県議団ニュース 2019年6月号(定例県議会報告)
2019年第2回定例会 県議会報告
保健所統廃合や偕楽園有料化に反対
江尻かな県議が委員会質問、山中たい子県議が討論
6月24日に閉会した県議会で、保健所を9ヵ所に統廃合する議案や偕楽園を有料化する議案が日本共産党県議団以外の賛成多数で可決。医師確保のための5,400万円の補正予算は全会一致で可決しました。これらの議案や県政課題について、江尻かな県議が予算特別委員会で質問に立ち、山中たい子県議が採決に先立って討論を行いました。
江尻議員は20日の予算特別委員会で、「県は毎年、国のエネルギー政策における東海第2原発の位置づけや必要性を示すよう国に求めているが、何か回答はあったのか」と大井川知事に質問。知事は「回答は示されていない」と答弁し、再稼働によって増える放射性廃棄物の処理についても、「具体的な回答が得られていない」と答えました。
江尻議員は「原子力行政の根幹に関わる問題について、国は何も示せないまま全国で再稼働をすすめている。こんな無責任なことはない」と批判。
日本原電 経理的基礎に問題あり
また江尻議員は、日本原電の経理的基礎について知事の認識を問いましたが、知事は「原子力規制委員会が審査し国や事業者が判断するもの」との答弁に終始。
東京電力が東海第2原発を再稼働させるために資金支援を表明していますが、6月18日に東電の株主2人が「支援する資格はない。中止すべき」と社長を東京地裁に訴えています。
震源は東海第2原発の真下
さらに江尻議員は、今月17日に茨城県で発生した地震の震源が、東海第2原発の直下であった事実を示し、「地震が多発する日本では原発は止めるしかない。再稼働に同意できないと国や原電に告げるべきだ」と迫りました。
(その他、偕楽園有料化問題や高齢者の補聴器購入費補助、重度心身障がい児への医療支援などについて質問)
山中議員が行った討論の主な内容は、下記のとおりです。
▼保健所を12ヵ所から9ヵ所に統廃合することについて、知事は「保健所の体制強化」と述べましたが、不足する公衆衛生医師と全国42位の保健師の確保・養成や難病医療費助成の申請相談などの強化こそ求められます。
▼偕楽園は、民とともに楽しむためにつくられ、無料という伝統を引き継いできた本県が、その歴史をくつがえそうとしています。県内と県外者を区別し、来園者に身分証を提示させ、小中学生まで料金を徴収する有料化に反対です。魅力向上策は、受益者負担でなく一般会計で実行可能です。
▼県立高校の岩井高校と坂東総合高校を統合させることにより、かつて地域に3つあった学校が1つになってしまいます。遠距離通学により、身体的にも経済的にも生徒とその家族にさらなる負担を強いることになります。
また、中高一貫校のため県立中学校5校を設置することは、受験競争を小学生から激化させます。
▼水戸市の中核市指定への同意を求める議案は、市民的に「中核市になると何が変わるのか」「メリットとデメリットは」といった論議が不十分な中、県の保健所と市の保健所と二重行政になるのではないか、財源や専門的人材が確保できるのかと意見が出されています。機械的な権限移譲でなく、広域行政である県の役割、機能の発揮こそ求められます。
▼布川事件の国家賠償請求訴訟において国・県に賠償を命じた一審判決を不服として、県が控訴しました。再審無罪が確定した桜井昌司さんが賠償を求めた裁判で、東京地裁判決は、「警察官は故意に虚偽の証言をしたと認められ違法」と断罪するとともに、証拠開示を求めました。違法な捜査の上にえん罪がつくり出されたことが明らかになった以上、控訴は取り下げるべきです。
▼老後の暮らしを支える年金の実現を求める意見書(日本共産党県議団が提出)は、安心できる老後保障のため、マクロ経済スライドを廃止し、低年金者全員の年金の底上げを図ることを国に求めるものであり、可決を求めます。
各会派の賛否態度
最低賃金アップ・年金保障求め意見書提出
日本共産党県議団は2つの意見書(案)を県議会に提出しましたが、残念ながら否決となりました。
最低賃金の引き上げを求める意見書(案)
格差と貧困の広がりが深刻ないま、低すぎる最低賃金の引き上げは喫緊の課題である。
OECDの調査によれば、過去21年間に日本の時給は8%も減っている。主要国で、賃金が下がったのは日本だけである。
賃上げと長時間労働の是正をすすめ、8時間働けば普通にくらせる社会にしていくことは、家計消費を増やし、日本経済を立て直すかなめである。
いま最低賃金をただちに全国どこでも1,000円に引き上げ、1,500円をめざす運動が広がっている。こうした世論に押され、政府は最低賃金を毎年3%のペースで引き上げ、早期に全国加重平均1,000円をめざすとしているが、茨城はあと7年もかかることになる。
鹿児島県労働組合総連合が最低生計費調査を行ったが、男女とも1,500円以上必要という結果が出ている。しかも、鹿児島の最低賃金は全国最下位の時給761円で、最も高い東京と年収で45万円もの差がある。
茨城も例外ではない。東京と茨城の最低賃金は、年収で31万円もの格差を生み出し、首都圏への労働力流出など地方の疲弊を加速させている。建設、介護・保育など福祉分野の労働力不足は深刻で、地域経済に大きな影響を与えている。
最低賃金の引き上げで恩恵が大きいのは、女性や若者が多く非正規雇用の労働者である。また、地域経済の活性化や労働者全体の賃上げに波及する効果もある。
カギを握るのは、中小企業への賃上げ支援で社会保険料の事業主負担分を減免し賃上げを応援することである。ところが、政府が中小企業の最賃引き上げ支援策として支給する「業務改善等助成金」の予算額は、2014年度35.9億円から19年度当初予算6.9億円と大幅に削減されている。交付件数も14年度2,767件から18年度655件に減少している。
予算規模を現在の1千倍の7,000億円へと抜本的に拡充して労働者を雇用すれば、赤字でも負担する社会保険料の事業主負担分を賃上げ実績に応じて減免する中小企業への支援制度を実現することができる。
よって、政府においては、下記事項を実現するよう強く要望する。
記
- 最低賃金をただちに全国一律で時給1,000円に引き上げるとともに、1,500円をめざすこと。
- 中小企業への支援策と一体に最低賃金を引き上げるため、予算を抜本的に拡充すること。
以上
老後の暮らしを支える年金の実現を求める意見書(案)
金融庁の金融審議会が公表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書は、国民の大きな怒りを呼び、老後の不安をかきたて、公的年金制度に対する信頼を揺るがしている。
同報告書は、夫65歳以上、妻60歳以上の平均的なケースで、 毎月の支出が公的年金収入を約5万円上回るとして、今後30年生きると2,000万円が不足するため、資産形成・運用など「自助」の充実をと強調している。
さらに、年金の支給水準を自動的に減らす「マクロ経済スライド」によって年金給付が引き下がることも記述している。
この間、厳しい世論を前に、金融担当大臣らが報告書の受け取り拒否を表明したが、もともと今回の報告書は政府が進める「人生100年時代構想」の下で策定されたものである。
安倍政権の7年間(2013~2019年度)の合計で、年金改定の指標となる物価は5.3%上昇したのに、年金は0.8%のマイナス改定で実質6.1%もの大幅減である。
年金を減らし続けたうえ、年金に頼らずに資産運用を求め、国民に「自己責任」を強いることは到底容認できない。
いま政府に求められているのは、誰もが安心できる老後の生活を保障する責務を果たすことである。
よって、政府に対して信頼できる年金を実現するために、マクロ経済スライドの廃止、低年金者全員の年金の底上げを強く要求する。
以上