2014年9月議会最終日に反対討論 ― 子どもの保育や幼児教育、子育て世代の願いに応えていない

2014年9月議会 反対討論 日本共産党水戸市議団 江尻加那

20140925

議案に対する反対討論を行う江尻議員

日本共産党水戸市議団の江尻加那です。今定例会に市長から提案された議案20件のうち、議案第78号、79号、80号、95号の4件について反対いたします。

●子ども・子育て支援新制度の実施には課題が山積み

議案第78号、79号、80号の3件は、子ども・子育て支援新制度の2015年4月の本格施行をめざし、水戸市における保育所や幼稚園、認定こども園、地域型保育事業、学童保育の運営に関する基準を定める条例です。
子どもにとってよりよい保育・幼児教育とは何か、乳幼児の成長にとって大切にすべきものは何か、その実現に必要な環境の整備、そこで働く保育士や幼稚園教諭、学童保育支援員の処遇改善など、課題は山積みです。

●保育を市場化し企業の参入を拡大するもの

しかし、政府が示す新制度や市の条例案は、これら課題を解決するものになっていません。新制度は、保育を市場化して営利企業の参入を拡大し、子どもの保育や教育の格差を広げるものであり、これまでの公的保育と幼児教育のあり方を根底から変えるものです。
来年4月実施まであと半年になった今でも、保育料はどうなるのか、子どもの支給認定はどう行われるのか、運営費補助は拡充されるのかなど不明な部分が多く、保護者や関係者への説明と理解がすすんでいないことも問題です。

●子どもの保育や教育に格差を持ち込むもの

新制度では、保育所・幼稚園に加え、認定こども園が4種類、地域型保育事業が4種類等、施設の種類が増えます。市条例案では、それらの施設・事業ごとに建物や床面積、保育士配置などの基準がそれぞれ異なり、子どもが平等に保育・教育されないことが危惧されます。地域型保育事業では保育にあたる者のうち保育士資格者が2分の1、またはゼロでもいいとされています。認可保育所との差をつくるものであり、保育士の配置基準の改善が求められています。政府の子ども・子育て会議の議論開始時には、保育所の1歳児6人に対し1人の保育士という国の遅れた最低基準を見直し、5人に1人の保育士に改善すべきではないかという議論もありました。しかし、結局見直しされませんでした。国基準を上回る基準条例を水戸市がつくるべきですが、条例案にはそれら上乗せ策がありません。
さらに、子どもの保育や教育にかかる経費を示した政府の公定価格仮単価では、大規模な認定こども園では収入が減ることとなり、全国的に8割近い幼稚園が新制度に移行せず、幼保連携型認定こども園では11%が認定返上を考えていることが意向調査結果で示されました。幼稚園と保育所では2~3倍も違う保育時間の差が単価に反映されていないなど、現状をより改善、拡充できる公定価格になっていません。

●保育士や学童保育指導員の処遇改善は急務

また、課題の一つである保育士や学童保育支援員などの処遇について抜本的な改善が必要です。保育士の賃金は全労働者平均より月収10万円も低い現状であるのに、条例案では、改善どころか、資格を持たない人の活用を図るなど、さらに悪化しかねません。これでは保育士不足は解消できません。保育士や幼稚園教諭、さらに学童保育支援員は、子どもの発達や成長を科学的にとらえ、必要となる毎日の保育・教育環境を整え、子どもの家庭環境にも配慮しながら、子どもや保護者の気持ちを共感的に受け止め、子どもの意欲につなげていくという高い専門性が求められる仕事です。その役割を保障するために、人員を多く配置したり研修機会を保障するなど保育現場の条件改善が必要です。

●開放学級で小学6年生までの利用を保障すべき

放課後児童健全育成事業である開放学級については、条例案に例外規定が設けられおり、子どもの生活と遊び、及び静養の場として専用の部屋がなくてもよいとしています。また、児童福祉法では、学童保育の対象を小学3年生としていたこれまでの内容を改め、小学6年生までを対象とする見直しがされたにも関わらず、市の条例案には明記されておらず、6年生までの受け入れが保障されていません。市民の願いに応える条例になっていないと言わざるを得ません。入所要件を満たすすべての子どもが利用できるよう、開放学級の増設、支援員の増員と処遇改善、民間学童クラブへの補助増額など、具体策が求められます。

●財源として消費税増税を引き換えにすべきではない

今、安心して子育てをできる社会とは言い難い現状です。子育て中の30~40代が長時間労働で仕事と子育ての両立が難しく、若者の多くは非正規労働という不安定な職で子どもを産み育てる経済的な不安を抱えています。日本の子どもの貧困率は16.3%と深刻な状況です。保育や教育、子育て支援に対する日本の公的支出の割合は先進国でも最低レベルです。多くの保護者は安心して預けられる認可保育所や幼稚園、学童保育を求めています。国と自治体の責任のもとで最低基準が改善し、公費による財源保障を基本にしていくことが子どもの権利保障にとって必要です。すべての子どもが豊かに育つ権利が保障され、だれもが安心して子どもを産み育て、働き続けることができる社会の実現は国の最優先課題であり、その財源として消費税増税を引き換えにすべきではありません。

●マイナンバー制度は行政の効率化や住民の利便性向上につながらない

次に、議案第95号、平成26年度水戸市一般会計補正予算にマイナンバー制度導入に向けたシステム改修関係経費として2,254万6千円を増額するものです。社会保障・税番号制度と言われ、住民票のあるすべての人に12桁の番号をつけ、あらゆる個人情報を国が一元管理します。しかし、この制度は、第一に「納付に見合う給付」の名の下に社会保障削減と、税や社会保険料の徴収強化に使われる危険があること。第二に、原則不変の一つの番号で個人情報を照合できる仕組みをつくることは、プライバシー侵害やマイナンバーを悪用した犯罪を発生させる危険があること。第三に、導入費用に3000億円が見込まれながら、行政の効率化と国民の利便性向上に役立つと思われるケースが行政事務のうち0.01%しかないなど、具体的なメリットも費用対効果も政府は示していません。

以上の理由により、4件の議案について反対いたします。


反対討論の後に議案が採決され、日本共産党3名をのぞく議員の賛成で議案は採択されました。

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