原子力機構に高速実験炉「常陽」の廃炉求める 共産党茨城県委員会

日本原子力研究開発機構が2024年度末の再稼働をめざす高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)について、日本共産党県委員会は7月24日、機構に対し、再稼働を止めるよう求めました。江尻かな議員、菊地昇悦町議ら県内の党議員、川井ひろ子前鹿嶋市議(衆院茨城2区予定候補)らが参加しました。

廃炉の申し入れに先立ち「常陽」を視察する江尻県議など党議員ら

廃炉の申し入れに先立ち「常陽」を視察する江尻県議(中央右)など党議員ら=7月24日、茨城県大洗町

「常陽」は、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する「核燃料サイクル」の中核施設。1977年に初臨界を達成しましたがトラブルが相次ぎ、2007年の炉心事故以降、運転を停止しています。

申し入れでは、再稼働は原発推進が前提だと指摘。「必要性、安全性、経済性から再稼働させず廃炉にすべき」と求めています。

江尻氏は、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まるなど、核燃サイクルは破たんしているとし、「原子力に依存するエネルギーから転換すべきだ」と強調。

菊地氏は、近隣の航空自衛隊百里基地(小美玉市)での民間機や戦闘機事故、テロ対策上の懸念を示し、廃炉を求めました。機構の担当者は、「地元自治体の理解を得た上で再稼働をめざす」と応じました。

「常陽」は5月、原子力規制委員会の「安全審査」に事実上「合格」。再稼働に向けた工事が進められています。

(「しんぶん赤旗」2023年7月26日付より転載)

機構に対し質問を行う江尻議員

機構に対し質問を行う江尻議員(右から2人目)=7月24日、茨城県大洗町

高速実験炉「常陽」の再稼働取り止めを求める要請書

2023年7月24日

日本原子力研究開発機構大洗研究所
所長 根岸 仁 様

日本共産党茨城県委員会
委員長 上野 高志
日本共産党茨城県議団
県議 江尻 加那
日本共産党市町村議員団

貴機構は、高速実験炉「常陽」を2025年3月に再稼働させる計画で、そのために必要な原子力規制委員会の審査等をすすめています。今後予定される工事の着工前には、茨城県と大洗町の事前了解が必要とされており、県の判断には近隣の鉾田市、水戸市、ひたちなか市、茨城町の意見も反映されることになります。

「常陽」は1977年の運転開始後、使用済み核燃料の再処理で取り出したプルトニウムを再利用する核燃料サイクルの実験等を行ってきましたが、2007年に実験装置の破損事故で運転を停止。その後、高速増殖炉「もんじゅ」や新型転換炉「ふげん」が相次いで廃止され、核燃料サイクル開発は失敗。これにより「常陽」も廃止されると受け止めていましたが、政府は「常陽」を再稼働させて次世代革新炉の開発をすすめる方針です。しかし、こうした政府の原発推進政策への転換に国民の理解や合意は得られていません。また、がん細胞を放射線で攻撃する医薬品(アクチニウム225)については、既存の加速器でも製造実績があるとされています。

これまでも、政府と電力会社は核燃料サイクル開発に巨額費用を投じ、税金や電気料金として国民が負担してきました。今回の「常陽」再稼働工事でも207億円が投じられるとされています。使用済核燃料の再処理によって核兵器の原料ともなるプルトニウムがつくられ、国際的な懸念を生んでいます。さらに、「常陽」で使用される冷却材は爆発リスクのある液体ナトリウムを使用するため管理が難しく、他の原子力施設とは異なる危険性があります。

こうした状況を踏まえれば、必要性、安全性、経済性など、あらゆる面から「常陽」は再稼働させず廃炉を決定し、十分な安全管理のもと廃止作業に注力されるよう要請いたします。

以上

高速実験炉「常陽」の再稼働取り止めを求める要請書(PDF)

高速実験炉「常陽」の内部

高速実験炉「常陽」の内部=7月24日、茨城県大洗町

高速実験炉「常陽」の再稼働に関する質問書

2023年7月14日

日本原子力研究開発機構大洗研究所
所長 根岸 仁 様

日本共産党茨城県委員会
委員長 上野 高志
日本共産党茨城県議団
県議 江尻 加那
日本共産党市町村議員団

このたびは「常陽」の視察と質疑応答の場を設けていただき、ありがとうございます。
日本共産党は、原型炉「もんじゅ」廃炉決定後、実験炉「常陽」の再稼働と核燃料サイクルの開発について中止を求めてきました。しかし、西村経産相は先の国会で、核燃料サイクルについて「失敗」と口にしながら「経験を踏まえて更に進めていく」と答弁しています。
そこで、「常陽」の再稼働に関して、下記事項を質問いたします。

  1. 「もんじゅ」の失敗の後、高速炉にどのような目的や意義を展望しているのか。「常陽」の現場として、どのような目的意識で取り組まれているのか。
  2. 2007年の実験装置の破損事故等のトラブルの原因や組織のあり方をどのように総括し、その後の改修作業のプロセスで何を学び解決したのか。
  3. 2017年6月の大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染と作業員の被ばく事故後、保管状態が不適切として原子力規制委員会から是正指導を受けたが、これまでにどのように改善されたのか。
  4. 再稼働に向けて熱出力を下げた理由は何か。熱出力を下げる炉心の変更とは、具体的にどのような改修なのか。
  5. 常陽の施設・設備・配管等や原子炉の老朽化はどのような状態か。再稼働に向けて、どのように更新、改修されるのか。
  6. 再稼働に向けた原子力規制員会の審査や工事計画のほか、県や大洗町など関係自治体への説明と事前了解など、今後予定される手続きはどのようなものか。
  7. 再稼働にあたって、近隣自治体は原子力災害対策指針にもとづく避難計画を策定しているが、どのような災害が想定されるのか。指針によれば、施設から半径5kmが対象エリアとされるが、リスクが5kmの範囲でとどまる根拠はどのようなものか。
  8. ナトリウム火災について、どこでどのような規模の火災を想定し、防止策や発生後の備えはどのように講じられているのか。
  9. 建物や原子炉がある地盤はどのような地質構造で、耐震性はどのように強化されるのか。
  10. 再稼働の際に使用する燃料はどのように製造、貯蔵されているのか。
  11. これまでの運転による使用済み燃料やナトリウムはどのように処理・処分されるのか。
  12. 再稼働の安全性や必要性および経済性などについて、県民にどのように説明するのか。
  13. 医療用ラジオアイソトープの製造について、既存の加速器での製造では不足なのか。「常陽」での開発による大量製造が必要であるなら、どの程度の量が想定されているのか。
  14. 現在の研究所において、常陽の稼働に従事した経験のある所員はどのくらいいるのか。未経験の所員の研修はどのように行われているのか。
  15. 2016年に廃炉を決定した高速増殖原型炉もんじゅについて、廃炉作業は2047年に完了と報道された(7月8日付福井新聞)が、常陽が廃炉を決定した場合、施設の解体撤去や敷地を更地にするには何年間を要すると見込んでいるか。現時点で再稼働せずに廃炉に進む場合と、一定期間稼働してからの場合で必要年数に違いがあるのか。

以上について、7月24日に回答および説明いただけますようお願いいたします。できましたら、回答や説明の主旨について、当日、文書や資料をご用意いただければ意見交換や質疑がスムーズに進むかと思いますのでご検討ください。

以上

※口頭回答のため回答は掲載していません。

高速実験炉「常陽」の再稼働に関する質問書(PDF)