2017年3月茨城県議会 予算特別委員会 江尻加那県議の質問と答弁

項目

江尻加那県議の予算特別委員会質問・答弁

2017年3月22日(水) 第1回定例会

  1. 児童虐待への対応と課題について
    (1)虐待死亡事件の教訓と再発防止の取組
    (2)要保護児童対策地域協議会の運営改善
    (3)児童相談所における児童福祉司等の体制拡充
  2. 県に勤務する獣医師について
    (1)獣医師の役割の拡大
    (2)安定的な人員配置と処遇改善
  3. 東海第2原発の廃炉について

▲予算特別委員会で質問する江尻議員

1. 児童虐待への対応と課題について

(1)虐待死亡事件の教訓と再発防止の取組

日本共産党の江尻加那です。

はじめに、児童虐待への対応と課題について、保健福祉部長に伺います。
過去5年間、本県では0歳から3歳まで、5人の子どもが虐待で亡くなりました。育児ストレスや若年妊娠、貧困や障害など、多くの矛盾と困難の中で、子どもの命が断たれています。一部の親の問題と取るのではなく、何ができるのか、何が足りないのか、県の取り組みを伺います。

一昨年9月、水戸市で3歳の男の子が亡くなりました。生まれてからほぼ3年間、乳児院で育ちました。その後、児童養護施設に移るのか、それとも家庭に戻るのかという判断の時、県児童相談所は家庭に戻すと判断しました。そして、そのわずか5日後に自宅で亡くなりました。

私は直後の県議会保健福祉委員会で、「県や市など多くの行政機関が関わっていながら、なぜ防げなかったのか。家庭に戻したことは適切だったのか。再発防止を」と求めました。
それから1年半。県はどのようなことを教訓に刻み、再発防止にどう取り組んでいるのか、保健福祉部長に伺います。

〔保健福祉部長〕
委員ご指摘の水戸市で発生した児童虐待死亡事案につきましては、児童相談所が乳児院からの措置を解除した5日後に児童が亡くなるという事態でありました。県としても重く受け止めております。

本事案から得た教訓とのご質問でございますが、家庭状況による養育困難を含むすべてのケースにおいて、虐待に至る可能性を念頭に置いた対応をしていく必要があること、また、虐待防止のためには、関係機関との連携を密にし、ケースの情報をより広く収集し対応していくことが重要であるとの教訓を得ております。

本事案を受けての再発防止策につきましては、児童相談所において、各ケースの状況に応じた支援のあり方について、職員間でより多く検討する機会を持ち、組織全体で慎重にケースワークに取り組むとともに、児童福祉司の指導や教育を行うスーパーバイザーが、職員に対して、これまで以上にきめ細かに事案への助言、リスク管理を行い、児童や保護者への的確な支援ができるよう取り組んでいるところです。

また、支援するケースにつきまして、関係機関との連携を密にして的確に情報共有を図り、個別事案ごとに役割分担と支援方策を検討し対応してまいります。

さらに、児童への虐待発生等のリスクを評価するアセスメントにつきましては、市町村や乳児院などからの関係機関からの情報だけでなく、保護者の子どもに対する養育状況などを十分把握したうえで、総合的に行ってまいります。

県といたしましては、同様の事案の再発防止のために、現在、茨城県社会福祉審議会児童福祉専門分科会児童処遇部会において、事案発生の原因分析、再発防止策の検討を行っております。

今後、検証の結果につきまして、児童相談所や市町村など関係機関への周知を図り、虐待から子どもを守るため関係機関と連携して再発防止にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

(2)要保護児童対策地域協議会の運営改善

いま部長から再発防止策のご答弁がありました。あの当時、いまおっしゃった原則的な当たり前の対応が出来ていれば死亡を防げていたのではないかと思わずにはいられません。

この事件に対し昨年10月、裁判が開かれました。当時の児童相談所長が証人に立ち、「支援が足りなかった」と陳謝する一方、家庭引取りの「県の措置は間違っていない」と証言しました。本当にそう言えるのか。

検察は母親を傷害致死罪で起訴しましたが、結果は、情状を酌量した執行猶予付きの判決でした。裁判長は「身寄りのない水戸市で、1人で4人の子育てに追われ、乳児院から帰ってきた子どもが自分になつかず、ストレスを募らせた。母親自身にある知的障害の特性から、周りに手助けを求める能力が低く、被告を強く非難することはできない」とし、検察も控訴せず刑は確定しました。

裁判所がこのように情状酌量する家庭に、その後の支援体制を具体化しないまま子どもを返したのは、それでも間違いなかったと言えるのでしょうか。

もう一つ、県が家庭に戻すと判断する時に、重要となる要保護児童対策地域協議会を開かなかった、関係者で協議しなかったことが、私は大きなポイントだと考えます。親子に関わっている水戸市の担当者や学校、保育所、医療機関や警察など、広く協議して事実確認を行い、どんな支援ができるのか、必要なのか、慎重に判断すべきではなかったのか。この水戸市の地域協議会をなぜ開かなかったのか。部長に答弁を求めます。

〔保健福祉部長〕

本事案におきまして、要保護児童対策地域協議会が開かれなかったということですが、この事案につきましては、児童相談所や市におきまして。虐待ではなく、家庭の状況による養育困難なケースとして対応していたという事、措置解除前の虐待の危険性は確認されなかったという事から、この協議会の開催という判断には至らなかったと考えております。
深刻な社会問題となっている虐待から子どもを守るためには、私どもとしても一層の関係機関との連携強化が重要と考えております。

県では、今まで市町村に対しまして、保健、福祉、教育、警察などの団体で構成する要保護児童対策地域協議会の設置を積極的に促してきたことによりまして、平成23年度までに全市町村で設置され、関係機関の役割の明確化や協力体制の整備など進めており、必要に応じて開催されているところでございます。

今後は、全てのケースにおきまして、虐待の可能性があることを念頭において、子どもが乳児院から家庭復帰する場合には、養育困難などの当初の入所理由にとらわれず、要保護児童対策地域協議会の場で、保護者の養育態度、家族の状況等を十分確認し、家庭復帰の判断、家庭復帰後の支援方策について、関係機関とともに慎重に検討し、対応していくこととします。

県といたしましては、同様の事案の発生を防止するため、児童相談所、市町村等の関係機関が要保護児童対策地域協議会の場を通じて、これまで以上に連携を密にし、支援体制を構築することで、しっかりと子どもの安全が図られるよう努めてまいります。

〔江尻〕

いま部長の改めてのご答弁では、「今回この親子は虐待ではないケースだと判断した。その為に要保護児童対策地域協議会を開かなかった」と当時の事を述べられましけれども、私は県が以前から自ら定めている「児童虐待防止マニュアル」。ここには協議会を開く対象児童として「虐待を受けた子どもに限らず非行児童なども含まれる」と規定しています。

なおさら乳児院で3年育った子供を家庭に返す時にその対象にならないということはないと思います。開かなかったのは県自らのマニュアルに違反するものではないか。やはりここは曖昧にしてはならないと考えますので、再度、部長の所見を伺います。

〔保健福祉部長〕

児童相談所も市町村の要保護児童対策地域協議会の一員ではございます。開催権限は市町村に確かにありますけれども、私どもから開催を持ちかけるということは当然あって然るべきでございます。

さきほど申し上げましたように、虐待の可能性が見えていない段階で、市町村に相談するという段階に至らなかったと、当時のことを考えれば思いますけれども、今後は、そのようなことがないように、きちんと協議会を開いてまいります。

〔江尻〕

虐待の可能性のリスクをどうとらえるのかという判断が非常に重要だと思います。

私は裁判も傍聴いたしました。今回の件では、この親子が他県に住んでいた時、警察から児童相談所に2度の通告があり、水戸に来てからは、子どもの入院先病院からの電話に応じず医療ネグレクトとして2度の通告があったという事も示されました。こうした母親自身の知的障害の影響をうかがわす所謂育児放棄の兆候についても、協議会を開いていれば病院や警察と事実確認して、判断に活かせたのではないか、とやはり悔やまれます。

告発だけでは解決しない、こうした児童虐待を無くしたいと取り組んでいる多くの地域のNPOや支援団体の皆様とも協力連携し合いながら、今後、再発防止に取り組んで頂きたいと思います。

(3)児童相談所における児童福祉司等の体制拡充

次に、知事に伺います。

児童相談所は事件までの約3年間、この親子に関わってきました。しかし、県が措置解除してから亡くなるまでの5日間、相談所は一度も家庭訪問できなかったと聞いています。家庭に戻った直後は全国の死亡事例から見ても非常にリスクが高いと厚労省の報告書でも提言されています。

本県の児童相談所は3ヵ所、児童福祉司はたった55人です。国の配置基準が低すぎる。福祉司の仕事は、虐待対応だけではありません。不登校や引きこもり、非行相談、障害相談、養育里親等もあります。「国家資格にすべき」と専門家の声があるほど、経験と専門性が求められる仕事です。

しかし、本県55人の児童福祉司のうち、10年以上の職務経験者はわずか8人です。短期間の人事異動で、圧倒的多数が経験少なく人手も不足しています。研修による専門性の確保や、日常業務の過酷なストレスに対する職員へのメンタルケア、そして時間には表れてこないかもしれない時間外労働の縮減も課題です。さらに、福祉司と合わせて、一緒になって働く児童心理士の増員も必要です。

県は今後、児童福祉司等を拡充していくと聞いておりますけれども、課題にどう取り組んでいくのか、知事の所見を伺います。

〔知事〕

児童福祉司等の体制拡充についてお答えいたします。
深刻な社会問題となっております虐待等から子どもを守るためには、児童相談所における相談体制の強化を図ることが大変重要であると考えております。

そのため、県内児童相談所の児童福祉司及び児童心理司を過去10年間で合わせて15名増員しますとともに、平成22年度からは新たに福祉職を採用し、専門性の高い職員を多く配置することにより、児童相談所の体制の強化を図ってまいりました。

こういった状況の中で、虐待事案へ迅速かつ的確に対応するため、平成28年5月に児童福祉法等の一部を改正する法律が成立しました。本改正では、児童相談所における人員の配置基準が見直され、児童福祉司や児童心理司の増員をはじめ、新たに弁護士の配置が義務化されるなど、体制の強化が図られることとなっております。

県といたしましては、今お話ししたように、児童福祉司を現在の55名抱えているところでございますけれども、来年度には63名まで増員し、最終的には、平成31年度までに75名とするために、引き続き児童福祉司等の必要人員を計画的に確保して、適切な人員の配置に努めてまいります。また、それ以上、国の基準を上回る配置をしていくべきかどうかということにつきましては、今後の虐待相談対応件数などの状況を見ながら必要に応じて対応してまいりたいと存じます。

児童福祉司等の専門性の確保につきましては、児童福祉法の改正により、平成29年度から児童福祉司や、他の児童福祉司の指導・教育を行うスーパーバイザーなどに研修の受講が義務化されたところであります。県といたしましては、これらの法定研修を計画的に実施しますとともに、これまで行っていた新任研修や相談対応力の向上を目的とした研修等を引き続き実施し、職員の資質向上に取り組んでまいります。

さらに、児童福祉司等のメンタルヘルスケアにつきましては、児童相談所において、職員が抱えている虐待事案に係る問題や悩みなどに対し、スーパーバイザーによる助言や職員間での話し合いを行い、問題を一人で抱え込まないように努めているところでございます。

また、委員が懸念されておりました児童相談所の時間外勤務につきましては、平日夜間の時間帯に多く発生する緊急事案の対応等が主な要因となっておりますので、平成28年4月から、職員2名が勤務時間を変更して正午から午後8時45分まで対応するシフト制を導入し、時間外勤務の縮減を行っているところであります。

県といたしましては、虐待から子どもを守るため、児童福祉司等の適切な人員配置や研修の充実等を通じて、児童相談所のより一層の体制の強化に努めてまいりたいと考えております。

〔江尻〕

いま知事から来年度は8人、そして再来年には75人まで児童福祉士を増やしていきたいとお答えいただきました。
虐待の背景には、子育ての孤立や貧困問題が深く根ざしています。児童相談所の体制を手厚くしていくと同時に、一時保護所や児童養護施設のあり方、警察等からの増え続ける通報への対応、里親の制度の拡充など課題は尽きません。知事には、子育て支援、教育支援、不安定雇用の改善という点からも虐待防止への取り組みを進めていただきたいと求めまして、次の質問に移ります。

2.県に勤務する獣医師について

(1)獣医師の役割の拡大
(2)安定的な人員配置と処遇改善

2点目は県に勤務する獣医師について、知事に2項目伺います。

現在、県は常陸牛やローズポークの生産・販売の拡大、鳥インフルエンザ等の防疫対策、さらに犬猫の殺処分ゼロなど、課題は山積みです。

とくに、本県農業の柱である畜産は、鶏卵生産全国1位、豚の飼育頭数全国6位、乳用牛は全国8位。この本県の畜産業の発展と、食の安全を図るうえで獣医師の役割は欠かせません。

しかし今、公務員獣医師の確保は全国的に大変困難な状況となっています。本県と並ぶ畜産県の北海道や鹿児島県、宮崎県も例外ではなく、多くの県が獣医学生のインターンシップや修学資金貸与、離職した女性獣医師の復帰支援などに乗り出しています。

資料1をご覧ください。

資料1

その確保策の1つとして、初任給を上乗せする調整手当を支給する県がどんどん増え、全国30道県が実施。最大月額5万円が上乗せされています。いま関東圏にむけても空白の未実施が狭まってきています。

そこで、伺います。
(1)本県にとって獣医師が果たす役割の拡大について、(2)安定的な人員配置と処遇改善について、あわせて知事の所見を伺います。

〔知事〕

まず、獣医師の役割の拡大についてお答えいたします。
本県における獣医師の配置状況は、農林水産部に61名、保健福祉部に105名、合計166名となっております。
その主な業務は、農林水産部においては、家畜保健衛生所における家畜伝染病予防に関する検査や診断、畜産センターにおける種畜や種鶏などの開発と安定供給、和牛生産拡大を図るための受精卵移植の推進等でございます。

また、保健福祉部においては、食肉衛生検査所における食肉検査、保健所における食品衛生監視・指導、動物指導センターにおける動物愛護管理の推進などの業務であり、県獣医師の業務は極めて多岐にわたっております。

このような中、平成23年4月に家畜伝染病予防法が改正され、畜産農家に飼養衛生管理基準の遵守が義務付けられましたことから、県獣医師による全畜産農家への巡回・指導が必要となりました。

また、高病原性鳥インフルエンザや囗蹄疫などの発生が、近隣諸国で継続しており、本県でも、この冬、高病原性鳥インフルエンザが確認されたことから、県北家畜保健衛生所での検査をはじめ、獣医師による農家への徹底した侵入防止対策等の指導強化の必要性も益々大きくなっているところです。

さらに、平成30年度以降に予定されておりますHACCP(ハサップ)の義務化に向け、県内の食品営業許可施設約5万件に対する指導や技術的支援も求められているところであります。

加えて、来年度からは、和牛の生産拡大を図るため、畜産センターに受精卵供給センターを設置して受精卵供給体制を強化しますほか、茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例が施行されましたことに伴い、市町村や関係機関との連携を強化し、各種施策を推進するなど、今後とも、県獣医師の役割は、さらに拡大していくものと認識しております。

また、安定的な人員配置と処遇改善についてでございますけれども、現在、本県では、獣医師の採用は安定的に確保できている状況にございます。

しかしながら、これから、県獣医師の役割が拡大していきますことから、今後とも優秀な獣医師が確保できるよう、獣医大学を訪問し、業務内容の説明や職員採用案内等を行っているほか、実際に県獣医師の業務への理解を深めてもらうため、家畜保健衛生所や食肉衛生検査所等において、獣医大学の学生のインターンシップを積極的に受け入れているところであります。

また、公益社団法人茨城県畜産協会を窓口として、県獣医師を志す学生や獣医大学に入学する高校生等に就学資金を貸与する「獣医療提供体制整備推進総合対策事業」を実施しているところであります。

次に、獣医師の労働環境の改善といたしましては、家畜保健衛生所に迅速に検査ができる高性能検査機器を計画的に整備しますとともに、つくば市にある国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門と連携した効率的な検査体制を整えておりますほか、万が一、県内で高病原性鳥インフルエンザなどが発生した場合には、獣医師だけでなく、全庁的な対応ができるよう防疫体制を整えているところであります。

さらに、勤務条件の見直しといたしましては、他職種の職員と同様に初任給の引上げを行ってまいりましたほか、特に獣医師につきましては、と畜検査や家畜の伝染病予防など困難な業務に従事する者に措置する「給料の調整額」の引上げを行ってまいりました。これらの措置等により、新規採用の獣医師の給与は、と畜検査員の業務に従事する者の場合で、10年前と比べ、月収で2万4千円程度、年収で34万円程度の増額となっております。

また、女性の獣医師も多くおりますことから、子育てをしやすい職場環境づくりも重要であると考えております。
そのため、4月からは子育てを支援するための休暇・休業制度を拡大し、獣医師に限っている訳ではありませんが、他県に先駆けて、女性職員を対象とした長期の不妊治療休暇を新設するなど、女性職員が働きやすい職場環境づくりに積極的に取り組んでまいります。

なお、職員が育児休業を取得する際の対応についてですが、育児休業は、その出現数や出現時期の予測が困難であり、その全てを適時に補充するのは難しい面もございますが、正職員の付加配置や育休任期付職員を配置するなど、可能な限り補充に努めているところでございます。

こういった取り組みに加え、県を退職した獣医師を積極的に再雇用する等、必要な人員の確保に努めてまいります。

〔江尻〕

いま知事は本県では安定的に獣医師を確保できていると仰いましたが、過去6年間を見ますと3回も採用予定人員を確保できず、年度途中での追加募集を行っています。昨年秋も追加募集試験を行いましたが、これで今まで安定的に確保できている、という認識なのか再度お答えください。

〔知事〕

私の持っている資料では3年分しかありませんが、平成26年が採用予定人数36人に対し応募者数が11人。試験合格者が6人となっております。
また、平成27年採用予定人数が8人に対して応募者数が14人。試験合格者数が6人で2.3倍となっております。平成28年採用予定人数は8人のところ応募者数は14人。試験合格者数は8人で1.8倍。この3年間の平均では2倍に競争率がなっているところであります。

〔江尻〕

これからの安定的な確保についてもう1点お伺いいたします。
現在、県職員獣医師は166人。その4割が女性で、20代、30代では半数を超えて増えています。
私はこの間、獣医師の皆さんが働く現場を訪ねて懇談いたしました。危険・困難・不快と言われる過酷な現場で、使命と責任をもって働く姿は大変印象的でした。

しかし、広大な県内地域の牛、豚、鳥の全農家を巡回し、衛生指導や家畜の診察、解剖による病性鑑定など業務は多忙です。鑑定の各検査も2人体制が望まれますが多くは1人で行っています。さらに知事もおっしゃった、女性獣医師が増えれば産休・育休を保障する人員も求められます。

そもそも166名の現体制で今後拡大する職務に追いつくのか。
今から処遇改善等の確保策が本県でも必要と考えますが、再度、所見を伺います。

〔知事〕

さきほども申し上げましたとおり、これからだいぶ獣医師の仕事が増えてまいりますので、それに対応して必要な人数の確保はしていきたいと思っております。

〔江尻〕

全国的な状況も見極めていただきながら、獣医師の重要な職責に見合う改善を求め、次の質問に移ります。

3. 東海第2原発の廃炉について

3点目は、東海第2原発の廃炉について知事に伺います。

今月17日の前橋地裁の判決は、経済性を優先して安全対策を怠った電力会社と国の責任が断罪されました。避難者が訴え続けた切実な声を司法が認めた画期的は判決です。

原発については、先の本会議で日本共産党の上野議員が2点、(1)原子力の事故被害を上まわる再稼働の利益や必要性が本県にあるのか。(2)原発のない茨城の将来像を知事はどう描くのか、と質問しました。

知事は答弁冒頭、「県民に再稼働について不安の声があることは承知している」と述べた後、それでも、「原発については、電力の安定供給といったエネルギー政策を踏まえて、国が判断すべき」と、ここでも県民の不安より、国の判断を優先しました。
しかし電力について言えば、この6年間、東海第2原発が動かなくても、本県の電力需要消費はまかなわれ、さらに首都圏へと供給されています。この現状について知事はどうお考えか伺います。

〔知事〕

私どもの県はかなりの発電所が立地しておりますので、県内で消費する電力に対して、県内だけで考えれば、十分すぎるぐらいの量になっていることは十分認識しております。

〔江尻〕

資料2をご覧下さい。

▲実際の発電量ではなく設備容量を示したもの(資料2

円グラフに示してある県内にある発電施設の設備容量の割合を、それぞれ示したものです。これは設備の容量です。

では、実際にどれだけ発電しているか。資源エネルギー庁の統計をみると、今年度の県内発電量の月平均は約30億kWh。これに対し、県内需要は最大でも月約20億kWh。残り3分の1は東京などに回っています。逆に東京都は、需要に対し約1割程度しか発電していません。本県は原発の発電ゼロでも、首都圏供給を十分担っていると言うのが実態です。

しかし逆に、東海第2原発で過酷事故が起こったら、この原発から5km圏内にある東京電力火力発電所や日立港の巨大なLNG基地はどうなるのか。停止して避難するのか。これこそ安定供給どころではないと考えますが、知事の所見を伺います。

〔知事〕

いま近くで原子力事故が起きたらLNG発電所もあるいはまた石炭火力も動けないのではでないかというお話でございますけれども、それは間違いなくそうなってまいりますけれども、それに対して起きないようにどういうふうな形できっちりと対応していけるかということが課題なんだろうと思っておりまして、そういった点では、起きた場合にはということについては、私の考え方は控えさせていただきたいと思いますけれども、それと合わせて、今いろいろ図をお示しいただきましたですけれども、実はこの中で大変、今、問題になってきてますのは、やはり火力発電などを中心に老朽化した施設が非常に多くなってきております。

東日本大震災のときに、やむを得ず今まで休止していたものを、また、修繕して使っているという現状もございますので、そういったことなども踏まえて、国内の電力需要がどうなっているかということについては、しっかりと将来を見据えて、対応していく必要があるのではないかなと思っております。

〔江尻〕

老朽化の問題は電力だけではありません。
資料3をご覧ください。

資料3

もっと心配なのが5km圏内に集中する多くの原子力施設についても、いま老朽化が問題です。東海再処理工場のタンクの中には、ガラス固化されていない大量の高放射性廃液が溶液のまま残っていますが、トラブルは頻発しています。

また、MOX燃料の加工施設には、危険なウランやプルトニウム原料が大量に存在しています。安心安全の体制整備といつも知事は仰っていますけれども、本県にとっては、地震や津波との原発複合災害はもちろん、原発と原子力施設との複合災害まで考えなければならない特異な地域だという認識について知事の所見を伺います。

〔知事〕

原子力関連の事業所が、原子力発電所だけではなくて大変集中しているという点では、日本の国内では極めて珍しい地域であるということは間違いありません。

〔江尻〕

そういう地域にあって、複合災害、自然災害との複合だけではなくて、原子力施設と原発との複合災害はいかがお考えなのか。いわゆる東海第二原発過酷事故が起こって、5km圏内、30km圏内が避難しなければならない立ち入り禁止になった時に、こうした原子力施設は一体どうなるのか。そういうことも複合災害として考えなくてはならないとお伺いしたのですが、再度ご答弁をお願いします。

〔知事〕

原発事故が起きたときに、まわりにはたぶん今おっしゃられたとおり立ち入りはできなくなってくると思います。そのときにどういった危惧が生ずるかということにつきましては、私どもも十分に検討はしておりませんけれども、たとえば、今溶液で保管されているものについては、固化処理すべきだということについて、実は、地元と原発事業者との間で協定などもございまして、これまで進んでおりませんでした。

しかし、最近は固化処理したほうが、ずいぶん安全性が高まるのではないかということで、積極的に固化処理が始まっているところでございますので、私どもとしても、できるだけ早く固化処理を進めてほしいなと思っているところでございます。

〔江尻〕

「検討はしておりません」では県民の安全安心は守れないと、再三複合災害、それも二重の複合災害の検討が本県には必要だと、合わせて訴えさせていただきますが、知事は「国から再稼働の協力要請があった場合は、地域経済や安全・安心の体制整備」を考慮すると述べました。もう一方で、知事は本会議で「廃炉を前提とした地域の将来像を申し上げることは適切ではない」と答弁しています。

再稼働要請の場合しか想定していない。不適合となった場合の事を考えないのか。原発のない将来像をと質問しましたが、それについては語れずに、国の動向を何より気にする知事を県民はどうみるでしょうか。
福島の事故以来6年、いまだ現状さえ把握できない国と事業者に対して、「こんな状況で原発を再稼働させるなど、とんでもない」と意見するのが、地方自治の長を務める知事の使命ではないでしょうか。
「再稼働は認められない」と国と事業所に廃炉を要請して頂きたい。再度、お答え下さい。

〔知事〕

原発のない茨城の将来像ということにつきましては、廃炉の時期等々によって、まったくその影響なども変わってくるものですから、今の段階で将来像というものは想定できないということを申し上げたところでございます。

そして、廃炉をすべきだということについて、国に申し入れをしてはどうかとのことでございますけれども、国の方でまだ何らの判断もしておりませんので、こちらに稼働したいということも言ってきてない段階で、こちらからあえて廃炉をと言っていく必要もないのではないかと思っております。

仮に、今までの例で申し上げますと、自分の方から廃炉を言っていって廃炉になった場合と、国の方の都合で廃炉した場合とでは、後をどうするか、その後の地域の状況をどうするかということについても大きく異なってきている例などもございますので、私どもとしては、そういったことなども踏まえながら、国としてどう判断するのか、それを待って、県としての立場を決めていきたいと思っております。

〔江尻〕

この6年間、知事のいまおっしゃった答弁を何度も聞いてまいりました。

しかし、今年は東海第二原発もまもなく40年を迎え、今年は8月から11月にかけて20年の運転延長申請が迫っている特別の時期です。だからこそ県民は国がどう判断するのか、ということではなくて、我が県知事はどう考えているのかという事を聞きたい。これに応えていくのが知事の今の責任だと私は考えます。

知事は今年1月の茨城原子力協議会の新春の集いに出て、挨拶で大洗にある実験炉「常陽」についてこう仰っています。「今後の高速炉サイクルをどうするのか、大きな課題に常陽が貢献できれば素晴らしい」と述べ、再稼働を積極的に推進しようとしています。原発についてはどんどん審査がすすむのに国任せ。しかし、「もんじゅ」で破たんした核燃料サイクルの「常陽」は、まだ申請も出ていないのに再稼働要請の姿勢。

一方では語らず、一方では国に要請する。こうした知事の姿勢がいま県民にどう映っているのかという事を改めてお考えいただきたいと思います。

茨城に住み続けたい、田んぼや畑や家畜を守りたい。日々の当たり前の暮らしを奪われたくない。もう二度と目に見えない放射能の危険に子どもたちを晒したくない。こういう思い以上に大事な事が他にあるのか、こういう思いこそ県民の宝じゃないかと私は考えています。

知事には是非、思いを受けとめての決断・判断をお願いして、以上で質問を終わります。

以上

江尻加那県議の予算特別委員会質問・答弁(PDF)

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