茨城県議会 予算特別委員会 江尻加那県議の質問(2015年3月19日・大要)
項目
江尻加那県議の質問(大要)
2015年 3月19日(木) 茨城県議会第1回定例会 予算特別委員会
【質問項目】
1. 子育て支援の推進について(答弁・保健福祉部長)
(1) 子ども医療費助成制度の拡充
2. 税務行政について(答弁・知事)
(1) 滞納処分の実態
(2) 茨城租税債権管理機構のあり方
3. 水道行政について(答弁・知事)
(1) 県中央広域水道の料金値下げ
(2) 霞ヶ浦導水事業の中止
4. 原子力災害対策について(答弁・知事)
(1) 広域避難計画の実効性
1. 子ども医療費助成制度の拡充について
日本共産党の江尻加那です。
はじめに、子どもの医療費助成制度のさらなる拡充について保健福祉部長に伺います。
昨年10月、県が補助を拡大したとき、子育て世代から「なぜ、外来も入院と同じように中学3年まで対象にならないのか」という声や、「厳しい所得制限をなくしてほしい」という願いが寄せられました。これに応えるために必要な予算額と、今後の拡充を求めて所見を伺います。(答弁)
中学3年までの拡大に3億3千万円、所得制限をなくすのに7億9千万円、両方やると11億2千万円とのこと。実現できます。
今回の平成26年度一般会計補正予算で、保健福祉関係費は約60億円も減額する補正です。当初予算の中で精査し十分措置できました。子ども達のために使ってください。市町村は努力しています。
高校生まで対象にする自治体や、古河市のように20歳まで広げるところも出てきています。所得制限は32自治体が廃止、それ以外は県と同様の所得制限で、市町村間で差が出ています。子どもの命や健康に直結する格差をなくすために、県が市町村と協力して高校卒業までの無料化をめざす時が来たと考えますが、いかがでしょうか。(答弁)
子育ての大きな安心につながる医療費補助の拡大を、これからも求めていきたいと思います。次の質問に移ります。
2.税務行政について
(1) 滞納処分の実態
税務行政について知事に伺います。
市県民税や国民健康保険税などの徴収において、行き過ぎと思われる滞納処分が頻発しています。その背景には、年金や実質賃金が減り続けるもとで、低所得者や高齢者世帯に対する住民税大増税や、国保税、介護保険料の相次ぐ値上げ、さらに消費税増税でとりわけ小規模・零細事業者の経営が圧迫されている現実があります。納税は国民の義務ですが、今の重い税負担は政治の責任です。
土浦市で電気工事業を営むAさんは、2014年12月、茨城租税債権管理機構から「差押調書」が送られ、取引先の売掛金85万8千円が差し押さえられました。売掛金は外注費や材料代の支払いにどうしても必要な資金であり、事業の維持に支障となる差押えは国税徴収法でも留意すべきとされています。問答無用の差押えは問題です。
さらに、県南地域の開業医が、租税債権管理機構の診療報酬差押え等の非人間的な徴収に精神的に追いつめられ、今年1月、自ら命を絶ちました。遺書には「税金を払うだけの人生はむなしい」と書かれてあったそうです。徴税によって自殺者を生むようなことはあってはならないと思いますが、本県の滞納処分の実態、差押え件数の推移を伺います。(答弁)
(2) 茨城租税債権管理機構のあり方
県と市町村合わせると、5年間で約5,000件増えたことになります。それとは別に管理機構だけで年間約1,000件の差押えがあります。県が支援して立ち上げた管理機構、そこに派遣される県職員は当初4名から今8名に増え、県補助金は年1,700万円。知事は「県財政に寄与した」と「感謝状」も送っています(平成14年)。
公的な徴税業務はどのような姿勢で行われるべきか。国税徴収法制定の責任者である我妻栄(わがつまさかえ)東大名誉教授は(故人)、「行政に与えられている強権力と裁量権は、(悪質な滞納者など真にやむを得ない場合に対してみ、最後の手段として行使すべきもので、)大多数の一般納税者に対して決して乱用してはならない」と指摘しています。
管理機構は言うまでもなく滞納整理専門組織です。市町村でやるよりも住民の顔は見えづらく、生活実態も分かりにくくなる。容赦なく取立てるという傾向に陥りがちです。本来徴税業務行うべき市町村に戻して、管理機構は廃止すること。そして、市町村で滞納者の実状を十分聴取し、調査・相談できる体制を拡充すること。最終的には自主納付と生活再建をフォローできる行政づくりこそ大事だと考えますが、知事の所見を伺います。(答弁)
平成25年度、管理機構が強権力や裁量権を使って県民から徴税した本税額は15億円。一方で、県が呼び込んだ企業には同じ15億円を免除しています。私は滞納でいいと言っているのではありません。徴税業務は大変な仕事ではありますが、市民の暮らし向きが見える大事な市町村の業務です。転換を求め、次の質問に移ります。
3.水道行政について
(1)県中央広域水道の料金値下げ
次に水道行政についてうかがいます。
県中央広域水道の料金が全国一高く、これが市町村の水道会計を圧迫し、水戸市やひたちなか市など関係11市町村から再三、値下げが要望されています。これに対して企業局が「応じられない」と回答した時の資料がこれです。その6ページ目にある収支見通しを、みなさんにお配りしていますのでご覧ください。
これを見ますと、もう水需要の伸びは見込めないこと、霞ヶ浦導水事業が完成すると管理費が発生し、赤字になると企業局は示しています。
大震災を経験した市町村の考えと政策は変わりました。中央広域水道から長期間受水できなかったことを踏まえ、ひたちなか市は、県の水よりも市でつくった方が20年間で250億円も安くなると試算し、地下水と表流水を有効活用するとしています。
また、水戸市では、常澄地区と内原地区がわずかに県水を受水していたものの、震災後に自前の送水管を整備しました。こういう状況のもとで導水事業が完成すると、市町村に今よりも過大な水の買い取りと料金値上げを押し付けることになります。これは深刻です。知事は導水事業の工事再開を決めた国には従い、市町村と県民の要望には背をむけるのでしょうか。中央広域水道の料金値下げや契約水量の見直しに、どう対処するか見解をうかがいます。(答弁)
(2)霞ヶ浦導水事業の中止について
暫定水利権についてご説明がありました。暫定水利権が認められるのは、緊急性があって、かつ川の水量が正常流量より多いときと定められています。
私は那珂川の流量年表を見てみました。国土交通省が毎日の流量を数値・グラフ化したものです。例えば、広域水道給水開始の翌年(平成8年)は、かんがい期の4月と5月のうち半分以上の32日間、正常流量を下回っていました。つまり河川法上、暫定水利権が行使できない流量でした。それでも、県中央広域水道は一日も休まず取水していた、できてきたということであれば、河川法に違反して取水したのか、又は、そもそも水利権というのが数字上の概念で、要は新たな水源開発を進めるための恣意的なものであるか。この20年間、問題なく取水できているのです。
当初、霞ヶ浦導水事業に参画していた千葉市は、調査・調整を重ねた結果、「撤退すべき」と決断しました。千葉市長はこう言っております。「今まで負担してきたお金は返ってこないけれど、工事が完了すると新たに維持費用を今後も負担し続けなければならない」と。「甘い見通しによって税金投入してしまったことは反省し、少なくともこれ以上の税金投入を抑えることができた」と。本県も高度経済成長期の計画を見直し、導水事業から撤退すべきではないでしょうか。知事の所見を伺います。(答弁)
私は、先月、那珂市にある県中央水道事務所を訪ねました。本来、水道施設をつくるはずの場所に、1000kwの太陽光メガソーラーが設置されていました。そこで私が感じたのは、知事は、片方では導水を早くやれといいながら、もう片方では水道施設用地に太陽光発電をつくり、これは元が取れるのに16年、耐用年数30年と伺いました。どう考えても矛盾だらけの導水事業です。現状とかい離した水源開発は中止すべきです。
4.原子力災害に係る広域避難計画について
最後に、原子力災害に対する県の広域避難計画案について伺います。
福島原発事故後、国は原発から半径30km圏の自治体に住民の避難計画策定を義務付けました。本県の対象住民は全国最多の約96万人。県内14市町村が含まれ、水戸市もすっぽり入ります。知事は3月24日の防災会議で広域避難計画を決定しようとしていますが、96万人のうち44万人は県内に逃げ、残る52万人の県外避難先は未定のままです。
「どこに逃げろというのか」「30km圏内に約1万8千人いる入院患者や福祉施設入所者を避難させられるのか」など、県民の関心が大きいにも関わらず、一度も県は説明会や意見聴取会を開かず、パブリックコメントさえ行っていません。「後は市町村で具体化して住民の意見を聞けばいい」というのは余りにも無責任です。24日の防災会議で報告できる条件にありません。県民の理解も納得も得られません。知事の所見を伺います。(答弁)
これから市町村にどう説明して、避難計画を作れというのでしょうか。水戸市の担当者は「市民に聞かれ『まだ決まっていない』では理解されない」と言っています。つくば市では、福島から500人受け入れるのがあれほど大変だったのに、水戸市民3万人の受け入れは「想像すらできない」と言っています。石岡市は「複合災害の場合、市民優先の対応となり、避難者受け入れをお断りすることも想定」と言っています。
県広域避難計画の一番の問題は、地震や津波との複合災害を想定していないことだと私は思います。風向きも全く考慮されていません。私たちは4年前に、複合災害をすでに経験しました。高速道路は使用不可能。インターチェンジは地震計の値に基づき、地震発生と同時に通行止めを即実施。それなのに、県計画案は自家用車で高速道路で避難する案です。また、大震災時は長期間の停電が起き、本県でもモニタリングポストでの空間放射線量が測定不能という事態に陥りました。自家発電機の設置など改善されたのでしょうか。原発の単独事故ではない複合災害にどのように対応するのか、知事の所見を伺います。(答弁)
避難計画を具体的に検証すればするほど、実効性に多くの問題と解決できない課題があることが浮き彫りになってきます。先の見えない避難計画づくりに原子力安全対策課も市町村も苦労しています。国や原発事業所は避難計画は自治体まかせで、再稼働に前のめりです。では、避難計画の実効性は、だれがどのように検証するのでしょうか。知事は、少なくとも「実効性ある避難計画ができない限り、原発の再稼働の議論はありえない」ということを明確に示してい頂きたい。知事の所見を伺います。(答弁)
知事、避難しなければならない事故が起きたことを考えてみてください。(避難できたとしても、帰ってくることができません。元通りの暮らしに、仕事に戻れないのです。お金に変えられない大事なものを原発に、放射能に奪われたというのが福島の現実ではないでしょうか。)地域防災計画の一番の要は「災害の発生防止」です。だとしたら、発生源である原発をなくすことです。地震や津波は止められませんが、原発はなくせます。そのプロセスに向けて県行政の知恵と力を発揮していただきたい。再稼働に同意するか、しないか。知事にはその権限が与えられているのです。県民から負託された権限です。以上で終わります。
以上
江尻加那県議の質問(大要・PDF)