2012年12月議会一般質問 ―保育・子育て、母子家庭支援、市営住宅家賃―

日本共産党水戸市議団の江尻加那です。通告に従い、一般質問を行います。


1.保育及び子育て支援制度について


(1)子ども・子育て関連3法(新システム)について
はじめに、保育や子育て支援のうち、子ども・子育て関連3法について伺います。保育所待機児童をなくし、すべての子どもの教育と保育、子育て支援を向上するという名目で、消費税10%への増税法と一体に、子ども・子育て関連3法、いわゆる「新システム」が、国民の強い反対世論を押し切って、民主・自民・公明の3党合意で8月10日に可決されました。
政府は、消費税増税分から7000億円を新システムに振り向けるとしていますが、保育の予算全体が増える保証はありません。保育事業に企業参入が認められ、国からの運営費補助や保護者が払う保育料から余剰金を生み、それを株主配当や他の事業に流用できる仕組みにもなっています。
法律で外枠は決まりましたが、保育料や保育時間、入所の手続き方法など、肝心なことは決まっておらず、今後、内閣府が設置する「子ども子育て会議」において具体化が検討されます。消費税が10%になる2015年度に予定された本格施行の前に、新システムの多くの問題点を明らかにして、改善を図るよう求めるものです。
1)保育の公的責任の後退
第1の問題点は、保育に対する公的責任の後退です。新システムの当初の目的は、児童福祉法第24条に規定された市町村の保育実施義務をなくし、国と市町村の保育責任を放棄することでした。この点では、全国で広がった反対運動の成果で、改定後の児童福祉法第24条にも市町村の保育実施義務は引き続き明記されました。問題は、新たに設けられた24条2項で、いわゆる無認可保育や認定こども園、保育ママ制度など、公的な財政措置が少ない安上がりの保育でも、必要な保育を確保すればよいという抜け道がつくられたことです。保育室の面積基準緩和による詰め込み保育や、調理室や園庭がない施設でも認められるなど、保育環境や保育士の労働条件の悪化につながるものです。
2)保育所整備の国庫補助廃止
第2の問題は、新システムの施行により、保育所の新設や増改築費に4分の3を国と市町村が負担してき国庫補助制度-今の「安心こども基金」がなくなり、保育所を増やすことが困難になります。
3)保育基準に格差
第3に、保育施設が幾種類にも区分けされ、保育基準の違いが広がることです。幼稚園があり、保育所があり、認定こども園は4種類もあり、その他、保育ママや認可外保育、事業所内保育など複雑化し、混乱と格差を招きます。
4)保育時間の制限
第4に、親の就労時間によって1ヵ月に利用できる保育時間の上限が決められ、保育所での子どもの生活リズムに関係なく短時間保育が押し付けられれば、お昼近くにようやく保育所に来る子や、おやつ時間に帰る子など、子どもが入れ替わり立ち替わりでは落ち着いた保育ができません。
5)保育料の負担増
第5に、保育時間の上限を超えた分の保育料は自己負担となって上乗せされるなど、これほど多くの問題がある新システムをこのまま施行させるわけにはいきません。
水戸市はこうした問題点について、どのような認識を持っているのか。保育や教育現場の声を反映させて国に問題点をただすとともに、すべての子どもと親が、必要な保育や子育て支援を等しく受けられるよう求めます。
【答弁者 教育次長】
江尻議員の一般質問のうち、保育・子育て支援制度についてお答えいたします。
はじめに、子ども・子育て関連3法についてですが、本関連3法は、社会全体で子ども・子育てを支援する新しい仕組みの構築に向け、質の高い幼児期の学校教育・保育の総合的な提供、保育の量的拡大・確保、地域の子ども・子育て支援の充実を目指し、今年8月に公布されました。また、消費税率の引き上げによる恒久財源を確保することにより施行することとしており、現時点で平成27年度の施行を想定していることが示されております。
新システムにおいて、事業の実施主体は市町村であり、市町村は地域のニーズに基づき、子ども・子育て支援事業計画を策定し、給付・事業を行うこととされております。具体的な内容については、今後、内閣府に設置する「子ども・子育て会議」の議論等を経て、順次示されることとなっており、詳細につきましては、現時点で明らかになっておりませんので、御理解願います。

(2)認可保育施設の新増設による定員拡大を
水戸市は、認可保育所での保育が基本との考えに立って、待機児童の解消に向け、来年度も保育所の新増設の予算化を求めます。今年度は民間保育園2カ所の新設費を補助する予算となっていますが、来年度はどうか伺います。
保育所をつくればつくるほど子どもを預けて働く親が増え、待機児童が減らないと言いますが、そうしなければ生活が成り立たない家庭が増えています。低賃金で不安定な雇用の拡大と、保育ニーズの拡大は表裏一体なのです。水戸市において、これから毎年何人子どもが生まれ、保育所や幼稚園に入る子どもはどのくらいになるのか需要を予測し、実態に見合った施設整備を求めます。
【答弁 教育次長】
認可保育所の新増設による定員拡大につきましては、本市において、保育所入所待機児童解消のため、施設整備等により年次的に定員増を図ってまいりました。民間保育所については、昨年度1箇所、今年度は2箇所の創設事業を位置付けるとともに、市立保育所については、老朽施設の移転増改築事業として、白梅保育所の整備を進めており、今後、合わせて290人の定員を増やす予定となっております。
来年度以降の定員拡大につきましては、待機児童の推移を見きわめ、検討してまいります。
また、就学前の子どもに関する教育・保育のための需要調査につきましては、「子ども・子育て支援事業計画」の策定に向け、今後、国から示される内容に沿って実施してまいります。

(3)認可外保育等の実施状況と運営費等の補助実施について
次に、水戸市が行っている保育ママの実施状況や、市内にある認可外保育施設への入所児童数をお答えください。保育ママ制度は、現在は親が水戸市に申込み、保育料も水戸市に納めていますが、新システムの下では、親と保育ママとの直接契約に切り替わり、保育内容や保育料に市は責任を持たなくなってしまうのか。見解を伺います。
また、認可外保育について、現在は運営費や保育料に対する国や市町村の補助は全くありませんが、新システムでは「地方裁量型」施設として、市町村が認めれば公費補助の対象になるとされています。水戸市は補助を行う考えがあるのか、お答えください。
【答弁 教育次長】
認可外保育等の実施状況と運営費等への補助実施につきましては、本市において平成22年度から実施している家庭的保育事業は、(平成24年)12月1日現在で、家庭的保育者数6名、利用児童数10名となっております。また、認可外保育事業は、(平成24年)3月31日現在で、市内の施設数が41箇所、入所児童数は775名となっております。
新システムにおいて、家庭的保育、小規模保育、居宅訪問型保育及び事業所内保育は新たな「地域型保育事業」に位置づけられ、市町村の認可により(地域型保育)給付の対象となります。
新システムの実施に当たっての具体的な内容については、今後、国から順次示されることとなっており、その内容を注視しながら、本市の子どもたちの保育環境の充実に努めてまいります。

(4)放課後児童健全育成事業(学童保育)の充実について
第4に、放課後児童健全育成事業、いわゆる学童保育について伺います。これまで児童福祉法第6条の3で、対象児童は「おおむね10歳未満」とされ、水戸市の開放学級も原則3年生までとされています。今回の法改正より、対象児童が6年生まで拡大されました。
私はこれまでも、6年生まで利用できるようにと繰り返し質問し、要望してきました。今年3月には、緑岡小学校の開放学級を利用する保護者の皆さんとともに、せめて夏休みだけでも4年生を受け入れて欲しいと市に要望書を提出し、交渉しましたが実現されませんでした。今度は法律でも6年生までが対象です。来年度からの受け入れ拡大を求めますが、いかがでしょうか。
また、民間の学童クラブについて、国・県・市からの補助を受けて運営しているクラブは8カ所しかありません。水戸市の次世代育成支援行動計画は10カ所を目標としており、補助施設を増やして安定的な運営を支援し、放課後や夏休み等に子どもが安心して過ごせる居場所を増やすよう求めます。
【答弁 教育次長】
開放学級・学童クラブの充実についてお答えいたします。
開放学級事業は、学校の余裕教室等を利用することを基本としており、余裕教室等がない場合には、専用棟を建設するなどして対応しているところでございます。
来年度以降の4年生以上の受け入れにつきましては、指導員の確保や年々増加する利用児童数に対応する実施場所の確保に課題があることから、年間を通しての実施は困難な状況となっております。
しかしながら、保護者の要望が特に多く寄せられている長期休業期間中につきましては、これらの課題を学校及び関係者と協議してまいりたいと考えております。
また、民間学童クラブにおきましては、多様な児童健全育成の取組が求められるなか、水戸市次世代育成支援対策行動計画に基づき、補助実施施設の拡充に努めてまいります。


2.ひとり親家庭、障害者世帯等への支援制度について


(1)母子家庭への高等技能訓練促進費等支給事業について
水戸市が今年度から始めた「高等技能訓練促進費等支給事業」について、何人分を予算化し、現在、何人に支給されているのかお答えください。この事業は、母子家庭の母親が、看護師や介護福祉士などの資格取得をめざし、看護学校等の養成機関に通うために仕事ができない間、毎月上限10万円が支給されるものです。融資と違って後から返す必要がなく、大変貴重な支援制度です。しかし、まだまだ制度が知らされていません。先日、「そんな制度があるのを最近知った。今からでも申請したい」と相談を受けました。制度に該当するにもかかわらず、毎月10万円、年間120万円の支給が受けられない母子家庭がないよう、ぜひ、周知を徹底すること。また、申請にあたっては修学前の事前協議が必要とされていますが、修学した後であっても事情に応じて支給が受けられるような運用を求めますが、対応を伺います。
【答弁 保健福祉部長】
江尻議員の一般質問のうち,母子家庭高等技能訓練促進費等事業についてお答えいたします。
この事業は,母子家庭の母の就職の際に有利で,生活の安定に役立つ資格を取得するため,看護学校等の養成機関で2年以上修学する場合に給付金を支給する事業で,生活の負担の軽減を図り,母子家庭の自立支援につなげることを目的としております。
本年度の利用見込みにつきましては,15人の利用を見込んでおりましたが,支給実績は5人となっております。
なお,支給の申請につきましては,修学してから1ヶ月以内に申請することとされておりますが,修学後の離婚等により母子家庭になるなどの世帯状況の変化や,経済状況の悪化などにより,修学の継続が困難になった方に対しましては,母子家庭の母の生活の安定を図るといった制度の趣旨に則り,安心して資格取得のための修学が継続でき,修学環境確保の支援につながるよう制度の運用に努めてまいります。
制度の周知につきましては,広報みとやホームページによるこれまでの方法に加え,今後は県内すべての養成機関への依頼などにより,周知の強化を図ってまいりたいと考えております。

(2)市営住宅家賃の障害者控除及び低所得世帯への減免について
水戸市営住宅への入居は11月30日現在3,242世帯で、このうち低所得世帯への家賃減免は505件、全体の15%です。3年前(2009年度)の556件より51件減っています。生活困窮が広がる中、減免件数が減っているのは制度の周知不足が原因と考えます。家賃が減免されていない約2,700世帯のうち、減免に該当するのに、本人からの申請がないからと言って適用されていない世帯はどれだけあるのかお答えください。
土浦市では、今年4月に減免制度のお知らせ文書を全ての入居世帯に郵送したところ多くの申請があり、新たに263世帯が減免されました。これまでと合わせ351世帯になり、入居世帯の30%にあたります。水戸市は15%です。水戸市の減免基準が、非課税世帯であり、かつ生活保護基準以下の収入世帯しか認めないなど、基準が土浦市より厳しいことが減免の少ない要因ですが、今の水戸市の基準に照らしても適用漏れはないのか調査を求めます。各世帯の家族構成や年所得は毎年の申告で明らかにされているわけですから把握できるはずです。本人の申請によらず、なぜ市の責任で減免できないのか。改善を求めますが、対応をお答えください。
また、家族に障害者がいる世帯では、家賃の算定時に、所得から障害者1人につき27万円、または40万円の控除によって家賃が安くなることがあります。市営住宅入居者のうち障害者世帯は何世帯あるのか。そのすべての世帯で、障害者控除が家賃算定にきちんと反映されているのか伺います。また、障害福祉課が毎年作成している「障害福祉のしおり」には市営住宅家賃について何ら記載がありません。改善を求めます。
以上、質問に対し明快な答弁を願います。
【答弁 都市計画部長】
本市では、低所得世帯や障害者世帯に対して、申請にもとづき家賃に関する減免や控除を行っております。
本年(2012年)11月末現在で、低所得世帯への減免は505世帯、障害者控除は261世帯に対して行っているところです。
ご指摘の入居者への周知という点でございますが、現在でも、入居時にお渡しする「入居申込みのご案内」や「入居のしおり」に加え、入居後も、毎年送付する収入申告書の提出をお願いする文書や家賃の額をお知らせする文書の中に記載して、周知を図っているところでございます。
本制度は申請にもとづき行うものであります。どなたかが対象者を調査するのでなく、全入居者を対象として周知していくことが重要と考えます。
今後は、これらの周知の取組みを引続き行うとともに、入居者宛ての文書送付の機会を捉えて新たな案内文を同封したり、福祉部門と連携して「生涯福祉のしおり」に記載するなど、さらにきめ細かい周知を図ってまいります。

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