日本共産党茨城県議団ニュース 2019年12月号

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県議会11月臨時会報告 台風被害の再建支援と防災強化を

台風15号・19号により死者2人、行方不明者1人のほか、住家被害が6,042棟、約144億円の農業被害、100億円超の中小企業被害が出ています。県の緊急事業として約354億円の補正予算案が11月19日の臨時会で審議され、全会一致で可決しました。

日本共産党県議団は、江尻かな議員が質疑に立ち、山中たい子議員が賛成討論を行いました。

治水対策の遅れが人命・財産・生業を奪った

江尻議員は質疑の中で、「8年前の地震で半壊した住宅が、床上浸水60cmでまた半壊。直すお金がない」、「13日朝、川の水位が下がったから水門を開けてくれと市役所に行ったが、開けに来たのは昼過ぎ。あの時開けてくれていたら」、「家財道具も家電製品も全滅で、公営住宅に引っ越せない」、「水戸市国田地域の無堤防地区は、国交省が堤防は必要ないとしてきたが、那珂川があふれた」など、被災住民の切実な声を訴えました。

さらに、日本共産党の調査によって、「那珂川の本県堤防整備率は50%、久慈川は27%」、「県管理ダムは操作規則で10月10日までを洪水期とし、11日からは水位を上げ始めるとなっている。洪水調節する事前放流ができる体制が整備されていない」、「崩落した水郡線鉄橋の柱脚部分は鉄筋が1本も入っていない。93年前につくられたまま。水郡線に大小222箇所の橋があるが災害対策が遅れている」と実態を示しました。

その上で、江尻議員は4点について知事に質問しました。

1. 生活再建支援の拡充と生活必需品の給与について

【知事】半壊世帯は国の支援対象となっていないが、床や家財道具の被害は大きく、県独自に25万円の支援を行う。本来は半壊も国が支援すべきものであり、10月21日に国に制度改正を緊急要望した。全壊世帯も支援額(現在最大300万円)が増額されるよう要望していきたい。
寝具等の生活必需品の給与が申請しやすいよう、提供品リストを被災者に配布るなど市町村と連携して取り組んでいく。

2. 水郡線の早期全面開通と鉄道の災害対策強化について

【知事】水郡線の全線復旧には相当な期間を要する。JRに対し一日も早い復旧と、鉄道の防災・減災対策の検討を求めていきたい。

3. 樋管や県管理ダムの運用改善について

【知事】ダムの放流にあたっては、急激な水位上昇により地元自治体等への情報伝達に時間的余裕がなかったこと、夜間の出水により状況把握が困難だったことなどの課題を検証し、改善策を検討していく。

4. 堤防整備や河道掘削、護岸強化などの治水対策について

【知事】被害の原因把握に努め、無堤防地区を含めた河川改修計画の見直しを行っていきたい。堤防整備と河川に堆積した土砂撤去も取り組んでいく。

補正予算354億円 一人ひとりの被災者につながる対策を 山中たい子議員

第140号議案は、台風15号・19号等の甚大な被害から被災者の生活と生業の再建、災害の復旧・復興への緊急かつ必要な補正予算であり、賛成いたします。

台風19号により国県管理河川の氾濫、決壊が相次ぎ、しかも避難に重要な氾濫発生情報や氾濫危険情報が出されなかったことは重大です。また国交省の出先機関において職員の定員削減がすすめられ、現場対応の人員不足は深刻です。

水戸市国田地区など無堤防地域の築堤や決壊しづらい堤防の強化、河道掘削など河川改修に必要な予算を集中するべきです。

「公営住宅への入居が決まったが、家財道具がすべて流された。せめて布団がほしい」と切実な訴えが寄せられました。災害救助法は、被災者にたいし「被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与」するとしていますが、全く徹底されていません。そこで内閣府は、11月7日に改めて制度の全面的な活用と周知徹底を図るよう事務連絡を出しました。早急な改善を強く求めます。

生活再建の支援について、まだまだ不十分です。本県独自の半壊25万円の支援金を京都府並みの150万円に増額し、対象を一部損壊、床上浸水まで拡大することが求められます。水害被害の特徴は、断熱材を使用した住宅において床から天井まで水があがり大規模な補修をともなうことです。

また、国の支援金が全壊で最大300万円では少なすぎます。野党が国会に共同提案した500万円まで増額すること、支援金は国が半額補助することとされていますが、負担割合の引き上げが必要です。

寒さが厳しくなるなか、心身ともに疲れ切っている被災者が安心できて、明日への希望が見える支援が急務です。この補正予算が一人ひとりの被災者の深刻な実態に見合った対策の強化につながることを願い、討論を終わります。

台風15号・19号被害対策事業の概要
一般会計補正予算 354億5900万円

生活再建支援 25億7200万円

〇住宅応急修理(10億4300万円)
市町村から工事業者に住宅の修理代金が支払われる制度
・大規模半壊・半壊世帯の修理に1件最大59万5千円
・新規事業 一部損壊世帯の修理にも1件最大30万円
〇応急仮設住宅(6億200万円)
県が仮設住宅60戸を建設するとともに、住宅の借り上げで73戸を提供
〇避難所運営費(3億4600万円)
1人1日1,147円×避難延べ人数・日数を市町村に支給
〇県独自 半壊世帯への支援金(1億6000万円)
1世帯25万円(県と市町村で財源負担)
〇新規事業 15号による屋根修理への支援金(2億500万円)
1世帯最大50万円(工事費の1/5限度)
〇19号の被災者に援護資金貸付(2億1600万円)
限度額350万円(申請2020.1.31まで)

農業者支援 31億5700万円

〇被災農業者(経営体育成)支援(30億9900万円)
・被災したパイプハウスなど施設撤去費補助
国・県・市町村で6割補助、自己負担4割
・ 被災した施設修繕・再建費補助
国・県・市町村で4割補助、 自己負担6割
・トラクター等の機械・畜舎などの修繕・取得費補助
国・県・市町村で4割補助、自己負担6割
(機械・畜舎などの修繕・取得費補助は19号被害に限って国・県・市町村で9割補助、自己負担1割)
〇浸水した保管米への支援として営農再開緊急対策(5,800万円)
10アールあたり7万円補助

中小企業支援 139億7900万円

〇新規事業 自治体連携型補助金(109億1700万円)
グループ補助金ではなく個別事業所に再建経費を補助
・中小企業者の施設や機械設備の再建費補助に上限額なしで国・県で3/4補助、自己負担1/4
※個人病院については自治体の判断で補助対象にすることが可能としています。
〇中小企業者への資金貸付、信用保証料補助、利子補給(30億6200万円)
・り災証明者や売上減少20%以上に限度額8,000万円を融資

公共事業 150億600万円

〇国補助公共事業(122億2700万円)
・道路24ヶ所、河川154ヶ所、土地改良施設1734ヶ所のほか、港湾、漁港の復旧、農地堆積土砂撤去など
・里川(常陸太田市)などの堤防決壊改修
・北茨城市、笠間市、桜川市などの山腹崩壊、渓流浸食の治山事業
・海岸(大洗、鉾田、鹿島、神栖、鹿島港)の漂着流木等処理事業
〇県単独公共事業(23億1900万円)
県道や県管理河川の応急復旧や小規模復旧
〇県有施設復旧事業(4億6000万円)
大子合同庁舎、鬼怒商業高校、水海道二高、大子清流高校などの復旧

その他 3億4400万円

〇観光支援・PR事業(1億2000万円)
宿泊料5,000円割引や代替交通運賃割引の補助、観光地PR事業など
〇社会福祉施設等の復旧事業(2億2400万円)
・高齢者福祉施設33ヶ所、障害者福祉施設4ヶ所、児童福祉施設34ヶ所、
児童厚生施設7ヶ所の復旧費補助

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