県職員自死の再調査を 江尻かな議員らが知事に要望書
第2回茨城県議会定例会が開会した6月3日、日本共産党県委員会の上野高志委員長と江尻かな議員は、大井川和彦知事宛てに、「県庁秘書課職員の自死について再調査を求める要望書」を提出しました。山口裕之総務部長が受け取り、意見交換しました。
江尻氏は、報道された遺書の中で「亡くなった職員の“パワハラと呼べるもの”との訴えは最も尊重すべきこと」と強調。
▽パワハラも過重労働もなかったと判断した理由を明らかにする▽判断した調査結果に対する遺族の意向をどのように確認、把握したか示す▽調査委員の高い中立性の担保、知事部局全職員アンケート実施と、県庁全体のパワハラと過重労働の実態把握▽公共性・公益性に資する内容を適切に公表する─などを踏まえて再調査するよう要請し、10日までの文書回答を求めました。
山口氏は、第三者委員会が日本弁護士会のガイドラインにのっとって対応してきたことを説明。「訴訟要件に耐えられる法的な概念のパワハラについて、中立な弁護士が判断している」、「県としては法に基づいて、ご遺族の考えを尊重し対応している」と強調しました。江尻氏は、「間違いないという第三者委員会の判断の理由や結果に至る経過が明らかになっていない」と指摘し、要望書への回答を求めました。
同日、議会運営委員会に対して、立憲民主党の玉造順一県議が「執行部の答弁のあり方」として、昨年12月と今年3月の総務企画委員会での質問と答弁の内容、報道された内容の事実の精査を求めました。江尻氏も賛同し、重ねて求めました。
(「しんぶん赤旗」2025年6月4日付より転載)
茨城県庁秘書課職員の自死について、遺族の意向により行った調査の「再調査」を求める要望書
2025年6月3日
茨城県知事 大井川 和彦 様
日本共産党茨城県委員会 委員長 上野 高志
日本共産党茨城県議会議員 江尻 加那
県総務部知事公室秘書課職員が2024年10月20日、副知事によるパワーハラスメント等を訴える遺書を残して自死していたことがわかりました。新聞報道等によると、亡くなる5日前(10月15日付)に書かれた遺書は、「あの副知事の下で仕事をするのは限界、うんざりだ」との言葉から始まり、つらく苦しい思いがつづられていました。
「今まで経験したことのない数の叱責、非難の言葉を受けてきた」「対応できる限度を超える範囲、程度にまで要求が及んでおり、それをことさら強硬に完ぺきを求められても、応えきれない、限界がある。しかしかまわず血相を変えて、痛烈に、執ように穴を突いてくる。人格を否定されるような言葉も飛ぶ。これこそ一般的にパワハラと呼べるものだと思う」と記されていました。
県が遺族の意向により設置した「茨城県の職場環境等に関する調査委員会」(根本義信委員長=弁護士らメンバー4名、2024年11月26日~25年2月7日、計10回非公開で実施)は「報告書」(全21ページ)で、当該職員へのパワーハラスメントや過重労働はなく、職場の対応にも特に問題はなかったと判断。それを受けて2月12日に県が公表した調査結果概要(A4判2ページ)も、「パワハラも過重労働もなかった」と結論付けました。
一方、調査委員会「報告書」には最後に「付言」が記され、「パワーハラスメントを受けていたと感じていたことは明らか」「副知事の言動に全く問題がなかったというわけでもない」「日々の仕事のゴールが見えず、慢性的な不安を抱えるに至ったであろう事は容易に想像できる」としています。しかし、ではどのような理由でパワハラはなかったと判断したのか明らかにされていません。
その上、県が公表した概要では、「付言」の最後にある「職員が亡くなっていることを重く受け止め、職員のストレスチェックをより充実させるなど、よりよい職場環境整備のために改善を図ることを期待する」との一部分は示す一方、パワハラについて触れた重要部分の記載はまったくなく、伏せられました。
亡くなった職員が「パワハラと呼べるもの」と訴えているにも関わらず、「なかった」と断定することは、故人の思いに反するものです。パワハラの判断要件にもとづけば、行為者に悪意があったか、教育表現として行ったかなどの意図に関係なく、結果的にその言動が相手を傷つけ、精神的に追い込み、就業意欲を害するものであるかどうかを重視しなければなりません。ましてや、被害者の職員から聞き取りすることが叶わない状況において、遺書に記された故人の訴えは最も尊重すべき事柄です。
また、ご遺族の皆様が納得して調査結果を受け入れたのかも不明です。これでは公務労働災害の認定を最初から閉ざすことになります。加えて、副知事の任命者である大井川知事の責任は問われないまま、知事は「談話」を発表したのみです。これら調査の経過や県の対応は、県民理解を得られないと考えます。
よって、再調査を求めるものです。その際、下記内容を踏まえることを要望し、6月10日までに文書で回答いただくよう求めます。
記
- 先の「茨城県の職場環境等に関する調査委員会」がパワハラも過重労働もなかったと判断した理由と、調査委員会が聞き取りを行った「ご遺族及び関係職員」の範囲を明らかにする。
- パワハラも過重労働もなかったと判断した調査結果に対するご遺族の意向を、県はどのように確認し、把握しているのか示す。
- 再調査にあたって、調査方法等に対してご遺族や関係職員の意向を反映させたものとする。調査委員は高い中立性を担保するとともに、幅広い職能から複数人ずつ構成する。聞き取り調査に加え、知事部局全職員にアンケートを実施して県庁全体のパワハラや過重労働の実態をつかむ。
- 再調査内容と結果の公表について、ご遺族の意向やプライバシーを尊重すると同時に、公共性・公益性に資する内容を積極的に適切に公表し、パワハラや過重労働を一掃する。
以上