特集 統一地方選挙での勝利・躍進めざして(「議会と自治体」2022年9月号掲載)

茨城県議選での勝利めざして現有2議席の絶対確保と議席増で暮らしと平和を守る(茨城県)

茨城県議 山中たい子・江尻かな

日本共産党中央委員会発行「議会と自治体」 第293号(2022年9月号=2022年8月発売)

来年の統一地方選挙に先駆けて茨城県議選が今年12月におこなわれます。目前に迫った県議選で、現有2議席の絶対確保と議席増をめざし全力をあげています。

1. 県政の実態―全国8位の財政力でも生活指標は最下位クラス

茨城県の人口は285万人で全国11位、財政力指数は全国8位、農業産出額は3位、製造品出荷額も7位です。可住地面積は4位の広さで、山あり川あり海ありの豊かな県土が広がります。

県内の市町村は中核市の県都水戸市をはじめ44自治体あり、共産党議員54人(うち女性26人)が活動しています。

県議会(定数62・欠員3)の会派は、共産2人、自民45人、公明4人、国民民主系4人、立憲民主2人、無所属2人ですが、共産党以外は立憲民主を含めて予算・決算にすべて賛成の「オール与党」議会。唯一、東海第2原発の再稼働に反対する取り組みでは立憲民主議員と共闘しています。

自民、公明、国民民主が推薦する大井川和彦知事は2期目となり、民間企業顔負けの「儲かる県政」に邁進しています。
こうした県政は大きな矛盾をもたらし、全国8位の財政力がありながら、県民生活に直結する指標は軒並み最下位クラスです。

▼医師数・・・・・・・・・46位
▼一般診療所数・・・・・・44位
▼看護職員数・・・・・・・43位
▼老人ホーム定員数・・・・41位
▼特別支援学校教育費・・・45位
▼図書館数・・・・・・・・42位

そのため、県が毎年行うアンケートで、県政要望の上位は「地域医療・福祉の充実」、「雇用の創出」、「結婚・出産・子育て支援」です。

ところが、知事が予算も人も優先しているのが企業誘致です。県庁に「営業戦略部」のほか「立地推進部」まで新設し、最大50億円もの補助金を創設。加えて土地の価格引き下げや県税免除を行い、「企業立地件数・立地面積は全国トップクラス」と喧伝しています。

しかし、いまなお900ヘクタール超の土地が売れ残り、開発に要した借金返済に、17年間(2006年~)で2,600億円超が投入され続けています。
こうした無責任な開発行政に反対したのは共産党県議団しかなく、新たな2つの産業用地開発についても、共産党以外のすべての会派が賛成しました。

茨城県の正規雇用率は61.5%で全国27位、雇用者報酬は全国17位、労働分配率は36位という現状で、開発と誘致によって質の高い雇用が生まれているとは言えません。
最低賃金は時給879円で、千円に遠く及びません。党県議団は毎年、県労働局と茨城地方最低賃金審議会に最賃引き上げの要望書を提出し、県にも国に引き上げを要請するよう求めてきました。

県は当初、「賃金は企業が決定するもの」と言って消極的な姿勢でしたが、2018年から審議会等に引き上げを求める意見書を毎年提出するようになりました。

さらに今年7月には、初めて県内経済4団体に最低賃金引き上げへの理解を求める要請書を提出。
要請では、「人材確保の観点からも地域間格差の是正は早期に解決すべき大きな課題」と指摘し、経済団体からは「労働力不足の問題から引き上げは必要だと考えている」と意見が出されました。

日本共産党が掲げる全国一律1,500円の実現をめざし、さらに県政を動かしていきたいと思います。

2. 県民運動とともに実現した党議員団の実績

党議員団が県民運動とともに実現した成果をいくつか紹介します。

子ども医療費助成

1つ目は、子ども医療費助成です。今年4月、ついに県内すべての市町村で外来も入院も高校3年生まで助成が実現。その大本にあるのが県の制度です。

議会と自治体 2022年9月号 表1

表1 子ども医療費助成の対象が小学生以上の都道府県(2021年4月1日現在)

外来は小学6年生まで、入院は高校3年生まで助成額の半額を市町村に補助。これをさらに拡充し、県独自に外来も高校3年生までとし、所得制限も一部自己負担もなくして完全無料化するには、あと23億円でできます。かならず実現させたいと思います。

少人数学級

2つ目は、少人数学級の実施です。国が小学1年生~3年生までを35人学級とするもとで、小学4年生~中学3年生は県独自に教員を加配しています。30人学級へのさらなる拡充と、高校での少人数学級実施を求めています。

また、フリースクールへの財政支援や、内原特別支援学校に高等部が新設されるなど、県民の願いが結実したことは大きな励みです。

一方で、教員不足は深刻です。昨年4月時点で小・中学校合わせ、定員に対し117人が未配置で、とくに中学校は全国5番目に不足しています。また、特別支援学校が過密・過大化しており、国の「設置基準」を満たさない学校が全体の7割(23校中16校)にのぼります。

児童相談所

3つ目に、児童相談所を3カ所から5カ所に増設することができました。児童福祉士など専門職を引き続き増員し、1カ所しかない一時保護所の拡充に力を尽くします。

3. 県民要求と党の政策

急激な物価の高騰が暮らしと営業を脅かしています。飲食店主は「物価が上がっても価格に転嫁できない。コロナの時はまだ協力金があったが、今は何にもない」と悲鳴をあげています。

ところが、岸田政権は無為無策のまま、新自由主義の「地方行革」を自治体に押しつけ、参議院選挙では軍拡路線を公約しました。

こうした状況下で行われる県議選は、暮らしと平和を守り、安心と希望を届けるたたかいです。日本共産党茨城県議団は、県政唯一の野党として行政の監視役を果たすとともに、大企業・大型開発優先で暮らし置き去りの県政の転換をめざします。

暮らしと命を守るたたかい

■物価高騰対策

1つは、暮らしと命を守るたたかいです。
物価高騰対策について、最も効果のある消費税減税とインボイス中止の実現へ、県内各団体・各層と共同の運動を広げるとともに、県独自の支援策を求めます。
コロナ禍の3年余、対策の強化を求めて知事要請を15回行ってきました。飲食店以外の関連事業者への支援金は第4弾まで実施させることができ、PCR検査能力を1日あたり1万1千件まで拡大させています。

議会と自治体 2022年9月号 表2

表2 コロナ禍での事業者支援金支給実績(茨城県)

■コロナ感染症対策

再びコロナ感染が急拡大しています。必要なのは、PCR検査を抜本的に増やして早期発見と保護を行い、陽性者の増加を抑制すること。

そして、一般診療を含めて患者が必要な医療が受けられる体制を確保し、保健所の強化をはかること。さらに後遺症への適切な支援と対策が切実に求められています。

また、感染拡大下でケア労働を担うエッセンシャルワーカーの賃上げと人手不足の解消は待ったなしです。県は「政府の保育士等処遇改善臨時特例交付金による上乗せを考慮しても低い水準にある」と認めており、県独自の引き上げ策を求めます。

■食料危機と農業支援

食料危機も重要な課題です。茨城県の食料自給率はカロリーベースで70%、全国13位です。国連が戦後最悪の食料危機と警告しているとき、食料増産と自給率向上がどうしても必要です。

しかし、岸田政権は米価暴落を放置したまま、麦や大豆、飼料作物などの生産に欠かせない転作補助金(水田活用交付金)の大幅削減を打ち出しました。

農家は「燃料が高騰、肥料代は2倍。米価下落で米をつくっていけない」と深刻です。茨城の農業を支えているのは、小規模・家族経営の農業者です。価格保障と所得補償とともに、県独自の新規就農者支援をさらに強化します。

■学校給食無償化、水道料金引き下げなど

物価高騰は学校給食にも影響を与えていますが、県内市町村で給食費を値上げしたところはなく、6自治体が無償化しています(※神栖市、潮来市、北茨城市、城里町、大子町、河内町)。県が市町村と協力し、給食費の無償化を全県に広げていきたいと思います。

水道料金の引き下げも大きな県民要求です。県は水道の広域化をめざし「1県1水道」の水道ビジョンを策定。今でも水余りで、霞ヶ浦導水事業などの過大な水源開発は中止すべきです。

県南水道企業団(取手市・龍ケ崎市・牛久市・利根町)は、9,600人の水道料金値上げ反対署名を無視して、4月から大幅値上げを強行。県民運動を広げて広域化をストップさせ、料金の引き下げを図ります。

さらに、県新産業廃棄物最終処分場の建設反対や常総水害の損害賠償請求、新水戸市民会館建設反対、旧動燃不当差別や大津漁協不当解雇など、多くの裁判が闘われており、協力共闘を広げていきたいと思います。

東海第2原発再稼働反対

2つ目は、原発の再稼働を断念させるたたかいです。首都圏唯一の東海第2原発は、3・11で被災したまま停止。再稼働工事は来年9月完了予定ですが、党県議団の議会論戦が日本原電や県を追い詰めています。

第1に、再稼働に必要な広域避難計画(30km圏内94万人)の策定はまったく見通しが立ちません。党県議団は、避難所面積を1人当たり2m²としていた県計画の非人道性・不合理性を明らかにし、県は抜本的見直しを表明しました。

議会と自治体 2022年9月号 図

図 「原子力災害に備えた茨城県広域避難計画」における避難所面積の考え方

第2に、原発から30km圏内にある14市町村の避難計画に加え、圏内500カ所を超えるすべての医療機関と福祉施設の計画策定も必要であることを認めさせました。原発から5kmにある特養ホームの伏屋淑子理事長は、「入所者を避難させることは不可能。原発は廃炉に」と訴え、大看板を各地に設置しています。

議会と自治体 2022年9月号

特養ホームに立てられた大看板と理事長

第3に、再稼働工事の最終段階で行われる原子炉の試運転及び燃料装荷であっても、地元自治体の事前了解なしには認めないと知事に答弁させたことです。

そして、水戸地方裁判所は昨年3月、避難計画の不備などを理由に運転差し止めの判決を命じました。たたかいは東京高裁にうつりましたが、これからも原告団・弁護団と連帯した議会論戦に尽力する決意です。

また、再稼働の是非を問う県民投票実施を求める約9万人の署名も提出されました。県民投票条例案の議会審議では、自民、公明、国民民主系が反対多数で否決するもとで、党県議団は賛成の立場で「県民の意見表明を尊重すべき」と論戦の先頭に立ちました。

茨城新聞が行った7月の世論調査では、東海第2原発の再稼働に反対が40.2%、賛成が39.7%、わからない・無回答が20.1%でした。電気代の負担増や電力ひっ迫への対策として原発再稼働が必要という政府や政治家の発言が影響を与えていると考えられます。

党県議団として、原発ゼロの政治決断で再エネ・省エネを大きくすすめることこそ解決策であることを、分かりやすく訴えることが重要です。
原発発祥の地・茨城から、原発ゼロの実現をめざしてたたかう決意です。

憲法まもり平和な社会を

3つめは、憲法をまもり生かした平和な社会をつくるたたかいを広げます。
自民党は、6月県議会で「緊急事態条項を含む憲法改正を求める意見書」を数の力で押し通しました。感染症や自然災害などから国民の命を守るには、従来の法体系では限界があるとしています。

しかし、コロナ感染で一番疲弊した保健所を半減させてきたのは自民党政治です。命と暮らしを守るためにも、憲法をいかした政治こそ求められています。

また、茨城県小美玉市にある自衛隊百里基地は、茨城空港との軍民共用であり、日米共同訓練基地にされています。昨年8月には陸上自衛隊木更津駐屯地からV22オスプレイが飛来する訓練を強行。これに対し、基地周辺の26行政区長が訓練中止を申し入れ、小美玉市など5市町連絡会も訓練の詳細な情報提供を要望。さらに、百里基地反対連絡協議会8団体は共同して抗議しました。

議会と自治体 2022年9月号

オスプレイ訓練に反対する集会

その後も、米海兵隊や豪空軍との共同訓練が相次いで強行されており、専守防衛を逸脱する自衛隊の変質を許さないたたかいは正念場です。

4. 県議選議席獲得目標と取り組み

日本共産党茨城県委員会は、県議選を来年の統一地方選挙の前哨戦として位置づけ、現有2議席の絶対確保と議席増に挑戦します。

【水戸市・城里町区(定数6)】

江尻かな県議が3期目をめざす水戸市・城里町選挙区は、現職が共産のほか、自民3人、公明1人、立憲1人でしたが、現職自民県議が参議院議員になって空いた議席に自民党水戸市議や保守系、さらに維新の会や国民民主も擁立をうかがう多数激戦の様相です。

東海第2原発の再稼働を許さないたたかいで、江尻県議の議会論戦は運動を大いに励まし、「議会に江尻さんがいないと困る」という声が寄せられています。

さらに、江尻県議のホームページやツイッターなどを見た県民から相談が寄せられ、脳脊髄液減少症や重度障がい児への医療支援、認可外保育施設での死亡事故や加齢性難聴者の補聴器補助など、県民の切実な声を届けています。こうした活動に信頼を寄せた女性が参院選でも応援してくれ、県議選での取り組みに大いにつなげていきたいと思います。

【つくば市区(定数5)】

つくば市選挙区は、5期目に挑戦する山中たい子県議のほか、自民現職3人、公明現職が新人と交代、維新の会や市民ネット、無所属の新人が立候補を表明する激戦です。市民ネットや維新の会は、過去の市議選や国政選挙で共産党の得票数を超えており、厳しいたたかいになりますが、保健所削減や東海第2原発再稼働に反対し、議会論戦してきたのが共産党です。

地域要求で市民との共同も広がっています。党市議団と連携して、つくば市が毎年県に水道料金の値下げを要望。また、県立高校の新設を求める運動が昨年から始まり、市民主催の集いに5人の県議全員が参加。山中県議は3月議会で、市内中学卒業者の6人に1人しか地域の県立高校に入学できない実態を教育長に認めさせました。

要求運動の前進と県議選の勝利に向けて全力を尽くします。

【取手市区(定数2)】

取手市選挙区は前回、定数が3から2に減らされるもと、「自民2議席許すな」と党現職県議が市民と野党の共同候補として奮闘しましたが、僅差で落選。残念な結果となりました。今回は、新人の佐野太一さんを擁立し、参議院選挙でも街頭演説や訪問活動に奮闘しました。

佐野さんは、産業カウンセラー法人の代表理事として働く人のケアに携わるかたわら、生理の貧困やジェンダー平等に関心を寄せ、仲間とともにボランティア活動に取り組んできました。こうした活動を通して党の政策や理念に共感し、昨年入党。県民の苦難軽減に尽くす議席奪還へ、必勝をめざします。

5. 予定候補者の決意

最後に、3人の決意をそれぞれ紹介します。

●江尻かな県議(水戸市・城里町区)

江尻かな

県議会に送っていただいて8年。日々寄せられる声と議会論戦を結んで、県政をより良くしたいと活動してきました。
全国8位の茨城県の財政力にふさわしい医療、福祉、教育、環境、まちづくりをすすめます。子育ても、仕事も、老後も安心して暮らせる茨城をめざし、「江尻さんに相談できてよかった」と思ってもらえる議員でありたいと思います。引き続き力を尽くし、水戸市で連続13期つないできた宝の議席を守り抜く決意です。

●山中たい子県議(つくば市区)

山中たい子

私の生まれ育った福島で起きた原発事故を決して忘れることはできません。
ボランティアで南相馬市に行ったときに見た、津波で流された住宅に一本立っていた鯉のぼり、2つに折れ曲がった鉄塔をいまも鮮明に覚えています。「原発事故さえなかったら、津波で流された人を見つけられた」と、難を逃れた方たちに聞きました。
苦しみは続いています。再び繰り返してはなりません。東海第2原発の再稼働ストップへ力を合わせ、議席確保に全力を尽くします。

●佐野太一氏(取手市区)

佐野太一

参議院選挙が終わり、いよいよ茨城県議選です。参院選の結果から、私は次の3点を意識して実行したいと思います。
1つは、参院選の教訓をどう生かせるか。2つ目は、どれだけ分かりやすく話ができるか。3つめは、県議選をきっかけに同年代以下の仲間をつくれるかです。正直今のままでは県議選は大変厳しい状況です。パターン化したものをどれだけ打破できるか、それが県議選に勝ち、日本共産党を次世代に継承できる条件だと思っています。

「議会と自治体」 2022年9月号(PDF)