2023年6月茨城県議会 予算特別委員会 江尻かな議員の質問と答弁(大要)

江尻かな議員の予算特別委員会質問と答弁(大要)

2023年6月20日(火) 茨城県議会 第2回定例会

【質問事項】

  1. 令和5年梅雨前線による大雨及び台風2号に伴う災害対策について
    (1) 取手市双葉地区の排水対策
    (2) 新処分場西側の雨水排水対策
  2. 健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化することの課題と対応について
  3. 原子力行政について
    (1) 東京電力福島第一原発処理汚染水の海洋放出に反対を
    (2) 東海第二原発に係る避難計画策定のうち障害者グループホームの位置付けと対応状況
    (3) 高速実験炉「常陽」の再稼働問題
  4. 教員の時間外勤務の改善と給特法(教職調整額4%)の見直しについて
パネルを前に質問する江尻かな議員

パネルを前に質問する江尻かな議員=6月20日、茨城県議会

日本共産党の江尻加那です。今議会に物価高騰対策費等79億2400万円、および大雨と台風による災害対策費7億3900万円が提案されております。
6月2日、3日の大雨で被災された皆様にあらためてお見舞い申し上げ、発災直後から救助や支援、復旧に尽力されておりますすべての方々に感謝申し上げます。

項目

1. 令和5年梅雨前線による大雨及び台風2号に伴う災害対策について

(1)取手市双葉地区の排水対策

それでは初めに、災害対応について伺います。

私が取手市双葉地区に伺ったのは6月6日。自治会役員さんが先頭に立って、復旧に駆け回っておられました。情報も人手も足りず、支援が届かないと出された具体的要望を取手市に届けるとともに、「次の大雨が来たら、また浸かってしまうかもしれない。それが一番心配」という声を幾度もお聞きました。

双葉地区にある取手市管理の排水ポンプ能力の不足が、大規模な内水氾濫につながったとして、取手市長から先般、「排水路及び国直轄の排水機場の新設」を含む要望が提案されています。
そこで、県としてどう対応するのか。また、最も急がれる次の大雨に耐え得る緊急の排水対策にどう取り組んでいくのか、土木部長に伺います。

【土木部長】

お答えいたします。
取手市双葉地区の浸水被害については、取手市に確認したところ、現時点で発生した要因として、近傍の観測所であるつくば市館野における24時間雨量で254mmと、戦後最大の降雨であったことなどが考えられます。

取手市では、団地内の雨水を2カ所のポンプにより農業用水路に排出し、さらに、国が管理する小貝川に2カ所の排水機場から排出する雨水の処理を実施しておりました。
当時は、ポンプ及び排水機場をフルに運転し、排出したものの、戦後最大の降雨によって、周辺の田んぼを含め広範囲に冠水したと聞いております 。

今後、同様の集中豪雨が再び起こった際の緊急的な措置として、小貝川の2か所の排水機場のポンプ能力を補うための国の排水ポンプ車の配備について、県が取手市及び国土交通省に働きかけ、現在は市と国で設置場所などの調整が行われているところでございます。

県といたしましては、今回の双葉地区の排水対策について、まずは取手市において検討されておりますが、団地エリアだけでなく、流域全体を含めた観点が必要であることから、国・県の関係部局と緊密に連携しながら、市を支援してまいります。

【江尻】

この地域においても流域防災という観点が非常に重要だと思いますし、改めて県内各地でこれまでの排水設備では対応しきれない箇所もあるかと思います。県としても改めて想定の見直しや能力の向上に取り組んでいただきたいと思っております。

(2)牛久沼八間堰の越水対策

続いて、牛久沼の越水について伺います。牛久沼から谷田川につながる県の八間堰改修工事が浸水被害の原因ではないか、県は今後分析していくとしていますが、その前提としていくつかお聞きします。県河川課へのヒアリングをもとに、工事経過などを資料にまとめましたのでご覧ください。

牛久沼八間堰水門工事の経過と流量計画 (県河川課資料より作成)

牛久沼八間堰水門工事の経過と流量計画 (県河川課資料より作成)

今年3月までの工事期間が7月に延長されました。県は過去5年間の牛久沼の水位をもとにして、排水路と矢板を設置していました。
そして今回、堰のすぐ近くの龍ケ崎市のうなぎ料理店と隣の民家も浸水を受けました。

私が伺ったのは9日でしたが、2軒とも今回が浸水は初めてだとおっしゃっておりますけれども、県も同じ認識でよろしいでしょうか。

【土木部長】

お答えいたします。
龍ヶ崎市に確認したところ、今回と同一箇所であるかどうかは不明ですが、過去には1938年6月の台風による大雨などにより、大規模な浸水が発生した記録がございます。

【江尻】

1938年は戦前ですけれども、先ほど部長がおっしゃったように、戦後としては今回が最大の雨量であったと伺っております。
このうなぎ料理店はこの場所で営んで70年、県が堰を設置して約50年。この間大雨はあっても浸水被害は一度もありませんでした。

県は大雨でも対応できるようにと今回の工事にあたって、仮排水路と矢板を超える流量の合計が毎秒70トン以上確保できれば大丈夫として工事をしておりましたが、その70トンという根拠について、分かりやすくお答えいただきたいと思います。

【土木部長】

お答えいたします。
現在の八間堰水門は1971年に一級河川谷田川の牛久沼最下流部に設置された施設であり、市街地部などへの洪水被害の軽減及び、牛久沼周辺の農業用水の水利用を目的とした、治水と利水の両面の機能を有する重要な役割を担っております。

今回の工事は、水門の設置から50年以上経過しており、老朽化に伴う破損などにより、適切な管理ができなくなる恐れがあることから、既存のゲートを新たなゲートに交換するものであります。

そのため、ゲートの交換の際に作業箇所に水が入り込まないよう、水門の前後を銅製の矢板で締め切り、水門の横に仮排水路を設けて河川の水をバイパスさせる構造としております。

議員ご質問の流量の設定根拠につきましては、牛久沼の直近5カ年の最大水位を勘案し、毎秒70立方メートル程度を目標として設定しており、洪水時には、水が仮排水路だけでなく、矢板の上部を超えて下流へ流れる仕組みとしております。

【江尻】

私はこの間の経過を伺っておりまして、当初3月末までだった工期を雨季に入る7月末まで延長としたという県の判断が妥当だったのかということも1点あると思います。

この点では茎崎村ほか、5カ町村や牛久沼などの土地改良区の皆さんが、「田植え後に大雨が降って越水したら大変になる」として、今年の3、4月に田植え時期前の堰の排水対策を県に要望されていました。

しかしこの土地改良区の皆さんの懸念がいまや現実となり、大規模な水田に浸水がもたらされてしまっています。
いま部長がおっしゃったように、過去5年間の牛久沼の水位を勘案してということですが、これだけ自然災害が激甚化する元で、たった過去5年間という短い期間のデータでよかったのでしょうか。

牛久沼の最大水位が今回どうだったのかという点も今回重要です。唯一設置されている国交省の水位計が、肝心の6月3日から6月6日まで測定不能状態でした。測定できた、残っているデータとしては最大値6m95cmで、7m以上は計れない状況になっていたのではないかと思っております。

こうした様々な点をふまえて、県の検証にあたっては被災住民や土地改良区関係者の納得を得ることが重要だと思っております。その点では、土木部内での検証に加えて、第三者機関を入れての客観的な評価が必要だと考えます。

また、工事が要因なら被災者への賠償も当然考えなければなりません。予断なく検証することが求められますが、県としてどのような姿勢で検証していくのか伺います。

【土木部長】

お答えいたします。

今回の越水被害の検証には、工事における矢板締め切りや仮排水路の設計内容の再確認だけでなく、雨量等の気象状況、周辺河川の水位、牛久沼をはじめとした河川の堤防の高さ、周辺の水門の操作やポンプの稼働状況など様々な要因を整理したうえで、総合的に検証していく必要がございます。

現在は、今後の大雨に備えて、緊急措置を優先しており、越水箇所への土嚢の設置による応急対策に加えて、国の排水ポンプ車の配備や、矢板の高さを低くする措置による、牛久沼の水位を下げるなどの対策を実施しているところです。

今後、越水被害の検証には時間を要することが想定されますが、必要に応じて、有識者へ意見を聴くとともに、あらゆる原因を想定しながら客観的なデータに基づき、調査、分析を行い、しっかりと検証を進めてまいります。

【江尻】

被災された方や土地改良区の皆さんが、救われないという検証結果では困りますので、有識者と同時に地元の皆さんや関係者の声をお聞きしてほしいと思いますが、1点簡単にお答ください。

【土木部長】

お答えいたします。
繰り返しになりますけれども、必要に応じて、有識者へ意見を聴くとともに、あらゆる原因を想定しながら客観的なデータに基づき、しっかりと検証を進めてまいります。

【江尻】

ありがとうございました。是非、現地の方々の思いに寄り添った検証を期待しているところです。質問は終わります。

2. 健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化することの課題と対応について

続いて、大問題になっているマイナンバーカードの使用に関する、課題と対応について知事に質問いたします。
トラブルが連日発生しております。私がここで言うまでもなく、挙げればきりがありません。県内でも起きている自体です。

カード普及のために矢継ぎ早に打ち出された施策は、現場でのチェック体制や人為的なミスをカバーする手立てが全く不十分です。
にも関わらず、政府は来年の秋までに健康保険証まで廃止する法律を国会で可決してしまいました。

政府は、マイナンバーカードを持っていない人や、カードは持っていても保険証と紐づけしていない人には、本人申請に基づいて「資格確認書」を暫定的に発行するとしています。

では、県が関与する国民健康保険や後期高齢者医療保険に入る100万人超の県民のうち、どれだけの方が「資格確認書」が必要となるのか。現時点で、県は人数を把握できてないとしております。保険証がない状態を一人として生まないように、今からでも実態を把握し、対策を練るべきだと思います。

さらに、自分で保険証を管理できない高齢者や障害者、子どもは、家族が管理することが基本とされておりますが、施設に入所する人などは、今度は施設でこの保険証を扱わざるを得ない状況もあります。現場に混乱と負担を強いることは明らかだと思います。
そこで、県として保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化することについての課題と対応を知事に伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。
マイナンバーカードを巡るトラブルが毎日のように報道されており、県民が不安に感じるような事態となっていることは承知しております。

一方で、マイナ保険証には、診療情報や薬剤情報などが医師・薬剤師と共有でき、最適な医療が受けられる、高額な医療となる場合、手続きなしで限度額を超える支払いが免除となる、転職や転居をしても、一つのマイナンバーカードを保険証として継続して使用することができるなど、様々なメリットがございます。

このため、国が先頭に立ち、今般の一連のトラブルの発生・再発防止、さらには、マイナ保険証に係る諸課題への対応に取り組んでいただき、県民が安心してメリットを享受できるような環境を整えていただきたいと考えております。

【江尻】

今の状況をみて、国に期待するだけでトラブルが防げるのか、知事はどう思いでしょうか。
そもそも、“マイナ保険証か従来の保険証か”は県民がどちらか選べる運用になる予定でした。それが許されないという自体は私はおかしいと思っておりますし、直近の世論調査でも、この健康保険証の廃止は反対だと延期を求める声が国民の実に72%になったという報道もあります。

デジタル化で日本より先を行く台湾。その牽引者でもあるデジタル担当大臣であったオードリー・タン氏。知事は一昨年9月に対談をされていまして、 YouTubeで私も視聴して理解することができたのですけれども、このタン氏が日頃からおっしゃっているのは、「ITがモノとモノをつなぐ技術であるとすれば、デジタルとは人と人をつなぐもの」だと述べています。

そしてあわせて、デジタル社会の進展のポイントは「1番使いづらい人に合わせること」だとも発言しています。
今日本ではその大事な「人」というのが置き去りにされた対応になっているのではないかと思っておりますけれども、知事はどのようにお考えでしょうか。

【大井川知事】

お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、マイナ保険証には診療情報や薬剤情報などが医師・薬剤師と共有でき、最適な医療を受けることができるなどの様々なメリットがございます。

また、現在、国において、廃止に際しては、被保険者の方々にご不便をおかけせず、かつ、市町村における事務負担が大きくならないような仕組みを検討していると伺っておりますので、県といたしましては、引き続き国の動向を注視していきたいと考えております。

【江尻】

繰り返し同じ答弁を求めた訳ではありませんで、そもそもの今の国の制度のあり方、 考え方の根本的な思想が間違っているのではないかと思っています。

障害者や高齢者、ITに弱いデジタル弱者とも呼ばれる方々に優しいものでなければ社会に広く普及できないと思っております。
デジタル化というのは柔軟であるべきで、法律で決まったから、国が決めたからやらなくちゃいけない、変えないというような硬直的なものであってはならないと思います。

そこで最後に、保険証というのは全ての県民を適切に医療につなげる重要なものです。県の国民健康保険運営協議会が毎年夏に開かれておりますが、この県の国保運営協議会でも関係者の方々の意見を踏まえて、マイナ保険証と一体化にある健康保険証の廃止について、私は丁寧に議論していただくということを求めたいのですがいかがでしょうか。

【大井川知事】

お答えいたします。
国民健康保険に関わる課題などについても、しっかりと我々としては認識した上で、必要であれば国に対してその旨をお伝えするということはしていきたいと思いますが、基本的には、国においてしっかりとした対応をしていただけるということですので、その動向をしっかりと注視していきたいとい思っております。

【江尻】

国の対応が後手後手ですので、県として先手先手でやっていただきたい。知事のいつもの姿勢で臨んでやっていただきたいと思っているわけです。
命に関わる問題です。保険証が手元にないような状態(無保険状態)は決して生まないと、そういう姿勢で知事には望んでいただきたいと要望しまして、次の質問に移ります。

3. 原子力行政について

(1)東京電力福島第一原発処理汚染水の海洋放出に反対を

3点目に、原子力行政についてです。
原子力の大原則である「自主、民主、公開」に基づき、県の自主的な方針が民主的な手続きを経て決定され、県民に公開されているのかという観点から、3点伺います。

まず、政府がこの夏までに海洋放出するとしている東京電力福島第一原発の処理汚染水についてです。ALPSで処理してもなお、トリチウム以外の放射性物質も残っていることから、私は処理汚染水と呼んでいます。

知事は、政府が最初に放出案を出した直後の2020年2月、いち早く「放出反対」「白紙で検討を」と表明しましたが、現在は政府決定を受入れ、風評対策と説明責任を求めるだけになっています。

そこで、この間、知事の考えはだれの意見を聞き、どのような検証を行ったうえで変わったのでしょうか。一方で、県漁連は一貫して「断固反対」を貫いています。この夏に放出を始めることなど決して認められないと考えますけれども、国に撤回を申し入れる考えはないか伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。
まずALPS処理水の海洋放出に対する私の考えについてでありますが、福島第一原子力発電所事故以降、出荷制限を伴う損害や風評による価格の低迷など、関係者の皆様は大変厳しい状況に置かれてきたところであります。

私は、そうした関係者の努力を慮ることなく、海洋放出ありきの結論を出すことについては到底容認できないことから、国に対しより影響が少ない方法はないのかなど真摯にご検討いただきたいと申し上げてきたところであります。

その後、国からは、様々な選択肢を検討した上で、やむを得ぬの選択であったとの説明をいただいたことから、海洋放出という国の処分方針については理解をしたところであります。

次に、海洋放出の撤回に係る国への申し入れについてでありますが、海洋放出にあたりましては、私は何よりも、安全の確保に万全を期した上で、その内容を国民にしっかりと説明し、理解を得ていくことにより、 風評による影響が生じないようにしていくことが極めて重要であると認識しております。

このため県では、関係者の意見も踏まえながら、国に風評を未然に防止するための万全な対策の実施や、万一の風評被害に対しても万全の措置が講じられるよう強く求めてきたところです。

こうした結果、ALPS処理水の安全性について、加工・流通・小売事業者などに対する説明や新聞広告の掲載など、様々な機会を通じて風評を承知させないための取り組みが進められてきたところであり、また、東京電力においては、昨年12月に風評被害が発生が発生した場合の賠償基準について公表するなど、風評被害対策に係る取り組みが進められているところでございます。

一方で、去る6月10日に行われた、飛田地区漁連会長と西村経済産業大臣との面会において、飛田会長より「海洋放出には断固反対である」旨の発言があり、漁業関係者の理解は得られていない状況にあると認識しております。

県といたしましては、福島第一原子力発電所の廃止措置を進めるにあたっては、関係者の理解を得るための取組みの継続はもちろんのこと、海洋放出の安全性、必要性について国民の理解を得るなど風評被害が発生しないよう万全を期すとともに、風評被害が発生した場合には、国が責任を持って対応するよう、強く求めてまいりたいと考えております。

【江尻】

知事のいまの答弁からすると、まさかこの夏、放出が始まるということは決して認められないと思いますが、その1点いかがでしょうか。

【大井川知事】

お答えいたします。
海洋放出につきましては、国と東京電力が、その責任において関係者の理解を得る努力を行っていくものと認識しております。

このため、県といたしましては、関係者の理解を得るための取組みを継続することはもちろんのこと、海洋放出の安全性や必要性について理解を得るなど、風評被害が発生しないように万全を期すとともに、風評被害が発生した場合には、国が責任をもって対応するよう強く国に対して求めてまいりたいと考えております。

【江尻】

そういう対応が夏までにできると知事はお考えでしょうか。
夏といえば来月ですよね。いまそういう現状ではないと、万が一にでも国がそれを押し切って放出を始めるような、東京電力と決定した際には断固反対を貫いていただきたいと思っております。

(2)東海第二原発に係る避難計画策定のうち障害者グループホームの位置付けと対応状況

2点目は、東海第二原発での事故を想定した避難計画について伺います。

知事は、5月の記者会見で、電気料金などエネルギー問題の一方で、原発の再稼働は安全という別次元の問題もあり、経済状況に左右されることなく基本的方針を堅持していくのが原発立地県としての立場だと述べられました。

大手電力会社は、震災後1キロワットも発電していない日本原電に、11年間(2011~2021年度)で計1兆2700億円も資金提供し、東京電力は今後も年間550億円を支払う一方で、家庭の電気料金を値上げしています。
原発推進のエネルギー政策は見直すべきであり、知事は再稼働に反対すべきです。

ところが、県は再稼働を前提として避難計画を今も作り続けています。面積基準の見直しで市町村計画は振出しに戻り、医療機関の策定状況は3割、福祉施設は6割、それも避難車両はまったく確保できていません。

そして、障害者グループホームを計画策定から除外しています。グループホームの障害者は軽度の人だから一般住民と同様の避難で良いとしています。

しかし、厚労省の調査でも、入居者の4割が支援区分4~6で、重度の方も入居していることは県も承知のはずです。
なぜ除外したのか、関係者の意見を聞いた上での判断だったのか、現状はどうなっているのか、知事に伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。
障害者グループホームは、障害者総合支援法において共同生活援助を行うものとして、金銭管理など一部の生活支援を受けながら、社会生活を順調に送ることができるよう、「地域での住まいの場」を提供するために整備されているものです。

「第2期 新茨城障害者プラン」においても、障害を持つ方々が、地域で自立し安心した生活を送ることができるよう、地域生活への移行を進めております。

グループホームの利用者の大半は、一人暮らしをするには少々自信はないが、日中は就労施設などで働き、夜はグループホームで過ごすなど、ある程度自立した状態にある軽、中度の障害区分の方で、社会福祉施設の「入所者」とは異なり、「地域における生活者」であると認識しております。

特別養護老人ホームなどの社会福祉施設の「入所者」については、基本的に避難先となる同種の施設を確保する必要がございますが、障害者グループホームの利用者は、ある程度自立した形での避難が可能なことから、一般住民と同様に、市町村の避難計画で定められた避難先に避難することを基本としております。

県としては、この考え方のもとで、市町村やグループホームに対して避難計画の作成を働きかけております。
また、グループホームは、2023年5月現在、PAZ及びUPZ区域内に121か所ございますが、そのうち避難計画を作成しているのは、把握している限りでは10%弱となっております。

県といたしましては、今後とも、市町村における避難先の調整状況を踏まえつつ、市町村やグループホームなどの関係者と一層の連携を図り、障害者の特性に応じた避難計画の作成につなげてまいりたいと考えています。

【江尻】

障害者のグループホームというのを本当に見たことがあるのでしょうか。精神的な障害者も含めて、一般住民と同じように学校の体育館で長期避難ができるという方だという認識があるのであれば、それが間違っていると思います。

避難計画なんか作らなくてもいいように、知事が再稼働反対と言えば済むことですけれども、それがない状況の中で、障害者グループホームを県として対象施設に入れるということでよろしいか再度伺います。

【大井川知事】

先ほど答弁させていただいた通り、グループホームの利用者に対しても、避難計画を作成するよう市町村に対して引き続き働きかけてまいりたいと考えています。

【江尻】

そういうことであれば、これから公表される県の資料にもきちんと位置づけていただきたい。今は高齢者グループホームは入っていますが障害者グループホームは入っておりません。10%という策定状況も今初めて明らかになりました。引き続き対応を求めたいと思います。

(3)高速実験炉「常陽」の再稼働問題

3点目は、大洗町にある日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」の再稼働問題です。

私は16日の常任委員会で、再稼働させる意義と必要性について質問しました。原子力安全対策課は、「国の政策上、高速炉開発に向けた研究や医療用アイソトープ(アクチニウム225)の製造研究を行う」との説明でした。

これを聞いて、「夢の原子炉をもう一度」というのが国の政策なのかと疑いましたけれども、破たんした核燃料サイクルに固執し続けることは、国際上も問題なプルトニウムを日本は大量に抱え、処理困難な核のゴミも増え続けることになります。

また、アクチニウム225は、国内の他の加速器での製造実績があると県の答弁もありました。ナトリウム火災事故という大きな危険を伴う常陽を稼働してまで行うことなのか、大いに疑問です。

再稼働に意義や必要性はなく、残るのは莫大なコスト負担と事故リスクではないかと思います。
そこで今後、事前了解にあたって、県民の意見はどのように聞くのか、何をもって事前了解とするのか、再稼働を認めるべきではないと考えますが、知事の見解を伺います。

【大井川知事】

お答えいたします。
まず高速実験炉「常陽」の意義と必要性についてでありますが、常陽では高速中性子と呼ばれる高いエネルギーを持った中性子を利用し、消費する燃料よりも多くの燃料を生み出す高速炉の研究を行ってきており、核燃料サイクルの確立に向けた技術開発を担う中核施設として利用されてきたところでございます。

こうした中、昨年12月に改定された国の戦略ロードマップでは、高速炉の研究開発に有効活用することとされております。

また、GX実行会議の議論を踏まえて、本年4月に閣議決定された今後の原子力政策の方向性と行動指針では、高速路の研究開発のための人材育成や、医療用ラジオアイソトープの国内製造を推進していくものと位置付けられております。

このような高速炉開発にかかる意義や必要性については、国の原子力政策において位置付けられたものでありますことから、私としては、しっかりと国民の理解が得られるよう、国が前面に立って説明責任を果たすべきであると考えております。

次に、常陽の運転再開にかかる手続きについてでございますが、原子力機構では常陽の新規性基準への適合性を確認するため、国へ原子炉等規制法に基づく設置変更許可申請を行っているところでありますが、県では原子力安全協定に基づく新増設等計画書の提出を受けております。

新増設等計画に対する事前了解につきましては、国の審査結果を踏まえ、県原子力安全対策委員会における確認、県原子力審議会における審議、原子力安全協定に基づく隣接市町村の意見聴取を行った上で判断してまいります。

なお、県民の意見を聴く手続きについてご質問いただきましたが、県原子力審議会においては、県内の様々な団体の代表者や住民の代表である県議会議員の方々などにご審議いただき、また同じく、住民の代表である関係市町村長の意見を伺って判断していくこととしております。

【江尻】

その県の2つの審議会・協議会が再稼働に単にお墨付きを与えるようなものとならないよう取り組んでいただきたいと思いますし、改めてナトリウム火災事故の危険を伴うということについて、知事にも認識を強めていただきたいと思います。この質問は以上です。

4. 教員の時間外勤務の改善と給特法(教職調整額4%)の見直しについて

最後に教育長の質問に移ります。教員の時間外勤務の改善と国の給特法の見直しについて伺います。
端的に言いますと、公立学校の教員には残業代を支給しないという国の特別措置法を今こそ正し、教員の長時間勤務に歯止めをかけようと求めるものです。

そこでまず、本県における教職員の時間外勤務について、直近の状況をお聞きします。その際、実際にはタイムカードを押した後に業務を行っている現状はないか、また自宅への持ち帰り残務が起きていないのか、労務管理の状況についてもあわせてお答えください。

【教育長】

お答えいたします。
昨年度の本県における教職員の時間外在校等時間の状況につきましては、文部科学省の勤務実態調査の対象となった10月、11月の平均は、小学校は全国平均の月57時間8分に対して、約20時間マイナスの月35時間37分、中学校は、全国平均の79時間36分に対して約30時間マイナスの月48時間55分と、勤務実態調査の結果と比べ、大幅に少ない時間となっております。

また、各学校における教職員の在校等時間の管理につきましては、県内全市町村で、タイムカードやパソコンによる記録等、客観的な方法で勤務時間を把握できる方法を導入しており、各校の管理職が教職員の勤務状況を把握、管理しているところでございます。

県におきましても、毎月実施している時間外在校等時間の調査により、現状を把握し、各教育事務所による学校訪問や県主催の会議等の場など、あらゆる機会を通して、各学校の管理職や市町村教育委員会に対し、勤務時間の管理を依頼するとともに、時間外在校等時間の多い教職員に対する面談、指導を呼びかけるなど、勤務時間の適正な管理に努めているところでございます。

【江尻】

いまお答えがあった時間外勤務に対して、残業代の代わりに給料の4%が調整額として支給されていますが、本県の全教員分の年間調整予算額とともに、実態に合わせて残業代を払うとすればいくらになるのか試算額をお示しください。

【教育長】

お答えいたします。

教員の教職調整額の予算額でございますが、予算上、教職調整額として個別に計上しておりませんので、給料予算総額から管理職や事務職員、技術職員分を除き、教職調整額の支給対象となる教員分の給料予算額に、教職調整額4%を乗じて試算いたしますと、令和5年度当初予算では、全教員分で、概算で48億円、教員1人当たりでは約22万と算出することができます。

この教職調整額は、時間外勤務手当額に換算しますと、ひと月約8時間程度とされております。ご質問の時間外勤務の実態に合わせた場合ですが、先ほどお答えしました、昨年10月、11月の小学校の平均が月35時間程度でありましたので、この実績を基礎に試算いたしますと、教員1人当たり約97万、全教員分では概算で209億円程度と算出することができます。

【江尻】

今の額だけお聞きしても、実際に調整額で払われている3分の1、4分の1程度に満たない。言葉を変えますと、それだけただ働きになっているという状況も考えられます。

そこで、給特法の見直し、処遇改善が必要です。残業代をこのまま支給しなくていいのか、今こそ制度そのものを変え、教員の働き方の改革というのであればここに手をつける必要があると考えますが、教育長の所見を伺います。

【教育長】

お答えいたします。
この度の諮問は、「令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」とされております。

具体的には、「更なる学校における働き方改革の在り方」、及び「学校の指導・運営体制の充実の在り方について」、さらに、「教師の処遇改善の在り方について」であり、この中で、一律給料月額の4%を支給することとしている教職調整額の在り方も検討事項となっております。

教育委員会といたしましては、この度の諮問は、教職調整額の在り方を含めた教師の処遇改善など、質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策を求めるものであり、積極的な検討がなされることを期待し、今後の議論の推移を注視してまいります。

【江尻】

今年の5月に永岡文部科学大臣がこの中央教育審議会に諮問しました。私も注目して期待もしております。
しかし一方では、調整額を10%にすればいいというような声も聞かれていますが、これでは定額で働かせ放題を放置しかねないと思っております。

抜本的には教育予算を増やし、教員を増やすということ以外にありませんけれども、そのためにもこの残業時間が出ないという労働者の一人でありながら先生たちが例外、特別扱いになっているということでいいのかということについて、残業代を支給しないという制度についてもう一歩、教育長の踏み込んだご答弁をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【教育長】

この度の国の諮問では、教職調整額の在り方を含めた教師の処遇改善など、質の高い教師の確保に向けた環境整備に関する総合的な方策を求めるものでございます。積極的な検討がこの中でされることを期待しておりますので、今後の議論の推移を注視してまいります。

【江尻】

今も多くの先生方が学校現場で働いておられます。そして今、各大学の教育学部で先生を目指して学んでいる若い人たちもたくさんいます。そういう人たちに先生になろうという、希望とか夢、やりがいや使命感だけではなく、きちんと保証するということを県からも強く国に求めていただきたいと要望いたしまして、私の質問とさせていただきます。

以上

動画はこちらから

2023年6月茨城県議会 江尻かな議員の予算特別委員会質問と答弁(大要、PDF)

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