放射性廃棄物 素掘り埋設認めるな 東海原発 住民ら茨城県に抗議

日本原電が東海第1原発(東海原発=茨城県東海村)の廃炉・解体に伴って発生する放射性廃棄物「L3」の素掘り埋設処分を計画している問題で、民主団体や脱原発の住民グループ、日本共産党など21団体は10月19日、橋本昌知事あてに、放射性物質で住民の安全が脅かされるとして原電の計画を認めないよう要請しました。

要請書提出の席上で各団体の代表や住民らは、原電主催の住民説明会のあり方に疑問を提起。
「原電は資料と違うことを平気で説明している。住民の不安にまともにこたえようとしていない」「住民を丸め込もうという姿勢だ。原電の都合のいいように説明している」「県も説明会に出向いて住民の不安の声を聞いてほしい」などと訴えました。

原子力安全対策課の担当者らは、「住民の声は聞いていなかった」と述べたうえで、「(訴えの)趣旨はよく分かった。住民にていねいに説明することや、ゴリ押しすることのないよう事業者に求めていく」「ご意見を参考にして、事業者からヒアリング(聞き取り)をしたい」と答えました。

日本共産党の山中たい子県議、江尻加那県議が同席しました。

(「しんぶん赤旗」 2016年10月20日付より転載)

L3放射性廃棄物「素掘り埋設」計画を認めないことを求める要請書

茨城県知事 橋本昌 様

2016年10月19日

【要請団体】21団体 ※以下、あいうえお順
茨城県原発を考える会(中村敏夫)
茨城県憲法9条世界へ未来へ連絡会
茨城の環境と人を考える会議(那珂市 植田泰史)
環境学習同好会(牛久市 中村弘美)
原発事故からくらしを守るネットワーク(茨城県 阿部功志)
さよなら原発いばらきネットワーク(茨城県 丸山幸司)
さよなら原発ひたちなか市実行委員会(ひたちなか市 大内健次)
3・11を忘れない東海イレブンアクション実行委員会
JCO臨界事故を忘れない9・30集会実行委員会
常総生活協同組合(守谷市)
新日本婦人の会東海支部(東海村 塚原千枝子)
脱原発ネットワーク茨城(茨城県 小川仙月)
地球カフェ・結(水戸市 玉造順一)
東海第二原発再稼働ストップ日立市民の会(日立市 荒川照明)
東海第二原発差止訴訟原告団(茨城県)
東海第二原発の廃炉をめざす県民センター(茨城県 田村武夫)
東海第二原発問題相談会(茨城県)
とりで生活者ネットワーク(取手市 竹添みち子)
日本共産党茨城県委員会(茨城県 田谷武夫)
未来への風いちから(ひたちなか市 荻三枝子)
リリウムの会(東海村)

【要請事項】

  1. レベル3放射性廃棄物(以下「L3廃棄物」と略)の素掘り埋設(トレンチ処分)計画は、長期にわたって膨大な放射性物質の環境への流出があり、生態系を汚染し、将来にわたって住民が安全に暮らす権利を脅かします。よって、素掘り埋設計画を認めないこと。
  2. 日本原子力発電株式会社(以下「原電」)に対して、L3廃棄物を遮断型保管施設での管理へ計画を変更し、原子力規制委員会へ申請し直すよう指導すること。

【要請にいたる経過と詳細説明】

  1. 原電は、2015年10月から30キロ圏15市町村で、解体中の東海原発から出るL3廃棄物は社有地内に素掘り埋設で処分する旨の説明会を開きました。原電は、素掘り埋設の根拠を「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下「原子炉等規制法」と略)と「核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則」(以下「規則」と略)などに求め、その管理を「50年以内を目安にする」として、以下のように説明しました。
    「ボーリング調査の結果、地下水は国道245号線側から海側へ流れているので地下水汚染への影響はない。廃棄物に含まれる放射性物質はセシウム137が7,000ベクレル/kg以下、コバルト60は800万ベクレル/kg以下、ストロンチウム90は1万ベクレル/kg以下であり、地下水を介して海へ移行し、放射性物質が取り込まれた海産物を摂取した場合、人間が受ける放射線の量は0.01ミリシーベルト/年以下で、国の安全基準を満たしている」と述べ、よって、安全であるとして2015年7月に事業許可申請を規制委員会に申請し、「2016年9月末までに補正申請を行い規制委員会と協議し、2017年度に工事に着手したい」と説明しています。
    しかし、この説明は単なるシミュレ-ションとその計算結果にすぎず、基準値以下におさまる保証はありません。
    近くには100haの水田があり、太平洋沿岸では、豊かな漁場に支えられ、漁業で生活を営む人々がいます。当該埋設処分は人々の生活や環境に配慮したものとは、到底考えられません。
  2. 東京電力福島第1原発事故により、茨城県でもたくさんの放射性物質が大気中及び海洋中に撒き散らされており、有害性が憂慮されています。このような状況下での解体にあたっては、発生する放射性物質の環境への廃棄・拡散は一切おこなわず、漁民地域住民の健康・安全確保に万全を期してほしい、との強い思いから私たちは2016年8月31日に原子力規制委員会へ素掘り埋設計画の中止を求める要請を行いました。
    規制委員会の回答は、あくまでも法律・規則にのっとって審査を進めるというものでしたが、私たちの声を国(規制委員会)へ直接届けることができ、要請行動は一定の成果があったと考えています。
  3. 規制委員会では、当該埋設処分申請が、まだ審査に入っていないこと、224項目にわたる質問事項が追加されていることから、かなりの検討・準備不足での駆け込み申請だったのではないかと私たちは受け取りました。そこで、2016年9月28日、私たちは原電に対し、L3廃棄物の素掘り埋設計画を白紙撤回し、遮断型構造の施設で暫定保管し、厳重に管理するよう規制委員会に提出しなおすことを求める要請を行いました。しかし、原電は要請内容に関しても回答期限期日に関しても一切回答できないとのことでした。
    原電はホームページで地域との共生や環境との調和を謳っていますが、対応をみる限りそれらは絵空事でしかありません。住民の不安や疑問に一切耳を貸さない原電には、原子力を扱う資格はないと考えます。
  4. 茨城県は自然に恵まれ、農業(農業産出額全国第2位)・水産業が盛んです。観光資源も豊かです。さらなる発展のために、自治体、住民挙げて環境保全に取り組んでいる最中、原電のL3 廃棄物素掘り埋設計画は、これらの取り組みに逆行するものであります。また、原子力安全協定で求められている環境保全への認識が欠如していると言わざるを得ません。
    放射性物質の海洋への流出と、そのことによって海産物が汚染されることを前提とした原電の「安全宣言」が、県の産業、観光に実害、風評被害をもたらすことを恐れます。
  5. 自治体首長には、住民の生命、財産を守るという大変重い責務があります。原電のL3廃棄物素掘り埋設計画がどれだけ長期にわたって環境を汚染し、住民の健康を損ない、産業に打撃を与えるかを調査する公正な第三機関を作るべきと考えます。

以上

L3放射性廃棄物 「素掘り埋設」計画を認めないことを求める要請書(PDF)