分により生活困窮者となった人についてお尋ねをいただきましたが、滞納処分を行うに当たっては、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、一括して納付が困難な場合は、徴収の猶予や換価の猶予などを行っております。
また、滞納処分により生活を著しく窮迫させるおそれがある場合は、その執行を停止できることと地方税法上定められておりますので、そのようなことのないよう適切に対応しております、
税務当局が、生活困窮者の生活再建策を支援するということはありませんが、滞納者との納税相談の中で借金等により生活が著しく困窮しているとの相談があった場合には、消費生活センターや法テラスなどの専門の機関へ相談に行くよう促しているところでありまして、そちらの方から県や市町村などにも相談がくるのではないかと思っております。
〔山中〕
今の答弁で生活再建に繋ぐ福祉資金・就労支援・ひきこもり支援等を担える組織ではないと知事はハッキリ言いました。要するに税金を取りたてる機関になっているということなのです。
徴税のみを行い、生活再建機能を果たせない管理機構は廃止すべきです。
税金は本来、県民の暮らしを豊かにするためのものです。私ども日本共産党は、国会に野党の共同提案として納税者権利憲章の制定を求めました。OECD加盟30カ国のうち、23カ国が制定しています。しかし、日本はまだ制定されていません。
だからこそ、なおさら、地方自治体での生活と権利を保障する税務が重要だと述べ、更に租税債権管理機構は1日も早く廃止することを重ねて述べて質問を終わります。
以上
山中たい子県議の予算特別委員会質問・答弁(PDF)