[特集]原発・エネルギー問題の焦点(1)
知事選争点に押し上げた東海第二原発再稼働反対(茨城県)

「原発いらない」──1,100人が東海第二原発を包囲

「8・26 原発いらない茨城アクション」に、県内外1,100人が参加して東海第二原発(東海村)を包囲しました。
その人間の鎖に、私たちは選挙カーから連帯のコールを送りました。

投票日を翌日に控えた茨城県知事選挙で、鶴田まこみ候補を擁立した「いのち輝くいばらきの会」(以下、「輝く会」)の共同代表で前東海村長の村上達也さんも、「目先の利益で原発を動かしてはならない」と選挙カーに同乗して訴えました。

日本原子力発電株式会社(以下、日本原電)の東海第二原発は、来年11月で運転開始40年を迎えます。
日本原電は、運転期間の延長をめざしており、知事選挙投票翌日の8月28日から11月28日がその申請期間です。

知事選で、再稼働と運転延長を許さない民意をしめすことが決定的に重要だと、アクション参加者は、「運転延長、絶対反対」、「避難はできない」、「子どもの未来に、原発いらない」と夏空にコールを繰り返しました。

茨城でも大きく高まる 「原発ノー」の県民世論

東海第二原発は、1978年11月に国内初の大型原発(出力110万キロワット)として営業運転を開始し、東京電力や東北電力に売電してきました。

原子炉は、東電福島第一原発と同じ沸騰水型です。
東日本大震災では、津波に襲われて外部電源を失い、非常用発電機1台が停止しましたが、残り2台が作動し、原子炉の冷却を継続できてかろうじて過酷事故をまぬがれました。

原発にたいする県民の不安は大きく高まり、橋本昌知事(当時)にたいして、再稼働反対署名が31万筆を超えて提出され、県内の7割の市町村議会で再稼働反対・廃炉を求める決議があがりました。

県内各種のアンケート調査でも「再稼働に反対」が6~7割にのぼり、毎週金曜日の抗議アクションは、水戸市、取手市、牛久市でねばり強くつづけられています。

再稼働の差し止めを求める裁判(水戸地裁)には、毎回、多くの原告や県民が駆けつけて、傍聴席を埋めています。

「老朽原発」への大きな不安

日本原電が東海第二原発の周辺自治体でおこなった住民説明会では、もっとも多く出された質問は「高経年化」=「老朽化」対策にかかわるものでした(図1)。

老朽化にたいする県民不安の大きさがしめされています。
県議会や裁判では、東海第二原発のトラブル発生状況があきらかにされ、危険性が訴えられてきました。

東海第二原発で生じた事故を分析したニューシア原子力施設情報公開ライブラリー(電気事業連合会の協力のもと原子力安全推進協会が運営)の資料によると、運転当初は部品の不具合などのトラブルが続き、二十数年から30年を過ぎると、あきらかに増加しています(図2)。

長期間の運転によって、放射線にさらされる原子炉がもろくなったり、配管やケーブルなどの設備が老朽化し、事故の確率が格段に高まります。
東日本大震災で運転を停止していても、トラブルが発生し続けています。

ところが、日本原電は当然廃止にすべき老朽原発を再稼働させ、さらに運転期間を延長させようとしています。
2014年5月に申請した新規制基準適合性審査はすでに65回目を終え(2017年9月2日現在)、規制委員会は急ピッチで審査をすすめています。

運転延長申請に必要な「特別点検」についても、日本原電は今年5月に開始しました。

廃炉求める党県議団と県の無責任な対応

党の調査であきらかになった5つの危険

こうした動きにたいし、党県委員会と県議・市町村議員団は、5月16日に日本原電にヒアリング調査を実施しました。
目的は、東海第二原発の危険性を再度具体的にあきらかにするためです。
事前に11項目の質問書を送って文書回答を求め、当日は日本原電の東海事業本部で約1時間、県議3人と市町村議12人が参加して、事務所長らに質疑しました。

日本原電の回答からあきらかになった危険性を5つあげます。

第1に、原子炉が沸騰水型の東海第二原発は、加圧水型と違ってフィルタ付ベント装置が完成しなければ再稼働できない。
その理由は、格納容器の容積が小さいために水蒸気爆発のリスクが高い。
第2に、予測する津波高さ17.1メートルよりはるかに低い海抜8メートルに原子炉が立地しているため、長さ約2キロメートルの防潮堤が完成しなければ再稼働できない。
第3に、溶けた核燃料が格納容器を突き抜けて水蒸気爆発を起こすのを防ぐための装置、いわゆる「コアキャッチャー」が装備されていない。
第4に、建設開始から見ると40年以上使ってきた燃えやすい電気ケーブルの劣化にたいし、最新の知見にもとづく健全性評価がなされていない。
第5に、現在、東海第二で保管している核燃料は3,117体にのぼり、そのうち2,202体はいまだプール内で冷やし続けており、青森県六ヶ所村や、むつ市の工場に搬出する目途がまったく立っていない。

この調査を受けて、党県議団は、6月議会の一般質問で東海第二原発の危険性をあらためてしめし、知事に「廃炉の決断」を迫りました。
橋本知事6期目最後の議会でしたが、知事は「最初は安全だという意識が強かったが、いまや原発に事故が起きる可能性があると思っている」と初めてみずからの考えに言及しました。

しかし、最後は、「再稼働や運転延長は国の対応を見て決める」と、これまでの答弁を繰り返しました。

実効性なし、“災害弱者切り捨て”の百万人の避難計画

県は、2015年3月、東海第二原発の過酷事故を想定した広域避難計画を策定し、これにもとづく市町村の避難計画策定をすすめています。
原発から半径30キロメートル圏内の14市町村、対象住民は全国一多い約96万人にのぼります。
県内だけでは受け入れられないと、56万人は他県への避難を計画しています(図3)。

県計画は、原発の単独事故を想定したものであり、地震や津波など複合災害の対応は先送り。
道路が通行不能になった場合の代替ルートや、避難先が被災した場合の別の避難所の確保がしめされておらず、実効性がありません。

30キロメートル圏内には、入院患者や入所者を抱える病院、福祉施設が317施設、定員数は2万3千人を超えています。
県は、病院や施設の管理者が、あらかじめ避難先や避難時のバス・車両をみずから確保することとしており、災害弱者を切り捨てるものです。

14市町村の避難計画は、いまだに一つもできていません。受け入れ側となる市町村の避難受け入れの体制整備も定まりません。
100万人の避難を想定しなければならないような原発は、そのことだけをとっても廃止すべきです。

住民不安ふまえた自治体の注目される動き

東海第二原発の再稼働を止めるためには、茨城県と東海村の判断が決定的です。
現在、日本原電が締結する原子力安全協定では、次のように、事前了解を求められるのは県と東海村に限られています。

●原子力安全協定(新増設等にたいする事前了解)
第五条 丁(日本原電)は、原子力施設及びこれと密接な関連を有する施設を新設し、増設し、変更し、又はこれらに係る用地の取得をしようとするときは、事前に甲(県)及び乙(東海村)の了解を得るものとする。ただし、軽微なものについてはこの限りでない。

東海第二原発は、新規制基準に適合させるための安全対策工事が必要であり、このうち原子炉非常用冷却設備の増設が協定第五条にもとづき事前了解を得る必要があるとされています。
茨城県と東海村の了解がなければ、工事できないことから、県と村の判断が再稼働の是非を決めます。

東海村ふくむ周辺自治体の 「事前了解」権限拡大求める動き

一方、東海村と周辺5市(水戸市、日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市)でつくる「原子力所在地域首長懇談会」は、一致して「事前了解」の権限拡大を求めています。

全国でも同様の動きがありますが、立地自治体である東海村が拡大を求めている点が重要です。30キロメートル圏内の自治体には避難計画の策定が義務づけられており、これらの自治体が再稼働に意見を表明できるように権限拡大は当然のことですが、日本原電は応じていません。

福島原発事故に対応し、市町村独自の健康調査・検査費助成

県内市町村は、福島原発事故後、甲状腺エコー検査など、子どもの健康調査にもとりくんでいます。
福島第一原発事故では、大量の放射性物質が茨城県内にも広範囲に放出され、とくに子どもをもつお母さんたちに不安がひろがりました。
県議会でも全会一致で健康調査を求めましたが、橋本知事は「専門家が大丈夫と言っている」、「国の検討結果を注視する」と、県としての実施を拒んできました。

こうしたなか、東海村や北茨城市、つくば市、城里町など複数の自治体が、独自の健康調査や検査費助成を実施しています。

北茨城市は2013~14年度に、震災当時0~18歳の子どもたち4,777人の甲状腺検査を集団健診で実施し、そのうち3人が甲状腺がんと診断されました。
事業予算は約3,700万円で、当初は一般財源からの持ち出しでしたが、党市議が「震災復興特別交付金の原発事故関連子どもの生活支援等に該当する」と提起し、約3,500万円が国から予算措置されました。

城里町でも同交付金を活用して、2016年度から検査を実施しています。

プルトニウム被ばく事故発生、「常陽」は廃炉に

原子力にたいする県民の不安をさらに高める事故が6月6日に発生しました。

日本原子力研究開発機構(以下、機構)の大洗研究開発センター(大洗町)におけるプルトニウム被ばく事故です。
センターの燃料研究棟で、核燃料物質を収納していた貯蔵容器が点検中に破裂して作業員5人が内部被ばくし、緊急入院となりました。

この燃料研究棟は廃止することが決まっている施設であり、廃止作業の一環として核燃料物質の点検がすすめられていました。

党議員団は機構にたいし、2日後に現地調査と「被曝した作業員の健康被害を最小限に抑える」、「事故原因を徹底究明し、再発防止対策に万全を期す」などの対応を取るよう申し入れをおこないました。

機構が所有する89施設のうち76施設が茨城県に集中し、53施設で核燃料物質が使用・保管されています。
そのうち10施設は、核燃料物質の保管状態が不適切だとして、規制委員会から是正指示を受けています。

このような管理体制のずさんさがあきらかになる一方、機構は大洗研究開発センターにある高速実験炉「常陽」を再稼働させようとしています。

党県議団は、「もんじゅも常陽も廃止すべきであり、破たんした核燃料サイクルから撤退すべき」と求めています。

原子力関連施設集中地で求められる複合災害防止対策

この他にも、県内には多くの原子力関連施設が集積しています。
とくに、東海第二原発の半径5キロメートルには、10施設以上の使用済燃料の再処理施設や核燃料加工施設が立地しています(図4)。

さらに、原発北側の日立港区にはLNG(液化天然ガス)基地、南側の常陸那珂港区には石炭火力発電所も立地しています。

原発で過酷事故が発生して5キロメートル圏内が立入禁止になったら、こうした原子力施設や発電所がどうなるのか。
複合災害の危険性について、県は「十分検討していない」としています。

原子力発電所の事故にとどまらず、他の原子力施設との複合災害を防ぐ対策が求められます。

県知事選で、原発再稼働が一大争点に

原子力問題に関心が高まるなか、8月に県知事選挙がおこなわれました(27日投票)。

「輝く会」からは、鶴田まこみ候補が立候補し、日本共産党をふくむ6政党・政治団体(茨城一新会、新社会党、つくば・市民ネットワーク、とりで生活者ネットワーク、緑の党グリーンズジャパン)が推薦しました。
現職の橋本氏をふくむ三つどもえの選挙戦で、鶴田候補は12万2013票(得票率11.65%)を獲得しましたが、当選したのは自民・公明推薦の大井川和彦候補でした。

投票日のNHK出口調査では、東海第二原発の再稼働に「反対」と答えた有権者が76%との結果が大きくテレビ画面にしめされました。
これを見た有権者から、党の事務所にも、「なぜ原発推進の自民党、大井川候補が当選するのか」との率直な声が数多く寄せられました。

鶴田氏立候補で再稼働問題が争点に浮上

選挙前、7期目をめざす橋本候補と新人の大井川候補が再稼働問題を選挙の争点から外すなか、鶴田候補が「再稼働は認めない」と公約の一番に掲げて争点に浮上させました。

市民と野党の共闘でたたかった8月の茨城県知事選挙──上は、街頭演説(右2人目から、小池晃党書記局長、鶴田まこみ候補)。下は、ポスター・法定ビラ

これにたいし現職の橋本候補は、「再稼働については国が判断する」という従来の立場から、告示日当日になって突然、「再稼働を認めない方向に舵を切りたい」と態度を一変させました。
橋本候補を推薦する連合茨城や、自主投票を決めていた民進党、社民党などからも、おどろきや戸惑いの声が聞こえました。

大井川候補は、橋本候補への多選批判を前面に出し、原発の再稼働問題については「県民の意見を十分に反映させる」とのべるだけで、是非を明確にしませんでした。

最後まで、東海第二原発の再稼働反対と廃炉を明確に訴えたのは、鶴田候補だけでした。

県民世論を得票に結びつけられなかったことは大変残念ですが、「再稼働反対」の県民の意思はしっかりと県政に反映されなければなりません。
そのための県民運動にこれからもしっかりととりくんでいきたいと思います。

県政史上初めての市民と野党の共同が前進

今回の県知事選挙は、県政史上初めて、市民と野党が共同してたたかい、「保守王国」といわれる茨城でも共同の流れを一歩前進させるものとなりました。

44市町村における地域の「輝く会」結成は43に達し、個人演説会が10地域で開かれるなど、変革の可能性は着実にひろがっています。

「輝く会」は、原発ストップの政策のほかにも、「再生可能エネルギー先進県に転換を」、「不要不急の大型開発から福祉、教育、医療優先に」と訴え、県民の共感と期待をひろげてたたかいぬきました。

党県議団が選挙前に作成した「県政パンフレット」(28ページ)が「輝く会」の政策にも活かされ、これを読んだ有権者から「いままで知らなかった県政が身近になった」と感想が寄せられました。

「原発ゼロ」実現、再エネ推進、安全な廃炉へ

この「県政パンフレット」には、議会論戦をつうじてあきらかにした再生可能エネルギーの発電状況と課題をしめしました。

太陽光導入日本一で原発の2倍、適切な拡大へ

固定価格買取制度が2012年7月に本格実施されて以降、県内では太陽光発電導入容量が一気に拡大しました。
16年12月時点で約200万キロワットとなり、太陽光発電の導入量では茨城県は全国一となっています。

また、茨城県内の発電施設設備容量は、太陽光発電が原子力発電の2倍になっています(図5)。

県内の発電量は、資源エネルギー庁の統計をみると月平均約30億キロワット時で、そのうち3分の2が県内で消費され、残りは東京など首都圏へ供給されています。
しかし、太陽光発電のほとんどがメガソーラーなどの大規模施設で、10キロワット以下の住宅用発電が占める割合は8.5%にすぎません。

無秩序な太陽光パネル設置が県内各地で問題化し、県は16年10月に「太陽光発電施設の適正な設置・管理に関するガイドライン」を施行しました。
対象は50キロワット以上の事業用発電施設で、「設置するのに適当でないエリア」を明記したほか、事業者にたいし地元関係者への事前説明や災害への対策、設置した後の適正な維持管理を求めています。

「原発ゼロ」を実現させるとともに、再生可能エネルギーを適切に拡大することが求められます。

市民と野党の共闘で安倍政権の原発推進阻止へ

さらに、東海第二原発の廃炉が実現しても、実際の廃炉作業は大変な困難と危険をともないます。
徹底した安全管理のもとで作業をすすめるためには、多くの原発労働者や研究者、専門業者が必要であり、現場からは人材の確保と育成を求める声があがっています。

日本原電は、再稼働に必要な安全対策費(防潮堤やフィルタ付ベント装置の工事費など)を780億円としています。
しかし、2017年3月期決算で64億円の純損失を計上するなど、資金繰りが行き詰まっていることもあきらかです。

一方、日本原電が発表した「平成29年度経営の基本計画の概要」には、(1)既設発電所(東海第二発電所、敦賀発電所2号機)の的確な運営、(2)敦賀発電所3・4号機増設計画の推進、(3)英国ホライズン・プロジェクトへの積極的な支援──などが盛り込まれ、国内外でさらに原発を新増設する方針がしめされています。

英国のプロジェクトとは、日立製作所が英国アングルシー島のウィルファで原発2基を建設する計画で、日本原電も協力協定を締結して許認可や運転保守への支援を表明しています。
さらに、安倍政権はこの計画を後押しするために、日本のメガバンクが融資する原発建設資金を全額補償する異例の措置をしめしています。

こうした安倍政権とメガバンク、原子炉メーカー、発電会社が一体となった原発推進政策は、国民世論だけでなく「脱原発」の世界の流れに逆行するものです。

この誤った国策をストップする力は、世論と運動しかありません。
来るべき衆議院選挙と来年に迫った県議会議員選挙で、市民と野党の共闘をさらにひろげてたたかう決意です。

(えじり・かな)

(「議会と自治体」第234号[2017年10月発行]より転載)

「議会と自治体」第234号 「知事選争点に押し上げた東海第2原発再稼働反対」(PDF)